渡辺志保『今日は一日”RAP”三昧』スラング解説まとめ

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渡辺志保さんがNHK FM『今日は一日”RAP”三昧』の中で「ヒップホップスラング辞典」と題し、ヒップホップ・ラップ曲の歌詞でよく使われるスラングについて解説していました。

(渡辺志保)渡辺志保のヒップホップスラング辞典! 『今日は一日”RAP”三昧』をお聞きのみなさん、こんにちは。音楽ライターの渡辺志保です。ここから、私がコーナーMCを務めさせていただきますヒップホップスラング辞典をお届けします。第一回ということで、私、渡辺志保。NHK FMをお聞きのみなさんとははじめましてですので、まずは軽く自己紹介をさせていただきたいと思います。

普段は英語で書かれたラップの歌詞の対訳や、あとはヒップホップにまつわるニュースの原稿を書いたり、あとはこうしておしゃべりの仕事をさせていただいております。この番組は10時間、ラップミュージックを取り扱うということで、私もすごく興奮しているんですけども。このスラング辞典のコーナーはある種の清涼剤としてみなさんにお届けしたいと思います。ありがたく、宇多丸さんのご指名によりこのコーナーを担当させていただくことになりましたので、どうぞお付き合いのほど、よろしくお願いします。

このコーナーは「ヒップホップスラング辞典」という名前なんですけども、「スラング」とはもともと流行り言葉。日本でいう「流行語」という意味がある言葉です。日本と同じくアメリカのスラングもかなり時代によって移り変わりが激しいものになります。そして、ヒップホップ・ラップミュージックの中にはいつも常に新しいスラングがどんどん山ほど登場してくるというのが常でして。このコーナーでは各時代に合わせたヒップホップスラング、ヒップホップの中で歌われる流行語を紹介していきたいと思います。

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「Dis」「Represent」「Beef」

ではまず第一回、紹介させていただきたいのは、いまやいちばん有名になったと言っても過言ではないこのヒップホップスラングからご紹介しましょう。「Dis(ディス)」です。語源は「Disrespect」。「尊敬」という意味の「Respect」という言葉に否定を表す「Dis」がくっついて「Disrespect」という言葉が語源になりました。誰かを罵ったり、悪口を言うことを指すんですけども、この「Dis」が高じて論争やケンカ状態になることを「Beef(ビーフ)」とも言うんですね。もともと「Beef」という言葉は「牛肉」を表す言葉と同じスペルなんですけども。もともとアメリカの英語では諍い・面倒を起こすといった意味で、たびたびこの「Beef」という言葉が使われることから、ヒップホップの世界でもケンカ状態になることを「Beef」という風に言ってきました。

そしてもうひとつ、ヒップホップはとても地元意識が強く、自分の地元や縄張りを背負うという心意気も重要視される音楽です。そうした際に、自分の地元を背負う心意気のことを「Represent(レプリゼント)」とも言うんですね。「レペゼン」という風に聞こえることもあります。というわけで、自分が「レペゼン」する地元を「ディス」られて、その結果「ビーフ」に転じてしまうことが多いということですね。過去にはそのビーフが拡大してニューヨークを中心とする東海岸とロサンゼルスを中心とする西海岸の間に大きな亀裂が生じ、結果凄惨なヒップホップシーンの対立を生んでしまったこともあります。

東海岸を代表するのはザ・ノトーリアス・BIG。そして西海岸を代表していたのは2パックというラッパーがいたんですが、結果的には2人とも何者かによって銃殺されてしまうという非常に悲しい結果に終わったビーフでございました。そこで、これからいま紹介させていただきたいのはMCシャンというラッパーが発表した『The Bridge』という曲です。こちらのMCシャンはニューヨークのクイーンズと呼ばれるエリアの出身。そして、もともとヒップホップはサウス・ブロンクスというエリアで発祥したとも言われているんですが、この『The Bridge』という曲ではMCシャンが「クイーンズこそがヒップホップ誕生の地だ!」と主張をしまして、その結果大きなビーフになったと言われております。当時は曲を使って、その曲の中でお互いをディスることが一般的で、その文化はいまも脈々とヒップホップのシーンに受け継がれています。それでは、聞いてください。MCシャンで『The Bridge』。

