町山智浩さんが2020年4月21日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で海外ドラマ版『ウォッチメン』を紹介していました。
HBO'S Watchmen: I knew going in this one was going to be awesome and it didn't disappoint on any level. The most surprising part for me is that it actually followed the original comic more faithfully than the movie. pic.twitter.com/3c84eCKe2y
— House of Ross (@digitalinkfreak) April 14, 2020
(町山智浩)それでもう1本、ご紹介するのも刑事物なんですけども。刑事物なんだけど、スーパーヒーロー物でもあるというね、両方が組み合わさったものなんですけど。『ウォッチメン』というテレビドラマなんですが。それを紹介したいんですが。これはね、『ウォッチメン』っていうのは元々、原作がありまして。これはね、大変なアメリカンコミックだったんですよ。まあ、イギリスのコミックスなんですけども。1987年に出た作品なんですが。アラン・ムーアという人が描いたんですけれども。それまでのそのアメコミっていうのはだいたい読者が子供を対象として考えてたんですね。ところが、これはそうじゃなくて完全に大人向けのものなんですよ。どのくらい大人向きかって言うと、もう中身はもう政治とセックスと暴力なんですね。
(山里亮太)ああ、全然子供向きじゃないですね。
(町山智浩)もう全然、子供が理解できないような内容なんですね。で、ただこれで、アメリカンコミックっていうのはそれまでのような「マントを着てタイツを履いたスーパーヒーローたちが悪者をやっつける」というものじゃなくなったと言われてるんですよ。元々、そうじゃなかったところに進んでいたんですけども、この作品で一気にガッと、なんというか文学作品ですとして評価されるという事態になったのがその『ウォッチメン』だったんですね。で、これはそれの続編になるんですけども。この『ウォッチメン』というのはものすごく難しくて複雑でややこしい話なんで。その話を説明しますと……『ウォッチメン(Watchmen)』っていうのは「ウォッチする」だから時計の「Watch」ではなくて「監視する人」ってうい意味なんですよ。
(山里亮太)うんうん。
(町山智浩)「監視する人たち」という意味で。これ、具体的には2人の監視者が出てくるんですね。そのうちの1人がドクターマンハッタンという名前の超人なんですけども。彼はその核実験の副作用で時空を超えたエネルギー体みたいな存在になってしまった人なんですよ。で、どこにでも存在することができるし、過去と現在と未来の同時に存在してるんですよ。
(外山惠理)ええーっ!
神のような存在・ドクターマンハッタン
#ScienceBehindtheFiction: #Watchmen's Doctor Manhattan's real nuclear potential – SYFY WIRE: #ScienceBehindtheFiction: #Watchmen's Doctor Manhattan's real nuclear potential SYFY WIRE https://t.co/ln2TwbZ9Rx pic.twitter.com/YAeUrwqnLn
— Elly Shobeiri?? (@EllyShobeiri) October 16, 2019
(町山智浩)すごくね、量子力学的な存在というものになっちゃうんですよ。すごく難しいんですけど。だからはっきり言うと神みたいな存在です。なんでもできるんですよ。全ての物質は原子でできてますけど、全ての原子の組成とかをいじったり、時間を変えたりすることができるので。時間を超えたりすることができるので、ほとんど神なんですよ。で、この人は全身が青い姿をしてるんですけど、神だから服を着てるのは変ですよね? 神様なのでね。「神様のその服、誰が作ったんだ?」っていう問題になるわけだから。なのでこのドクターマンハッタンはいつもフルチンなんですよ。
(山里亮太)フフフ(笑)。
(町山智浩)でね、フルチンさんも描いてあるんですよ。それで、映画化もされているんですけど、その時もちゃんとフルチンさんは映っていたんですよ。
(外山惠理)映画にも?
(町山智浩)映画にも。ただ、日本の人は知らないですよ。アメリカだと丸見えなんですよ。だからね、アダルトですよ!
(山里亮太)かなり直球のアダルトですね!
