DJ松永とR-指定 竹原ピストルのライブの衝撃を語る

DJ松永とR-指定 竹原ピストルのライブの衝撃を語る サウンドクリエイターズ・ファイル

R-指定さんが2020年9月13日放送のNHK FM『サウンドクリエイターズ・ファイル』の中で竹原ピストルさんについてトーク。はじめて見た竹原ピストルさんのライブで食らいすぎた話などをしていました。

(R-指定)続いて松永さんのライブファイルを。

(DJ松永)そうっすね。じゃあ、初めてライブを見た時の話をしようと思いますけど。も先週俺、高校のサッカー部をやめてバイトを始めてターンテーブルを買ったところで終わったと思うんだけど。

(R-指定)そうですね。

(DJ松永)そこから夏休みに入るんですよ。夏休みに入って、やっぱりレコードとか欲しいから、バイトしなきゃと思っていたら、中学校時代の友達が「おい、クニ。お前、バイト。派遣の外仕事のバイトがあるから、やる?」って言われて。それ、地元の不良の2個上ぐらいの先輩が仕切っていて。斡旋して。仲間とか後輩を呼んで。それを指示して。「○○の現場に行って」っていうような、不良ネットワークの中で存在した派遣のバイトだったんだですよ。それが来て。結構やんちゃなやつから言われたから「うわっ、怖え……」って思って。でも、金もねえし。しかも日給がよかったんですよ。

(R-指定)ああ、なるほど。

(DJ松永)だから、ドキドキしながらも。レコードもほしいし。「受けるわ」って言って。それですぐ、それを仕切っている2個上のとある先輩から電話がかかってきて。「数日後に現場がある。朝5時ぐらいに○○のツタヤに作業服持ってお前は行け。そしたら俺のツレみたいなのが車で迎えに行くから。それで2人で隣町の柏崎まで現場に行って」って言われて。「ああ、分かりました」って言って。

それで当日、朝5時に作業着持って待ってたら……その先輩の仲間だからさ、怖い人が来るかもって思ってすげえドキドキしたんだよ。「怖っ!」って思って。それで車で来て。乗って。「はじめまして。松永といいます」「おう、よろしく」って車の中に乗るんだけども。その初めての怖い人と密室で1時間ぐらい車に揺られるの。俺、すげえ怖くて……。

(R-指定)キツッ!

(DJ松永)「やべえ、どうにか逆撫でしないようにしないと……でも、黙っていても、それはそれでよくないな」って思って。「やべえ……これ、到着した時には気疲れで現場で仕事できるかわからないな」って思ってドキドキしながらふと、後部座席を見たらレコードが散乱していたんだよね。「えっ?」って思って。俺も反射的に「えっ? これ、レコードっすか?」って言ったら「おう、お前、わかるの?」って言われて。

「お前、DJやってんの?」「俺、DJやってます」「俺、レゲエのセレクターをやってるんだよ」って。「えっ、マジっすか!っていうか、セレクターってなんすか?」って聞いて。で、その「セレクター」って要は、ヒップホップで言うところにDJってレゲエではセレクターって言うんですよ。

(R-指定)これ、ややこしいんですけども。ヒップホップでは「DJ」。レゲエでは「セレクター」。それでヒップホップでは「ラッパー」の立ち位置がレゲエでは「Deejay(ディージェイ)」っていうんですよ。あっちは歌い手のことをDeejayっていうんですよね。

(DJ松永)それで俺、はじめて自分以外にDJをしている人にそこで会ったんだよ。で、俺は友達にヒップホップを好きなやつもいなかったし、もちろんターンテーブルなんて買っているやつも1人もいなかったんですよ。だから、向こう側の世界だと思っていた人が目の前に現れて。俺、すげえテンションが上って。で、だからいろんなことを教えてもらってさ。なんか、それこそ「あそこの店がいい」とか。「隣町にめちゃめちゃかっこいいヒップホップの先輩がいるから。今度紹介してやる」とかいろんなことを教えてもらって。すげえその道中の車が楽しくて。

(R-指定)最高やん!

はじめて出会ったセレクターの先輩

(DJ松永)でも結局、そのバイトも年齢の問題でね、クビになっちゃったんだけど。若かったから。本当は働いちゃダメだったみたいで。で、クビになって。でもそこから……その先輩はカナイくんっていうんだけども。そのカナイくんにひたすらその後ずっと世話になって。いろんなところに遊びに連れて行ってもらって。

(R-指定)へー。じゃあカナイくんとつるむようになるんや。

(DJ松永)本当に学校サボッてカナイくんと遊んだりとかめちゃくちゃしていて。で、俺、クラブに行ったことないんすよ」って。「じゃあ、今度ヤバいイベントがあるから。俺の先輩がやっているイベントがあるからお前、連れて行ってやるよ」っていうことで連れて行ってもらって。長岡の音楽食堂っていう、今はなくなっちゃったけど。音楽食堂っていうクラブがあって。そこに連れて行ってもらって。もうはじめてのクラブって結構いかついよな?

