星野源『不思議』を語る

星野源『不思議』を語る 星野源のオールナイトニッポン

(星野源)はい。先ほど私、星野源の新曲『不思議』をお送りしましたけれども。感想や質問のメールがまだまだ来ております。ありがとうございます。東京都の方。「源さん、夜中に聞く『不思議』、最高ですね」。これね、そうなんだよ。『不思議』ってたぶんね、ラジオの電波に乗ると相当いいと思いますよ(笑)。この間さ、車でね……レコーディング的なことを結構前にして。その時に、帰りに車で帰る時にラジオを付けてみたの。で、それはAMで付けてみたの。ニッポン放送を聞こうと思って。

その時はたぶんね、菅田くんの日だったと思うんだけど。AMってあんなに音が悪いんだね! そう、びっくりするぐらい聞こえないんだね。なんていうか、トンネルに入っただけでもうさ、聞こえなくなったりするじゃない? で、「こんなか!」と思って。俺が聞いてた頃のAMって、もうちょっとクリアな気がしてたんだけど。なんか、車で移動しながらっていうのもあるのかなとか思いつつ。で、ワイドFMの方で付けたらめっちゃきれいで。「ああ、なるほど。これはワイドFMを作るわ」っていうか。

でも、とはいえたぶんこの曲はAMで聞いてもいいと思う(笑)。いいと思います。なのでぜひ、ラジオでね、リクエストたくさんしていただければと思っております。「言葉にできないことを歌にしたい。言葉で表現できない気持ちって本当にあるんですよ。好きを持った日々を過ごすのはとても幸せだなと感じるし、生きる原動力になります。今回イントロがほとんどなく、すぐに歌い出しとなっていますが、何か狙いとかを意識したんでしょうか?」。

いや、特にないです。なんかこうなったという感じです。でもね、全体の話になるからイントロっていう感じでもないんだけど。今回、割とゆったりとしたテンポではあるんだけども、しっかりビートを効かせて、ちゃんと踊れるものにしたいなと思って作っているんですが。とはいえ、前に作ったのが『創造』っていうのもあって(笑)。『創造』ってとんでもなく早い展開のやつだったのであれなんだけど。やっぱり、なんだろう? イントロを作って……とかどんどんやっていくと、5分をすぐに超えちゃうんですよ。

で、なんとなくなんだけど「5分以内にしたいな」と思って。で、その5分以内にしたいっていう気持ちはそんなに大きな理由はないんだけど。なんか、その5分以上行くなっていうものを4分台……5分以内に抑えることができると飽きずに最後まで聞けるんじゃないかなっていう。何て言えばいいんだろう? 僕、短い曲が基本的には好きなんですけど。とはいえ、たまに「この曲、好きだわ」と思ったら5分ぐらいあったりする時もあるんですよ。

でも、その共通するのって、中身がちゃんと詰まってる曲で。なんか飽きちゃったりとか、ダルいな、みたいに曲の途中でならないのが自分は好きなので。ちゃんと情報量をムダに使用せず、ちゃんとこう整理された状態で全部の帯域を使うような、そういう楽曲にするにはもうちょっと短くした方が圧縮できるじゃないかっていう。なんかそんな感じで短くしていきましたね。だからアウトロもないしっていう。

あれでアウトロとか、もうひと展開とか作っちゃうと、ちょっと蛇足っていう感じになっちゃうよなと思ったんで、スッと終わるという。スッと始まってスッと終わるっていうのが今回の曲のテーマにも合っているような気がして。『不思議』感というか(笑)。なんかね、いろんな言い訳を作って言ってベタベタベタベタするんじゃなくて、サッと引くというか。そういう方が合うんじゃないかなと思ったりしました。

群馬県の方。「源さん、『不思議』配信、おめでとうございます。またやりおったなっていう感じです」。どういうこと?(笑)。ありがとうございます。「聞き始めて、すぐ物語や情景が頭に浮かび、日々の生活で気に留めてもなかったことがポンポンと浮かんできて、愛しく大事なことに気づかせてくれて驚いています。源さんにお聞きしたいことがあります。今回の曲にも裏設定ってありますか? 『YELLOW DANCER』発売の頃、RHYMESTER宇多丸さんのラジオに出られた時に裏設定を聞くことができましたが、ここ最近は聞けていないような……ぜひ、教えてほしいです」。

