R-指定『リング0 バースデイ』を語る

R-指定『リング0 バースデイ』を語る サウンドクリエイターズ・ファイル

R-指定さんが2020年9月20日放送のNHK FM『サウンドクリエイターズ・ファイル』の中で映画『リング0 バースデイ』を紹介していました。

(R-指定)じゃあちょっと早速ですけど、この番組のコーナーにまいりましょう。シネマファイル。これ、好きな映画や映画音楽を紹介するコーナーなんですよ。だから映画は……あんまり松永さんは見いひんですよね?

(DJ松永)そう。映画は正直見なくて。だからRさんが結構映画を見る方なんで。

(R-指定)そう。俺はね、映画好きなんですけど。元々、オトンがめっちゃ映画好きなんですよ。

(DJ松永)なんかでもRさんって、やっぱりオトンの影響がデカいね。

(R-指定)デカい。音楽もオトンの影響やし、映画もオトンの影響やし。ニート癖っていうか、怠け者なのもオトンの影響やし。怠け者やのにふんぞり返ってんのもオトンの影響。偏屈なのもオトンの影響。で、背がちっちゃいのはオカンの影響。なんでやねん! オカン、働き者やのに背がちっちゃい。だから逆、逆。ほしいのは。オトン、怠け者やけど背がデカいねん。逆やねん! オトンの背がデカいのと、オカンのその頑張り屋さんなところ。両方くれよ! なんで逆でくれるのよ?

(DJ松永)それなら100点の人間ができあがったのに(笑)。

(R-指定)なにをしとんねん! ちっちゃい怠け者なんかいちばんいらんがな!

(DJ松永)でも、背の高い頑張り屋さんはラップしてない可能性が高いよ?

(R-指定)そうか。他のことで成功しているか?(笑)。

(DJ松永)他のことで成功している可能性があるよ(笑)。

(R-指定)でも、オトンがずっと映画好きで。オトンは結構ね、B級アクションとかが好きなんですよ。とにかくド派手なやつ。で、ちょっとホラーもかじるぐらい。で、昔、悪ふざけでちっちゃい俺にホラー映画で『エクソシスト』を見せてきたんですよ。俺、めっちゃ嫌いというか。「怖い、怖い!」って言ってるのに、ちっちゃい頃の俺に『エクソシスト』っていうのと『サスペリア』っていうのを昔、映画館でハシゴして見たのがオトンの自慢らしくて。「めっちゃ怖いのを2本、見たった!」みたいなことを言ってきて。

「『エクソシスト』、お前も見るか?」みたいな。ほんで見て、めっちゃ怖かった。で、ホラーは怖かってんけど、モンスター映画は好きやったんですよ。怪獣。ゴジラとか。で、そこから、小学校の時とか怪獣映画、海外のモンスター映画を見てたんですけど、なんかどっかで頭に引っかかっていて。中学校の時に「もう1回、ホラーを見てみようかな?」と思って見たら、見事にドハマリして。今、ホラー大好きですから。

(DJ松永)いやー、本当だね。本当にどっぷりになっちゃったんだね。

(R-指定)どっぷり。だからネトフリとかの検索履歴とか、「あなたへのおすすめ」を見たら、だいたい全部なんか血みどろの文字で書いてあるやつやから。

(DJ松永)怖え画面が出てくるんだな(笑)。

(R-指定)真っ白の顔とか。怖え画面ばっかり出てくるんですよ(笑)。

(DJ松永)怖え。AIが仕事してるわ。

(R-指定)AIが仕事している。「こいつにはこれを見せておけばいい」っていうね。ほんで、怖いのがめっちゃ好きで、怖い話とかも好きで。それで映画は逆に名作を高校生ぐらいまで見てなかったんですよ。ホラーとかB級ホラーばっかり見てたから。で、名作の映画を見るようになったらこれまた、重ね重ねですけども。やっぱりRHYMESTERの宇多丸パイセンのおかげです。

宇多丸先生はね、ヒップホップの聞き方も教えてくれるし、映画の見方も教えてくれたんですよね。「なるほど、こうやって見ればいいのか」とか「こういう感情の汲み取り方なんや」っていうのも教えてくれましたから。でも、それを教えてもらう前の話。今日、紹介する映画は。ホラーばっかり見漁っていた時。中学校3年の時に家にあった衛星テレビ、スカパーでたまたまホラー特集みたいなのがあって。

俺がその時に見た映画が『リング0 バースデイ』っていう映画なんすよ。まあ『リング』って知ってるでしょう? 井戸から貞子が出てくる。まあ大ヒット作なんですけど。それが、『リング』があって、それがヒットしたから『リング2』があって。それでその3作目が『リング0 バースデイ』なんですよ。それは井戸から出てくるあの怖い貞子がその「貞子」っていう怨霊になる前の話なんですよ。