(町山智浩)そう(笑)。直球にアダルトなんですけども。この人、丸出ししたままね、話はベトナム戦争の頃の話で。1960年代後半で。スーパーパワーを持ったその神のような存在になったドクターマンハッタンがベトナム戦争に参加して、アメリカがベトナム戦争で勝っちゃんですよ。で、ベトナムもこの世界ではアメリカの州になっちゃっうんですよ。現実とは違うんですね。だからもうひとつの時間の軸に流れていくんですよ。それで、ベトナムをアメリカが占領してしまったものだから、逆にソ連との対立が激しくなるんですね。それでソ連とアメリカは核戦争の危機が近づいてくるんですよ。その時、もう1人の超人がいまして。その人はスーパーパワーは持っていないんですけども、ものすごく頭がいいんですね。それで大金持ちなんです。オジマンディアスという名前なんですが。
(山里亮太)はい。
天才大金持ち・オジマンディアス
Ozymandias dans Watchmen pic.twitter.com/iagaz8K9T0
— Maryland (@Maedony) April 19, 2020
(町山智浩)で、その人がそのアメリカとソ連の核戦争を止めるためにはどうしたらいいのか?っていうことで、「宇宙からの侵略者が来たっていうことにすれば人類はひとつになって戦わなければならなくなるから、核戦争が終わるだろう」ということで、宇宙からの侵略者をでっち上げちゃんうんですよ。で、ニューヨークを襲わせて何百万人もそれで殺しちゃうんですよ。
(外山惠理)ええっ! 恐ろしい……。
(町山智浩)そう。恐ろしいんですが、その彼、オジマンディアスが言うには「これは地球の平和のためだ。戦争を防ぐためなんだ。共通の敵を持てば人類は戦争を止めるだろう」っていうことで宇宙からの侵略者をでっち上げるっていう話なんですね。それでそのオジマンディアスという大金持ちの天才とドクターマンハッタンというスーパーパワーを持った神のような存在が地球を監視していくという話なんですね。で、その後の世界がこのテレビシリーズで描かれるんですけども。じゃあ、そういう『ウォッチメン』によって見張られているんだから、世の中は良くなってるのか?っていうと、全然良くなっていないという。そういう話でね。
舞台がオクラホマというアメリカで最も遅く州になったところなんですね。オクラホマっていうのは元々ね、アメリカ中のインディアンの人たち、先住民の人たちから無理やり土地を奪って、そこに住まわせていたところなんですよ。荒野なんです。何もないところなの。だからもう、「インディアンのお前ら、ここは畑になるいい土地だからみんな出ていけ! お前らはこの荒れた土地に住め!」っていうことで押し込んだところなんですけど。ところが、だんだんアメリカで移民が増えてきて、人が住むところがなくなっちゃったから、そのインディアンの人たちが住んでいたオクラホマを「ああ、やっぱり俺たち、住むところがないから俺たち白人に寄越せ!」って奪っちゃったんですよ。
(外山惠理)あら……。
(町山智浩)まあ、酷い話なんですよ。それでそこのオクラホマのタルサという実在の街が舞台なんですが、主人公は婦人警官なんですね。で、これ写真があるんですけども、この黒人の女性が婦人警官で。レジーナ・キングというアカデミー賞を取った女優さんがやっていますけども。この人はね、いつもマスクをして顔を隠して、名前を隠してシスターナイトっていう名前で刑事をやってるんですよ。
Costume designer Meghan Kasperlik, showrunner Damon Lindelof, and the stars of HBO's Watchmen discuss creating the looks for Sister Night, Ozymandias, Looking Glass, and more. https://t.co/pqSVCjTuGU pic.twitter.com/T1keDeSiFF
— IGN (@IGN) November 23, 2019
(山里亮太)うん。
(町山智浩)この世界では警察官はみんなマスクをかぶってヒーロー名を名乗って警察活動をしているっていう世界なんですよ。みんながね、スーパーヒーロー名みたいなのを持っていて、本名は絶対に語らない。仲間同士でも自分の本名は言わないんですよ。だからね、みんなマスクをしているから、今のアメリカみたいですよ。
(山里亮太)ああ、そういうことか。今はね、ウイルスで。