DJ松永さんが2020年9月20日放送のNHK FM『サウンドクリエイターズ・ファイル』の中でHilcrhyme・TOCさんについてトーク。信仰の深い松永さんがTOCさんの人間的魅力について話していました。
(DJ松永)はい。お送りしたのはCreepy Nuts×菅田将暉で『サントラ』でした。これさ、デモの話をしたじゃないですか。先週、Rさんが地元の友達、テークエムの話をしたじゃん? 俺も地元の人の話をしたいなと思って。地元の先輩、Hilcrhyme。
(R-指定)おおっ!
(DJ松永)HilcrhymeのTOCさん。俺も本当にもうめちゃくちゃずっとお世話になっていて。俺の兄貴みたいな人なんだけど。Hilcrhymeって、デモテープで売れたんですよ。
(R-指定)あ、そうなん?
(DJ松永)そう。あの人、俺が高校生ぐらい……高1ぐらいの時かな? SMAPの『らいおんハート』っていう曲、あるじゃないですか。で、Hilcrhymeが『らいおんハートRAP』っていうカバーを勝手に作って。
(R-指定)聞いたことある!
(DJ松永)あの人、それをCDに焼いて、デモCDを作って新潟の街中で死ぬほど配りまくったんですよ。それで口コミだけで広がって爆発的な人気が出たんですよ。
(R-指定)すげえな!
(DJ松永)特にあの人が重点的に配ったのは夜の街なんだよね。あの人はホステスに配ったんですよ。キャバクラに置いたの。で、ああいう田舎の流行の発生源っていうのはホステスの人たちだったんだよね。そういう流行の感度、若者文化の感度が高いのは。で、そういう人にめちゃくちゃ刺さったんだよ。Hilcrhymeの曲って。で、「これ、いい!」ってなってあの人たちはそこから徐々にどんどんと広まって売れていったんだけども。
(R-指定)Creepy Nutsで作る前にソロで俺が曲を作った時もそのソロの手伝いをしてくれたレコード会社の人が「まあこれ、とりあえずできたらキャバクラに持っていくからさ」「えっ? どういうこと?」って聞いたら「いや、あれよ。昔、雷とかヒップホップの先輩たちは全員、CDができたらまずキャバクラに持っていくんだよ」って。それを聞いて。それで松永さんからまたそのTOCさんの話を聞いて。そこで合致したの。「なるほど! 夜の世界やったんや」って。
(DJ松永)そう。それでHilcrhymeはそこにバチッと刺さったんだよね。で、あの人はやっぱりちょっとナンパなイメージというか、ちょっとチャラく見られがちなところ、あるじゃないですか。でもあの人、元々すげえハードコアなヒップホップの出なんだよね。知られてないんだけどね。
(R-指定)めちゃめちゃハードなね。
(DJ松永)新潟のNITE FULL MAKERSっていう伝説のヒップホップグループがいて。すごい正統派なヒップホップグループで。新潟のメインストリームで。その中でUSU a.k.a. SQUEZさんとかSWAMPさんだとか。
(R-指定)TOTOROWさんとかね。
(DJ松永)TOTOROWさんとか。よく知っているな(笑)。で、その中にラッパーのTOCさんがいらっしゃって。そっこからTOCさんは抜けてHilcrhymeを……同時進行であったかな? 当時から。それでHilcrhymeがあって。そこを抜けてHilcrhyme1本の活動を絞っていってバーン!って日の目を見たから。やっぱりその時のことを知らない人が結構意外と多いんだけど。あの人もちゃんと結構ハードな道をたどってた人で。
で、あの人が俺と出会ったのは『Daydream』っていうさ、俺が2014年ぐらいに曲を作って。それはマイクリレーで。いろんな人を呼んで。そこにRさんも入ってもらったんだけども。その中でTOCさんを初めて呼んで。一緒になって。その時からの付き合いなんだけども。
(R-指定)だってその前から、それまでがっつりメジャーシーンでやってたTOCさんが『HOOD FINEST』っていう曲……がっつりラッパーたちと絡む曲っていうのはTOCさん、たぶんその曲で初めてで。で、その第2段階ぐらいが『Daydream』じゃない?
