石山蓮華さんとでか美ちゃんさんが2024年4月16日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『ジュリアン』について話していました。
(石山蓮華)先週はフランスの共同親権を描いた『ジュリアン』という映画をご紹介いただきました。私、石山もでか美ちゃんも見てきました。
(町山智浩)怖かったでしょう?
(石山蓮華)怖かったですねー! 本当に……たとえば、すごく細かいところで実感を。私はDVを受けた経験はないんですけれど、でも実際、こういうことなんだっていうことをすごく感じる映画で。たとえば、その夫が妻の手を握るシーンがあるんですけど。なんか、やばい人ってこういうふうな手の握り方をしてくるんだよなっていうのを思い出したりとか、しました。
(でか美ちゃん)なんかぞっとする芝居力みたいなものに圧倒されていた90分だったんですけど。なんか、そのジュリアンという息子が「板挟み」って言ったら妻の方が悪く聞こえちゃうかもしれないけど。結果的にそうなってしまっているという話じゃないですか。なんかね、そのDVをしている父親のなにがズルいって、もうはっきりと物を言えたり、物事の区別とか判別がつきそうな娘側にはそんなに行ってないんですよね。小さな子供からなんとか、その子の母親……自分の妻の情報を聞き出そうとしているという、「こういう加害者って、そういうずる賢さがあるよね」っていうのもすごい思ったし。なんか、映画の内容にどこまで踏み込んでいいのかわからないですけど。私はその最後のシーンも、なんかまあ一段落感はあるんですよ。とりあえず一段落っていう感じではあったけど、全く安心できないっていうか。ここからがジュリアン一家にとっての本当の意味でのまたつらい課題が始まるっていう。
(町山智浩)そうなんですよね。終わってないですよね。あれって。あと、最初に奥さんの家に入ってきて暴力を振るうのかと思ったら、なんか「ごめんなさい!」みたいなことを言って。あの泣き落としにかかるところも、怖かったですね。
(石山蓮華)怖かったですね……。
(町山智浩)「僕が悪いんです!」とか言ったりするんですけど、その時だけなんですよね。
(でか美ちゃん)ねえ。「俺は変わったんだ」とか、そういう風なシーンもあったけど。仮に本当にね、改心して変わってとか。また別のパートナーには絶対そういうことはしないとか、そういう方ももしかしたらというか、まあいるとは思うんですけども。でも、された側は相手が改心してようがしてまいが、一生その「された」という事実は揺らがないから。なんか、そういう視点って加害者側は抜けるのかな?って思って、怖かったですね。
(町山智浩)怖いんですけども。フランスは共同親権の先進国ではあるんですけど。これ、警察の動きが早いんですよ。
(石山蓮華)ねえ。早かったですね。
動きが早いフランスの警察
(町山智浩)警察がね、パリ警察の児童虐待部署を描いた映画もあるぐらいでですね。もうとにかく、児童が虐待されてるとか、奥さんが虐待されてるという時に警察はすごいスピードで突っ込んでくるんですよ。フランスは。それがあるから、共同親権も何とかやっているんですね。それでも、やっぱり事故は起こるわけですけれども。この映画みたいに。で、アメリカでは共同親権の審査がものすごく厳しいです。本当にもう、この間も言いましたがブラッド・ピット。一時的には共同親権を取れそうになったけれども結局、取れませんでしたね。ブラッド・ピットでさえ、ダメなんですよ?
(でか美ちゃん)だからそれだけね、フランスやアメリカは厳しく審査があったり、警察の動きが早いっていうのがありきの制度ではあるけれども。日本はいろんなことがなんにも精査されないまま、可決されちゃいましたからね。
(町山智浩)共同親権がね。この『ジュリアン』でも出てきて、ジュリアン自身、子供自身が親をどう思ってるか?ってことをちゃんと家裁でね、証拠として扱ってましたし。ブラッド・ピットが共同親権を取れないのも子供たちが「嫌だ」って言ったんですよ。で、「子供たちの意思を一番に尊重する」という法律の制度がアメリカやフランスではできているんですけども。日本はそんなこと、なにもやってないんですよ?
(石山蓮華)しかも、養育費もしっかり取れるのか、取れないのかわからないような状況でこの共同親権を運用していこうみたいな流れに今、なってるのは本当に私は「どうして? どうして?」っていう。
(でか美ちゃん)これ、「反対しかないだろう」って思いますし。その数値がイコールじゃないと思うけど。そもそも75%ぐらいの人が養育費を未払いのままっていうのもあるから。そういう、養育費も払わずにいるみたいな元夫たちが「俺にも親権があるんだ」って言うのかと思うと……。
(町山智浩)アメリカは強制的な養育費の支払い制度があるんで。俺みたいに別に離婚していない人でも聞かれるぐらいですから。「どこかに養育費支払いの義務があるんじゃないですか?」って税理士とかに必ず聞かれるんですよ。日本はそういうのも何もやらないままね、共同親権だけ通しちゃうっていう。それでいて、同性婚とかね、選択的夫婦別姓とか、なにがなんでも日本の国会は通さないじゃないですか。
(でか美ちゃん)なんかとにかく、女性を家に閉じ込めようとしているのかな?って思っちゃいますよね。個人的には。
(町山智浩)そうなんですよ。とにかく家父長制を維持するためだったら、どんなことでもするというのが日本の体制で。とんでもないんですけど。
(でか美ちゃん)なんか男性側が親権取りづらいのは私、個人的にはそれはそれですごい問題だなって思うから。なんか別の、その共同親権とかじゃない方法があるだろうとは思うんですけどね。なんか女性にばっかり親権が行っちゃう問題もすごいわかるはわかるんで。
(町山智浩)そうですけどね。まあ、これだととにかく審査するのが大変になっちゃうんですよ。ところが今、日本の家庭裁判所って人手不足で全く機能していないじゃないですか。それで共同親権の運用をしたら、たぶん審査がまともにできないんですよ。家庭裁判所は。もう何もかもがおかしいと思いますね。
審査する家庭裁判所のリソースが足りない
(石山蓮華)人の命に関わってくることをこんなにスッスッと決められていいんだろうか?っていうのを本当にこの『ジュリアン』を見て考えました。
(町山智浩)ですよね。フランスではこれをずっとやってるけど、それでもこうなんだっていうことなんでね。だから最初に家裁の判事さん。裁判官から始まるっていうのも重要で。裁判官の彼女はいくつもある裁判のひとつとしてしか、やってないんですよ。やっぱり。だから、そんなに真剣にやれないんですね。数がいっぱいあるから。それででも、ものすごくその夫婦や子供の運命が決まってしまうっていうことも描いている映画でしたね。この『ジュリアン』っていう映画は。
(石山蓮華)『ジュリアン』、Amazon Prime Videoで配信中ですので。まだの方ぜひぜひご覧ください。
<書き起こしおわり>