宇多丸『鬼滅の刃』履修状況を語る

宇多丸『鬼滅の刃』履修状況を語る アフター6ジャンクション

宇多丸さんが2020年10月27日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でムービーウォッチメン課題作品『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の映画評に向けての『鬼滅の刃』履修状況を話していました。

(宇多丸)はい(笑)。火曜日特有のギリギリまで駄話をしてしまいました。今、『鬼滅』を履修中でございまして。いろいろ……今はテレビアニメ版を見ていて。面白いです。で、まだ途中なんですけども。昨日、帰って。でも22話はあるわけじゃない? 単純に言っても10何時間ぐらいはかかるので、夜な夜な見ていたんですけども……その評判の19話なるものがあるじゃないですか。

(宇垣美里)ああ、うん。

(宇多丸)なんだけど……すいません。だからその18、19あたりでもう意識が朦朧としてきて。全然朝っていうか、もう8時とかだったんですけどもね。もちろん、他のこともやりながらだったんで8時ぐらいになっていて。その肝心の19話が一番うつらうつらとしちゃっていたんで、だから今日帰ったら18からもう1回、復習し直します。

(宇垣美里)でも本当にやっぱり絵がきれいですよ。「ああ、こういう風に表現するんだ、この呼吸を」っていう。

(宇多丸)ちなみに漫画の方も並行して読んでいるんで。漫画は逆に……すいませんね。今週金曜日に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の映画評をする予定なので。あれはね、漫画版で言えば全然最初の方というか。5巻目とか6巻目とか、そのぐらいなんでしょう? それで僕は漫画の方がね、うーん。4巻目とかなんですよね。まあ読みますけど。だから「これ、23巻で終わるの?」っていう。そこがすごい興味津々で。

(宇垣美里)だからやろうと思えばどんどん伸ばせると思うんですよ。それをここで終わらせたのはすごいって。まだ私、単行本派なので。最終巻が出ていないから最終話までは読んでないんですけども。気になる!

(宇多丸)気になるという。まあ私もドスンとね、着々と履修を進めていて。他のことが一切できなくなったという(笑)。他のことをやる時間が全くなくなったという(笑)。

(宇垣美里)だいたいのことは「全集中」って言いながらやればいいですから。

(宇多丸)ああ、「全集中」。ようやくだからそれも……先週の自分がいかに無知な状態だったかっていうのはわかりましたよ。「ああ、俺はすごいトンチンカンなことを言っていたんだな」っていうのは改めてよくわかりましたね。

(宇垣美里)フフフ、よかった(笑)。

(宇多丸)でもね、最初に何も知らない状態で劇場版を見に行ったんですけども。昨日も荻上チキさんが見に行ったっていう話をしていましたけども。何も知らずに行ってもまあ、それは分かりますよ。

(宇垣美里)ああ、本当ですか? よかった。

何も知らずに劇場版を見ても分かる

(宇多丸)だってめちゃめちゃ全部を説明するじゃん?

(宇垣美里)してくれるし、内容としても簡単で。殺したら死ぬんで。

(宇多丸)そう。ルールがシンプル。あと組織構造がシンプル。ゆえにとてもわかりやすく、楽しく見ております。あとアニメ版は普通にこんだけギャグの要素が……元の漫画版もそうですけども。

(宇垣美里)善逸がね。

(宇多丸)イメージと全然違った。「こんなに笑わせてくれるんだ」って。

(宇垣美里)だから今回、本誌かな? それでやっていたキャラクター投票で善逸が1位になっていて。

(宇多丸)ああ、でしょうね、そりゃあ。そりゃ、そうでしょう。

(宇垣美里)好きなんだけど……「善逸が1位なんだ! いや、好きだけど……」って。

(宇多丸)彼は一番人間的でもあるじゃない? 弱音を吐いたりとかね、逃げ出したり。だから俺……そうなんだ。その人気投票も。そりゃそうだ。わかった、納得。

(宇垣美里)たしかに炭治郎はすごすぎるよ。

(宇多丸)これ、映画評の中身に触れないように言いますけども。やっぱり主人公というのはある種の狂人というか。そういうところ、あるじゃないですか。

(宇垣美里)ちょっとメンタリティーが強すぎますよ。「長男だから大丈夫」っていうことだったらしいですけど。

(宇多丸)「長男だから大丈夫」とか。あと、徹底した徹底したいい人ぶり……でも、それってすごくよくて。ああ、ごめんなさいね。ちょっと踏み込んでるのかな? MCUの一連の『インフィニティ・ウォー』とかでも「やっぱりヒーローがその正しさゆえに勝つみたいなところはどこかにあってほしいよね」って。力自慢とか……単なる単なる運で勝つみたいなのがアクション映画って実は多いんだよ。「これって単に主人公が勝ったのも、ここでこっちに傾いたからじゃん?」とか。

