(プチ鹿島)で、もう一方で芸能人とのSNSでのいわゆる「共演」ですよね。それもよくやっている。特に参院選の前とか、首相官邸のTwitterとかインスタグラムにその芸能人との記念写真を積極的にアップしていた。これはもう去年の7月の記事であるんですけど。
若者狙う、首相のSNS術 芸能人と自撮り/人気曲のハッシュタグ:朝日新聞デジタル https://t.co/GuDx535xFR
— santan (@santan01427929) July 3, 2019
要はイメージ重視で参院選、若者へのアプローチを意識しているという。あとは読売新聞ではこれ、去年の12月の検証記事なんですが。自民党の広報戦略として、たとえば60秒動画を上げて若者に「刺さる」っていう。そういう広報戦略に切り替えている。主戦場はネットなんだっていう記事があった。
[自民党研究 政党を問う]第5部 新時代<1>60秒動画 若者に「刺さる」 : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン https://t.co/3T4rXu0dcb
— 帝都銀行新卒採用担当 (@iskaiware) December 18, 2019
それで僕はもちろんその首相官邸の戦略として、そういうインスタとかTwitterで若者に届くような戦略っていうのは、別にそれは戦略だからいいと思うんですよ。いいと思うんですが、ただ一方で僕はそれはやっぱりどちらかと言えば「裏営業」だと思うんですよ。表と裏の営業があるとしたら、表はやっぱり国会とかで政策論争を戦わせて、ちゃんと情報公開もきちんとして……っていう、そういう王道のことをすること。それをやりつつ、裏営業で、それこそ吉本新喜劇の人を招いて官邸で写真を撮るとか。ああいうのもあっていいとは思うんですが。
SNSでの広報は「裏営業」
プチ鹿島とモーリー・ロバートソン「政治家の闇営業」を語る https://t.co/Xpj5MJUXYz
(プチ鹿島)吉本興業の新喜劇のメンバーが首相官邸を訪問した。実はその1ヶ月ぐらい前でしたっけ? 安倍さんがよしもと新喜劇の舞台にたってG20のアピールをして。そのお返しとして来たというんですよ。— みやーんZZ (@miyearnzz) April 14, 2020
でも、意外と裏営業ばかり。ソフトなイメージ戦略ばっかりやっていない?っていうのがあるんですよ。だって今回の新型コロナ対策だって「緊急会議とかの議事録を残します」とかって言っているんだけども、でも連絡会議というものはその議事録作成の対象になるのか?っていう。だから大事なことは公式の会議の前に議事録を残さない数人の話し合いで決めてしまったりして。じゃあ、そこでの話し合いの議事録は残さないとなると、50年後や100年後の日本人が同じようなウイルスが発生して戦わなくてはいけなくなった時。「あの2020年の新型コロナの感染拡大の時、日本政府はどうやって物事を決めていったんだろう?」って知りたくなっても、記録が残っていないから曖昧でわからないわけですよね。
僕、そういう表の営業……まあ「営業」ってあえて言っていますけども「仕事」のことですよね。だからそういう表のものをちゃんとすべきだと思うんですが、どうもなんかそこらへんがおろそかになっているんじゃないかなって。その一方で、イメージ戦略は一生懸命頑張っている。となると、どういうことが起きるのか? コラムでも書いたんですけど、僕はこれが一番重要だと思って。たとえば「国会で答えない」とか「公文書や議事録もできるだけ残さない」という風に見えるわけですよ。
でも一方で、ネットではふわっとした民意を掴むための好感度を高めるための発信を一生懸命、頑張っている。それが押し進められるとどうなるか? つまり、政治に無関心な人が増えれば増えるほど、政権にとってはお得ないい状態になるわけですよね。だって「ああ、またインスタで芸能人とお食事してる写真だ。なんか親近感があるな」とか、そういうのに「いいね」が増えれば増えるほど……それで、その究極が星野源さんだったと思うんですよ。やっぱりこれ、戦略なんですよね。だからそこが見えてしまったのかなと思うんですよね。どう思いました? この動画って。
(海野紀恵)私も見た瞬間、「これは私は今、何を見せられているんだろう? これってどういう意味があるのかな?」っていうのをすごく考えてしまって。他の、高畑充揮さんにしても、いろんなアーティストさんは「へー! ああ、こういう風に曲を重ねるんだ」っていう発見がかならずあったんですけども。安倍さんのを見ていると、「えっ、これは何? 何を私は今、見てるんだろう?」ってちょっと混乱したっていうのが第一印象でしたね。