(DJ松永)ああ、そうなんだ。

貞子が怨霊になる前の話

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(R-指定)元々、貞子はその話の中では怨霊になる前はすごい美しい女の子で。東京に上京してきて、18歳で劇団に入るんですね。演劇の。それで劇団に入って、女優として演技をしていくんですよね。まだ引っ込み思案なおとなしい子ですけども、美しいから頑張って劇団員として活躍していくですけど。そんな時に、劇団の音響の遠山という男と恋に落ちるんですよ。で、恋に落ちて、いい感じになっていくですけど、貞子には同じく、やっぱり不思議な能力があったんですよね。怪我してる人を触るだけで治してしまったりとか。

それで、この貞子の秘密が明らかになっていくんですけど。その遠山との恋の行方。でも劇団のボスみたいな男に貞子は言い寄られていて。その男のことは嫌いやのに、しつこく言い寄られてて困っている貞子。それを助ける遠山みたいな。でも遠山のことが好きやから、ちょっと嫉妬してる麻生久美子さんがやってる女の子とかがいたり。結構豪華メンバーなんですよ。で、貞子は実は1人じゃなかったというか。

(DJ松永)ええっ?

(R-指定)貞子の地元に帰ると、もう1人の貞子がいて。そっちの貞子が人を怨念で殺す能力を持ってるんですよ。で、その怖い設定なんですけども。その貞子の昔を知る学校の先生は「貞ちゃんは昔、1人だったの。途中で別れたのよ」っていう。で、ヒーリング能力持ってる貞子を演じるのが、主人公の仲間由紀恵なんですよ。仲間由紀恵さんが貞子を演じている。で、その陰の貞子と陽の貞子がまあ、悲しいことに……その遠山との恋も悲しく終わってしまうんですが。その悲しい結末のせいでグッとひとつになって今の貞子が出来上がって……というか、まだ生きてるんですよ。生きてる貞子の中にヒーリング能力と怨念の殺傷能力。それが宿ってしまった状態で殺されてあの貞子が出来上がるわけですよ。

(DJ松永)えっ、ちょっと待って? 最強じゃん!

(R-指定)最強。だからあの『リング』に繋がるような話。でも、話だけ聞くと怖いですけど、どっちかっていうとラブロマンスなんですよ。その遠山との悲しい恋を描いてるのが『リング0 バースデイ』で。ただ、映画の評判としてはあんまり良くないんですよ。

(DJ松永)そうなの? 今、概要だけ聞いたらめっちゃ面白そうだけど。

(R-指定)超面白そうでしょう? で、『リング』は大ヒット。『リング2』もまあまあ、そこそこ。で、『リング0 バースデイ』はあんまり批評家筋からの評価はよくないんですけど、俺は思い出補正と、あとやっぱり貞子を仲間由紀恵がやっているっていうのもプラスで。だから俺はほんで超大好きな映画なんですよね。

で、もうひとつ、俺のこの『リング0 バースデイ』を俺の中で名作たらしめているのが音楽なんですよ。主題歌っていうかエンディングで流れるのが……エンディングもすごい悲しいんですよ。これ、もう昔の映画なんでネタバレとか気にせず言っちゃいます。ネタバレとか、もう見てないやつが悪い! 『リング0 バースデイ』は。日本人なら見とけ!

(DJ松永)必修科目だと(笑)。

(R-指定)必修科目。で、最後は井戸に落とされてしまった貞ちゃん、仲間由紀恵が……言うたら、途中で悪い貞子と合体して。もう自分を苦しめてきたやつを全殺しにするんですよ。でも最後、自分の父親に井戸に叩き落とされて。で、井戸に落とされてぱっと目が覚めたら、遠くに井戸の入り口の光が見えるんですよ。それをグーッと石でお父さんが閉めていく。光がなくなっていく。最悪。このまま終わるか……っていうような悲しいのでバーッと真っ暗になって映画は終わるんですよ。そのの井戸の中で息絶えて、怨霊になってしまったのが今、みんなが知ってる、あのテレビから出てくる貞子なんですよ。

(DJ松永)なるほどね。その井戸なんだ。

(R-指定)でも、それを見てきたら「怖い」っていうよりは、普通に純粋な女の子やったのに恋もうまくいかず。自分の負の感情の部分と合致してしまって、周りを皆殺しにしてしまって。それで最後は自分の父親の手によって殺されてしまうという、めっちゃ悲しい女の人の話なんですよ。それで井戸が閉まっていって。「ああ、もうここで人生終わりを迎えるんや……」っていうのでバッと映画が終わって真っ暗になって。