ああ、裏設定っていうか……あれでしょう? その『桜の森』がちょっと、なんていうか、実はスケベ的な歌ですみたいな。なんていうか……まあ、今回はないです。なんかそういうの、全然ないです。で、まあそもそもなんですけど、その頃……だから今から5年以上前ですよね。2015年だから、5年ぐらい前の時に、宇多丸さんのラジオにまだそんなに出ていなかった頃にプロデューサーの方に「なんか下ネタ的なことを言ってもらえるとうちのリスナーが喜ぶんで。そういうの、言ってくれませんか?」って言われたんだよね(笑)。

だから、別に元々そういうセクシーなニュアンスっていうものは『桜の森』にはあるんだけど、別にそこまで「これが裏設定だぜ」って書いたわけじゃなくて。そういう部分を香るように作ったんだけど。だから「わかりました。じゃあ、そこを拡大解釈しましょう」って言って無理やりしゃべったの。だから、なんて言うの? そういうのを、たぶんいまだにしっかり覚えててくれていると思うんだけども。裏設定……なんていうのかな? その……(笑)。是が非でも自分の曲を使ってスケベを届けたいわけではないんですよ(笑)。

そう。だからたまにあれ、後悔する時があるんだよね。なんか、あそこまで頑張らなくてよかったのになっていうか。もうちょっとちゃんと、楽曲の持つ素直な響きみたいなのを……まあ、いわゆるラジオ的なノリっていうことだったので頑張って。でも、楽しかったんだけど。なんか楽曲のことを考えると、もうちょっとマイルドにしといた方がよかったかなって思う時はありますね。

でも、いろんなメッセージとか、いろんな思いとか、いろんな情景が……たとえば『夢の外へ』っていう曲はまたとえばラジオで言う時は「寺ちゃんのエピソードが……」とか言うじゃない? で、もちろんそれを言うんだけど、それって100パーセントではもちろんなくて。80パーセントぐらいが楽曲のまっすぐなそのままの思いというところで。それにプラスで……っていうことが多いですね。自分にとっての思いっていうのは。たとえばそれは寺ちゃんがね、夢の中で好きな人と会えるっていう話を……由紀さおりさんだよね?

で、「その夢の中で会える由紀さおりさんを外に出してあげたいっていう思いで『夢の外へ』を作りました」って言ったりするのも、それも間違ってないんだけど。そういう要素もありつつ……あと『夢日記』っていうフリーゲームがあって。その窓付きっていう主人公を夢の中から出したいっていう、そういうエピソードもあるけど。それも要素のひとつっていう。そんな感じですね。だから今回も……今回は複合的にいろんな要素を詰め込むっていうよりかは、自分にとっての恋愛とかっていうものを音楽にするぞっていう。なんかそういうものですね。そういう感じでございます。

あとは……埼玉県の方。「源さん、ネットでは『着飾る恋』の今日のあのシーンはお酒の勢いだけではなく、星野源の歌が流れたからだと盛り上がっています。ワイン+星野源さんの曲=チューという方程式が成り立ちます」(笑)。なるほどね、たしかに(笑)。いや、それは嬉しいね。なんか音楽を作ってるものとしては。「この曲が流れたから、いい感じになる」っていうのはなんかね、もう主題歌冥利に尽きますよ。ありがとうございます。

なんか、わからないけども。一緒に暮らしているカップルとか、一緒にいるカップルとか、ご夫婦とかね、なんか試してみればいいじゃない? 曲が流れたらチューをしなきゃいけないっていう。「♪♪♪……おっ、チューするぞ!」みたいな。そういうの、いいじゃないですかね。

福岡県の方。「新曲『不思議』リリース、待っていました。言葉ひとつひとつが好きなので質問なのですが、『不思議』を作るにあたってどの部分の歌詞からできって行ったのでしょうか? 『ここをどうしても使いたい』といったこともあるのでしょうか?」。ああっ! ええとですね……あのね、「彷徨う心で 額合わせ 口づけした 正座のまま ただそっと笑った」っていうのは、なんかこれ、書いている時に「俺のエピソードだと思われたら嫌だな」って思って(笑)。

