ライムスター宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』でジョン・ウィリアムズさんの小説『ストーナー』を絶賛。その素晴らしさを熱く語っていました。
(宇多丸)本当はね、いま、こんなおしっこの話で6分もね、時間を潰す予定じゃなかったの。本当はこの時間でね、あの、文学の話をしようと思ったんです。珍しく。この番組の放送作家、古川耕さんがですね、まあ推薦図書特集。ついこの間もやったばっかりで、いま、ブックフェアを各書店でやっていて、盛り上がっておりますが。まあその後にというかですね、『これ、ぜひ宇多丸さんに読んでいただきたい』って言うんで、先週の放送後に貸していただいた、これもうご存知の方も多いですかね?『ストーナー』というアメリカの小説ですね。ジョン・ウィリアムズ。音楽家のじゃないですよ。ジョン・ウィリアムズさんという方が書いたストーナーというですね、本がある。
これ、なんでいま話題になっているか?っていうと、第一回日本翻訳大賞というので三冊。特にあれか。ストーナーは読者からの人気が高く・・・というようなので選ばれたというので最近非常に話題になっていると。で、まあ僕、そんなね、このウィークエンドシャッフルでもちょいちょい言ってますけど、本は読みますけど、その中で小説の割合は決して多くない。まして海外文学なんて、そう多くない方なんですが。まあ、その私が言うので当てにならないっちゃあ当てにならないかもしれませんが。とにかく、古川さん、ありがとう!
500億点の作品
もうとにかく、いまんところ、この番組で出せる点数の上限が500億点ってことになっておりますんで。今後、これからインフレしていく可能性はありますけど、まあ500億点ですよと。5000くらいつけてもいいのかもしれない。本当、素晴らしかったです。この小説。なので、ストーナーの話をしようと思ってたんです。なぜ、そのストーナーというこの小説・・・別に私があれこれ言わんでも、いまネット上でいろんな感想、ございますし。まあ、何はともあれ、読んでいただくのがいちばんいいと思うんですが。全く難しい小説とか、そういうのでは全くないので。
なんで今日、でもね、話をしようかっていうと、今日、この後ムービーウォッチメンで扱います、『ワイルド・スピード SKY MISSION』という作品。これとね、重なる部分もあるかな?と思ったんです。このSKY MISSIONの感動と。要するに、作品そのものが描いている物語的な感動の部分と、作品が成り立っている成り立ちの部分。要するに、もうちょっとメタな視点ですね。その作品がどう作られているか?という成り立ちの部分。そしてそれがどう人々に反映されていったか?という部分で。要するにワイルド・スピードという作品、後ほど話しますけど。要は実際にあった現実を、ある意味前提にした作品になっているわけですよね。今回の作品は。
で、それがさらに、より作品を感動的にして、それが世界的なエフェクトを起こしている。で、このストーナーという作品もですね、まずこの小説自体が、1965年に書かれた小説なわけですね。それが時間をかけて、最初は埋もれていった。それなりの評判だった小説が、65年ですから、何年?50年間、ほぼ埋もれた、日本では全く知られていなかったものが、だんだん時間をかけてブレイクしていく過程とか。あるいはですね、この小説をですね、長い時間かけて翻訳された東江一紀(あがりえ かずき)さんという方。これ、翻訳をやられているんですけども。この方が、実はこの本を訳し終わる直前に亡くなられてしまって。お弟子さんにバトンタッチするわけですけど。
というような、その経緯であるとかも。で、本当に死の床の、本当に寸前まで、この訳に意欲を燃やしていてという。これがまさにこの小説に描かれている、なんて言うんですかね?ことと、ものすごい重なりあって。もちろん小説そのものもすごいんだけど、それがなんて言うんですかね?グイグイ、グイグイ、リアルなものというか、これは本当のことだというか。これは本当のことであり、現実の人間の人生に起こりうることであり、そして、お前の人生にも起こりうることかもしれないよというかね。関係あることだよっていうのがグイグイグイグイ来るような感じになっていて。
