町山智浩『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』を語る

町山智浩『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』を語る たまむすび

町山智浩さんが2020年10月6日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』を紹介していました。

(町山智浩)で、もう1本の映画なんですが、それが『世界でいちばん貧しい大統領』という映画なんですが……。これもね、テレビ局の人が作ったんですけど。フジテレビのディレクターの田部井さんという人が作ったんですが。これ、ムヒカ大統領っていう人がね、2012年に国連でのスピーチですごく注目を集めたのって覚えていらっしゃいます?

(赤江珠緒)はい。覚えてます。

(町山智浩)それはだから「みんな豊かになろうと思ってるけども、豊かになろうとしたら世界はめちゃくちゃになっちゃうんです。インド人の人たちがみんなイギリス人のように豊かになろうとしたら、世界を破滅しちゃうんです」というような演説だったんですね。つまり、彼ら……インド人全部が同じぐらいの消費をして、自動車に乗ってエネルギーを使って、物を捨てていったら、世界は破滅しちゃいますよ。だから我々は生きる目的を『豊かになる』。つまり物をたくさん持つ、消費するっていうことじゃなくて『幸せになる』ということを目指しましょう」っていう演説をしたんですよね。

「幸せは豊かになるということとは違うんです」という風な演説をして。日本でも絵本が出たりした人なんですけども。で、この人をずっとその田部井さんが追っかけていったんですね。で、ウルグアイの自宅まで行ったんですけど、まずこの自宅というのは本当にただの農家なんですよ。

(赤江珠緒)うん。

幸せは豊かになるということとは違う

(町山智浩)それで彼は何をしているかというと、お花を作ってるんですね。温室で。それはね、大統領になる前からずっとお花を作っていたらしいんですけども。で、彼が日本の取材に応じたのは彼へそのお花作りを教えたのが日本人の移民の人たちだったんです。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)たまたま彼の子供の頃から近くに住んでたんで、お花に興味を持って。お花を作る大統領ってすごい素敵じゃないですか、それ。で、その給料とか大統領としてもらった部分の8割は、もう人にあげちゃって。それを貧しい人たちの住宅造りのお金にしてるんですよ。ムヒカ大統領は。さっき言ったみたいにその1000万円の給料とか、「給料を毎月10万円上げろ」とか言ってインチキしてる人たちとこのムヒカさんの違い。

町山智浩『はりぼて』を語る
町山智浩さんが2020年10月6日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『はりぼて』について話していました。 (町山智浩)でね、今日は実は今週末に公開される映画で『わたしは金正男を殺してない』というドキュメンタリー映画……イメージフォー...

(赤江珠緒)そうですね。うん。

(山里亮太)真逆だ……。

(町山智浩)真逆でしょう? で、ムヒカさんは「私は人を幸せにするために大統領になったんだ。お金儲けのためになったんじゃないから」っていうことで全部、お金を人にみんなあげちゃうんですよ。で、そうするとただの田舎ののんびりした人が大統領になったんだと思うかもしれないけど、それも間違いで。この映画の中で分かるのは、彼はウルグアイには軍事政権があったんですけど。それと戦って12年間、投獄されてた人なんですよ。この人、反政府ゲリラだったんですよ。軍事独裁政権に対する、それで、銃撃戦もしてます。

(赤江珠緒)ああ、そうなんですね。

(町山智浩)はい。国民を解放するために、もう激しい戦闘をしてきた戦士なんですよ。ムヒカさんっていうのは。

(赤江珠緒)穏やかなおじいさんみたいなイメージでしたけども。

(町山智浩)しかも奥さんも一緒の戦士で。2人で戦ったんですよ。で、軍事政権に12年間、刑務所に入れられて。そこで12年間、拷問され続けてきたんです。この人は。そういう人が今、こういう境地に達しているということがすごく大事なことだと思うんですね。で、この中でムヒカさんが言うのは、「日本ではみんな投票に行かないんだって?」って言うんですよ。ムヒカさんが大統領になった時の2009年の投票率は89パーセントです。日本は40とかになっちゃったりしているんですよね。ひどい時はね。50パーセントを切ってね。だからもう、みんなが見てるんですよ。ムヒカさんを。国民中が。

(赤江珠緒)やっぱり政治をやる人、託す人にもっと興味を持たないとダメですね。

(町山智浩)興味を持たないととんでもない議員だらけになっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)そうですね。ムヒカさんの名言がいろいろある中で私、すごい好きなのが、「本当のリーダーは自分をはるかに超える人材を残す人だ」って仰っていて。だから割と権力を持つと、「自分が、自分が……」ってずっと受け継いでいこうみたいな傾向ってあるんですけど。そうじゃなくて、自分よりもはるかに能力を持った人を育てたり、そういう後継者を作る人が本当のリーダーだって仰っていて。「ああ、それは本当にそうだな」って。

自分が死んだ後の世界を想像する

(町山智浩)この中でも彼が言ってるんですけども。「自分が死んだ後の世界、社会っていうものを想像する人じゃなければ政治家になっちゃいけないんだ。その後を考えるものなんだ」と言っていますね。はい。でも今、目先のお金儲けばっかりで政治家になってる人って本当に多いという事実をほとんどみんな知らないと思います。みんな、区議会でどういう人がやってるのかとか、ちょっと注目した方がいいです。

(赤江珠緒)まずその現状を知るという意味でもね、この映画を見る価値がありますね。

<書き起こしおわり>

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