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いとうせいこうと吉田豪「サブカルと鬱」を語る

いとうせいこうと吉田豪「サブカルと鬱」を語る SHOWROOM
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いとうせいこうさんが2020年7月7日放送のSHOWROOM『豪の部屋』に出演。吉田豪さんと「サブカルと鬱」について話していました。

(吉田豪)僕、実はみうらじゅんさんとかのインタビューも載っている『サブカル・スーパースター鬱伝』という本を出していまして。

(いとうせいこう)ああ、はいはいはい。ありましたね。

(吉田豪)あれでいとうさんも取材候補だったんですよ。文庫化する時にユースケさんの追加取材をしたんですけど。いとうさんもだからそういう、たぶんものすごい勢いで駆け抜けた後に、ちょっと落ちた時期があるわけじゃないですか。

(いとうせいこう)あるある。長かったし、いまだにだってやっぱり不安な時は軽くそういうね、ものに頼らないと気持ちが落ち着かないっていうのはあるからね。

(吉田豪)舞台の時、ずっとね、控室で寝込んでいたっていうのも。

(いとうせいこう)そうそう。れはヤバかったんだって。あれはもう、だいぶたってからだけど。それは長い鬱があって、自分でも慣れちゃったぐらいで起こったことで。まあパニック障害ですけども。それはすごかったよ。まあそれこそシティボーイズとやってる舞台のもう本番4日前だか3日前ぐらいに、もう電車にも乗れない。怖くて。ましてや舞台になんかね、出ていけないっていう。

(吉田豪)怖いですよね。

(いとうせいこう)それはめっちゃ怖い。で、自分がその場でもうぶっ倒れて、痙攣して舌でも噛んじゃうんじゃないかって。そういうことがあって。で、その時はすごい真面目に……その時ね、早稲田の大学の客員かなんかの話があったんですよね。僕にね。それで、まあなんかやったことがないことだから、やってみるかっていう風に思ったけど。その生来の、一方で異常に生真面目なところがあるから。

でもこれ、何も文学のこととか哲学のこと知らないで授業をするのは良くないから、1から全部哲学を勉強しなおうと思って。こんな本を買ってきて。朝早く起きて。それで「まずは現象学からだ。フッサールからやろう」とかっていうことで。でも、何度読んでももう1ページ目が全然わかんないのよ。

(吉田豪)ほう。

(いとうせいこう)それで、もうメモも取っているけど、その意味もよくわかんないし。頭に入ってこない。で、翌日もう1回、頑張るけどやっぱりわかんないわけ。で、「これでやっていいのかな?」と思って、まあきたろうさんとかにも相談したりして。稽古で一緒だから。「いや、いとうはできるって。やった方がいいよ。お前の好きなようにやればいいんだよ。なんでそんな、すでにあることを今から覚えようとするんだ?」とかって。まあ、それは正しかったんだけど。「いや、そういうわけにはいかない。僕はいい加減なことは……体系がないのが僕のコンプレックスだから、体系を作るんだ!」とか思って。

それで勉強をしてたら、その勉強で頭がショートしちゃったんだね。パチーンと行っちゃって。それで、その時はね、すごく面白かったというか素晴らしかったんだけども。さすがにもう稽古してても座ってもいられないし。それで大竹さんのところに行って、「大竹さん、僕はなんかよくわかんないけど、おかしくなっちゃってて。舞台に立てないと思うんです」って言ったら、大竹さん達は向こうでガヤガヤガヤッ話し合ってくれて。で、大竹さんが来て。当時のシティボーイズはもうチケットも売れてるから、もう何万人って客が入ってたんですよ。

最初の頃の彼らではなかったの。僕が一緒にやってるうちにすごくデカくなって。だからまあ、軽く何億とかって動くわけじゃないですか。それを僕、何も知らなかっただけど。まあお客さんにもチケットを売っている段階だから。でも、「だからと言っていとうが本当にできないっていうんだったら、俺たちはお前の方を取る」って言ってくれたんですよ。すごいかっこいいんですよ。やっぱりあの人は。

(吉田豪)おお、興行延期ぐらいのことですか、つまり?