(プチ鹿島)今の海野さんの感想って、すごく重要なことで。実は昨日、僕のコラムでも引用させてもらったんですが。noteっていうね、誰でも投稿できるところにある音楽家の方がですね、「安倍総理の星野源さんコラボは何が問題だったのか / 音楽家からの視点と分析」っていう。KXさんという方が記事を投稿していて。これがすごく面白かったんですよ。元々昨日、僕はこの動画についてのコラムを書いてたんですけど。やっぱり文春の担当者から「鹿島さん、この分析も面白いから読んでみてください」っていう風に勧められて読んでみたら、やっぱり面白かった。で、ここで何が書かれていたかというと、「音楽家からの視点と分析」ってところにミソがあって。
さっき、海野さんが言ったように、星野源さんってどういう意図であの動画を発信したのか? 「誰か、この動画に楽器の伴奏やコーラスやダンスを重ねてくれないか」って呼びかけていましたよね。その意図の中には「この動画は音楽を愛し、表現を行う目的での2次利用を許諾するものだ」っていう、そういうものがあったんではないか? もっと言うと今、こういう状況になって、特に仕事を失ったエンタメ関係者、音楽家、表現者はたくさんいるわけですよね。そういう人に対して、星野源さんってもう超メジャーだから。それとコラボをすることで、いいものはどんどんシェアされて。なんだったらその投稿をした人の名前も売れる。そういうチャンスを星野さんは与えたんじゃないか?っていう指摘、分析をこのKXさんという方はされているわけですよ。
「安倍総理の星野源さんコラボは何が問題だったのか / 音楽家からの視点と分析」
安倍総理の星野源さんコラボは何が問題だったのか / 音楽家からの視点と分析|KX @kaixaoki #note https://t.co/iQYtrlzKam
— みやーんZZ (@miyearnzz) April 14, 2020
(海野紀恵)はい。
(プチ鹿島)そうなんですよね。だから、もっと広げていくとその意図を無理解の上でいきなり、政治利用。「人気の芸能人のバズッてる動画がありますから、これとコラボして……」みたいな。当然、星野さん側には何の承諾の許可も得てないっていうことのようですけども。そんな風にやっちゃうっていうのはちょっと、やり方としては何も理解をされていないし、傲慢なんじゃないかな?っていうのがこの指摘を見ると分かるんですよね。
(海野紀恵)そうですよね。その見る側のお得感……私が見たら私のお得感っていうのがなくて。だから、本当に個人で活動されているアーティストさんが1人でいろんな楽器を演奏して星野源さんとコラボをしているのとかを見ると、「へー! この人、この楽器だけだと思ってたけど、ドラムとかもいけるんだ!」とか。
(プチ鹿島)そう。だからそれも「表現」であって、その人の魅力をいかに伝えらることができるか?っていう。だから星野さんは動画とともに自分の名前を貸したわけですよね。「一緒にコラボをしてください」っていうことでね。そういう解釈でもできると。だから、安倍さんもたとえばあれ、犬を撫でてお茶を飲んでるっていうんじゃなくて、一緒に踊るとかだったらまだ……。
(海野紀恵)うんうん。
(プチ鹿島)だから僕、あれを見て思ったのはむしろ、どうせ星野源さんを利用するのであれば、やっぱり『逃げ恥』を利用するとかね。『逃げ恥』をコラボする。「安倍さんが恋ダンスを踊っている!」みたいな。「これ、いろんな意味で自虐ネタか!?」みたいな感じで、僕は盛り上がったと思うんですよ。「『逃げ恥』って……『逃げるは恥だが役に立つ』ってこれ、どういう問いかけだ?」とか。これならちょっとトンチが効いた自虐ネタになったと想うんですよ。「『逃げ恥』ってどういうことだ?」とかね。まだですよ……まあ、これも冗談として言っているんですが。
『逃げ恥』とのコラボなら……
だから、そういう投げかけられた趣旨を理解せずに「ああ、星野源さんがバズッている! よいしょ!」って……そうやって権力者が乗ってくる。それでそれに30万を超える「いいね」も付いてはいるんだけど……。「もっとその趣旨を理解しませんか? じゃあ、イベント中止だとか。ライブハウスとかもそうですけども、大変なエンタメをどれだけ助けてあげるんですか? えっ、それじゃ冷たくない?」っていう。「こういう時だけエンタメを利用しちゃうの?」っていうのもあるしね。
(海野紀恵)あとはあの菅さんの会見で「でも30万を超える『いいね』がついたということは、届いたと思います」って言っていて。あれもハートが強いなって思いましたね。