基本的に俺、自分のエピソードを書くのが好きじゃないので、そうじゃないんだけど。でも、これまではそうだったんですよ。なんていうか、物語にしたりとか、エピソード的な感じで登場人物を作って。その登場人物がどういう物語を……っていう。で、その根本の思いは自分の思いと同じなんだけどっていうような曲の作り方をしてたんだけど。『うちで踊ろう』を作って紅白でやった時に、今まで風景を描くこととか、状態を描くこととかが好きだったんだけど、その時は自分の思いを伝えるっていう音楽の曲の作り方をしたんですよ。歌詞の書き方を。

その時に、なんか自分の思っていた何倍もの人に正確に伝わった感じがしたんですよね。それがすごく嬉しかったし、それに励まされて。「ああ、自分の思いを伝えるっていう。言葉にできないような思いみたいなのを伝えるっていうのはすごく音楽っていいんじゃないかな」と思って。それをやろうと思って、『創造』っていう曲もそういう気持ちで作ったんですよね。

「これが自分にとってのものづくりの思いです。ものづくりというのは自分にとってこれです」っていう。で、今回は「自分にとって恋愛というものはこれです」っていう感じなんですよ。だから、でもエピソードは違うんだけど。「こういう思いです」っていう歌なんだけど、これはなんとなく「うちキュン」っていうから、家の中でキュンとするのは、なんか2人が正座しながらチューとかしてたらキュンとするなと思って。なんか、そういう風に書きました。

「まだ やだ 遠く 脆い」

あと、「まだ やだ 遠く 脆い」っていうのは、これはね、わかんないんです。自分でなんでこれを書いたのか。その、たまにラジオで話すけど、歌の中に……僕がいつも作る歌の中にかならず1ヶ所ぐらい、いつもあるんだけど。「なんでこの歌詞にしたいのか、わからないけど、この歌詞にしたい」っていうところがあるんですよ。で、これ、いわゆるメロディーを作った時からこうだったの。「まだ やだ」だったの(笑)。で、いつも全体の音ができてから歌詞を作るんだけど、ここだけはもう最初から「まだ やだ」だったんですよね。

でも「まだ やだ」ってなっても、いつも歌詞を書く時には変わるんだけど。でも、「これがここじゃないとダメだわ。この歌詞じゃないとダメだわ」って感じだったので。だから、わかんないです。でも、昨日からその感想をいろいろ見ていたら、ここにグッと来てくれてる人がすごい多くて。「ああ、よかった。このままにしてよかった」っていう。なんか頭で、左脳で整理しなくてよかったっていうのはすごく思いますね。そんな感じでしょうか? それでは引き続き、リリースしてますからたくさん聞いて、感想など、質問などもね。来週とかも読めたら読みますから、ぜひ送ってきてください。

(中略)

(星野源)そんなわけでですね『不思議』の感想もね、たくさん来ております。ありがとうございます。「ドラマ1話で聞いてから、早くフルで聞きたくて、人生で初めて配信されている楽曲を買いました。一言では言い表せませんが、あえて言うなら『買う決意をした私、偉い』です。それくらい最高の曲でした。また『遺らぬ言葉の中に』で明るくなくなったと思えば、すぐサビに戻ってそのまま転調をするので、驚きの連続で、聞くのが本当に楽しいです。聞くたびに発見があって、毎回わくわくしながら聞いています。これからたくさんたくさん聞いていきます」。

ええとね、転調はしてないんだよ、あれ。最後のサビ(笑)。そう。なんかね、自分が作っている時に「こうしたい」という気持ちだけで出来上がっているので。流れとかが。だから、その専門家の人からすると、転調しているように聞こえる時とかがあったりとかするらしいんですよ。で、転調をしていたりする時があるらしいんだけど、自分はどっちでもいいので。転調をしていても、していなくてもどっちでもいいっていう感じなんで。それで作って。で、大サビが来た後に最後のサビの感じが転調をした感じがするなと思ったけど、実際は転調をしていなくて。なんかそれは、楽しいなって思ってます。はい(笑)。「転調をした」と思ってくれるってね、面白いよね。

東京都の方。「新曲『不思議』配信リリースおめでとうございます。ダウンロードしてイヤホンで、スピーカーで、何度も何度も繰り返し聞いております。今日、ラジオ番組でハマ・オカモトさんが『通常、ベースは四弦だが、この曲には五絃ベースが合うと思ってベースを取り寄せるところから始めた。弾いたことがなかったから、小学生ぶりぐらいに一生懸命練習した』とお話されていました。五絃ベースはより低い音が奏でられるとのこと。この曲は五絃ベースにしようと提案したのは星野さんからでしょうか?」という。ありがとうございます。