(いとうせいこう)そうそう。「それで構わない。お前ができないのならば俺たちはお前抜きにはできないんだ」って言ってくれて。「だけど、いつでも舞台を降りたい時に降りていいから。そしたら俺たちがそれを笑いにするから。だから降りざるを得ないとこまでやらないか?」って言ってくれたんですよ。で、僕は降りようと思っちゃった瞬間にたぶん、足がもつれておかしくなっちゃうと思っていたから。降りることさえできないのは分かっているんだけど。

「でも、そこまで言われたらな……」ってやっぱり思うじゃないですか。それで行きつけの鍼&精神科みたいなところをやってるところには前から、その鬱の時から行っていたから。そこに行って言ったら結構強い薬を出してくれて。それをかじりながら舞台に出ていて。それでご存知のように「楽屋にどうしても布団を敷いてくれ」って頼んで。布団を敷いて。

楽屋に布団を敷いて舞台に立つ

(いとうせいこう)しかも自分が乗る事務所の自分用のバンの後ろに……要するに僕、もう電車に乗れないから。で、タクシーなんかも知らない人のタクシーには乗れないから。それで「いとうくん、僕の車だったらどう?」って言ってくれたから「斉木さんだったらいいかもしれない」と思って、毎日斉木さんの車に乗って。斉木さん、疲れてるのに斉木さんが僕を送り迎えして(笑)。

(吉田豪)送迎をしてもらって(笑)。

(いとうせいこう)送迎してもらって。それで僕は行ったら即、布団の中に入って。それで何が始まるかっていうと、まず僕からの前日の全員の舞台のダメ出しね。

(吉田豪)フハハハハハハハハッ! その状態で?(笑)。

(いとうせいこう)その状態で「昨日の2番目のコントですけど、テンポが良くありません」とか(笑)。

(吉田豪)フフフ、動けないけど冷静に見ているんですね(笑)。

(いとうせいこう)そうそうそう。その時によくきたろうさんが言ってたけど。「テンポが悪いのはお前なんだよ!」って怒っていたんだよね。「心のテンポがおかしくなってるくせに」って(笑)。まあ、今その時のDVDも出ていますから見ると、すごくこう目の奥が死んでて。すごく面白いですね。ツッコミはものすごいジャストなんですよ。びっくりするぐらいもう正確なんですね。だけど、生き生きしてないの。

やっぱり正確なようでいて、ちょっとボケに釣られて少し変えていくっていうのがグルーヴなんだけど。そのグルーヴはないの。なんだけど、的確なの。ジャストで入ってるから失敗はしないんですよ。だけれども……「ああ、あれやっぱり心のないツッコミと心のあるツッコミってこんなに違うのか!」って僕はすごい自分では面白いんですけどね。

(吉田豪)なかなかの極限状況ですよね?

(いとうせいこう)そうそうそう。で、まあシティボーイズってコントの数珠つなぎだから。横に入ったらすぐ着替えて次の場面に出てくるんですけど。まあそういうスタイルのはじめを作ったのが宮沢章夫っていう人とシティボーイズなんだけど。その時、各自……シティボーイってすごく贅沢に人を使うから1人ひとりに衣装さんが付いて。もうそれは普通の劇団ではありえないことなんだけど。で、彼女たちがとにかく袖に入りさえすれば、忘れていても着替えさせてくれるっていう。で、僕はもうその自分の衣装さんに精神安定剤を渡してあって。「僕がもし、もう倒れるようにして帰ってきたら口に放り込んでくれ」って言って。たのんでコントをやっているからね。それは……。

(吉田豪)着替えさせつつ、口に薬を?(笑)。

(いとうせいこう)そう。口に薬を入れて。それで僕は心を鈍らせてまたフラフラフラフラって出てくるっていうさ(笑)。すごかったな、あの時は。

(吉田豪)やれるものなんですね。その状況で。

(いとうせいこう)やれるんだよ。まあ、ある程度の薬で恐怖感みたいなものを鈍麻させることは……まあできないことはやっぱりないんですね。と、思いました。

(吉田豪)すごいですよね。今、考えると。その『オトナの!』っていうのは。いとうさんとユースケさんの……(笑)。その2人とも、つらい時期を知っているっていう(笑)。

