町山智浩 メル・ギブソン監督 沖縄戦映画『ハクソー・リッジ』を語る

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でメル・ギブソン監督が第2次大戦の凄惨な沖縄戦を描いた映画『ハクソー・リッジ』を紹介していました。



(町山智浩)で、今日紹介する映画も結構攻めている映画なんですけども。メル・ギブソン監督の『ハクソー・リッジ』という映画を紹介します。これ、「ハクソー」っていうのはノコギリのことですね。で、「リッジ」っていうのは崖なんですよ。で、ノコギリ崖っていうのはこれ、実在の地名で、沖縄にある前田高地という地名があるんですよ。崖がありまして、前田高地の断崖のことをアメリカ軍側が第2次大戦の沖縄戦の時に、あまりにも切り立っているから……148メートルあるんですね。崖の高さが。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、垂直なんですよ。そのことを、ノコギリで切断したみたいだからノコギリ崖と呼んだという。

(赤江珠緒)それが、ハクソー・リッジ。

メル・ギブソンの10年ぶりの監督作品

(町山智浩)そうなんです。そのハクソー・リッジをめぐる激戦の映画を紹介します。これ、いちばん話題になっているのはメル・ギブソン10年ぶりの映画監督作品っていうことなんですよ。

(赤江珠緒)うん。10年前って?

(町山智浩)10年前にね、『アポカリプト』っていう映画を撮りまして、それは大ヒットしたんですけども。

(赤江珠緒)『アポカリプト』! はい。見ました、見ました。

(町山智浩)とんでもない内容でしたね。

(赤江珠緒)とんでもないけど、なんか私は楽しめましたけどね(笑)。それなりにハラハラしながら。「ジャガーが来る!」みたいに思いながら。

(町山智浩)(笑)。ねえ。マヤ帝国でのんびり暮らしていた若者が突然拉致されて、人間狩りの標的になるんですね。「生きて逃げ延びたら許してやるぞ」って言われて、「さあ、逃げろ!」って言われるんですけど、敵が追っかけてくるんですよ。まあ、ゲームですから。マン・ハントゲームで。それが『アポカリプト』っていう映画でしたけども。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)それから10年間、映画をメル・ギブソンは監督していなかったんですね。それは、メル・ギブソン自身の問題で、酒によって次々に暴力事件、暴言事件を繰り返して。パトカーを運転していたおまわりさんに「お前はユダヤ野郎だ!」とか言ったりね、女性の婦人警官に「いいおっぱいしてるじゃねえか」って言ったりね(笑)。

(赤江珠緒)メル・ギブソンってそんな人なんですか?

(町山智浩)メル・ギブソン、この人ね、昔からなんですけど、この人はアル中なんですよ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)何度も病院に入っていますね。この人ね。でも、治っていないらしくて、しょっちゅう泥酔事件を起こしているんですけど。で、奥さんとも離婚して、また別のロシア系のモデルかなんかの女性との間に子供を作ったんですけども……その女性がメル・ギブソンの赤ちゃんを抱いている時にぶん殴っちゃったんですね。

(赤江・山里)ええーっ!?

(町山智浩)で、ケガさせちゃったりして。「こいつはどうしようもない。差別的で、しかも女性を殴って……」ってことで。ダメだっていうことになって。その後も映画に1本出たんですけど、みんな嫌がって見なかったんですよね。やっぱり、こういうのって好感度が……それまで、ヒーローでやってきたんでね。メル・ギブソンは。で、芸能プロダクションの事務所からも契約を切られてしまって。それで、その時に助けてくれる人が誰かと言いますと、シルベスター・スタローンですよ。

(山里亮太)あっ、あれか! 『エクスペンダブルズ』。

(町山智浩)困ったときのシルベスター・スタローンですね。ハリウッドの互助会ですから。で、『エクスペンダブルズ3』にメル・ギブソンが悪役で出たりしていたんですけどね。あと、『マチェーテ・キルズ』っていう映画でも悪役をやっていたり。まあ、悪役しか仕事がなくなっちゃったんですね。メル・ギブソンはあまりにも評判が悪くなっちゃったんで。元祖マッドマックスなんですけどね。

町山智浩映画紹介『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』
映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』で映画『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』を紹介。スタローン本人にインタビューした際の話などをしていました。 ...

