これはちょっとですね、配信はされてなくて。CDとかもすごいレア盤になっていて入手できなかったんで。YouTubeでは聞けるんですけど。これは、1997年とか作品でなんですけど。ヒップホップって結構、貧困を歌っていたりするじゃないですか。で、貧困とか荒んだ街の現状をルポライター目線で歌うことは多いんですけど。
このニッポニア・ニッポンの『怠け者』っていうのは、実際の路上生活者の方の目線から描かれてる歌なんです。ものすごいね、ゾクゾクするというか、真に迫るというかね、胸がホンマにキリキリするんですよ。これを聞くと。すごい……ぜひ機会があったらニッポニア・ニッポンの『怠け者』を聞いてほしいんですけど。実際に歌ってる人も、レコーディングした後に失踪して。誰も消息が分からないというこの当事者性というか……。
ニッポニア・ニッポン『怠け者』
それでもうひとつ、かけれる曲として紹介したいのがですね、この後に『アトロク』もやりますが宇多丸さんのRHYMESTERの楽曲なんですけど。『Hands』という曲がありまして。これは実際にその当時……「当時」とか今、また巡り巡ってずっと終わらないんですけども。「幼児虐待」っていうことを1個、大きなテーマとして描いてるんですけど。それに対してRHYMESTERが素晴らしいなと思うところは、その虐待する側を糾弾するのなんてことは簡単なんですよね。言ってしまえば。「なんてひどい親だ!」みたいな風に。「そんなことするぐらいなら産むな!」なんてことは誰 にでも言えるんですけど。
「いやいや、やっぱり母親になるとか親になるってことは、もう1からスタートじゃないか。その当事者なってみないと……」って。子供ができたことの喜び、幸せ、つらさ、面倒くささみたいな要素って1個だけじゃないわけなんですよね。たぶん。まあ、僕は当事者じゃないのでわかんないんですけど。でも、わかんないような俺にも、わかりやすく「いや、そんな簡単な問題じゃないよ。1個の面から批判できるような問題じゃないよ」っていう意味で、このRHYMESTERの『Hands』っていう曲を聞いてもらえればなと思います。RHYMESTERで『Hands』です。
RHYMESTER『Hands』
(R-指定)はい。お聞きいただいたのはRHYMESTERで『Hands』でした。まあ、ヒップホップっていう音楽の特性上、言い切ってしまう人の方が実は多かったりするんですよね。虐待とか、そういう問題についても「しっかりしろ!」とか怒る側として。ただ、RHYMESTERの素晴らしいところは「いや、糾弾できるほど俺たちも立派かな?」というか。
「俺たちだって、そっち側の状況に陥る可能性、あるじゃん」っていう視点を常に持ってくれているというか。だから俺みたいに実際に子供もいないし、結婚もしていないような人間でも、「子育てってそんなに大変なんだ」っていう。そういう想像する1個のきっかけ、ヒントをくれるっていう意味では、やっぱり社会に訴えかけるヒップホップとしての側面というのはもうすごいデカいなと思いますね。
(幸坂理加)うんうん。曲としてもすごいいいですね。
(R-指定)そうなんですよ。だからやっぱり実際、お子さんがいらっしゃるMummy-Dさんの歌詞もそうやし。子供がいない側から見て「いやいや、思っているよりも絶対に大変やって。俺らが想像できてないだけで」っていうような宇多丸さんの視点も当然すごいし……というね。
(幸坂理加)うんうん。そうですね。もっと日本語ラップについて知りたいと思った方はぜひ、百夜書房から出版されております『Rの異常な愛情』をぜひお手に取ってみてください(笑)。
(R-指定)フフフ、なんか嫌やな(笑)。別に宣伝しなくていいですよ。そういうつもりで今日、紹介したわけじゃないんですけども。すいません。
<書き起こしおわり>