(いとうせいこう)知ってる、知っている。なので、そのどっちかが調子が悪かったら、黙ってどっちかが司会をするっていうような番組だったから。それはすごくお互いは楽だったと思いますよ。うん。「調子が悪い」ってこともはっきりユースケが何度も番組の中で言ってるしね。でも別に僕はそのことを何とも思わないから。「ああ、そうなの? じゃあ、俺が……」とか。まあ、俺もそういう時もたぶんあったと思うし。そういう意味ではあの番組は調子が悪い人間でも長寿番組ができるんだっていうさ(笑)。

(吉田豪)それを証明しましたね(笑)。

(いとうせいこう)証明した(笑)。

(吉田豪)なるほどな。あの、僕もだからそういう本を出したぐらいにサブカルを通ってる人はなんとなく40ぐらいで鬱々としやすいっていう。あれ、なんでだと思います?

ミドルエイジクライシス

(いとうせいこう)なんでなんだろうね? まあ、やっぱり一般に「ミドルエイジクライシス」的なね。中年クライシスがあるんだろうけど。やっぱり何かこう、基本やっぱり早熟な人じゃないですか。それが多いと思うんですよ。で、自分の形も作っちゃって、それでなんかちょっと飽きっぽいというか。要するに、たとえばコツコツやった職人さんじゃないタイプだと思うんだよね。

すると、次にやろうとしたことがたまたま上手くいかないとかっていうことが起きると、今までの方法が効かないから。まあ僕の場合はそれが真面目な教員というものが全く向いてなかったわけだけど。そういうようなことがあるのかな?っていう風には実感的には思いますね。でも、そんなね、ヤワじゃないはずなんだけどね。ここが面白いですよね。実は意外にすごくヤワにできている……ひとつ、2つのできないことがものすごく自分に重くのしかかっちゃうっていうことは。

でも誰しも、不得意のことはあるわけですし。僕はよく言ってるんだけど、その不得意なことに人の可能性はあるから。得意なことって大して……もっと得意な人はいっぱいいるから。不得意だと面白くなるっていうのがやっぱりあるんですよね。

(吉田豪)なるほど。

(いとうせいこう)ツッコミも完全に突っ込めるよりは、頑張ってるんだけど突っ込みきれてない方が面白い場合は多々あって。それはみうらさんともよく話すことで。それでみうらさんはよく僕に絵を描かせるんですけど。

(吉田豪)フフフ、不向きなことをやらせる(笑)。

(いとうせいこう)それで僕が絵を描くと、それを殊の外、褒めてくれるんですよね(笑)。「こんなね、上手じゃない絵って書けないんだ。もう自分はそういう風には書けないんだよ、いとうさん」って。それはすごく真剣に褒めてくれるんだけど。でも世間はそんな風には褒めてくれないもんね。「やっぱりいとうせいこうっていう人はいろんなことをやる人だけど。でも、絵を書かせたら全然ダメだ。なんだ」って。でも、その「なんだ」が面白いじゃんっていう見方をできなくなる、そういう硬直した時期があるんだよね。

(吉田豪)ああ、そうか。失敗してはいけないみたいな感じに。

(いとうせいこう)うん、なっちゃう、なっちゃう。今はもうむしろ、「自分が不得意なことはなんだろう?」と思って逆に探して。「そこになにかないか?」って思っちゃうけど。そうはまだ、生き抜けないよね。そこまで早熟じゃないっていうか。そこがたぶん30代後半とか40代の頃に来ちゃうのかもしれないですね。

(吉田豪)本当、タフそうに見えた人すら、どんどん一時的に壊れたりするから。本当心配だったんですよ、僕ら。

(いとうせいこう)なんなんだろうね? 不思議だね。だからまあ、あれもあるかもね。人間的なその耐用年数みたいなものが。

(吉田豪)まあ、ありますよね。体力が落ちる時期だし。

(いとうせいこう)そうそうそう。だからそこで逆におかしくなっておかないと、後々が割と真面目なだけだったりして……みたいなところはあるかもしれないですね。

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