上出遼平『ハイパーハードボイルドグルメリポート』誕生までの道のりを語る

上出遼平『ハイパーハードボイルドグルメリポート』誕生までの道のりを語る 佐久間宣行のオールナイトニッポン0

(佐久間宣行)「俺は今、とんでもないものを……これが流れてるテレビってすげえな」って思ったな。それが本当にロケの一発目?

(上出遼平)完全に一発目ですね。だから、もう全く台本もないので。今、佐久間さんが着てらっしゃるTシャツに描かれている子が娼婦の子なんですけども。

(佐久間宣行)そう。『ハイパーハードボイルドグルメリポート』のTシャツがあるんだけども。どでかい顔でリベリアの娼婦の子が映っているっていうTシャツなんだけども。

(上出遼平)はい。

(佐久間宣行)これ、どこまで決めていくの? どのぐらいのリサーチで……たとえばだけど、処女作のそのリベリアの娼婦を追っかけるっていうのはどのぐらいのリサーチで、どのぐらいの感じで飛び込んでいくの?

(上出遼平)これ、ちょっとリベリアだけ特殊な例だったんですけど。1回、行ったことがあったんですよ。リベリアに。『世界ナゼそこに?日本人』で日本人を追いかけに行ったこともあって。それもさっきお伝えした通り、もう国のそこら中に僕はもう興味が行っちゃって。そこで「少年兵が首都のそこら中の廃虚で1000人単位で暮らしている」っていうことを知ったんですよ。1回目のロケで。で、ちょっとだけその時も覗きに行ったんですけど。「これ、ヤバいぞ……これで番組をやろう!」と思ったんですよね(笑)。

(佐久間宣行)えっ、ちょっと待って? 「ヤバいぞ」っていうのは「危険だぞ」じゃなくて「面白そうだな」って?

「これ、ヤバいぞ……これで番組をやろう!」

(上出遼平)おもろいなって思って。いや、めちゃくちゃ危険で、警察も「本当にそこだけは立ち入らないでくれ」って言ってる場所だったんですけど。それだけ言うからには本当に誰も行ってないってことじゃないですか。ということは、誰も見たことがないものがあるんだな。これは撮った方がいいんじゃないかな、みたいな。

(佐久間宣行)その時に、じゃあ「もう1回ここに行こう」と思って行く時には、プランは練っていったわけ?

(上出遼平)いや、全く練っていないですね。だから僕はもう現地のガイドしてくれる結婚式場のカメラマンのおじさんに直接あのアプリで連絡して。「いついつに行きたいんだけど、ちょっと入国許可とかをお願いしたい」って言って。それで「1週間ぐらい一緒に動いてほしい」っていうことだけ伝えて。それで許可が下りたっていう段階で行って、もうぶっつけでどんどん進めていったっていう。

(佐久間宣行)それで、国で一番危険な墓場に踏み込んだわけでしょう? あの少年兵たちがたくさんいる。銃を持った人たちが。

(上出遼平)銃は持っていないんですよ。あそこは基本、ナタですね。

(佐久間宣行)ナタなんだ(笑)。

(上出遼平)基本、ナタですね。銃はやっぱり高いんで。だからまあちょっと、こっちとしても「銃はない」っていうのが1個、あるじゃないですか。「ナタだ」っていう。

(佐久間宣行)ちょっと待って? 「銃はないから一撃では死なないけど、何かを切り落とされる可能性はあるじゃん」っていう?

(上出遼平)ありますね。まあでも、走ればどうにかなるじゃないですか。

(佐久間宣行)ああ、そうか。足が速いし(笑)。

(上出遼平)足、速いんで。走りやすい靴で行ってますしね。だから、銃のところとはちょっと気持ちが違いますね。

(佐久間宣行)それで……でもさ、そのVTRがあるからいろんなところで手に入れて見てみてほしいんですけども。すぐ最初にカメラ、奪われたよな?

(上出遼平)あれ……ちょっと説明するのが難しいんですけども。その墓場に元少年兵たちが800人か900人、そこに住んでいて。それで僕が突入していったんですけど。まあ、いきなりもみくちゃになったわけですよ。「お前、何やってんだ?」って。まあ、僕が悪いんですよね、もちろん。いきなり入っていってるんで。なんですけど……まあ、その集団が2つの派閥に割れたんですよ。

少年兵が2つの派閥にわかれてモメる

「味方をした方が自分たちにとって得かもしれない」っていう集団と、「もう今すぐぶち殺そうぜ」っていう集団の2派にわかれたんですよね。で、僕は「とにかく取材をしたいんだ。飯を見たいんだ。墓場に入れてくれ」って。まあ、その入口でモメていたんで。それでまあ、入口になんとか入ったんですけども、そこでもやっぱりその2つの派閥がモメて。で、僕の味方派は「中に早く入れよ、入れよ」って言ってるんですけど、ぶち殺す派は……。

(佐久間宣行)「ぶち殺す」っていうか、まあ「返そうぜ」っていうことですよね?

