辰巳JUNK マルーン5、BTS、近藤麻理恵を語る

辰巳JUNK レディ・ガガ、ビヨンセ、リアーナを語る MUSIC GARAGE:ROOM 101

辰巳JUNKさんが5月15日放送のbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』にゲスト出演。渡辺志保さんと著書『アメリカン・セレブリティーズ』について話す中でマルーン5、BTS、近藤麻理恵やパンデミック後のポップスター像などについて話していました。

(渡辺志保)ここで今週のゲストの登場です。今週も前回に引き続き辰巳JUNKさんをお迎えしております。ポップカルチャーウォッチャーとして主にアメリカ周辺のセレブリティー、音楽、映画、そしてドラマなどにも造詣が深くていらっしゃる。そして雑誌やさまざまなウェブメディアでも執筆されております。そしてそして先週に引き続きまして辰巳JUNKさんには先日、発表されました著書『アメリカン・セレブリティーズ』について、今週もたっぷりお話しを伺っていきたいと思います。辰巳JUNKさん、どうぞよろしくお願いいたします。

(辰巳JUNK)よろしくお願いします。

(渡辺志保)先週、ちょうどレディ・ガガ、ビヨンセ、リアーナの話なんかも伺ってきたところなんですけれども。

辰巳JUNK レディ・ガガ、ビヨンセ、リアーナを語る
辰巳JUNKさんが5月8日放送のbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』にゲスト出演。渡辺志保さんと著書『アメリカン・セレブリティーズ』について話す中でレディ・ガガ、ビヨンセ、リアーナなどについて話していました。(渡辺志保)...

この『アメリカン・セレブリティーズ』を読んで私が個人的に「ああ、そうだったんだ」っていう感じで興味深く読んだ章がマルーン5のところなんですよね。で、今まで個人的に……すごい失礼なんですけども。マルーン5のアダムについて、こんなに考えたことって1回もなくて。でも言われてみればたしかにこの10年、15年に渡ってずっとアメリカのチャートを牽引しているし。ことあるごとにいろんなラッパーをフィーチャーしてヒット曲を出しているっていうのはやっぱり、たしかに彼も唯一無二の存在だし。

「ロックが死んだ後のロックスター」みたいな形で辰巳さんがマルーン5のことを書いていらっしゃって。たしかになと思った次第です。私はやっぱりいつもヒップホップを中心に物事を考えがちというか、アメリカのエンタメのことも見がちなので。そのロックスターからの回答みたいな、そういった形で読ませていただきました。マルーン5。

(辰巳JUNK)そうなんですよ。この「ロックは死んだ」っていうの結構、概念っていうか。そういう慣用句的な感じで、本気で言ってるわけではないんですけども。やっぱりそのジャンルとかサウンドの死ってなんだ、みたいなのを真面目に突き詰めちゃうとあるので。だけど、マルーン5って面白いのは基本、日本でもたぶんそうかな? アメリカとかでは結婚式の定番ソングみたいな扱いらしいんですね。『Sugar』とかね。

(辰巳JUNK)やっぱり大衆的というか。スーパーでかかっている感じなんですけど。冷静になると15年ぐらい、ずっとチャートのトップにいるのはやっぱりどういうことだ、みたいな感じなんですけど。このマルーン5っていうか、そのフロントマンのアダムが面白いのは、ロックをめっちゃディスっているんですね。

(渡辺志保)ねえ。それを私も今回、このアメセレで初めて知って。「ああ、そういう立ち位置だったんだ」と思って。

(辰巳JUNK)そう。やっぱり結構ロック……オルタナティブっていうか、ポップロックだから、「やっぱりロックじゃなくない?」みたいな扱いを受けたこともあるかもしれないんだけど。なんかね、「ロックはノスタルジーだから」みたいな感じで、すごい結構毒舌でしゃべるんですよ。アダムって。で、その彼がどういう音楽を目指しているかっていうと、やっぱりヒップホップとR&Bとソウルにすごい影響を受けていて。もうアダム本人も「それらとリズムしか意識してない」みたいな感じで言っちゃっているんですね。「ロックってどこにあるわけ?」みたいな感じでもう宣言してて。そういう、そのラップとかR&Bとかをサウンドに取り入れたから、最近のりロックが落ちてラップが上がった時代にずっとトップにいられたんじゃないかっていうのが結構言われてるみたいで。そこらへんをね、SoundCloudラッパーとかと絡めて書いています。

(渡辺志保)本当におっしゃる通り。だから今、急に……「急に」でもないですけど。そのマルーン5がカーディ・Bと一緒に曲を出してもそんなに違和感ないっていうか。「何でこの組み合わせなの?」っても……ちろんちょっと意外性とか驚きはあるけれど、そこまで「いきなりこんな変なコラボをしました」みたいな、そういう感じがしないのは、彼がこれまで10年以上に渡って築いてきたものがあるからなんだなっていう風にも思ったし。