その、なんて言うんですかね?フィクションとして書かれたものっていうのが、どんどんむしろ現実側を侵食していくというか。もちろん、この小説自体がジョン・ウィリアムズさんという作家の方の、まあ慎ましやかな人生みたいなものも反映して。現実がフィクションに反映して、フィクションがさらに現実にフィードバックして・・・みたいな。なんかそういう感じがですね、ぜんぜん作品としては違うんですよ。もちろん。ワイルド・スピードですからね。言っておくけどね。今回も、話運びがワイルドすぎる!っていうね。ワイルドでスピードすぎる!っていう作品なんだけど、ちょっとこの感動の質っていうのが、ちょっと重なるところもあるかな?と思ってお話しようと思ったんだけど、おしっこの話で6分潰れるという。
でも、結局こっちの話もできたんで、全部クリア!ということで。ぜひみなさんね、このストーナー。作品社というところから出ておりますんで。すごく読みやすいっていうか、グイグイ読めちゃう面白さもありながら、やっぱり訳が素晴らしいんですかね。作品としての格調もありつつ・・・ということでですね。まあ、いずれ、また秋の推薦図書の時とかにね、それこそ伊藤聡さんとかに紹介していただくのがいちばんいいのかもしれませんね。ということも含めて、まあストーナーをおすすめしつつ、おしっこを我慢という件で。
あ、そうだ。おしっこを我慢の件を解決するために、そうだ!曲をかけよう!って話でしたね。先ほどね。そうなんですよ。私、本業はライムスターの宇多丸の・・・というね。これ、気まぐれでついているカタカナじゃないですよ。これ。私、本業はライムスターというラップグループに属しておりまして。まあ、日本のヒップホップ史というのを振り返ってみると・・・(笑)。この話はいいかな?日本のヒップホップ史を振り返った時に、まあライムスターというのが筆頭にこない日本のヒップホップ史は若干嘘ということになる。まあ、そんぐらいの存在であるということですね(笑)。
威張ってるんだかなんだか、よくわかんない。まあ、とにかくそのライムスター。結成、今年で26周年になるというですね、恥ずかしいキャリアの長さなんですが。まあ、ニューシングルを出しましたと。しかも、レーベルと移籍しましての、第一弾シングルということで。非常に好調な動きを見せて。この前に出した、たとえば『The Choice Is Yours』って。あれもかなり大評判でしたが。数字的にはあれを上回る動きを見せている。ありがとうございますね。
そしてなおかつ、来週の日曜。えっ?来週?その次の次ですね。だから明日じゃない。明日の次の、5月10日、日曜日にはライムスター初の野外フェス『人間交差点』というのもやるということで。そのテーマソングでもあるということで。こちらをリリースしたばかりということで。どうでしょう?ここで、これをかけている間におしっこに行くと言うのは?私の話ですけどね。はい(笑)。あの、さっそく聞いていただきたいと思います。4月29日に発売になっております。ライムスターで『人間交差点』!
はい。4月29日に発売になっておりますライムスター『人間交差点』。私、イントロの部分でトイレにバーッ!と駆け出したらね、『ピッタリだな、この曲!』って思って。ええ。でもさっき、すごく感銘を受けたアメリカの小説、ストーナーの話をしましたけども。ある意味、この曲で歌っているような、みんなそれぞれストーリーを抱えている。自分から見れば脇役であったりどうでもいいように見える人でも、ストーリーを抱えながら、交差点を行き交っているんだというところで。
だから、ねえ。私がバーッと走っているところを見たら、まさか私が生放送中におしっこに行くという、その切迫したね、人として最も切迫した事情を抱えているなんてことは、あなた方にはわからないだろっ!(笑)。いや、こんなテンションの小説じゃあございません。それをすごく、本当に品の良さと面白さの絶妙なバランスを保ちながら進んでいく、すさまじい小説だと思いました。ストーナー。この域にね、我々の作品も達したいものだと思いつつですね、4月29日にすでに発売となっておりますライムスターの『人間交差点』。
あと、いまバックトラック、後ろに流れております『Still Changing』という曲。両A面。そしてさらにですね、ライブDVDが初回限定には入っておりまして。DVD盤とBlu-ray盤ありますが。それは、前回の『The R』というベスト盤。昨年出しましたが。そちらのツアーなので。要は、ライムスターの移籍以降のこれからの新しい新章の部分と、これまでのライムスターのおさらいをこれ1枚でできるというですね。こういうことなんですよねー。これを買わない人間なんてのはもう、どうなんですかねえ?ここまで言ってるのに(笑)。そんなことを言ったら、それぞれみんな買うものありますからね。まあ、お金がね、余裕がある方はぜひね。
<書き起こしおわり>