MC Shan『The Bridge』

(中略)

お金にまつわるスラング

(渡辺志保)流行語という意味のスラングですけども、ヒップホップの楽曲にはとてもたくさんのスラングが登場します。ということで、第二回目のヒップホップスラング辞典、なにをご紹介するか? といいますと、今回はお金にまつわるスラングをご紹介したいと思います。代表的なスラングは「Cream(クリーム)」という言葉がありまして。ホイップクリームなんかを表す言葉と同じスペルですが、なにが語源になっているか? といいますと、ウータン・クランというラップグループの名曲のタイトルです。「Cash Rules Everything Around Me(金が全てモノを言う)」という、そういった意味の曲のタイトルの頭文字を取った造語(「C.R.E.A.M.」)になります。

この曲のサビは「Cash rules everything around me, C.R.E.A.M. Get the money, dollar dollar bill, y’all」という風に景気良く続くんですけども、この楽曲の内容がそのままお金を表すスラングになりまして、「クリーム」と言えば「お金」というスラングが誕生しました。ヒップホップシーンというのはとかく拝金主義、そして成り上がり主義といいますか、みなさんお金が大好きでして。それゆえ、お金にまつわるスラングがとても多いんですね。

たとえば、お札には歴代の大統領の顔が印刷されていることも多いので、「Dead Presidents(デッド・プレジデンツ)」。まあ、「亡くなった大統領」という意味ですけども。「デッド・プレジデンツ」という風に呼ばれたり。

お札の色が緑色をしていることから「Green(グリーン)」と言うこともあります。そして、生活保護を受給している人たちには政府から「Government cheese」といって、お金の代わりの食料のチーズが配られたという逸話もありまして、そのことから、お金そのもののことを「Cheese(チーズ)」。そして「Cheddar(チェダー)」とか「Parmesan(パルメザン)」。チーズの種類になりますけど、そういったものは全てお金という意味のスラングとして使われることがあります。

それが転じて、パンを表す「Bread(ブレッド)」なんかもお金の意味を持つスラングとしてヒップホップの曲の中には登場することが多いですね。そんなお金の羽振りがいい人のことを、バスケットボールの選手には高所得者の人が多いということから転じて「Baller(ボーラー)」と呼ぶこともあります。「Balling(ボーリング)」とか「Ball(ボール)」とか言ったりして、そういった形でヒップホップの曲の中には登場します。それでは、最初に紹介したウータン・クランのキャリア初期の名曲です。こちらを聞いていただきたいと思います。渡辺志保のヒップホップスラング辞典第二回はお金にまつわるスラングを紹介しました。ウータン・クランで『C.R.E.A.M.』。

Wu-Tang Clan『C.R.E.A.M.』

(中略)

イケてる自慢のスラング

(渡辺志保)ヒップホップの中に登場する流行語をあれこれここでお伝えさせていただいているんですけども、第三回目のヒップホップスラング辞典、なにをご紹介するかと言いますと、「Swag(スワッグ)」という単語。こちらをみなさまにご紹介したいと思います。この「スワッグ」という単語なんですけども、「俺はこれだけのことができるんだ!」という自信や、自分にしかない強烈な個性など、とにかく自分自身がいかにすごいか? ということを自慢する時に使う単語です。

スワッグがある人ということは、非常に自信がある人。そして勝ち組という意味もありますね。で、いま後ろでかかっている曲なんですが、これはソウルジャ・ボーイという若手ラッパーの『Turn My Swag On』という曲です。

