(春日俊彰)また順番がさ、だってもうみんな帰ってきたらさ、楽しそうな顔をしてさ、他の人のネタを見てるのよ。で、我々は一番前でさ。後ろからなんかキャッキャキャッキャ言ってる声が聞こえるの。それで我々はネタがまだだからさ。「はあー……」とか思いながらさ(笑)。「いいな。澤部、いいな」とかさ、思いながらさ、他の人のネタを見ながら待ってたからさ。それもちょっとたぶんあったと思うんだよね。
(若林正恭)ああ、なるほど、なるほど。なんか結構、くっきーさんとのネタづくりで「ああ、くっきーさんのコントってこうやって作るんだ」と思ったんだけど。俺、びっくりしたんだけど。まあサトミツちゃんとか他の人とコントやったこともあるけど。もう第一声で「あの、何かガラス割って手を突っ込んで鍵、開けたいねんな」から始まったからね。
(春日俊彰)ああ、ネタづくりが? なんなの、それ?
(若林正恭)第一声がそれだったから。「あの、ガラス割って内側から鍵、開けたいねんな」から。
「ガラス割って内側から鍵、開けたいねんな」(くっきー)
(春日俊彰)ああ、でもそれはくっきーさんがおっしゃっていたな。打ち上げの時にくっきーさんと近かったのよ。目の前とかで。誰かが聞いたのよ。「あれ、どうやって作ったんですか?」って。そしたら、言ってたわ。「ガラス割りたかってん」って(笑)。それか!
(若林正恭)フフフ(笑)。それで、「ガラス割って鍵、開けたいねんな」って言って。「ああ、そうやって……」って。手つきをこうやって。「ガラス割って、内側から鍵、開けたいねん!」って。それで俺が「ああ、それじゃあ僕が中にいる状態でくっきーさんが割って入ってくるか、2人で割ってくっきーさんが一緒に入っていくか、どっちかになりますね」って言ったら、「めっちゃええやん!」っつってた(笑)。よくわからないの。その「めっちゃええやん!」が。「めっちゃええやん! めっちゃかっこええやん!」って。で、「面白い」とか「ウケるかな」とか、そういう言葉は一切ないの。「めっちゃええやん! めっちゃかっこええやん!」って。
(春日俊彰)っていうかさ、その反応だったらさ、「ガラスを割って手を入れて鍵を開ける」っていうところまでしかなかったっていうこと?
(若林正恭)そうそう。そうなのよ。
(春日俊彰)フハハハハハハハハッ! それ、すごいね(笑)。その一点だけだったんだ。
(若林正恭)で、そういうのも俺、体感したかったから。もうその時だけでもめっちゃ楽しいし、わくわくしてたんだけど。だから「入るかですね」って言ったら「なるほどな。ええやん!」みたいな(笑)。それで俺、あのネタ……これ、本当にびっくりだと思うんだけど。俺、最初は宇宙人役だったからね。
(春日俊彰)えっ、あっちの? あのベッドからバーッて立つ?
(若林正恭)最後、俺が起き上がってきて。何もセリフなくて俺が起き上がってきて終わりだったんだよ、最初(笑)。
(春日俊彰)フハハハハハハハハッ! すごいね。うん。
(若林正恭)で、俺はそれでもよかったのよ。くっきーさんの世界に入りたかったから。
(春日俊彰)はいはいはい。それがなんでああいう形になったわけ?
(若林正恭)なんか、「俺とくっきーさんが2人で入るパターンだとどうなるんだろうな?」みたいな話になった時に、「俺とくっきーさんのこの今の感じで言うと、俺の方が後輩で俺の方が年下なんだけど、まだ面倒を見て『こっちだよ』って誘導している感じですよね」みたいな話をしたら「めっちゃええやん!」って。
(春日俊彰)それも?
(若林正恭)で、「妹やな」って言っていて。それで「お兄ちゃんやな」ってなって。「お兄ちゃん」とか呼ばれたりとかして(笑)。
(春日俊彰)フフフ(笑)。
(若林正恭)「お兄ちゃん」みたいなことを言って。それで「じゃあ中学生とか高校生ですかね?」みたいなことを言ったら「小学生やな」みたいな。「小学生っすか!?」みたいな(笑)。で、その後に「布団の中が光って、掛け布団がフワーッて浮いていくっていうのを見たいねん」って言っていた(笑)。
(春日俊彰)なんかその希望を若林さんが整理して叶えてあげたみたいな感じ?
