宇多丸と井出草平 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例の問題点を語る

佐久間宣行 香川県議会ネット・ゲーム依存症対策条例成立を語る アフター6ジャンクション

(宇多丸)でも、大山さんもそれだけ熱心ならば、最新の研究成果なりというところを、憎しだけじゃなくて勉強をされていないはずはないと思うのですが。ねえ。立派な議員さんなんですから。そう思いたいけども……。

(井出草平)うーん……まあ、県議会の答弁などを見ている限りはあまり勉強はされていないなっていう。

(宇多丸)いや、仮に大山さんがそのようなね、まあ、僕らから見るとかなりな暴論をおっしゃっていたとしても、まあ議会なわけですから。他にもいらっしゃるわけじゃないですか。

(宇内梨沙)他にも議員さんがいらっしゃる中で。

(井出草平)まあ、それはそうなんですけども。やっぱり地方議会っていうのはですね、私たちが想像してる以上に機能不全に陥ってるところがありまして。やっぱり住民よりも県議会の有力者の意見が優先される体制ができてしまっているんですよね。で、やっぱり住民の方々も選挙に行かないし、興味もない。それは仕方ないことかもしれないんですけれども、香川県では7割の選挙区が無投票で決まってるんですよね。なのでどうしても、やっぱり大山さんのような有力議員が主導をすると逆らえないという、そういう感じができてしまうわけなんですね。

(宇多丸)そうか……。まあ、もちろん香川県の方々がそれをチョイスしているというのならばですね……っていうことだけど。ただこれ、問題はこの条例が香川県で4月1日から施行されるという風に可決をされたことで、一番懸念される事態っていうのは井手さん、何だと思いますか?

今後、懸念される事態

(井出草平)そうですね。やはりネット依存、ゲーム依存に関しても結局、先ほど言った学習障害、ADHDは結果じゃなくてむしろその原因の方。リスクの方だという風に研究ではされていたりとか。ひきこもりや不登校といった問題の先にあるというか。家にいてもやることがないからゲームしかやっていないみたいな。

(宇多丸)そうですよね。たとえばネットとかにしても、そこでしか人とつながる場所がないから、かろうじてそこでつながっているのであって。そこでまで断ってしまったら逆に絶望的なことになっちゃいませんか?

(井出草平)そうですね。その因果が逆転してるので。だからゲームだけを取り上げたとしても問題は解決しないんです。となると、まあ発達障害の問題とか不登校、ひきこもり、フリーター、ニートの問題なんかが放置されてしまうのではないかと。

(宇多丸)適切に解決されませんもんね。

(井出草平)それは問題だと思いますね。

(宇多丸)あと、やっぱりこれが香川県議会だけの話ではなくて、「ああ、そんなものが決まったんだったら……」っていうことでたぶん全国に似たような、たとえばゲームとかネットとかに対する偏見と社会問題を全部そこに押し付けて済まそうとする人たちがいないとは限らないですよね。

(宇内梨沙)簡単ですもんね。それで「対策してます」って言えるから。

(宇多丸)それが波及をしてしまうとかね。それがあたかも既成事実として、他で見てるゲームとかにも興味ないような大人たちも「ああ、決まったということはきっと本当に悪いんだろう」みたいな。

(宇内梨沙)「きっと根拠があってこれが決まっているんだろう」っていう風にね。中をちゃんと見ずに納得してしまいますもんね。

(宇多丸)本当に。そういうの、怖いですね。

(井出草平)そうですね。実際に秋田県の大館市でも香川県と似たような条例……内容は本当に一緒なのかはわからないんですけども。少なくとも時間制限が含まれる条例が検討されていますし。香川県の条例の案が出てきてから、地方の議会でゲームの害に関しての質問っていうのは結構相次いで出てきていますので。これからも広がるかと思います。

他の地方自治体でも香川県に追従する動き

(宇多丸)うわあ……。

(宇内梨沙)そこにしかも香川県に質問が行くというのが嫌ですね。

(宇多丸)ねえ。我々からすれば、元々がいろいろと間違ってしまっている前提のところに行って。「条例が可決までされているんだから正しいはずだ」っていうような前提で。

(宇内梨沙)他の自治体も飛びついてしまうとなると……。

(宇多丸)これ、井手さん。我々としてはこれに対してどうしていったらいいと思われますか?

