町山智浩 トランプ大統領のイスラム圏からの入国禁止令を語る

町山智浩 トランプ政権の閣僚の顔ぶれと選考基準を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でドナルド・トランプ大統領が発令したイスラム教圏の7ヶ国からの入国を禁止する大統領令について、その影響などを話していました。

(町山智浩)告知があります。すいません。他局なんですが、BS朝日の番組でもう月一でやっているんですが、『町山智浩のアメリカの”いま”を知るTV』っていうのをやっているんですよ。それの次の回が……もう5回目になるのか。明日、2月1日の水曜日、夜11時から放送なんで、ぜひ見ていただきたいんですが。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)山ちゃんんの番組、裏じゃない?

(山里亮太)何時間ぐらいやるんですか? 町山さん。

(町山智浩)夜11時から1時間なんですよ。

(山里亮太)あ、じゃあ大丈夫。僕、1時からなんで。お気遣い、ありがとうございます。町山さん。

(町山智浩)あ、大丈夫ですか。よかったです。すいません。まあ、そういうことで、今回は大統領就任式の時に実は僕、ビデオをいっぱい回していたんですよ。それを使ったルポ形式でやりましたんでぜひご覧になってください。

(赤江珠緒)だって町山さんが催涙弾を浴びたっていう話、聞きましたよ。

(町山智浩)そうそう。あと、8200本の大麻を巻く現場で巻くのを手伝ったりしてますが。

(赤江珠緒)なにをやっているんですか(笑)。

(町山智浩)さすがにBS朝日は放送できないそうで、そこはカットするそうですけどね。はい(笑)。

(山里亮太)いまのアメリカのことは知りたいですよ。どえらいことになっていますよね、町山さん。

入国禁止の大統領令の影響

(町山智浩)そう。大変なことになっちゃっているんですよ。特に、ウチはカミさんがシリコンバレーのITとかで働いているんですけど。シリコンバレーの人たち……ITに限らないですけど。ニューヨークの株関係の方もそうなんですけど、とにかく中東とビジネスをしている人たちがいっぱいいるんですよ。で、行ったり来たりしながら働いている人たちがいっぱいいて。あと、研究者にも多いんですね。数学が強い人が多いらしくて。あっちの方の人たちは。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)あと、Googleとかあっち向けのソフトとかを開発するのに、中東の人を雇ったりしてますからね。まあ、いっぱいいるんですけど経営者もいるぐらいなんですけども。イラン系の人はアメリカと二重国籍が多くて。イラン革命の時にこっちに亡命した人とか、結構ビジネスで成功しているんですよ。で、みんな突然入国できなくなったですね。アメリカに。

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)空港に着いたら入れないと。で、いちばんひどい目にあっているのは、イラクってアメリカ側についてISIS・イスラム国と戦っていますよね。ずっと、イラクは。あと、あの周辺にクルドの人たちがいるんですけど、クルドの人もずっとアメリカと一緒にISISと戦っているわけですけど、その人たちもアメリカに入れなくなりましたね。

(赤江珠緒)ねえ! あれっ?っていう。

(町山智浩)アメリカ軍と協力体制を持っているわけですよね。彼らはね。そしたら急に「アメリカに入るな!」って言われて、これはひどいなと。

(山里亮太)そう。全然細かい所、考えてない。

(町山智浩)考えてないですね。アメリカ軍関係者のイラク人も入れないんですよ(笑)。さすがにこれはどう考えても憲法違反であると。特に、トランプは発言しているんですが、「クリスチャン(キリスト教徒)だったら入れてもいいよ」ってインタビューで言っちゃっているんですね。

(山里亮太)それはおかしな話になってきますね。

(赤江珠緒)そうなると、宗教で区別をしちゃう?

(町山智浩)これはね、アメリカの憲法の修正第一条に「宗教で人を差別しない」ということとが書いてあるんですよ。で、もともとアメリカはキリスト教の中でも異端と言われたようなピューリタン(清教徒)が宗教的迫害を受けてやってきた国なので。

(赤江珠緒)そうですよね。歴史をたどればね。

(町山智浩)そうなんです。だから宗教で絶対に差別をしてはいけないというのは建国の理念なんですね。だから憲法の第一条に書いてあるんですが、それに違反しているということで連邦の裁判所と司法長官に代理……司法長官はいま空席なので司法長官の代理が「これは憲法違反であるからトランプの入国禁止令には従えない」と言ったのですが、そしたらトランプはその司法長官代理を解任しました。

(山里亮太)そう。それをやっちゃうからもう、なにも刃向かえないもんね。誰も。

(町山智浩)憲法っていうのは「法の支配」っていう理論があって、大統領よりも上にあるんですよ。だいたいどこの国もそれで憲法が国家のいちばんトップにあるんですけど。「憲法違反だ」って言ったらクビですから。

(山里亮太)じゃあもう、やりたい放題じゃないですか。

(町山智浩)そう。「立憲主義」っていう近代国家の基本的なものというのは、アメリカのハミルトンという人がアメリカ建国時に作ったんですね。まあいま、全世界の基本的な国の仕組みは三権分立と法の支配で成り立っているんですが、アメリカが始めたのに、アメリカがいちばん最初にそれを捨てると言っているんですよ。

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(赤江珠緒)もうとんでもないな。根幹中の根幹ですもんね。

(町山智浩)ものすごいことになっていますね。それだけじゃなくて、イスラム教徒を登録制度にすると。「イスラム教徒であるっていうことを登録しろ!」って言ってるんですが、これは前にナチがユダヤ人に対してやったことですね。登録制度は。それと、やっぱり国に入る時にイスラム教徒かどうかを要するにチェックするということになるわけですよ。「クリスチャンなら入れる」というトランプの言い方だと。これは日本で昔、やりましたね。それを。

(山里亮太)踏み絵ですね。

(町山智浩)踏み絵っていうやつですね。鎖国っていうやつですね。それをいま、やるみたいですよ。これから(笑)。

(山里亮太)大丈夫なんですか? これ、周りにそういうのをもう少しちゃんとたしなてくれる大人はいないもんなんですかね?

