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いとうせいこうと吉田豪「サブカルと鬱」を語る

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(吉田豪)僕がよく言うのはね、サブカル男子とか、まあ現実からだいぶ逃避しながら生きてきた人たち。それが40ぐらいで嫌でも現実を直視するっていう……親の病気だの何だのっていうことで。それで、「あれ? 今までいろんな責任から逃れてきたけど、しんどい……」っていう。

(いとうせいこう)そうなの、そうなの。これは僕がすごい尊敬している哲学者……柄谷行人っていう人がいて。柄谷さんがよく言ってたことだけど、「厄年っていうのは実際にある。ただ、『悪いことが起こる』という風には決まっていないんだ。『人生が1回だけだ』っていうことがよくわかる年なんだ」っていう。

つまり、「もうこれ以外の人生は……自分が今まで生きてきたことが自分を作っちゃっていて、そのことからは抜けられないから、この1回を生きるしかないっていうことが分かる年なんだ」っていう。それは僕はすごくいいことを言うな。さすがだなって思って。それが、たぶんそれこそ吉田さんのおっしゃるそのサブカル男子は、基本的にどんなことでも道を外れてできると思って来たけども。

でも、それぞれの生き方で、もうできないこととできることがはっきりしてくるっていう。それがやっぱりキツいんでしょうね。まあ、たしかに親の介護とか……僕はまだ親が元気っていうか、生きちゃっているから。すごくもう、あっちの施設に入れてみたり、こっちにやったりしてて。もう本当に大変だけど。そういうことはかならず人生に起きてきますもんね。

(吉田豪)逃げられない現実ですからね。

(いとうせいこう)逃げられないんだよね。

(吉田豪)それはまあね、誰もが弱って当然だっていう風には。

(いとうせいこう)そうです、そうです。

(吉田豪)いとうさんはやっぱりそれで、なんかこれこそ園芸だ何だとかやるうちに、ちょっとずつ回復していった部分はあるんですか?

回復していったきっかけ

(いとうせいこう)ええと、あれはなんで回復したのかな? いや、でもすごく長かったし、今も……まあ、さっきも言ったように回復してるとは限ってなくて。で、今は僕、星野概念っていう精神科医と本を2冊ぐらい出してるんだけど。

(いとうせいこう)それは□□□っていうバンドのね、彼はサポートギターでもあるんだけど。この数年はやっぱり、そういう精神科医……つまり、僕の主治医なんだけど。いろいろなことが話せる主治医ができたっていうのはすごく自分にとっては大きなことで。

それで後から考えたら、なんかよく言うじゃないですか。「弁護士と医者は絶対主治医は作っておけ」とかっていうのをよく先輩たちが言っていて。「そんなもん、関係ねえよ」と思ってやってきたけど。弁護士はいまだに知らないけど。でも、「たしかに主治医っていた方がいいな」っていうのはこの頃、つくづく思うことですね。だから作っておいた方がいいですよ。主治医は(笑)。

(吉田豪)フフフ、僕もいないですから。ちょっと考えますよ。

(いとうせいこう)そうそう。だってさ、取材でさ、なんとなく気が合ったり。「じゃあ、そのことに関しては病院に来てくれれば言いますよ」なんて言う人はたぶん現れるはずじゃないですか。そういう時に、まあそのチャンスをとりあえず生かしてみて、行ってみて。「この人こういう器用さもあるんだ」とか「この人、こんな冗談を言うんだ」とかっていうようなことから主治医がいるのはデカいね!

(吉田豪)しかも、それがバンドで出会えるっていうのがデカいですよね(笑)。

(いとうせいこう)フフフ、もうすごくないですか? そんなラッキー。いやー、それもね、その本にはたしかに自分で書いたんですけど。□□□っていうバンドは時報をそのまま曲にしているのがあって。僕は楽器が出来ないから、iPhone担当だから。「117」だっけ? 時報を押すんですよ。で、そうするとその「ピ、ピ、ピ、ピッ、ポーン!」ってなって、それに合わせてコンピューターも起動して、全員が演奏を始めるっていう。そのコード感で演奏をするんだけど。そのリハの時に、僕がね、「119」を押しちゃったんだよね。たしか。

(吉田豪)フハハハハハハハハッ! 一番ダメなミスですよ(笑)。

(いとうせいこう)で、「うわーっ!」ってなって。そしたら星野くんがそれを見ていて、「そうした間違いにはね、理由があるもんですよ」って言ったんだよ。それはまあ、フロイトっていう有名な人の『精神分析入門』の第一章、錯誤行為っていうのがあって。「間違いにはかならず理由がある」っていう。その時に僕は「主治医だ!」って思ったんだよね。

(吉田豪)瞬間的に(笑)。

主治医を見つけた瞬間

(いとうせいこう)「いいこと言う! 面白い!」っていうか。僕、そんな風に考えてなかったから。ひょっとしてなんか、やっぱりまた思い詰めるっていうことをしていたかもしれないのよ。その時にね。「この人、いい見抜き方をするし、面白いわ。指摘の仕方が面白い!」と思って、惚れ込んじゃったんだよね。

(吉田豪)なるほどね。□□□に入ってよかったっていう(笑)。

(いとうせいこう)そうそう。よかった。それでさ、その実際に僕は「ちょっと治療を受けたいんだけど」って言ったのはそのリハの時じゃなくて。そのリハから、ラフォーレ原宿でそのまま、それこそ金田朋子さんとかああいう声優の人とかとやったライブじゃないかと思うんだけど。なんか自分たちが全員、サンタクロースの格好して演奏するっていうさ、またよせばいいのにそういうちょっとダサいことをわざとやるっていう。まあ変なバンドだから。

そうした時に、全員がサンタクロースで赤白の状態の時に、なんだかしらないけど「今だな」と思って。ちょっと星野くんのところに行って「今度、病院に伺いたいんだけれども、いいでしょうか?」っていう風に聞いて。「ああ、いいですよ。○曜日は僕、出ていますから」みたいな話をしたんだけど。よく考えたらそのサンタの格好でやってるから。

(吉田豪)サンタがサンタに言っているわけですよね(笑)。

(いとうせいこう)サンタがサンタにプレゼントをねだっちゃってるから。すごく不思議な感じだったんだけども。それはでもやっぱり必然的にそこにボケが生じているのはとてもいいことですよね。やっぱりね。

(吉田豪)間抜けな感じがちゃんとあるっていう。

(いとうせいこう)そうそう。深刻じゃない感じで言えたのがよかったなと思って。

(吉田豪)うんうん。

<書き起こしおわり>

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