(R-指定)いや、怖いよ。正直、最初は。

(DJ松永)そう。それでやっぱりいる人種もさ、はじめて出会うような人たちばっかりだしさ。でっけえ音で、しかも超煙たいし。で、その時はLAで活動している日本人ラッパーと日本人DJのユニットみたいな。イエロースターっていう人たちがゲストで。そんなに有名じゃないと思うんだけども、当時ゲストで来ていて。でも、お客さんがパンパンでさ、空調とかも効かなくなっていて。もう超不快指数マックス。いる人も怖い。謎の汗だくのダンサー。タバコの煙もムンムンとかで。

「うわ、超怖い……」ってなって。だから最初のクラブは俺、もう入り口の隅の椅子にずっと朝まで座っていたんだけども。もう全く楽しめず、ただ緊張しているだけで終わったんだけども。でもそこから、カナイくんにまたいろんなところに連れて行ってもらって。いろんな世界を見て、知見を広げてもらったんだけども。はじめて見たのはその謎のイエロースターっていうグループで。しかも俺、座っていたから見れてないんだよね。

(R-指定)ああ、音だけが聞こえる?

(DJ松永)音だけが聞こえて。だからはじめてのライブは実はちゃんと見れていなくて。でも、そこからね、俺はDJを始める前にライブに運んだりっていうことは実はあんまりしてこなくて。コンサートとかもね。結構プレイヤーとして現場でライブを見るみたいなことがすごい多かったんだけれども。そんな中で最も食らったのが……割と最近になっちゃうけど。最近って言っても3、4年前かな? まあ厳密に言うとラッパーではない。でも、ほぼラッパーだと思っている竹原ピストルさんのライブ。

(R-指定)あれはラッパーよ! あれはラッパーなんすよ、もう。竹原さんは。

(DJ松永)あの人が俺が人生で見たライブの中で最もヤバかった人の1人かな?

(R-指定)めちゃめちゃ食らったもんな。2人で……というか、一緒のイベントやったんよね。竹原さんと。で、当然名前も知っていたし、俺らCreepy Nutsとしては超楽しみにしてて。で、俺らの出番が終わった後に竹原さんが出てきて。で、ライブを2人で横で並んで見てたんですけど。ライブの途中で、俺も「すげえ!」ってめっちゃ感動してたんですけど。横でなんか「ズッ、ズズッ……」って。なんか鼻をすする音がして。「うん?」って横を見たら松永さんがボロボロ泣いていて。「こいつ、泣いてる!」って。いや、感動するのはわかるけど、こんなにあからさまに泣くか?っていう。でも、そんぐらい感動したっていう。

(DJ松永)いや、あれはすごかった。で、やっぱり同じ日のライブだったんだけども。正直、俺らもライブしたよな? で、結構盛り上げた自信があったんだけども。最後に竹原ピストルさんを見て、そのライブに食らいすぎて。その時、それは福岡のイベントだったんだよね。福岡の夜、2人で茫然自失で1時間くらい、無言で徘徊したんだよ。消化しきれなくて。竹原さんに食らいすぎて。だからどうしたらいいかわからないからとりあえず歩いて発散させないと……っていうことで2人で無言で歩き回って。

(R-指定)街を歩き回ったんですよ。

(DJ松永)それで1時間後ぐらいに「はぁー……あれ、やばかったよな?」っていう(笑)。堰を切ったように話しはじめて。「いや、あれはヤバい、ヤバい!」って。

(R-指定)いや、ホンマにすごかった。言葉ってあんだけ表現ができるんやと思ったな。

(DJ松永)というか、R-指定がそう言うのにびっくりしたよね。本当に言葉のスペシャリストのRさんが「日本語っておもろいわ」って竹原さんのライブを見た後に言ったんだよね。

(R-指定)そうなんですよ。ホンマに思ったんですよ。

(DJ松永)で、今から聞いてもらう曲は竹原さんがそのライブで1曲目にやった最高の曲。『ドサ回り数え歌』。

竹原ピストル『ドサ回り数え歌』

(DJ松永)お送りしたのは竹原ピストルで『ドサ回り数え歌』でした。

(R-指定)いやー、最高ですね。

(DJ松永)最高だわ。

(R-指定)「一弦、二弦が切れるのは……」っていう。「弦」でずっと数え歌をしていって……っていうね。

(DJ松永)ねえ。なんだろうな? いろんな曲を今までいっぱい、世の中で散々いろんなアーティストがいっぱい曲を作ってさ。その曲の1曲1曲の主張ってさ、そんな超たくさん種類があるわけじゃないじゃないですか。つまりなんか結局、「言いたいことをどう言うか? どう自分の言葉で、どう自分の人生で伝えていくか?」みたいな勝負になってくるわけじゃないですか。だからさ、そこは竹原さん、群を抜いているよね。「ああ、こんな伝え方でこう言うの? 当たり前の知っていることをこんな言い方をされたら、それは響くよ!」みたいな。

(R-指定)せやねん。俺がやっぱりラッパーやなって思ったのは、上手い言い回しもそうっすけど、めちゃくちゃやっぱり韻を踏んでるんですよ。だから「一弦、二弦が切れるのは……」っていう。それで「あのこを泣かせたバチでしょう」とか「仲間を裏切ったバチでしょう」とかっていう感じで続いていくんですけども。サビで「弦、切れて 縁、切れて でも元気でね」っていうこの韻の踏み方。これは「うわっ、超いい!」って。

(DJ松永)俺、あそこも泣いた。本当に。

(R-指定)それで「一見(いちげん)さんから常連さんまで」ってまた1個目の「一弦」とかかっていたりして。「ウマッ!」って。

(DJ松永)上手いよね。あの人、すごいわ。

(R-指定)すごい!

<書き起こしおわり>

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