町山智浩・宮藤官九郎・伊勢志摩 ポン・ジュノ作品を語る

町山智浩・宮藤官九郎・伊勢志摩 ポン・ジュノ作品を語る ACTION

町山智浩さん、伊勢志摩さんが2020年2月10日放送のTBSラジオ『ACTION』に出演。宮藤官九郎さんと『パラサイト 半地下の家族』をはじめとしたポン・ジュノ監督作品について話していました。

(幸坂理加)ここからはアクションプロジェクトです。宮藤さん、今日は?

(宮藤官九郎)宮藤官九郎の映画紹介力向上プロジェクト。

(幸坂理加)はい。宮藤さんが情報を大渋滞させながら熱意で何とか乗り切る浜崎町ジャンクションのような新感覚映画紹介コーナーです(笑)。

(宮藤官九郎)町山さんがいるんだぜ?(笑)。

(幸坂理加)ねえ。お隣には町山さんが(笑)。

(町山智浩)あ、このノート、すごいですね(笑)。

(宮藤官九郎)そうなんです。

(幸坂理加)ああ、伊勢さんのマル秘ノートを。

(宮藤官九郎)伊勢さんが今日は『パラサイト』については語らずに、ポン・ジュノについて語るということで。

(町山智浩)でもね、そういえばアカデミー賞で思ったんだけど、伊勢さんってあれだよね? フレディ・マーキュリーブームの火付け役だよね?

(宮藤官九郎)そうなんですよ!

(伊勢志摩)フフフ(笑)。

フレディ・マーキュリーブームの火付け役・伊勢志摩

(宮藤官九郎)もともと、まだ誰もフレディ・マーキュリーに触れてない時に『あまちゃん』でフレディのコスプレをしたんですよ!

(幸坂理加)ああ、そうだそうだ!

(町山智浩)そうなんですよ。

(宮藤官九郎)もう全然、『ボヘミアン・ラプソディ』より早かったですよね。

(伊勢志摩)全然早かった(笑)。

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(町山智浩)すごい早かった! 火付け役なんですよ!

(宮藤官九郎)すごい早すぎて誰も気づかなかったっていう(笑)。だから、火がつかなかったんですね(笑)。

(伊勢志摩)でものんちゃんとかもね、その後にちゃんと追って下さって。

(宮藤官九郎)いろんな人が真似していたけど、一番最初は伊勢さんですからね! 「分かるやつだけ分かればいい」っていう(笑)。

(伊勢志摩)本当ですよ、ありがとうございます(笑)。

(宮藤官九郎)ポン・ジュノ、取ると思っていました?

(伊勢志摩)いやいや、だって国際長編でもう取ったじゃないですか。早い段階で。だから「ああ、ダメなんだな」と思って。

(宮藤官九郎)そう。俺もあれで「ないな」って思ったんだよ。

(伊勢志摩)それで脚本賞も取ってるから、もう絶対にないんだろうなと思って。「あーあ」って思ったんですよ。そしたら……そして宮藤さんが先週おっしゃったみたいに作品賞はできればポン・ジュノさんに取ってもらって、監督賞はタランティーノさんに取ってもらいたいっていう風にまさに私も思ってたけど。「まあ、やっぱり無理だったんだな。『パラサイト』、作品賞は……」って思ったら、四冠ですか?

(幸坂理加)四部門ですね。

(伊勢志摩)ありえるんだなって思って。先ほどもおっしゃってましたけども。驚きました。

(宮藤官九郎)今回、僕は『ほえる犬は噛まない』から一応順を追って見ていったんですけども。あんまり変わっていないですね。基本的に。監督として。

(町山智浩)変わってないですね。僕ね、映画秘宝っていう雑誌を作ってきたんですけども。それでいつもベストテンをやっているんですけど、ポン・ジュノ監督の過去の作品って『グエムル』もそうだし、『殺人の追憶』もいつも映画秘宝のベストテンのベストワンとかなんですよ。それなのに、アカデミー賞を取っちゃっていいのかな?っていう(笑)。