(町山智浩)あのー、そういう人たちはいたんですけど。国家安全保障省というところでそういう入国管理とかに関して相談するんですが、そこを全部入れ替えちゃってました。

(山里亮太)そうか。前に町山さんが言っていたとんでもない人事で全部。

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(赤江珠緒)しかしこの人が大統領だもんね。

(町山智浩)そう。ブライトバートというアメリカの右翼ニュースサイトがあったんですね。日本にも右翼ニュースサイトがいっぱいありますけど、そこの編集主幹がいま、アメリカの大統領の最高戦略官なんです。で、トランプはそのスティーブン・バノンさんという人の言う通りに動いているんで、実際にいまアメリカを動かしているのはこのスティーブン・バノンという右翼ニュースサイトの編集主幹がアメリカをいま、動かしています。

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(山里亮太)結局誰かに操られて、変な感じになっちゃうと思っていたんだよ。うわー、恐ろしい……

(町山智浩)そう。このスティーブン・バノンは元ゴールドマン・サックスの株屋さんで、ハリウッドの映画プロデューサーで、政治経験ゼロです! これがいま、アメリカを仕切っていますよ。

(山里亮太)どんどんこれ、えらいことになっていくかもしれないですね。

(町山智浩)すごいことになっていくだろうなと思いますね。すでにIT関係とかスターバックスとか金融関係もそうですけども、グローバリゼーションの中で、世界的な仕事をしている会社はこの中東の入国禁止ということで、ものすごい打撃を被るということで。コカ・コーラも含めて大統領に抗議している状態ですけどもね。Googleも。

(山里亮太)結果、自国がどんどんダメになっていくっていう。

(町山智浩)どんどんダメになっていくんですけど、元々そういう人たち……グローバリゼーションで稼いでいる世界企業は敵だとトランプは言っていたんで。

(山里亮太)じゃあもう、思った通りにやっているんだ。

(町山智浩)思った通りなんですよ。

(赤江珠緒)公約通りではあると。

(山里亮太)自分が思った、「敵だ」って言っていた人を叩きのめしているんだ。力を使って。

(町山智浩)そうなんですよ。ただ、いちばんひどいのは、シリアの難民の人たちもアメリカにこれで入れなくなったんですね。「シリア難民を入れない」って表明しているんですけど、シリアの難民の人たちはISIS(イスラム国)によって住んでいたシリアの街を叩き出されて。さらにそこに、ロシアが爆撃をして美しかった歴史的な街は完全に廃墟になって、それで逃げてきた人たちを入れないって言っているんですがロシアとはトランプ、仲がいいんですよ。

(山里亮太)そうだ。

(町山智浩)で、空爆を支援しているんで、シリアの難民はロシアによって生み出されていて、ISIS(イスラム国)によって生み出されているのに、アメリカはそれを入れないって……そんな話ってないでしょう? イラクもそうですけどね。で、クルド人の人たちはアメリカを信じて戦ってきたのにアメリカに入れてもらえないと。これ、CIAがいますごく抗議しているというか、「困る」と言っているんですが。スパイの人たちって仕事はその各地域、各国に行ってその地域の情報提供者をたくさん確保することが仕事なんですよ。

(赤江珠緒)はいはい。

CIAの活動への影響

(町山智浩)だから、一種その国の裏切り者になることなんですよ。特にタリバンとかISISが支配している地域はその支配されている地域の街の人、村の人の中から情報提供者を見つけるわけですけども。で、彼らに対して保証するのは「もし何かあったらアメリカが守るよ。アメリカに来ていいよ」という保証を与えるわけですね。実際にベトナム戦争ではアメリカ側に味方したラオス人とかベトナム人は全部アメリカに難民として引き受けたわけですよ。アメリカは中東でたくさんアメリカの味方をしてくれる中東の人たちがいっぱいいるんですよ。これ、受け入れないって言っているんですよ。

(赤江珠緒)アメリカのために働いていたにも関わらず、ダメと?

(山里亮太)交換条件が出せないんだ。「言ったらアメリカに行けるよ」って言えないんだ。

(町山智浩)そうなんですよ。これはアメリカのCIA、これから動けないですよ。要するに、いままでの戦いっていうのは仲間をどんどん増やすことだったんですね。アメリカにとっての戦いは。で、ロシアとか中国がえばっている国だから、アメリカはどんどん受け入れますよということで、味方を増やしていくという戦いをしてきたのに、これ、全部敵に回すんですね。

(赤江珠緒)そうですね。

(山里亮太)これ、ずっと聞いていたいけど、映画のコーナーだった……

(赤江珠緒)そうそうそう(笑)。

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/41925

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