で、先週から繰り返すけど鮮やかだなと思ったのは、この章ではそのロックスターを軸にして今、辰巳さんが仰ったようにSoundCloudラッパーたち……またとえばリル・ピープであるとかXXXテンタシオンであるとかリル・ウージー・ヴァートであるとか。そういったラッパーたちを紐づけているのと、今の新しいロックスターとしてポスト・マローンの名前も挙げているっていうところに「さすが辰巳節はすごいな!」という風に思った次第ですね(笑)。

(辰巳JUNK)そのロックスターを嫌いなアダムが天下を取った後に、そのロックスターを名乗るラッパーたちがめっちゃ流行り始めたっていうね。その結構面白い流れがあるよっていうことを書いてます。

(渡辺志保)まあ、惜しくも若くして命を落としてしまいましたけれども。たとえばリル・ピープとかももし彼が15年、20年早く生まれていたら、絶対に彼はロックをやってたと思うんですよね。でも、そんなリル・ピープみたいな若者が今、「音楽」の表現手段として選んでいるのがラップ、そしてヒップホップのフィールドであるっていうのは個人的に非常に面白いなという風に思っていて。それをすごい明確にその道筋を記してくれたのがこの辰巳JUNKさんの本だなと思って。めちゃめちゃ頷きながら読みました。

(辰巳JUNK)ありがとうございます。

(渡辺志保)というわけで、ここでじゃそのアダムがどんな風に歌っているかを皆さんにも聞いていただきたいと思うんですけれども。そのマルーン5の代表曲とも言っていいですかね? 大ヒットした曲です。辰巳JUNKさんから曲紹介をお願いできますでしょうか?

(辰巳JUNK)はい。カーディ・Bが客演したマルーン5『Girls Like You』です。

Maroon 5『Girls Like You ft. Cardi B』

(渡辺志保)はい。ただ今、お聞きいただいたのはマルーン5『Girls Like You ft. Cardi B』でした。このミュージックビデオもすごい話題になりましたよね。いろんな女性のアイコンみたいな方たちが出てきて。

(辰巳JUNK)そうですね。『ワンダーウーマン』のガル・ガドットとかメアリー・J.ブライジ姉さんとか。特に女性がすごいたくさん出てアダムを囲むっていう謎の……たぶんエンパワーメント的な。ドレイクもやっていた的なやつなんですけど。

(渡辺志保)そうそうそう。『Nice For What』でドレイクもやっていたし。でも、こういうことができちゃう男性アーティストっていうのも考えてみたら少ないのかな?って今、話しながらちょっと思いましたね。

(辰巳JUNK)そうですね。なんかやっぱりね、アダム……マルーン5とかあとエド・シーランとかもそうなんですけど。まあ要領がいいですよね。やっぱりその、結構流行りのサウンドをやりつつ、自分の作風も通してヒットさせるみたいな。

(渡辺志保)たしかにで。で、最初にこの『アメリカン・セレブリティーズ』。レディ・ガガを筆頭にいろんなセレブリティーズについて触れていらっしゃるということなんですけれども。ひとつ、本の軸になってるのが「新たなフェミニズムの潮流」みたいな。そこにひとつ、テーマがあるのかなという風にも勝手ながら思ったんですよね。で、レディ・ガガにしろ、ビヨンセにしろ、リアーナにしろ……今までになかった形でそのフェミニズムを自分で表現してる、体現してるっていう。そこがなかなかこの2010年代のポップカルチャーにおいては大事なところだったんじゃないかなとこのアメセレを読んで改めて私も感じたところですね。

(辰巳JUNK)そうですね。やっぱりそれと同時に、これはブラッド・ピットの章で書いたんですけど。その「男性の表現」っていうのもだんだん変わってきて。まあ流行りとかもあるんですけど。こういうのって。その中で結構、信念を持ってやってるアーティストも……「流行りだけじゃない」じゃないみたいな人もたくさんいるっていうか。この章で扱ったのはだいたいそんな感じの人なんですけど。あと、結構そのひとつに収まってないリアーナの章とかでも書いたんですけど、結構意見が分かれいて。同じフェミニストの人でも喧嘩というか、議論とかをするので。そういうところも一筋縄ではいかないっていうところを書きたかったっていうのはあるかもしれませんね。