(伊勢志摩)映画秘宝的に(笑)。

映画秘宝的映画がアカデミー作品賞

(町山智浩)そう。映画秘宝映画がアカデミー賞?っていう。すごい、もう世の中がおかしくなってるのかな?って思いますよ。

(宮藤官九郎)ドメジャーが追いついちゃったっていう。

(伊勢志摩)でも、私もこのたび、あえてちょっとあんまり見てないんですけど。『ほえる犬は噛まない』をもう1回、見たんですけども。あとは『グエムル』とかは頭の中で反芻して……。

(宮藤官九郎)『ほえる犬は噛まない』でさ、殺虫剤を撒くシーンがあるじゃないですか。あれ、『パラサイト』でもあるでしょう?

(町山智浩)今回もありますね。

(宮藤官九郎)あれ、『ほえる犬は噛まない』で殺虫剤を撒いて、その薬がなくなったら犬もいなくなっているみたいな。「あれ、この人は変わっていないんだな」ってちょっと思ったんですよ。

(伊勢志摩)でも、ほら。ポン・ジュノさんって皆さん、大好きな人は大好きで。作家性がすごく出てる方じゃないですか。それなのに『パラサイト』ってすごく切れ味っていうかが鋭くて……なんて言えばいいんですかね? 『ほえる犬』とか『グエムル』ってその作家性がどってり出てるじゃないですか。

(宮藤官九郎)「どってり」(笑)。

(伊勢志摩)なんかこう、もっそり出ているというか。「これだ!」っていう(笑)。

(町山智浩)わかる、わかります(笑)。

どってりとしたポン・ジュノの作家性

(伊勢志摩)ドテッみたいな感じでどってり出ている感じがして。それがみんな好きなんだと思うんですよね。

(宮藤官九郎)重い?

(伊勢志摩)重いっていうか、やっぱり「俺の映画です!」みたいなのがドーンと出ているのに、『パラサイト』は気づかないうちに俺節がいっぱい入ってきてる感じがして。私、初めて見た時に、もう起承転結の「起」から面白いじゃないですか。もう離れられないというか、ジェットコースターじゃないですけど。それで、それなのに気づいたらたくさん……それで2回目を見たときにやっとそのポン・ジュノ節が入ってるってことに気づいたんですね。すごく切れる刺し身包丁でスカスカスカスカッ!って切っていて、「ああ、気づいたらポン節だわ!」みたいな気持ちになったんですよね。

(宮藤官九郎)「どってり」で言ったら、『パラサイト』に石が出てくるじゃないですか。あれ、『母なる証明』にも……。

(伊勢志摩)ああ、石だ!

(町山智浩)石、出てきますね。

(宮藤官九郎)だから鈍器なんですよ。ポン・ジュノの映画って鈍器が大事っていう(笑)。やっぱりね、どってりなんですよ。

(伊勢志摩)どってり。ゴーンなんですよ。音とかも大切ですよね。階段から落っことす時のあの……。

(宮藤官九郎)ゴーン!っていう。

(伊勢志摩)あっ……まあ、いいか。それぐらいは大丈夫かな?

(宮藤官九郎)フフフ、それは大丈夫。だって今、作品名を言っていないから(笑)。大概の映画に階段は出てくるから。『ジョーカー』にも出てくるからね。ゴーン!って。やっぱりどってりっていい表現かも。

(伊勢志摩)なんかね、もっさりっていうかどってりというか。

(宮藤官九郎)『オクジャ』もね、ドテッていう映画でしたよね。そうだわ。

(幸坂理加)町山さん、こんな感じなんですよ(笑)。

(町山智浩)擬音ばっかりですね(笑)。

(宮藤官九郎)フハハハハハハハハッ! そうなんですよ。擬音ばっかりで(笑)。

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