(DJ松永)そうそう。だからあの人はHilcrhymeもやりつつ、ソロでやっぱりあの時、そのハードなヒップホップをしていた時期の自分も取り戻したいっていうので。もっとラップ、ヒップホップに特化したソロ活動を始めたんですよね。そこで初めて知り合って。そこからずっと良くしてもらってるんですけれども。やっぱりあの人、新潟にとってすごい希望で。あの人はもう本当にお茶の間クラスまで広がった国民的なアーティストじゃないですか。
(R-指定)ホンマに。
(DJ松永)あの人ってずっと新潟をレペゼンし続けて。あの人、もちろんその着うた自体、たぶん最後の方だと思うんだけど。ヒットをブチ飛ばして。もちろん大きい一軒家も建てる。何千万もする高級車も何台も持ってるし。でっかい、もう超一流のレコーディングブースにでっかい、ダンサーとかもリハできるような大きいリハーサルスタジオに超いい会議室。それでめっちゃ広い駐車場がある、全部併設されてるスタジオも建てたし。あの人、もう本当にヒップホップスワッグ、ヒップホップドリームをがっつり掴んでいる人なんだよ。
(R-指定)ちゃんと新潟でヒップホップ覇者になったというか。
(DJ松永)そう。それであの人、ずっと新潟在住なんだよ。今まで。1回も東京に出てきてないんだよ。あの人の成し遂げたその金字塔っていうのは本当に新潟にとってめちゃくちゃデカくて大スターなんだけども。で、2014年に『Daydream』を一緒に作ってから、あの人がソロ活動を始める時に俺がライブのDJをやらせてもらえることになって。あの人とずっと全国を回ってたんだよね。あの時期。Creepy Nutsを始める前だね。まあ、やりながらかぶっていた時期もあるんだけど。
(R-指定)まあ、俺もソロやってたし……みたいな時期。
TOCさんのライブDJとして全国を回る
(DJ松永)それでCreepy Nutsががっつりデビューして、本腰入れてやろうかっていった時にCreepy Nutsの活動に専念するためにやめたんだけども。あの人と一緒に全国回って。あの人、スターじゃないですか。やっぱりどんな若手に会っても両手で握手するんだよ。敬語で。で、自分からあいさつしに行くし。めっちゃしっかりしているし。俺みたいなすごい……あの人と歳もすごい離れているし。ペーペーの若手だし。その時は2014年ぐらいだったかな? 正直、別に音楽で飯も食えないんですよ。その時にも俺とも同じ目線でずっと接してくれて。すげえ助言を与えてくれるし、俺がなんかヘマした時、良くないことを言った時はちゃんと叱ってくれる。けど、普段は友達のように遊んでくれるんですよ。
(R-指定)でも俺もTOCさんの印象、そんな感じ。ホンマにめっちゃ優しいけど、めっちゃ同じ目線で……少年みたいな面も持っているし。
(DJ松永)そうそう。あの人、すげえピュアなんだよ。
(R-指定)すげえピュアな少年みたいな面も持っているし。でも、プロのところはめちゃくちゃプロやねん。
(DJ松永)めちゃくちゃプロ。あの人ね、めっちゃ純粋なんだよね。超ピュアでまっすぐな人で。マジで地元の2個上の先輩みたいに思っちゃうの。そんぐらいの人なんだけども。でも、それはあの人、自然にその感じなのよ。別になんか年下だから腰の位置を合わせてくれているとかじゃなくて、自然にあの人はね、同じ目線に立ってくれるような人で。だからその姿勢からすごく学ぶことが多かった。いまだにあの人はやっぱり……今はコロナの時期であれだけども。
東京に来たら2人で遊ぶし。俺が地元に帰った時にTOCさんに連絡して2人で飯を食い行くし。やっぱり俺が飯を食えない時期、金を稼げない時期に散々、あの人に飯食わせてもらって。今もあの人、出してくれるんだけど。Creepy Nutsでパーンって多少なりとも売れて。お金が入った時にやっぱりあの人に「ちょっとお金が入ったんで。今回、ちょっと俺に出させてください」って言って六本木の焼肉屋に行ったもんね。
(R-指定)おおーっ! 熱い! なに、そのいい話?
(DJ松永)「ちょっと今日、いいっすか? 俺、はじめてお金を出させてもらっていいですか?」って。
(R-指定)俺、まだ先輩におごってない……どうしよう?
(DJ松永)フフフ(笑)。
(R-指定)えっ、テークエムってちなみに1個上やねんけど。あいつにおごったのはノーカウント?
(DJ松永)フフフ、超ノーカン(笑)。
(R-指定)ええっ?
(DJ松永)あいつってお前の年下みたいなところ、あるじゃん?(笑)。ノーカン。
(R-指定)梅田のやつはノーカン?