(渡辺志保)でもその「一筋縄ではいかない。でもそれがいいんだ。その考えでもいいんだ。そういうスタイルでもいいんだ」っていう、まあすごい乱暴に括ると「多様性を認める」。それで自分と違った意見の人、自分と違った出自の人もお互いが認め合うというか。存在を認め合うっていうのもこの10年の大きな流れかなという風にも勝手に思っていて。そんな中、やっぱりここ数年で結構デカかった出来事といえば、アメリカのエンタメ界にアジア勢がどんどん乗り込んでいった。

テイクオーバーしていったっていうのも、同じアジア人としては非常に拍手喝采というかね。すごい出来事だったなと思いますし。このアメセレにおいてはそこを……まあBTSについて取り上げていらっしゃったり。そして我らが……「我らが」とか勝手に言っちゃうけども。近藤麻理恵師匠についても触れていらっしゃったりっていう。そこを入れたというか、そういったアジア系のアーティストもフィーチャーさっていうのはちょっと意識的なところもあったんですか?

(辰巳JUNK)これはですね、BTSはソーシャルネットワーク、SNSみたいなのが流行って、そのアメリカのポップスターの像がちょっと完璧というか、バービー人形みたいなものからどっちかというと親しみやすい感じに流行りが移っていったよという章に書いてあるんですけど。そのBTSの場合はあんまり意識せずに、もうアメリカのポップブースターの話だけを追っていたら自然に出てくるっていう感じの立ち位置ですね。

SNS時代の親しみやすいポップスター

(渡辺志保)なるほど。その、身近に見えるアーティストの方がファンも親しみやすいっていうのは私も非常に……カーディ・Bがブレイクした時にやっぱりそれをすごい感じて。辰巳さんもこの中でちょっと触れてたけど、やっぱりニッキー・ミナージュとかは本当に作り込んだ世界観。自分を自らバービー人形に見立てて、それでファンを獲得していったんだけど、その5、6年後にカーディ・Bがもう本当、どすっぴんでインスタでライブをブワーッとやっちゃって。それを何万人が見るみたいな、それってめちゃめちゃドラスティックな変化だったと思うし。

でも、「それでいいんだ」っていう風に、そっちの方が人気を多く獲得するんだっていうのはやっぱり、書いていらっしゃる通り大きな転換期だったのかなっていう風に思いましたね。で、そこにBTSをぶつけてくるっていうのにいい意味で驚きというか、発見もあったのと……あとはこんまり師匠については辰巳さん、今回は「禅」というかね、その日本っぽいスピリチュアリティーについて彼女のことを評しているわけですけども。彼女のこのブレイクっていうのはどういう風に見ていらっしゃいますか?

(辰巳JUNK)いや、もうこんまり導師は本当すごいですよね。元から本は人気あったけど。海外とかでも。それは一部のそういう余裕のある暮らしみたいな、そういうのが好きな人たちの間で人気があったんだけど、Netflixで番組をやったお陰でなんかめっちゃメジャーな、社会現象みたいになって。1年で……しかも番組では日本語とかもしゃべっているのに、1年でスーパースターっていうか、アカデミー賞とかにも呼ばれるレベルになるっていうのはやっぱり面白いなと思って。いろいろ調べると、その日本の文化の中でスピリチュアルみたいなのがアメリカで需要がかなり高まっているみたいな論考とかが見つかって。それで「面白いな。というか、どうなっているんだ?」みたいな感じで書いたということですね(笑)。

(渡辺志保)だから、カニエ・ウェストもNetflixで公開されているデビッド・レターマンていう超有名司会者の方のトーク番組で言ってるんですけど。「自分の家は侘び寂びを意識して作った」っていうことをカニエも言っていて。だからそれがこのアメセレのこんまり先生の章で「ああ、つながった! 近藤麻理絵とカニエ・ウェストが私の中でつなかったぞ!」みたいな感じで。やっぱり今、そういうのがこの情報化社会において、日本のそういった側面が求められているっていうのはちょっと面白いですよね。そこはね。

(辰巳JUNK)そうなんですよね。で、最近だとディズニーのCEO……もうやめちゃったのかな? その人の伝記の日本語版が出て。そこでもこの本の中で紹介したんですけど。「すきやばし次郎の映画(『二郎は鮨の夢を見る』)をディズニー社員全員に見せている」みたいなのを書いてあって。この人気、半端ないな!っていう。その精神性、職人魂とかスピリチュアル感みたいなところの人気は本当にすごいみたいですね。

(渡辺志保)セレブもみんな今、メディテーションとかやってますもんね。

(辰巳JUNK)そうですね。その瞑想みたいなのはね、やっぱり今、おうちにこもっているセレブが多いので余計、増えてるみたいですね。

(渡辺志保)なるほどね。で、ちょっとそのアジア系というところに話を移すと今後、辰巳JUNKさん的にはアジアのアーティストっていうのはアメリカにおいてもっと存在感を増すと思いますか?

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