(上出遼平)ああ、そうですね。ちょっと言葉が……。

(佐久間宣行)フフフ、「こいつ、追い返そうぜ」っていう派ね。

(上出遼平)まあ、そうですね。「身ぐるみ剥がして追い返そうぜ」っていう。で、もみくちゃになっている時にその「身ぐるみを剥がそうぜ」派の1人がプチンときて僕のカメラをスパッとむしり取って。

(佐久間宣行)ああ、そうか。でも予想をしていたから、隠しカメラみたいなのもつけていたわけね?

(上出遼平)まあ、そうですね。常に予想はしているんですけども。まあ、GoProを取られたんですよ。たぶん取りやすかったんでしょうね。だけど、その周りの僕の味方派が「お前、それは返してやれ。それはかわいそうだ」ってなって返してくれたっていう。それが全部映っているっていう。

(佐久間宣行)全部映っている。だから本当に、そのカメラが取られる瞬間も全部ドキュメントだから。俺、上出がそこにいるのに、制作の中にいたのに「こいつ、死んだんじゃねえか?」って思っちゃうぐらいのVTRなんですよ。で、そこでリベリアの娼婦と出会って、一晩お仕事をした後に食べる飯を追いかけたんだよね?

(上出遼平)はい。もう全部、本当にたまたまですね。娼婦の方がいるっていうことも知らなかったですし。基本、そこにいるのはみんな強盗だって聞いていたんで。強盗を生業にしているって聞いていたんですけど、やっぱり女性もいらっしゃって。女性基本、娼婦として夜、街に立って金を稼いでいるということを知って。

(佐久間宣行)だからそのVTRの1本、だいたい25分ぐらい?

(上出遼平)30分ぐらいあったかなと思います。

(佐久間宣行)だからそれを見た後の読後感がすごいんだよね。「何を見てるんだろうな?」っていうのと……もちろん、そんな安っぽい言葉ではくくれないんだけども。やっぱりその30分の間に「生きる」っていうことが全部あるみたいなもんだから。命とあとは食べるってこともあって。「これ、すげえ番組だな」と思ったよ。たしかに。

(上出遼平)ありがとうございます。

(佐久間宣行)で、これね、それで事前にね、上出が来てくれるっていうことで。「上出、どんな話をする?」って聞いたのよ。そしたらね、7ページぐらいびっしり書かれたトークのメニューが送られてきたのよ(笑)。これ、話してると3時間番組になっちゃうから(笑)。

(上出遼平)すいません(笑)。

上出遼平のトークメニュー

(佐久間宣行)どれも刺激的なんですよ。だからね、送られてきてるものだけ一応……まあ1個はもう今、話したんだけど。「皆さんにお伝えしたい旅のTIPS」っていうのと、「ちょっと危ない系小話」。1個目が「リベリアで国で一番危険の墓場に踏み込みカメラがむしり取られる」っていう。ここまで話しました。で、旅のTIPS。はまだ話してないけども、他の目次は「ケニヤ、シンナーチルドレンに囲まれて投石」。

もう1個。「リベリア、普通にホテルでエレベーターが止まって閉じ込められる」。もうひとつ。「ガンビア、床一面ハサミムシの倉庫で眠る」っていう。フハハハハハハハハッ! 最低のサザエさん(笑)。「さーて、来週は?」っていうやつなんだけども。あとは「美味い飯、変な飯」っていうのとほっこり話みたいのもあるんだけど。上出的にそのリベリアの話の後に皆さん、これちょっと聞いてくださいよっていうのなら、どれ?

(上出遼平)ああー、難しいですね。でも、普通に小さい話で行くと、やっぱりリベリアとかホテルに止まっていると、エレベーターはもう余裕で止まるんですよ。

(佐久間宣行)ああ、結構なペースで?

(上出遼平)結構なペースで。扉が開いたら壁みたいなのとかが結構あって。3時間はそことか。そういうの、番組にはならないじゃないですか。カメラ、持っていないし。

(佐久間宣行)ただ閉じ込められるっていうのはね。

(上出遼平)とか、ありますよ?(笑)。

(佐久間宣行)フハハハハハハハハッ!

(上出遼平)ちょっとかわいい話をしておこうかなって(笑)。

(佐久間宣行)わかった、わかった(笑)。この後も聞いていきたいと思います(笑)。

<書き起こしおわり>

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