(井出草平)そうですね。結局のところ、誤った認識のもとに進められているので。まあネット依存やゲーム依存が問題であるのはたしかなので。そういったものを適切に対応していくということを広めていくと共に、やっぱりゲーム依存だったりゲームに関して、プレーもそうですけども適切な正確な情報っていうのを伝えていくのが重要かなと思っております。

(宇多丸)そうですよね。ただ怖がって……というよりはね。いや、とにかくちょっとね、これは捨て置けないということなので。専門家の方のお話をうかがいたくて井手さんにお電話をした次第です。でも非常に分かりやすかったですし、改めてこの番組でもこの話は引き続き注視していきたいと思ってますので。その際にはまた井手さんのお知恵をお借りしたいなと思います。

(井出草平)はい。よろしくお願いします。

(宇多丸)ということで井出草平さんでした。ありがとうございました。

(井出草平)ありがとうございました。(電話を切る)

(宇多丸)井出草平さんでした。私ね、『マイゲーム・マイライフ』という番組をしていて。宇内さんもナレーションをしていただいておりますが。まあ、愉快な番組で。ゲストの方のお話を聞くと、出てくる人がみんな好きになっちゃうじゃないですか。

(宇内梨沙)そう!

(宇多丸)そんな中で、要は「ゲームをやりすぎちゃって……」みたいな話を聞いてキャッキャキャッキャとやっているわけです。で、それを聞くと我々はその人のことを好きになるんですけども。俺はそれはね、やっぱりゲームとかって失敗してもいいものっていうか。ダメなところもゲームのうち。その楽しみのうちに入るから、なんかそれをみんな話せるし。いろんな普段は話す機会がない人がそんなことを話していたら「ああ、こんなに人間的なところあるんだ!」とか。そういう話であって。

理不尽に制限された人ほど、後に爆発する

あと、100人ぐらいの方とこれまでお話をしてきましたが。やっぱりお話をしていてひとつ、間違いなく傾向としてあるのは、押さえつけたりとか理不尽にゲームを禁止された人ほど後に大人になってストッパーがなくなって。誰も止める人がいないとゲームをめっちゃやっちゃうみたいな傾向があるいのは間違いない。だからこんな理不尽なことやっても……まあはっきり言ってザル法なのも間違いないですし。

(宇内梨沙)ねえ。だって結局は「家庭内での制限を義務づける」って……それを管理しようもないし。

(宇多丸)ねえ。あとはやっぱり香川の皆さん、投票をされる皆さんもこういう事態というのをちょっと……。

(宇内梨沙)無投票が7割っていうね。

(宇多丸)もちろん、そこの他の部分がうまく行っててというのもあるんでしょうし。一概にこの部分だけを取ってどうこうということでもないですけど。とはいえ、ちょっとこれはいかがなものかという風に……というのは、広く言えば人権の問題だからですよね。

(宇内梨沙)これが施行されたら、データは取るんでしょうね、きっと。1年後、2年後って。

(宇多丸)「減った」とか。どうですかね。やってくれないとね。

(宇内梨沙)これが決まったならね。

(宇多丸)でもその間さ、こんな理不尽な目に遭っている若者たちもたまったもんじゃないぜ? 俺なら出るね! そんなところ、俺なら出るね!

(宇内梨沙)もしかしたら逆に「60分でどれだけできるか?」って腕が上達したりして。

(宇多丸)フフフ、集中度(笑)。

(宇内梨沙)そうそう。「僕たちはたった1時間しかゲームができないのにこんなに上手いんだ!」みたいな(笑)。

(宇多丸)まあ、そうかもしれない。犬山紙子さんが言ってましたよ。「すごく禁止されたことでなにを覚えたかといえば、嘘をつくことを覚えた」っていう。

「ゲームを禁止されて、嘘をつくことを覚えた」

(宇内梨沙)たしかにね。私も公文を習っていて、宿題を与えられるんですけど、いつも破いて捨ていていたんですよ。

(宇多丸)フハハハハハハハハッ! なに? いやいやいや、乱暴だよ!

(宇内梨沙)でも結局、押し付けられたものってやっぱり嫌だから。

(宇多丸)破ってないことにしていた?

(宇内梨沙)そうなんですよ。でも何枚出したかって先生はまとめているから全然バレてたんですけども(笑)。家の押入れの中とかにグシャッと隠して捨てていたんですけどもね。

(宇多丸)あ、もう時間だってさ。ということで、行ってみよう!

(宇内梨沙)行ってみよう!

<書き起こしおわり>

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