でも、そういうんじゃなくて、なんか主人公が勝つその一種の原理みたいなものはほしいなと思っていて。そこはすごいちゃんとあれだから、いいですよね。まあまあちょっと……とか言いつつも「えっ、あれってどういうこと?」みたいなのを『TENET』じゃないですけども(笑)。「これ、どういうこと?」っていうのも……でも、やっぱりね、そこはそれっていうか。聞いてもあんまり明快な答えが返ってこないですね。「えっ、なんでこのイノシシの少年。イノシシの頭をかぶっている件を周りの人がさして驚いていないのは……?」って。

(宇垣美里)一番最初に善逸が驚いていたから、もう終わったの。

(宇多丸)俺、何も知らないで見ていたから。電車の中でゴトンゴトンって。それで入っていくじゃない? でも一切、そこに無反応っていう。ここはどういう……?(笑)。

(宇垣美里)「これはどんな世界線なの?」って(笑)。

(宇多丸)「これはどういうリアリティーラインなの?」みたいなのは思ったけども。でも、中はあんなに美しい顔をしていて。よくできているなと。

(宇垣美里)そうなんですよ。かっこいいんだけど、お腹はバキバキみたいな。

(宇多丸)だから楽しんでますよ。

(宇垣美里)よかったー!

(宇多丸)だからこういうね、最初はブースカ言ってますけども、履修したらしたで楽しいっていうのは毎回のことなんですよ。『けいおん!』然り、『ガルパン』然り。『まどマギ』然りということで。

(宇垣美里)アフター!

(宇多丸)あ、シックス!

(宇垣・宇多丸)ジャンクション!

(宇多丸)ああ、びっくりした!

(中略)

(宇多丸)でも、皆さんがおっしゃることですけど。『鬼滅の刃』。漫画もアニメも割と、意外と笑わせてくれるっていうか。イメージしていたよりもギャグが多くて、すごく楽しくていいんですが……同時にやっぱり皆さんがおっしゃる通り、バイオレンスがなかなか。で、漫画の方はポップな絵柄で。

(宇垣美里)白黒ですしね。

(宇多丸)白黒だし、たとえばその人体破壊のところもそんなにねちっこく描いたりはしてないというか。1コマで済ませていたりするんだけど。やっぱりアニメだと、その動きなり描写が結構、ある種のね見せ物として広げられてるから。あれははっきり深夜アニメっていうか。ゴールデンタイム、飯時にはこれは流せないよねっていう絵面が結構出ますよね。あれ、だから小学生とか……。

(宇垣美里)小学生の方にすごく人気みたいだから。

(宇多丸)俺は小学校の時には怖くて見れなかったっていうやつかもしれない。

(宇垣美里)私、小学生の時に『ジャングル大帝』を見て泣きましたからね。

(宇多丸)『ジャングル大帝』のどこでですか?

(宇垣美里)お父さんが「うおおーっ!」って。他人の人に「うわーっ!」ってするところで「わあっ!」って泣いちゃったっていう。

(宇多丸)ライオンは怖いですからね。

(宇垣美里)ライオンは怖かった(笑)。

(宇多丸)あんなレオなんていう名前で眉毛までついてますけども。あれは猛獣ですからね。ああいうのと直で渡り合うのはジャン・ポール・ベルモンドだけでいいっていう。そういう特集を昨日しましたけどもね。そう。だから結構……この間もさ、シアター一期一会かな? 小学校1年生だっけ? それで見に行ってるっていうのがあって。その見せる方針……バイオレントな描写とかもご家族で話し合うっていうご家族で。「ああ、それは素晴らしいですね」と思ったけども。やっぱりちょっとね、エグいものを見るみたいなのもそれはいいんだけど。「これはなかなかですよ」って思いましたね。

(宇垣美里)たしかに。ただまあ、その心の情景もすごく描いているというか。モノローグをたくさん、しっかりしているから。そこは見やすいところもあるかもしれない。

説明は「丁寧」

(宇多丸)説明は丁寧ですね。これは「丁寧」と言わせていただきます。とにかくあのね、「今、俺はケガをしているからうまく動けない」みたいなことをね。「それはだいぶ前から見ているとわかるのだが……」っていうね(笑)。だから、テレビアニメ的な情報量として適切かもしれませんね。あとはだから忠実にやるという。たしかにその「忠実にやる」という部分でね、そこはだからたとえば劇場版は……ああ、もうこれ、評になっちゃってますね。

(宇垣美里)あら!

(宇多丸)それが劇場版になる時にひとつの枷になっている部分もあるかな、とは思いましたけどね。

(宇垣美里)ただ一方で、やっぱり原作のファンの方々がたくさんいらっしゃるから。

(宇多丸)でも、いいアレンジもできるんじゃん?って思ったんですよね。その電車が舞台っていうのはすごく映画的っていうかね。あ、もうダメだ。始まっている。やめましょう。

(宇垣美里)これは金曜日ですね。金曜日に続きは聞きましょう。

(宇多丸)でも、それぐらいいろいろと気持ちを入れて、入れ込んで楽しんでおります。

(宇垣美里)ああ、よかったー! そう。これだけ皆さん、見ていたらなんかある種の共通言語になっていくと思うので。

(宇多丸)たしかに、それはそうだ。だからこれは見ておいてよかったです。

(宇垣美里)私、まだ見てないから。早く見に行こう。

<書き起こしおわり>

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