(町山智浩)勢い、すごかったです。その時。もうロックコンサートみたいなんだもん。その場がものすごい熱狂で。あとね、すごい人が来てました。ちょっとこの曲を聞いていただけますか?
(町山智浩)はい、この歌はなんですか?
(赤江珠緒)『チム・チム・チェリー』。
(町山智浩)そう。『メリー・ポピンズ』の歌ですよね。あれでこの歌を歌っていたディック・ヴァン・ダイクさんが来ていたんですよ。94歳でしたよ。
(赤江珠緒)ええっ!
(町山智浩)で、「サンダースを応援する!」って言っていて。これもすごかったですね。
(赤江珠緒)へー!
Dick Van Dyke Vamps for Sen. Bernie Sanders by Strutting, Singing at L.A. Rally via @TMZ https://t.co/P1m8lU9Ucc pic.twitter.com/vB0XGxfoTP
— d-rock trot (@drocktrot) March 2, 2020
(町山智浩)だから老人も引きつけようとしてるんですよ。今まで社会主義とかが嫌いだった人たちですね。アメリカ人は社会主義が嫌いだから。今、たぶんね、アメリカの歴史上最も社会主義が人気がある時代になってますね。その原因はやっぱり格差ですよ。格差が極端に広がったので、このままだとどうしようもないからとにかく……昔はですね、アメリカが非常に発展した頃っていうのは金持ちの収入に対する税率が9割ぐらいだったんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)それ、すごくない?
(赤江珠緒)9割ってすごいですよ。
1930年代、大不況後のアメリカの政策
(町山智浩)すごいでしょう? 要するに1930年代に大不況になった時に、大金持ちたちの収入から9割取ったんですよ。それでどうしたかっていうと、公共事業にお金を使ったんですよ。工事とか。それでアメリカ中の橋とかダムとか、そういうのはみんなその時に作られたんですよ。で、それ以来作られてないんで、今はみんなボロボロなんですが。それでアメリカという国は立派になったんですよ。いろんなところに橋が架かって、道路ができてね。それは、金持ちからぶんどったんですよ。それでいっぱいいろんな人たちに仕事を与えて貧困層を救ったんですよ。アメリカってだから元々、社会主義的なんですよ。
(赤江珠緒)そうか。そうなんですね。全体としての幸せを願っているところがあったんだな。
(町山智浩)そういうところだったんですよ。だからもともと貧乏な移民の国だったんで、それを何とかしようってことでサンダースさんがお金持ちへの税率を高くして、今のひどい格差社会を救おうと言ってものすごい人気になってるんですけども。ただ、ここまで来るとトランプ大統領がとにかくその白人の労働者のキリスト教徒の人気を得るために、それ以外のイスラム教徒であるとかヒスパニックであるとか黒人を敵視して。
まあ、はっきり言うと「悪」と見なして人気を集めたんですよね。要する「彼らは強姦魔だ!」とか言ったり、「イスラム教徒なんか入れるな。あいつらはテロリストだ!」って言うことで、敵を特定することで白人の保守的なキリスト教徒の人気を集めて彼は当選したんですけども。サンダースさんがやっていることはそれの裏返しになっちゃうんですよね。
(赤江珠緒)そうですね。
(町山智浩)敵は金持ちであり、大企業であり……だからバイデンさんは「いや、大企業とかそういうのもビジネスなんだから。それは敵じゃないんだ。それもアメリカなんだ」と言って。この急激な右のトランプと左のサンダースの、その共和党でも民主党でもない極端な者同士の対決ということになってアメリカが完全に分断されるのは危険だって言ってるんですよ。
(赤江珠緒)はー!
アメリカが完全に分断される危険性
(町山智浩)「ここは何とか民主党が粘らなければ……」とも言ってるんですよね。だからどうなるか?っていうところなんですけど。それで最終的に民主党大会になった時にサンダースさんの方がちょっと勝っている状況だったら、特別代議員っていうギリギリのところで投票する民主党の重鎮たちがいるんですよ。700人いるんですけど。その人たちが緊急投票をしてバイデンさんを勝たせるっていうことまでが考えられている状況ですね。サンダースさんを阻止して。そうしないと、もう本当に左翼対右翼の戦争になっちゃうから。アメリカが。マイノリティ対白人至上主義者に。
(赤江珠緒)うわー、アメリカはもうそこまで行っちゃっているんですね?
(町山智浩)そう。それでその支持者は実は両方とも金があまりないんですよ。貧乏に同士の戦いですよ。トランプを支持している人たちはみんな、労働階級の人たちだし。だから、すごいことになっちゃっているんですよ。それで真ん中のところに金持ちたちがいて、右往左往してるっていう。で、その格差を作り出したのは彼らなんですよね。それで放っておいたら貧乏人が右と左に分かれちゃって戦い始めてる。両方とも実は真ん中にいるその金持ちを憎んでる。すごいことですよ。
(山里亮太)うーん……どうなっちゃうんだろう? ちょっと景気が悪くなってきているから、トランプも不利じゃないかっていう声も聞かれますが?
(町山智浩)でもこれはもう、完全な分断に向かっているので、どうするんだろうと思いますけどね。まあ副大統領に違う人を付ければ状況が変わると思うんですけどね。まあとにかく明日、スーパーチューズデーをご覧になってください。
(赤江珠緒)はい。結果、どうなりますか。町山さん、わかりやすかったです。ありがとうございました。
(町山智浩)どうもでした。
<書き起こしおわり>