(DJ松永)梅田のやつはノーカンね。で、TOCさんは本当に世話になって。今もなってるから。
(R-指定)かっけーな! 先輩にそうやっておごるの。
(DJ松永)あの人は本当に……。
(R-指定)いや、両方かっけーよ。
(DJ松永)マジで? で、あの人さ、しかも正義感も超強いんですよ。だからいろんな人が揉め事が起きてる時。「TOCさんが出ていったらTOCさんが一番損しますよ」っていう時に、そういうの度外視で。情熱だけで行って、その揉め事を解決したみたいなのも散々見てきてるんですよね。だからHilcrhymeのファンの方。これ聞いてるかどうかわかんないけど。たぶんHilcrhymeのファンが思ってる以上にTOCさん、マジで熱くて本物の人だから。マジで信じていいなっていうのはマジで思うよ。マジであの人、裏切らない人だから。
(R-指定)たしかにな。
(DJ松永)いつも俺と会うと本音でしゃべってくれるからね。本当、自分の汚いところも見せてくれるし。
(R-指定)俺がやっぱりすごい松永さんからまた聞きで「いい人やな」っていうのもあるし。実際に会った印象もやっぱり「ああ、すげえな」って思うし。まあ普通にラップをすげえ上手いし。当然、ライブとかも。それもあるし、人間的にも魅力的やなって思うんすよ。で、超お世話になっているって話も聞いていて。そんな時に俺が戦慄したのは、松永さんがそれこそまだ全然Creepy Nutsとしても成功してない時に、TOCさんのライブDJを新潟でやるからっていうことで。
で、「じゃあ新潟来てよ」っていう。普通、これ先輩のライブ行くから松永さんが、お金を出してくれるとはいえ、自分で新幹線で新潟まで帰って……って思うじゃないですか。TOCさん、わざわざ東京まで車で松永さんの家に迎えに来て。で、新潟まで送って……っていう。そんな好待遇をしてくれて。で、TOCさんはわざわざ東京の松永さんの家に……東京って言っても離れてますよ。東京のはずれのところまで行って松永さんを乗せて車を運転している。
その助手席で松永さんが頭に腕を置きながらくつろいでいるんですよ。その時点で「おい!」って感じなんですけども。先輩の車でね。で、TOCさんがちょっと冗談めいてね。「いや、東京まで来るの、超時間かかったよ。松永、お前免許取らねえの?」って言ったら「免許取るやつ、フェイクだと思うんで。俺」って……(笑)。
(DJ松永)フハハハハハハハハッ!
(R-指定)ヤバいで、お前。あの態度?
(DJ松永)あの……言いました(笑)。
(R-指定)ヤバいって。「いやいや、そうっすね。取ります」ぐらいのでいいのに。なんなの、こいつ?
(DJ松永)でもTOCさん、許してくれるから(笑)。
(R-指定)優しいからな(笑)。
(DJ松永)超優しいから。でも本当に超いい先輩だし、超いい友達っていう感じになっていますよ。TOCさん。
(R-指定)って、思うやん? 思うけど、たまにTOCさんの出したヒット曲の破壊力の凄まじさを見て「ああ、やっぱりすごい人なんや」ってたまにびっくりするっていう。普通にいい2個上の先輩ぐらいの感じで接してくれすぎていて忘れるけど、たまにTOCさんの出したボムのことを思い出して。普通に友達と行ったカラオケで歌ったりとかした時のみんなへの浸透度とかを見て。「ああっ!」みたいな。
(DJ松永)本当。「ああ、スターだった。忘れていた」みたいな(笑)。そうなるぐらい気さくな、本当にまっすぐでピュアな、裏切らない人なんです。あの人は。じゃあ、そのTOCさんのボム、行く?
(R-指定)ボム、行く?
(DJ松永)じゃあ、Hilcrhymeで『春夏秋冬』。
Hilcrhyme『春夏秋冬』
(R-指定)お聞きいただいたのはHilcrhymeで『春夏秋冬』でした。最高ですね。
(DJ松永)最高ですね、やっぱり。これ、いい曲よ。本当に。本能に訴えかけられるもんね。なんか、ヒット曲っていうのは理屈じゃなくブチ上がるよね。
(R-指定)せやねん。こんだけメロディーきれいで、韻もバリ固やしね。いいですよ。
(DJ松永)いい曲ですね。俺らも国民的ヒット曲、作りたいっすね。
(R-指定)出してえ!
(DJ松永)出してえ! 頑張ろう!
(R-指定)頑張ろう!
<書き起こしおわり>