そうですね。ハマくんに今回、ベースを弾いてもらってるんですけど。今回の全体のキーというか、一番最初の音もですね、Eフラットなんですよ。で、Eフラットって四弦ベースの一番低い音ってEなんですけども。だからチューニングを低くすればEフラットにもできるんだけど、それだと「ベイーン」ってなっちゃう。で、僕はキーボードに作っていて。ギターで作ってると、Eフラットに曲もあるにはあるんだけど、ギターを全部チューニングを半音下げて作ったりするんですね。で、それは『くだらないの中に』とかはそうなんですけど。

今回はそれよりも低い音。いわゆる四弦ベースの通常の一番低い音よりも低い音が出てくるし。しかもそれが開放弦で「バイーン」ってやるよりも、指で押さえた方がいいタイプの曲なので。で、それをハマくんが提案してくれて。「五絃ベースとかの方がいいと思います」と言ってくれて。「ああ、じゃあぜひぜひ」「でも、全然普段は弾いてないから……じゃあ、これをデビューにしましょう」ってなって。なので、すごい素敵でした。はい。そうなんです。

ああ、ジャケットの話ね。「『不思議』、仕事の行き帰りに鬼リピしております。ところで、『不思議』なジャケットのビジュアル、色気がダダ漏れじゃないですか。こんなコンセプトでとか、あったのでしょうか? ぜひ、お話を聞かせてください」。ええとですね、今回はいろんなのができるなと思ったんだけど、なんか写真の方がいいなと思って。なんとなく、イラストとかって、ちょっとラブソングとかだと結構イメージできるなとか思った時に、というよりは今回は自分にとっての愛や恋とか恋愛、キュンというものを表現したっていう感じなんで。なんか、その自分の写真があった方がいいんじゃないかと思って。それで写真を撮って。

でも、デザインをやってもらっている石塚さんっていう人がですね、一言で言うとめちゃめちゃ天才なんですけど。『YELLOW MAGAZINE』とかも……あっ、できました。『YELLOW MAGAZINE』が。素晴らしいです! いやー、ちょっとすげえな。これは、ちょっとこの値段はすごいよ。安いよ。なので……これですよ。この昔の10年間の特典、ヤバいよね、これ! 俺と民生さんが一緒に映っているやつとかあるじゃん。懐かしい! まあいいや(笑)。そういうのを全部、デザインしてくれている人で。

で、その人があの写真でこれを作ってくれたんです。で、周りがちょっと重なっているっていうような。この写真を見た時にめちゃくちゃびっくりして。「えっ、これ? すげえな!」と思って。だから、どの写真が使われるかとか、全然分かってなかったんですけど。「これがいいと思うんです」ってなって。だから、この写真を撮った時のことを全く覚えてないんですよね。だから、逆にとてもナチュラルなんじゃないかと。で、その写真ね。

頬杖をついた写真のジャケット

(星野源)だから僕、その頬杖をついてるっていうか、なんかね、ほっぺたをグイッて自分であげている感じ。それがなんか、ちょっと見た時に歌詞の中でね、「“好き”を持ったことで 仮の笑みで 日々を踏みしめて 歩けるようにさ」っていうのがあるんですけども。それがなんか、好きっていう感情だったり……その「“好き”を持つ」っていうのがなんか自分にとってすごいしっくり来るんですけども。胸のあたりでこう、持つっていう。なんか、それを持つと、本当にクソみたいな世の中でも仮の笑顔で……「嘘の笑顔」って言ってもいいけども。最初は「仮の面(ツラ)で」だったんだけども。で、「仮面」っていう。

なんだけども、「ツラで」はさすがに音感上、微妙だなと思って「仮の笑みで」にしたんだけども。「笑み」の方が効くなと思ったので「笑み」にしたんですけども。なんか、そういう部分で、そういうことが自分にもあるなと思ったんで。それをこう、「仮の笑みを作ろうと手でしている」っていう風にも捉えられるなと思って。そういう意図じゃ1ミリもないんですけども。たぶん撮った時はボーッとしているんだと思うんですけども。

なので、自分だとちょっと恥ずかしかったんで。このアップは。「みんな、これは大丈夫なの?」って確認して「大丈夫です」って言われて。「じゃあ、信頼します」っつってOKをさせていただきました。そんなジャケットでございます。

<書き起こしおわり>

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