(赤江珠緒)ねえ。そうかー。でも、聞くと自業自得ですな。

(町山智浩)で、どうしちゃったんだろう?って思ったら、久しぶりに映画監督として復帰したんですよ。それがこの『ハクソー・リッジ』なんですけど。メル・ギブソンは人格は最低という風にみんな言うんですけど、映画監督としてはこの人、天才なんですよ。

(山里亮太)あ、そうなんですか?

メル・ギブソンの映画監督としての才能

(町山智浩)この人はね、監督としての腕はあるんですよ。で、1995年には『ブレイブハート』という映画でアカデミー監督賞も取っていますね。『ブレイブハート』っていうのはスコットランドがイギリスと戦っていた時に、スコットランド独立のために戦った実在の戦士を主人公にしていたんですけども。あまりにも、スコットランドの人がこれで燃え上がっちゃって。煽られて、実際にスコットランドは本当に独立しましたね。

(赤江珠緒)ええっ? すごい!

(町山智浩)これ、たぶん『ブレイブハート』がなければ、スコットランドは本当に独立しなかったと思いますよ。

(赤江珠緒)なんと! 国を動かした。

(町山智浩)それでみんなもう、「ウオーッ!」って盛り上がって。実際にスコットランドはいまね、外交権とかはないけれども、独立国家になりましたからね。その後に。そのぐらい、監督としての腕はあって、その後は『パッション』という映画を撮りまして。

(赤江珠緒)はいはいはい。話題作になりましたよね。

(町山智浩)イエス・キリストがローマ兵に捕らえられて拷問されて十字架にかけられるまでの映画なんですね。で、ストーリーがほとんどなくて、ただ拷問のディテール……どういう拷問だったのか?っていうのを細かく見せていくだけの映画だったんですよ。

(赤江珠緒)うんうんうん。

(町山智浩)ご覧になりました? これ。

(山里亮太)ニュースになっていたよね。すごい問題作だって。

(赤江珠緒)あまりにも、見続けるのは苦しいみたいな感じで。

(町山智浩)だって、ムチみたいなのがあって、ムチの先に金属の輪っかみたいなのがついていて、それでキリストを殴ると金属によって体の皮膚が持っていかれるとか、そういうのを全部見せるんですよ。

(赤江珠緒)いやー……

(町山智浩)「なんなんだろう、これ?」っていうぐらい、ひどい拷問映画だったんですけど。でも、すごいのはメル・ギブソン、実はそれ、自分が演じる予定だったんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)それは彼の夢で。キリストの役を演じて、拷問されるのが夢だったんですね。でも、年齢がいっちゃったから、キリストには老けすぎているんで他の俳優を使ったんですけども。まあ、変態の人なんですよ。メル・ギブソンっていう人は(笑)。

(山里亮太)どうやら、そのようですね。

(町山智浩)はい。あの、女の人のハイヒールにお酒を入れて飲んでいる現場を撮られたりもしている人なんで。まあ、いろいろ問題がある人なんですけども。女性を殴ったり、ヒールでお酒を飲んだり、拷問されたかったり。まあ、相当こじらせている人なんですが……それで、差別発言を連続させて。その後の『アポカリプト』もものすごい残虐映画だったですよね。徹底的な。

(赤江珠緒)はい。ありましたね。

(町山智浩)残酷シーンがすさまじかったんですけども、今回の『ハクソー・リッジ』はそれを超えていますよ!

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)すっごい映画でしたよ。本当に。あの、沖縄戦って本当にすごくて。『沖縄決戦』っていう岡本喜八監督の映画がありましたよね? あれはね、岡本喜八監督の作品の中でも『エヴァンゲリオン』の庵野秀明がいちばん好きだって言っている映画が『沖縄決戦』なんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、すごく庵野監督は影響を受けているんですけども。『シン・ゴジラ』なんかでも。『沖縄決戦』の中ですごく面白いシーンがあって、『沖縄決戦』って実際にアメリカ軍の上陸があって、日本軍の正規部隊と激突するシーンっていうのはほとんどないんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)『沖縄決戦』って沖縄の住民たちがいかにひどい目にあったか?っていうのは出てくるんですけど、正規軍の日本兵とアメリカ軍との戦闘シーンっていうのは、直接の描写はほとんどないんですね。それは、お金がかかるからやっていないんですけども(笑)。