映画を撮るようなネタ作り
(若林正恭)いや、2人で……なんだろう? お笑いのネタを作っているっていうよりは、映画を撮るっていうか。「こういう話があったな」みたいな話をしてる感じだったの。だから、壮大だったよ。「宇宙を制覇する石が金庫の中に入っていて」とか。で、「若林くんって特殊能力、持ってそうやな」みたいな。それで「あんまり裕福じゃない、豪邸じゃない家に泥棒として入る場合、なんか入る理由がなきゃいけないですよね」みたいに言ったら「めっちゃええやん!」って。
(春日俊彰)なにがいいんだよ! 何がいいっていうか、そういうところまでは考えてないんだね? もうなんかやりたいこととかがあって……。
(若林正恭)そう。だから「布団が浮いてくる」とか。で、その布団が浮いてくるタイミングで宇宙人が起き上がってくる、その布団と起き上がってくるのの動きをすごくこだわっていたの(笑)。布団が上がりきって止まってから宇宙人が上がってくるのはすごい、なんか違う感じ……布団が上がりながら、宇宙人に上がってくるっていう。それで宇宙の起き上がってくるその油圧の速度を……その案が技術さんから送られてきた時に、「どのぐらいの速度がいいですか?」っていう話を真剣に2人でタブレットの動画を見ながら。「もうちょっと早い方がいいっすかね?」とか。もうずっと、宇宙人が起き上がってくる速度の話をしていて(笑)。
(春日俊彰)すごいなー。
この速度に拘るくっきー若林正恭。 #annkw pic.twitter.com/56iN8m2gQ0
— う に い く ら (@uni_ikura_11) April 11, 2020
(若林正恭)で、なんか最後にデーン!って宇宙人が立ち上がって終わるじゃん? それがバンッ!ってすごいスピードで起き上がってくるのか、ゆっくり起き上がってくるのかっていう話をしてた時に、「これ、なんかもっと舞台のいろんなところから5体の宇宙人が一斉にダーン!って立ち上がらへんかな?」って言ってて。「じゃあ、これはどうっすか? 審査員とかお客さんの客席の一番後ろからも1体だけ立ち上がってるってどうですかね?」って言ったら、「めっちゃかっこええやん!」って言っていた(笑)。
(春日俊彰)「かっこいい」って……(笑)。「面白い」っていうのは1回も出てきてないじゃん? 「めっちゃええ」とか「めっちゃかっこええ」しか言ってないっていう(笑)。
(若林正恭)だって、本当にネタ終わりにもおっしゃってたから。「めっちゃかっこよかったな」って。フハハハハハハハハッ!
(春日俊彰)「面白い」じゃないんだろうね。それがまあ、「面白い」っていうところにつながるのかな?
(若林正恭)「若林くん、めっちゃかっこよかったな!」って。それで、怒ったくっきーさんで物がいっぱい浮いてくるっていう時に、時計の針がグルグルグルグル回らないか、すごいこだわっていた。時計の針が、時間が狂ってグルグルグルグル!って。あれ、後ろで大道具さんがみんなでセットを手で揺らしてるんだよね。結構、7人コントとかなんだよね。だから(笑)。
(春日俊彰)2人じゃできないんだ(笑)。
(若林正恭)それで最初に部屋の中を透視する……だから、なぜこの家に入るかというと、宇宙を制覇する石があるからで。だから松本さん、本当にものすごい方だけど。「エピソード8からいきなり急に見せられた感じ」って言っていたけど、本当にそうで。石があるから、それを俺が透視できて。それで「『中に人間はいない』っていうのはわかる人だけど、宇宙人のことは感じられない」とか、いろいろとあるんだよ(笑)。だからなんかすごい、もう担当Dにずっと頼んでだ。「続編、これドリームマッチが終わった次の日曜から深夜で。そこでできへんかな?」って。「なあ、若林くん、なあ?」って。
(春日俊彰)フハハハハハハハハッ! ああー、やっぱりそんな壮大な話だったんだな。
(若林正恭)で、本番前も「ウケるかな?」じゃなくて「平和を守りに行こうな」って。