で、これはどんな意味かといいますと、「朝起きて、俺のスワッグスイッチをONにするぞ!」という、やる気に満ちた曲になってまして。こういった形でスワッグという言葉が非常に多く使われ、リスナーの間でも大流行したということがあります。

ヒップホップというのは自分がいかにかっこいいか? ということを自慢する。それもひとつのヒップホップを構成するエレメントの側面なんですね。なので、俺様自慢という意味のスラングは非常に多く、「かっこいい」という意味のスラングはラップの曲の中にとても多く登場するんですね。たとえば、古くから使われる「Fresh(フレッシュ)」。そして「Cool(クール)」といった一般的なものから、真実という意味の「True(トゥルー)」。そして本物という意味の「Real(リアル)」をかけ合わせた「Trill(トリル)」というような表現の仕方もあります。

また、「相手が死んじゃうほど俺はヤバいんだぜ」という意味から「Kill(キル)」とか「Killer(キラー)」といった風に表現することもありますし、「火がついていてとても熱いんだ」という意味が転じて、かっこいいことを表す「Lit(リット)」という単語も最近ではとても人気のスラングになっております。

ここでまた1曲、みなさんに聞いていただきたいんですが、これから聞いていただく曲は『Swagger Like Us』。「俺たちみたいにスワッグがあるやつらはなかなかいないだろ?」という、本当にスワッグ自慢の曲になっております。歌うのはいまも昔のシーンの第一線で活躍するT.I.、カニエ・ウェスト、ジェイ・Z、リル・ウェインといったラッパーたちが集って俺たちのスワッグを繰り広げている曲なので、ぜひぜひ聞いてください。『Swagger Like Us』。

TI feat. Kanye West, Jay-Z, Lil Wayne『Swagger Like Us』

(中略)

車にまつわるスラング

(渡辺志保)ここまで三回、お送りしてきましたので、みなさんだいぶラップの流行語とも言えるスラングについて学ばれてきたかと思います。今回は最後、四回目となりました。最後のヒップホップスラング辞典でご紹介するスラングは「Skrrt(スカー)」をご紹介したいと思います。この「Skrrt」という単語なんですけども、なかなかトリッキーなスラングでして。これはもともと何の意味だったかといいますと、車が急ブレーキを踏む音。「キキーッ!」っという急ブレーキを踏む音を表した擬音語が「Skrrt」という音になります。

それが転じてヒップホップの曲の中では高級車を乗りこなしている様子や車で走る。イコール、勢いがいい、調子がいい様子などを表すスラングとして最近、使われるようになりました。最近のヒップホップヒット曲には本当にこの「Skrrt, Skrrt」というような擬音語がそのままスラングとして登場することが非常に多いんですね。

また、車はヒップホップ文化には非常に欠かせないものになります。車つながりのスラングっていうのはとても多いんですけども、たとえばオープンカーの屋根を開けて走ることを「Drop Top(ドロップトップ)」という風に言ったり。

あとはヒップホップシーン特有の短縮形のスラングもありまして。たとえば高級車のフェラーリを「Rari(ラリ)」。BMWのことを「Beamer(ビーマー)」と呼んだりもするんですね。

最近ではいくつもの高級車を所有していることから「俺の家の車庫でまるでレースができちゃうぜ」という意味を含んだ「MotorSport(モータースポーツ)」というスラングが登場したり。

BMWの車種で白と黒の車体カラーをしたものがあるんですけど、その車がまるでパンダのように見えることをラップした『Panda』という曲がヒットしたこともあるんですね。

というわけでラップと車の関係性はとても深いことがわかるかと思います。それではここで、最初にご案内したスラング「Skrrt」という言葉が頻出する近年の曲を聞いていただきたいと思います。コダック・ブラックというまだ非常に若いフロリダ出身のラッパーが2015年に発表した代表曲です。コダック・ブラックで『SKRT』。

Kodak Black『SKRT』

<書き起こしおわり>

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