(山里亮太)ああ、そういう理由で。

(町山智浩)そう。大変でしょう? だってアメリカ軍の人を雇わなくちゃいけないし、アメリカ側の装備とかも全部再現しなくちゃならないから。当時、あの規模ではできなかったんですね。映像化することは。ただ、セリフだけで説明されるんですよ。その中で、丹波哲郎扮する司令官の1人が「徹底的に我々日本軍は戦って、アメリカ側には精神異常者が続出したらしい」っていうセリフがあるんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、あまりにも日本兵側の戦い方が果敢ですさまじかったんで、結局アメリカ側に突破されるんですけども、アメリカ兵には大量の精神異常者が続出したって丹波哲郎が大喜びするっていうシーンがあるんですよ(笑)。いかにも丹波らしいんですけども。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)それは、事実なんですよ。

(赤江珠緒)はー! それだけ凄惨な戦いだった。

凄惨すぎる沖縄戦

(町山智浩)そうなんですよ。その後、ジョン・ヒューストン監督っていう名監督がアメリカ軍に雇われて、アメリカ軍の精神病院を記録した映画を撮っているんですね。『光あれ』というタイトルなんですが。それは、アメリカ軍が封印しちゃってずっと見れなかったんですよ。どうしてか?っていうと、PTSDがその1945年当時にあったことをアメリカ側が知っていて、ただそれがあるっていうことがバレるとみんな戦争に行かなくなるから、もみ消したんですよ。

(赤江珠緒)ふーん! うん。

(町山智浩)で、そのPTSDにかかっている元兵士たちの多くが沖縄戦の経験者なんですよ。その映画を見ると。だから、どれだけひどかったのか?っていうことですよね。敵も味方ももう、生き残った人も頭がおかしくなっちゃうという戦闘だったんですけど……『ハクソー・リッジ』っていうこのメル・ギブソンの映画はそれを完全に、映像で全部見せるんですよ!

(赤江珠緒)ええーっ?

(山里亮太)おおーっ! そういう残虐な描写とかが……

(町山智浩)もう、見ていても頭がおかしくなってきますよ。だから。すっげーな!って思いましたけども。もう、すっごいですよ。これ、本当に。この話は実話で、主人公はですね、デズモンド・ドスっていうアメリカの兵隊さんなんですが、彼は軍隊に入ってその沖縄戦のいちばん過酷な前田高地での戦いに参加するんですが、武器を1回も持たなかったんです。

(山里亮太)武器を持たない?

(町山智浩)武器を持たなかったんです。ライフルとか、一切銃を。このデズモンド・ドスっていう人はセブンスデー・アドベンチストというキリスト教の中でも非常に厳格で聖書原理主義的な宗派の1人だったんですね。で、十戒ってありますよね? 聖書の中にある。その「汝殺すなかれ」というのを完全に守るというのが彼らの主義なんです。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)だから戦争に行っても、武器を持たないでいいんですよ。良心的な兵役拒否ということで。ただ、この彼、デズモンド・ドスの若い頃、子供の頃が『ハクソー・リッジ』の前半では描かれるんですけど……それがね、お父さんもセブンスデー・アドベンチストの信者なんですけども、まあデズモンドとお母さんを殴る、蹴るの暴力父親なんですよ。

(赤江珠緒)なんか、そんな博愛的な話かと思いきや、DVなお父さんなんだ。

(町山智浩)そうなんですよ。で、しかもこの父親を演じるのが、あの『マトリックス』のいちばん嫌な敵役のエージェント・スミスですよ。あの、「ミスター・アンダーソン」っていう人、いましたでしょう? 最後、大量に増えて襲ってくる。

(赤江珠緒)ちょっと嫌味ったらしい感じの。

(町山智浩)色眼鏡の。あれがお父さんなんですよ。ヒューゴ・ウィーヴィングっていう、ものすごい眉毛をした俳優なんですけど。あれが父親だっていうだけで本当に嫌になるんですけど(笑)。酒に酔って、息子や母親をバンバンバンバン殴るんですよ。

(山里亮太)ちょっと自分を投影しているのかな?