(春日俊彰)ああ、そうか。そうじゃなきゃダメなんだろうな。
(若林正恭)で、部屋の中を透視する時に「フィーン」っていう音があるんだけども。それをすごい、もう10種類ぐらい聞いて。「キーン」とか「パーン」とか「フワンフワンフワン……」とか聞いて。それで本当に映画の……それで2人で同時に「フィーン」っていう音が聞こえた時に「これですね?」みたいな(笑)。そういう感じだったね。
(春日俊彰)はー。すごいね、それはもう独特だね。
(若林正恭)でも俺、本当にコントってさ、本当に思ったことがあるんだけど。たとえば漫才コントで「泥棒に入る」っていう設定でガラスを割った時に、「入り方がおかしい」とか「ガラス、割ってるんじゃねえよ」的なことを自分なりの言い方で言うじゃない? でも、コントってやっぱりバリン!ってなった時に「ガラス、割ってんじゃねえよ!」とはならないよね。やっぱりお兄ちゃんはね(笑)。でも、言葉が全然浮かんでこなくて。
だから犯行現場みたいな……くっきーさんが書いたガラスが割れてるのとリトルグレイが書いてあるペライチしかないのよ。紙が1枚しかないのよ。ずっとね(笑)。犯行現場みたいな。「ここでガラスが割れて」っていう犯行現場みたいな紙1枚しかないから。だから、やっぱり本当にガラス割って「入り方、おかしい!」とかでもないなと思ったらやっぱり、「その子ちゃん!」しかないんだなとか。勉強になったよね。
(春日俊彰)ああ、もうそうか。まあ、だから突っ込むとかじゃないんだろうね(笑)。すごいなー。
(若林正恭)でもなんか、あのヒーローのスーツがあったじゃん? あれを前々日ぐらいに試着してた時に、すごいくっきーさんが「若林くん、もっとかっこようしてほしかったら、言った方がええで」って何回も言われたんだけど。俺、別にどうでもよかったのよ。ヒーローのスーツ。「若林くん、色は緑で大丈夫か?」「いや、俺はこれでいいと思いますけども。逆にどうっすかね?」「もっとかっこようしてほしかったら言いや。ここは生地がない方がええんちゃう? お腹の横、素肌が出ていた方がええんちゃうの?」みたいな。で、俺が帰った後も「若林くん、気遣ってへんかな? ヒーローの衣装」ってずっと気にしていたっていう(笑)。
くっきーの基準は「かっこいいか、よくないか」
(春日俊彰)フフフ、その理由がかっこいいか、かっこよくないかっていうところなんでしょう? 面白いとかじゃないんだもんね(笑)。
(若林正恭)「めっちゃかっこええやん」ってずっと言っていたからね(笑)。
(春日俊彰)ああ、そうするとああいうネタになるんだな。うん。すごいね。
(若林正恭)でも、あるよね。笑う・笑わないで考えたらやっぱりフリとボケとツッコミっていうことで数珠でつないでいくっていうことでお客さんは笑ってくれるかなってなる。もちろんなるし。俺たちの漫才もそうだけど。なんか最初の頃、あのオードリーのゆっくりも、もう無理だと思ってるから。「いかにお客さんがイライラするか」で考えたもんね。「これ、胸張ってゆっくり歩いてきたらめっちゃ腹立つな」って。最初、だからもっとのけぞって、2列目ぐらいの客を春日がこの目つきで……あごをすごい上げて見下ろしてたんだよ。最初のビデオをこの間、ちょっと見たら胸を上げてめっちゃ見下してたよ。で、たしかにアンケートで怒っている人、いたもんね。でも、帰りに「生きてるな!」と思って帰ってたな(笑)。
(春日俊彰)なるほどね。そういうことだね。面白いとかウケる、滑るじゃない。もうちょっと広く見た方がいいんだろうね。
(若林正恭)まあ時にね。
(春日俊彰)うん。今、聞いてもやっぱりその頃の春日、ちょっとかっこいいもんね。ちょっとそのくっきーさんの気持ち、なんとなくわかるよ。面白い・つまらないじゃないじゃない?
(若林正恭)「めっちゃかっこええやん」って。
(春日俊彰)くっきーさんが「かっこいい」って言ってくれるかもしれない(笑)。その時のネタを見てもらったら(笑)。