スタッフロールが流れて、エンディング曲が流れるんですけど。そのエンディング曲が貞子と遠山の悲しい恋の行方を歌詞で描いてるような歌なんですよね。それがまさかの……ずっとヒップホップを紹介してきましたけど、まさかのここでかける曲がL’Arc~en~Cielです。L’Arc~en~Cielの『finale』という曲なんですけども。じゃあ1回、聞いてもらいましょう。L’Arc~en~Cielで『finale』。

L’Arc~en~Ciel『finale』

(R-指定)お送りしたのはL’Arc~en~Cielで『finale』でした。悲しい……。

(DJ松永)なんかやっぱりさ、ホラーの映画の主題歌だけあってさ。なんかサウンドもちょっと怖いね。

(R-指定)そう。だから俺的には見てて、その貞子が死ぬ瞬間。井戸の光が閉ざされてこれが流れるか「怖っ! エンディングも怖っ!」って思ったんですけど。歌詞がね、めっちゃ悲しくて。この遠山と貞子の恋を描いたてるんですけど。これね、サビの歌詞がね、「終幕へ向かう日差しの中 眩しすぎて明日が見えない」っていう。この「終幕へ向かう日差しの中」っていうのはたぶん貞子の目線なんですよね。

井戸の底から見た、その井戸入り口から差し込んでいた日差し。それがどんどん消えて行くけど……「眩しすぎて明日が見えない」。まあ、明日はないわけですから。それで「振り向いた君は時を越えて見つめている」っていうのは結構その貞子の印象的な『リング』のカット。貞子の目。あの目で殺されるっていうのがあるんですけども。「振り向いた君は時を越えて見つめている あどけない少女のまま」っていう。あの18のまま、美しいまま死んでしまった貞子が怨念として時を越えて、画面越しに見つめていっていう。

まあ怖い歌でもあるんですけど、そんぐらい貞子の愛情が深かったという。それで2番目はたぶん2人のことなんかな? 「降り注ぐ罪に彩られた 枯れた道をさまよい続ける」っていうのは、まあ貞子はね、怨念で殺してしまったわけですから。それでその遠山も、貞子にしつこく言い寄る劇団長みたいなのを殺して、それを隠蔽することを手伝うわけですから、2人はやっぱりすごい罪を背負っているわけですよね。

で、その中で「この愛は誰も触れさせない それが神に背くことであろうと」っていう、悲しいんやけどもこの2人の愛の話みたいなのをもう愛も何も知らんような中3の男がこの『リング0 バースデイ』を見て「悲しい!」と思って。なんかホラーでこんな悲しい気持ちになるんやと思って。

(DJ松永)ストーリー、めちゃくちゃ悲しいわ。

(R-指定)めっちゃ悲しいんよ。何も報われないまま怨念になってしまうんよ。だから結構ね、日本のホラー映画の女性って全部悲しいんよ。だから悲しいから怖いし。悲しいから美しいしっていう。すごいね、なんか矛盾をはらんでいるんですけども。

(DJ松永)いやー、貞子、かわいそう……。めちゃくちゃ、そりゃあ人間をちょっと驚かすぐらいは……。

(R-指定)まあ「驚かす」っていうか、呪い殺すんやけども。貞ちゃんは確実に来るから!

(DJ松永)えっ、貞ちゃんって「わあ!」っていうぐらいじゃないの?

(R-指定)ううん。7日後に確実にテレビから出てきて。確実に仕留めるから。貞ちゃんって。

(DJ松永)ちゃんさだ、殺すの?

(R-指定)ちゃんさだ、殺すよ。

(DJ松永)フフフ、怖え!(笑)。

(R-指定)我々Creepy Nuts、前回かけた『耳無し芳一Style』っていう曲の中にも実はちゃんさだが出てきて。「メディアで感染 伝染 貞ちゃんのCurse」っていう。「Curse」っていうのは「呪い」っていうことなんですけども。やっぱり俺、そんぐらい好きすぎて(笑)。貞ちゃん。

(DJ松永)「貞ちゃん」って言わないで?(笑)。

(R-指定)いや、この映画を見てきれいな仲間由紀恵が貞子を演じているのを見たら「貞ちゃん」になるし。俺、なんやったら貞子のことをこの映画を見た後、すごい好きになったっすもん。悲しい……なんか「俺が遠山やったらこんな悲しい結末にさせへんかったのに」って思うぐらい。「貞子、かわいそう!」って。

(DJ松永)そうね。「俺が遠山だったら」っていうRの話を聞いて、今俺も思っていたもん。「俺が遠山だったら……」って。

(R-指定)「俺なら貞子を不幸せにしなかったのに……」みたいに。

(DJ松永)そう。「俺なら貞子を守る!」って(笑)。

(R-指定)そう。なってまうんよ。『リング0 バースデイ』、おすすめです!

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(DJ松永)音楽というよりも、映画ごとおすすめですね(笑)。

(R-指定)この曲も最高なんですけどね。

<書き起こしおわり>

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