(町山智浩)そうなんですよね。これを見ていてね、「メル・ギブソン、お前、これ自分じゃねえの?」って思うわけですよ(笑)。で、メル・ギブソンも実はカトリックの原理主義っていう非常に特殊なカトリックにいた人なんでね。で、メル・ギブソンの父親がそうだったんですよ。だからすごく、たぶん自分を重ねているところがあるんでしょうね。しかも、ヒューゴ・ウィーヴィング演じるDV父は酒ばっかり飲んでいるんですよ。まあ、自分がそうですからね。メル・ギブソンがね。だから、反省の映画みたいな感じなんですけども。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)で、そのデズモンドっていう主人公はものすごい暴力の中で育てられて、暴力を憎むようになるんですね。で、演じるのはアンドリュー・ガーフィールドという俳優さんで、この人は『アメージング・スパイダーマン』のスパイダーマンになるピーター・パーカーを演じていた男の子ですね。わかりますかね? ちょっと痩せっぽっちで。

(山里亮太)イケメンのね。

(町山智浩)いつもね、フニャフニャニコニコしてる子なんですけど。ちょっとこの子ね、俳優としては弱いところがあるんですよ。すごく。滑舌が悪いんですよ。僕みたいに。

(山里亮太)えっ? 滑舌が悪いんですか?

(町山智浩)滑舌が悪いんですよ、彼。だからフニャフニャしているんですよ。なんというか、首がすわらないというかですね、ガッチリしてなくて、フニャフニャフニャフニャしていて。「僕はね、あの、戦争とかよくないと思うんだよね」とかそういう感じなんですよ。しゃべり方が。

Andrew Garfield is a man of conviction as Desmond Doss in #HacksawRidge.

Hacksaw Ridgeさん(@hacksawridge)が投稿した写真 –


(赤江珠緒)ああーっ! でも、それが合っているんですか?

(町山智浩)合っているんですよ。スパイダーマンにはヒーローとしてちょっと弱いところがあったんですけど、今回は暴力を徹底的に否定して、武器を持つことを拒否した兵士の役なんですごく合っているんですね。アンドリュー・ガーフィールドくん。ただね、その部隊に入ってみんなと一緒に訓練をする時に、「僕は銃に触りません」とか言っているから、周りがもうイライラしてくるわけですよ。「お前、他に行けよ!」みたいな話になってくるんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、隊長だけじゃなくて一緒に訓練している仲間も「お前のようなやつがいたら、本当に俺たち、怖いじゃないか! 守ってくれないのか? 一緒に戦ってくれないのかよ?」ってことになって、だんだんいじめに発展していくんですよ。で、もう延々と部隊の中で彼をいびり出して辞めさせちゃおうとしていじめるんですが、彼は辞めないんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、「お前、戦争に行って人を殺さないのに、いったいなんで来るんだ? お前のようなやつに来てほしくないよ」って周りが言うんですけど、「僕は戦場に行って君たちを助けたいんだ。僕は徹底的に衛生兵(戦場での医者)として君たちを助けるために行くんだ。だから絶対に辞めない!」って言って、いじめ出されないんですよ。

(赤江珠緒)衛生兵としてね。なるほど。

(町山智浩)そう。で、「負傷兵を助けるために行くんだから、君たちがどんなに僕をいじめ出そうとしても、僕は辞めない」って。で、そのままついて来ちゃうんですよ。戦場に。で、その彼らのいた部隊っていうのはアメリカの陸軍の部隊の中でも最も戦死兵が多くて。半分以上が死んじゃったのかな? それぐらいひどいところに……レイテ沖とか、激戦にいろいろ参加して、それでこのハクソー・リッジの断崖絶壁のところに縄ばしごをかけて。「この崖の上にいる日本兵と戦え!」って彼らは言われるんですよ。

(山里亮太)150メートルぐらいの。

(町山智浩)そう。で、ここを登っていくんですけど、要するに戦車とかそういうのを持ち込めないわけですよね。崖だから。で、「そこの崖を超えたら、司令部のある首里に行けるんだ。ここを突破しなくちゃいけないんだ」っていうことで、そこに何度も突撃を仕掛けるんですけど、とにかく日本軍が強くて強くて、もうボロ負けにやられるんですよ。アメリカ軍が。

(赤江珠緒)うん、うん。

(町山智浩)これを見るとね、日本兵強すぎ(笑)。

(赤江珠緒)そうですか!

