能町みね子さんが2020年9月19日放送のTBSラジオ『ナイツのちゃきちゃき大放送』の中で出版物の総額表示義務化についてトーク。その問題点について話していました。
#能町みね子 さんから、リスナーの皆さんへ本のプレゼント!
当選者の発表は、番組のエンディングです!
「雑誌の人格3冊目」「そのへんをどのように受け止めてらっしゃるか」
宜しければお手に取ってくださいね〜#chaki954 #ナイツ #tbsラジオ #tbsradio #土曜ワイド #ちゃきちゃき大放送 pic.twitter.com/2VRnNuuJtu— TBSラジオ ナイツのちゃきちゃき大放送 (@chaki954) September 19, 2020
(能町みね子)他にもちょっと今日はいろいろあるので。ちょっとメモしてきたんですけど。地味なニュースなんですけども、「消費税の総額表示が特例として免除されていた出版物が総額表示に切り替わる」っていうニュースなんですけど。これ結構、私の仕事にもめちゃめちゃ関わってくる……もう人生に関わってくるぐらいの問題なので、ここでちょっと言いたいんですけど。
そもそもなんで出版物が総額表示が許されていたかっていうと、まずその「総額表示」というのは「物を売る時に税金まで込みの値段で表示してください」っていうことですよね。で、これは「お客さんにとって便利だから」っていう言い方もあるんですけど、まあ裏の話で言うと「税金がいくらなのか、わからないようする」っていう意味もあるわけですね。消費税もどんどんと上がっていくから、最初から税込みで書いておけば上がった感がしないとか、そういう意味もあるんですけど。
で、他のたとえば食材とか雑貨のものとかっていうのはだいたい回転が速いんですよね。回転が速いのと、あと基本的にお店に同じものがたくさん売ってる状態なんですけど。本屋さんっていうのは同じものがたくさんあるものありますけど、結構「1冊×何千」とかっていう感じで売ってるわけですよね。ほとんどの本は。なので、もしこれをそのお店の方で「値段、変わりました。変わりました」ってそのたびにシールを貼っていくってなると、とんでもない手間になりますよね。
「本」という商品
あと、すごく長い期間、売れるものなので。5年前に出た本が売れるとか、全然ザラにあることなんで。その間に消費税率が変わってたりすると、いつその表示を変えたらいいのか?っていうことで困るので。それで出版界が総額表示に反対して。一番最初、消費税が3パーセントになった時にめちゃめちゃ絶版が出たんですよ。印刷を変えなきゃいけないとかで。そんなコストは負担できないからっていうことで、出版社が潰れたりとか。「もうこの本は出さない」とかなっていたので。そこで出版界が反対して。それで「『本体の価格+税』っていう書き方をしてよい」っていう風に認めさせたんですけど。
それを行政側も「あくまでもこれは猶予期間だから、○年までにはそれはやめましょう。それ以降は総額表示に」って言っていて。ずっと押し引きをやってたんですよ。「いや、それはやりたくない」って。なんですけど、今回改めてまた「総額で書くように」って言ってきたので。となると今、私が手元に自分で持ってる私の本があるんですけど。裏にたとえば……もうタイトルを宣伝で言いますけど。『そのへんをどのように受け止めてらっしゃるか』という本が文春文庫から出たんですが。
この裏にもご覧の通りですね、「本体700円+税」って書いてあるんですよ。これを、だからもし来年3月で「この猶予期間は終わりです」って言われたら、全国の本屋から全部回収して、もしかしたらカバーを全部「770円」とかに替えなきゃいけないっていう話もあれば、「なにか挟めばいいですよ」っていう風に言っている人もいるんですよ。
その説がちょっといろいろとあって。「スリップっていう値段を書いた紙切れみたいなやつを挟めばいい」って言う人もいるけど、でもそれだって印刷代がかかるし。挟み込む作業の手間もかかるし。だからいいっていう話でもないし。
(塙宣之)もともとはだから、そういう風にしちゃってたからややこしいんだね。「700円」とかだけだったらよかったんだね。
(能町みね子)そうなんですよ。何でも「+税」って言っちゃえば、まあたしかに買う側はちょっと面倒くさかったり、「高い」って思ったりするかもしれないけど。でも、やっぱり作る側は大変なので。そこはどうにか、出版社は徹底して反対していきたいっていう風に今、なっていて。私の方もこれによって作品が絶版になる可能性なんてめちゃめちゃ高いので。
(出水麻衣)「今、あるものはそのまま」っていう措置は無理なんですか?
多くの作品が絶版に?
(能町みね子)今、あるものは一応、「スリップを入れればいいよ」みたいな話になりつつあるんですけども。でも、その印刷のやり直しとか、入れる手間とかも当然出てくるので。
(土屋伸之)でも、また税金が変わることもあるでしょうし。
(能町みね子)ねえ。「消費税10%を減らしましょう」ってなったとしても、それもそれでとんでもないコストになるので。ちょっとこれはどうにか、この猶予期間のまま行かせてほしいというのが私の希望なんですね。というのが、ちょっと地味なんですけども言っておきたいことでした。
(塙宣之)いやいや、ものすごい話題ですね。知らなかった。
<書き起こしおわり>