みうらじゅん わさおを追悼する

みうらじゅん わさおを追悼する 大竹まことゴールデンラジオ

みうらじゅんさんが2020年6月11日放送の文化放送『大竹まこと ゴールデンラジオ!』に出演。亡くなった秋田犬・わさおを追悼していました。

(光浦靖子)大人同士のガチンコトーク、大竹紳士交遊録。月イチレギュラーのみうらじゅんさんです。今日は電話でのご登場です。みうらさん?

(みうらじゅん)ああ、どうも。よろしくお願いします。こんにちは、どうも。あの、わさおがね、2日ぐらい前ですかね? お亡くなりになったっていうのを聞いて。去年、大竹さんにももらっていただいた、みうらじゅん賞。わさおも第14回に受賞しているんですよ。

(大竹まこと)あら、そうなの?

(みうらじゅん)それでね、僕はなんの縁もなかったんですけども。わさおが映画になった時。あれ、わさお主演で薬師丸ひろ子さんがお母さんだったかな? それで映画化されたんですよ。僕、元々犬とかにあんまり思い入れはなかったんですけども。「これは行くべき映画じゃないか?」という風にその時にすごく思って見に行ったんですけども。普通、実在する犬の映画ってドキュメンタリーだったり、史実に基づいたとか、そういうのが多いじゃないですか。

(大竹まこと)まあ忠犬ハチ公とかね。

(みうらじゅん)『南極物語』のタロとジロとか。まあ当然、僕もそれ系なのかなと思って見に行ったんですけども。わさおがで拾われて飼われることになってから、そこにいた少年か何かが引っ越ししたもんで。わさおが日本をすごい縦断する映画だったんですよ。ほんで、僕よく事実のことは知らなかったんで。「ああ、そんなことがあったんだ」とは思って見てたんですけども。途中、道を横断している時・・その少年に会いたくて、探して。いろんなところ歩いてる時に、山に差しかかって。その時に突然、クマが出てくるんですよ。

で、クマが出てきて、クマになんか飛びついて格闘するみたいなシーンがあって。その時にようやく「これ、嘘だな」って気が付いたんですけど。「これ、史実に基づいたやつじゃないな」と思って。まあパンフレットを毎回、映画を見ると買うんで、読んでみたら、まあフィクションであるって書いてあるんですよ。で、最後までフィクションを見せられて。逆にすごいなって思って。その忠犬ハチ公物語のように誰でも知っている史実に基づいてドラマ化とか映画化されるのは分かるけども、

何の歴史、逸話もないのに……で、イカ焼きをしている店とかは出てくるんで。そこらへんは本当なんでしょうけども。まあ道中がますごく作り物で。それももう突拍子もない作り物だったんで、もう大好きになって。いろんなところにね、僕、原稿を書いたり。「『わさお』は見るべきだ!」とか言ってきたんですけども。

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(みうらじゅん)その年だったと思います。14回みうらじゅん賞っていうので。それでトロフィーを渡そうと思って、その賞を運営してた会社の人がこの青森の方まで行って。わさおに渡してくれたんですよ。

第14回・みうらじゅん賞受賞

で、その模様をビデオに撮って、その賞では上映したんですけども。その時、まだ元気だった飼い主のおばさんが「何かお返しをしたい」っておっしゃって。わさおの抜けた毛をね、いっぱいビニール袋に詰めてね、くれたんですよ。

で、僕、この間ちょっと仕事場の整理してたら、その袋が出てきて。はじめは「何だろう?」って。もう忘れてたもんで。「何だろう? 誰かの陰毛でも入れてるのかな?」と思ったんですけども、まあよくよく考えてみたらわさおの毛で。「ああ、もらったんだな」と思って、なんかしみじみとしていたところにこの間の訃報を聞いたので。でもまあ、人間でいえばもう90以上ということで。老衰だっていうことも聞いたし。その前にあの飼っていたおばさんがお亡くなりになったんで。それのショックなのか、わさおも大量に毛が抜けてね。もう今までのわさわさ、ふさふさしてた感じのイメージじゃなくて、痩せ細った感じに一時なっていたのは知っていたんで。

「どうしたもんかな」と思ったけど、あそこのおじさんがね、引き継いで育てていたっていう話を聞いたんで。まあホッとしたんですけど。あまり直接、ご本犬には会ってないんですが、そんな思い出があって。ついついなんかこの間の、うん。訃報を聞いて、珍しく何かちょっとジーンと来たんですよね。

(大竹まこと)なんかちょこっとニュースで見たんだけども。「最初はこんなブサイクじゃなかったんですよ」みたいな話だったですよね、たしか。

(みうらじゅん)映画の中でもはじめ、「ぶさお」って言われているんですよね。で、ブサイク犬でぶさおって言われていたのが、薬師丸ひろ子さんの鶴の一声なのか、突然「わさお」に変わっていたんですよ。で、「あれ?」って思ったんですよ。映画を見た時には。だからはじめはたぶん「ぶさお」だったんじゃないですかね。名前。でもそんなに……よく見ると愛らしい顔していてね。

(大竹まこと)そうだよね。

(光浦靖子)かわいい。

(みうらじゅん)それで後に青森に行った時も、あそこの青森の駅前のところにアスパムっていうピラミッド型を模した土産物屋さんがあるんですけど。そこももう、わさおコーナーがあって。わさおの写真とかぬいぐるみとかいっぱい売ってるんですよね。だからすごい……まあ映画になるまでの犬ですからね。すごいやっぱり愛されていた犬だったんだなと思って。

(大竹まこと)そのいただいた毛はどうするんですか?