前田高地の死闘

(町山智浩)圧倒的に強いですね。これね。しかも、ものすごく至近距離なんですよ。白兵戦で。この前田高地の戦いって。だから、マシンガンとか銃も一応撃つんですけど、ライフルとかを腕で掴まれちゃうんですよ。取っ組み合いだから。もう本当に殴り合い、刺し合いで。あと、手榴弾を投げようとするんですけど、投げようとするのを見たら向こうが組み付いてくるんですよ。

(赤江珠緒)あっ、そんな距離で?

(町山智浩)そんな距離なんですよ。もう、入り乱れているんですよ。敵味方も。だから、味方を撃っちゃったりもしているし。で、手榴弾を投げようとしたら組み付くんですけど、組み付いた方もそれでどうするっていうわけじゃないですよね。だから、手榴弾を持ったまま2人が絡み合った状態で両方とも爆死ですよ。

(山里亮太)ええー……

(町山智浩)もうね、そうすると、これがまたメル・ギブソンだからいちいち人が死んで、パーン!ってなった時に煙がパンッ! とかそんな感じじゃないんですよ。グチャグチャになった人間がバラバラになって、内臓とかを飛び散らせながら……っていう描写なんですよ。

(赤江珠緒)うわー、メル・ギブソン……

(町山智浩)メル・ギブソンだから。隣に立っている兵隊にバーッ!ってはらわたが飛び散ったりするんですよ。火炎放射器を持ってきて、アメリカ軍は怖いから火炎放射器で炎をばら撒くんですけど、やっぱり至近距離だから火炎放射器のボンベを撃たれちゃうんですよ。するともう、そこで爆発して周りのアメリカ兵もみんな火に筒まれて……とかね。で、また嫌なのが、このハクソー・リッジ、実際にそうだったらしいんですけども。要するに、腕がもげたり、体中焼けただれても即死するわけじゃないんで、みんな生きているんですよ。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)で、もう地面がもう全部、倒れている兵隊で埋め尽くされるんですけど、みんな「ううっ、ううー……」とか言いながら、生きてるの。足とか手とかなくて。顔が半分なかったりして。っていうね。それを全部、このデズモンドくんが1人で助けていくっていう話なんですよ。

(赤江珠緒)衛生兵として助けていく!

(町山智浩)衛生兵として。

(赤江珠緒)これ、実話ベースですか?

(町山智浩)この人ね、75人助けたんですね。たった1人で。というね、まあすさまじい映画でね。一応反戦映画で、暴力はいけないっていうことになっているんですけど、メル・ギブソンが撮っているから、どう見ても楽しんで撮っているのが露骨でね。いったいこの映画をどう見たらいいんだろう?っていう気持ちになりますね。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。まあ、リアルと言えばリアルなんでしょうが、ねえ。

(町山智浩)もう、これはすごいですよ。もう、本当に。びっくりしましたけどね。ということで。もう、だって『プライベート・ライアン』『ランボー最後の戦場』とこの『ハクソー・リッジ』でどんどんどんどん段階的に戦争描写がひどくなっていくんで。この後、どうなっちゃうんだろう?って思うんですけども。

(山里亮太)『プライベート・ライアン』を超えてきているんですか?

(町山智浩)もう、超えてきていますよ。今回。相当ですからね。まあ、メル・ギブソンですから。どこが反戦映画なんだろう?っていう、よくわからない映画になっていますけども。日本の公開予定はまだ決まっていないんですけども、まあアカデミー賞に絡んできそうです。

(赤江珠緒)そうですか。はい。今日は町山さんにメル・ギブソン監督作品の『ハクソー・リッジ』を紹介していただきました。町山さん、来週は日本に戻ってこられるということで、スタジオですね。

(町山智浩)はい。スタジオからお送りします。

(山里亮太)お待ちしています。

(赤江珠緒)はい。よろしくお願いします。

(町山智浩)どうもです。

<書き起こしおわり>
ラッパーにしてラジオDJ、そして映画評論もこなすライムスター宇多丸が、毎週ランダムで決まった映画を自腹で鑑賞。その感想を生放送で語り下ろす「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。先週土曜日に評論した映画は、監督の最新作『ハクソー・...

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

関連記事