(大林宣彦)うん。つまり8ミリ、16ミリのね、当時で言うアマチュアから始まって、ずっとそれでやってますからね。自分じゃあアーティストだと思っているんですよ。そうするとね、「どの映画にも似ないものを作る」っていうことが僕の仕事でね。だから壊れてる横でわけがわからないものが見えるのは当たり前のことであってね。当たり前の、僕にとってはごく自然なことをやってきたというだけであって。そのへんがこの音楽におけるウタちゃんと全く同じだわっていうね。
(宇多丸)そういう意味ではね、やっぱり僕はまだ全然ね、保守的なところがやっぱりありますよね。全然ね。
(大林宣彦)あのね、保守的なんですよ。保守的であるからこそ、新しいことができるの。
(宇多丸)ああ、なるほど。その型とか限界がわかっているからということですか?
(大林宣彦)そうそうそうそうそう。保守を知らなきゃ新しいことはできないわけですからね。
(宇多丸)型を知っているから型破り、型がなければ型なしなんてこともありますけども。僕は今回の『この空の花―長岡花火物語』にすごい希望を感じたところがあるんですよね。その映画という一種、終わったメディア。終わったテクノロジー。終わった文化なのかと思いきや、いやいや、別にそのデジタルならデジタルのスピード感とか密度とか。さっきおっしゃられた字幕を入れるとか。いろんな手法があるんだなっていうのがむしろ、その希望に。手法それ自体が希望に感じられたというか。
(大林宣彦)若い人へのまあ年寄りからのプレゼントとしてはね、「こんな表現って自由なんだよ。もっともっと君が君であるために自由におなり」っていうことのね、ひとつのヒントになってくれれば、背中を押す一助になってくれればこの映画も、ジジイがガツンとやったと言われる良さもあるかなと。
(宇多丸)フフフ、ガツンとやりましたね(笑)。
(大林宣彦)「ジジイ、ジジイ」と言うけども、僕はベテランの少年であって。
(宇多丸)「ベテランの新人監督」という風にね、おっしゃってますけども。
「ベテランの新人監督」
(大林宣彦)実は今、一番僕は若いと。ついこの間まではね、新藤兼人さんが一番若かった。
(宇多丸)ああ、逆に?
(大林宣彦)『一枚のハガキ』もね、とっても若々しい。こんな若々しい映画、ないですよ。『一枚のハガキ』。その次に、『この空の花』が若いだろうなと思っていますよ。
(宇多丸)ある種の作家は歳を取れば取るほどやんちゃになっていく傾向がたしかにありますよね。黒澤さんなんかもそうだけど。
(大林宣彦)うん。子供に戻っていくんです。
(宇多丸)好き放題やってるな、みたいな。
(大林宣彦)そうそう。それが芸術だもん。
(宇多丸)「勝手だな!」っていうのはね(笑)。
(大林宣彦)ただ、そこで正気が保てるかどうかが、ベテランの少年であるかどうかのね。
(宇多丸)だから先ほどから伺っているとね、実はめちゃくちゃだとこっちが思っていたところほど老かいな技にはまっていたのだというね。
(大林宣彦)そうですね。人間としてはもうね、僕は芸術家はね、つまり何て言うか常識家であってね。ただし、チャーミングな常識家であると。この「チャーミングな」というところが大事ですね。
<対談音源おわり>
(宇多丸)はい。ということでね、いやー、なんかありがたい時間をすごさせていただいたなというね。ちょっと改めてね、ちょっと……うん。グッと来てしまうというかね、感じがありますね。ちょっと監督からいただいたものとか、もちろん作品の数々。そこから学べることはたくさんあると思いますので。そこからとにかくいっぱい、いろんなものをいただきました。中学時代からずっと拝見をしてきて。本当にいろんなものを……それで僕もちょうど、皆さんと同じく。「じゃあ、追悼上映だ」ということでね、ずっと録画で録っておいたWOWOWでやっていたね、『瞳の中の訪問者』というね、宍戸錠さんがブラックジャックをやっていたやつとかね。
『ふりむけば愛』。これは山口百恵・三浦友和カップルのやつなんですけども。
もうね、相変わらず、やっぱり最初からめちゃくちゃでした(笑)。
(熊崎風斗)飛ばしていましたか?
最初からめちゃくちゃ飛ばしていた
(宇多丸)飛ばしていた(笑)。最初から飛ばしまくっていた。うん。だからあの、やっぱりその精神の数々、いただいた言葉、そして作品の数々、無駄にしないように我々も次の世代になんとか、受け取ったバトンを渡していきたいなと思う次第です。とにかく大林宣彦さん、安らかにお休みいただければと思います。お疲れさまでした。ありがとうございました。まあ、ちょっとこの巣篭もり期間中に私もそれ以外の作品もいっぱい見て、話したいこともいっぱいあるんですが。これは明日以降に回しましょう。時間が来てしまいました。
<書き起こしおわり>
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