(みうらじゅん)いまだにビニール袋にギュウギュウに入ったままあるんですけれども。

(大竹まこと)そんなに量、多いんですか?

(みうらじゅん)まあそんなに大きいビニール袋じゃないんですけども。かっぱえびせんの小さい方ぐらいの大きさのビニール袋に入ってますので。もうしょうがないから、自分が後に……まあ下の毛でも落ちたらそこにクッとかまそうかなとは思っているんですけども。もう使いみち、ないですからね。

(大竹まこと)使いみちはね、ちょっとね。

(みうらじゅん)でも、これでこの間を見つけたので2回目だったんですけども。突然出てきて。なんだかを忘れてたのが。ドキッとしますよね。毛をもらっておくと。

(光浦靖子)やっぱり毛はちょっとね。

(太田英明)みうらさん、以前に「見たくもない映画を自分の責め苦のようにあえて見に行く」っていうのを……。

(みうらじゅん)いやいや、「見たくもない」っていうか、「自分には向いていないだろうな」っていう映画を情報のところから探しだして。重い腰を上げて映画館に行っくっていうを「修行映画」って呼んでたんですけど。当然、『わさお』もその一環だったんですけども。向いてないだろうなと思って行っているもんで、不意に結構感動シーンとかがあると、ボロ泣きなんですよね。

(光浦靖子)フフフ、自分が……そうね。構えてないというか。

(みうらじゅん)そうなんですよ。期待していない分、油断してるっていうんですかね? それで途中、「ストーリー、これは嘘だな」と思ったけども、心の温まるシーンとかも随分あったんで。もう割と嗚咽に近いぐらい、『わさお』では泣いたんですよね。

(光浦靖子)へー! だって賞をあげるぐらいですもんね。

嗚咽するほど泣いた『わさお』

(みうらじゅん)ええ。まあ、観客も少なかったんで、思いきり泣かせてもらったっていう感じなんですけど。まあ『わさお』は嗚咽しましたね。

(太田英明)大逆転で実はすごく自分にフィットしたっていう映画、他にパッと思いつくものってあったりしますか?

(みうらじゅん)その時期だったと思うんですけども。田村正和さんが出てた『ラストラブ』っていう映画だったんですけれども。それはニューヨークが舞台の、バードランドのサックスを吹いてる男の恋愛と何とかだったんですけども。田村正和さんと恋愛する人の年齢がもう孫ぐらいなんだけど。もうじいさんと孫ぐらいなんだけど、何か映画の中では成立していることに対して妙に感動したんですよね。ええ。「んなわけねえだろ」っていう話なんだけども、油断してますから。やっぱりどっかで「グッと来たい」と思ってるんでしょうね。それもちょっとお勧めですね、俺は。

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(太田英明)3年前ぐらいの映画ですね?

(みうらじゅん)そうですか? もうちょっと前だったんじゃないかな?

(光浦靖子)2007年公開。

(太田英明)ああ、13年前でしたか。伊東美咲さんがヒロインですね。

(太田英明)ええ。僕はその後、『PとJK』とかね、女子高生と……「JK」は「女子高生」っていう意味はわかっていたんですけども。「P」がわからなくて。「Pが知りたいな」と思って見に行ったんですけど……「ポリス」だったんですけどね。僕、ひょっとしてペニスかなと思って。「これ、どうしたもんかな?」と思ったんですけど。まあ、それも少女マンガ仕立てのキラキラ映画だったんですよ。

(光浦靖子)女子中学生が夢中になる……(笑)。

(みうらじゅん)そうなんです。で、当然映画館も周りはま若い女子ばっかりでね。そこにちょっとロン毛の薄サングラスの男って浮くんですよね。すっごい不審人物扱いを受けてるんじゃないかな?ってドキドキしながら見るっていうのもまた一興なもんで。

(光浦靖子)フフフ、苦行に(笑)。

(みうらじゅん)そうなんですよ。最近はちょっとコロナの影響でなかなか映画館までいけなくなっちゃっているんですけども。

(太田英明)亀梨和也さんと土屋太鳳さんの組み合わせの映画ですね。『PとJK』。

(みうらじゅん)そうです。あとはね、『チア☆ダン』とかね、そういう自分には到底不向きだろうなっていう映画を一時、行ってたんですけども。まあ動物映画の中では『わさお』が特にいいですね。ええ。

(大竹まこと)サングラスの親父っていたたまれないと思うけどね。

(光浦靖子)私は女子女子中学生の気持ちになっちゃった。みうらさんが来たら怖いよ(笑)。

(みうらじゅん)怖いですよね?

(光浦靖子)キラキラ映画見に行って……(笑)。

(みうらじゅん)僕、映画を見る前にハウレット買う派なんで。もうその席でパンフレットを……もう近場が見えないもんで。飲むようにして近づけてパンフレットを読んでる姿をやっぱり女子高生とかが見てるわけですよ。まあそれはかなりキモいっていうか、ヤバいですよね。でもまあ、俺だってそういう向いてない映画に行く権利はありますからね。

(大竹まこと)ギリギリ感はものすごいなっていうね。

映画を見る前にパンフを買う派

(みうらじゅん)そうですね。もうギリギリでしょうね。もうあのパンフを買う段階でそのタイトルを言った時に若い店員さんが何か、もうちょっと苦笑が出ている時、ありますから。でも、まあそんな中の修行の中で見つけた1本でしたから。『わさお』は。もうけもんだったんですよね。これ、ぜひともね、追悼のためにどっかで映画、テレビでかかればいいなと思ってるけどね。すごくかわいいですよ。本当に。

(光浦靖子)すいません。お時間が来てしまいました。ありがとうございます。

(みうらじゅん)ありがとうございます。

<書き起こしおわり>

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