町山智浩『コンクリート・ユートピア』を語る

町山智浩『コンクリート・ユートピア』を語る こねくと

町山智浩さんが2024年1月9日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『コンクリート・ユートピア』を紹介していました。

(町山智浩)それでですね、今日は3本、一気に紹介しようと思ってんですけども。1本はですね、韓国映画で『コンクリート・ユートピア』という映画なんですが。これは1月5日からもう既に公開中なんですが。これ、大震災についての映画なんですよ。だからもう、映画会社の人は「うわっ、これは困った」って思ってると思うんですね。ただ、この映画のポイントは「地震よりも怖いものがある」っていう話なんですよ。これはですね、もう街が震災で完全に壊滅してしまって。何もかもが倒壊するんですが。ひとつだけ、ちょっとちょっと高級な高層住宅。そこだけが無傷で残るんですね。

で、そこに住んでいた住民がですね、他が全部倒壊してるんで。他で住むところを失っちゃった人たちを助けたりしてるんですけども。ただ、救援が一切来ないんですね。どうも政府も完全に崩壊してるみたいで。だからもう、限られた物資だけで生活しなきゃならなくなるんです。その時に、住民以外の人を追い出そうとし始めるんですよ。限られた施設を……自分たちが分譲で買ったものらしいんですよ。マンションでね。

(石山蓮華)ああ、そうか。「自分のところだぞ」っていう感じになっちゃうのか。

(町山智浩)そうそう。それでね、自警団を結成して、建物に入ろうとする人たちを狩りたてる。それだけじゃなくて、住民の中にも「かわいそうだから助けてあげよう」っていう人もいて。こっそり、匿ったりするんですよ。何人か、被災者の人たちを。すると、それを探し出して。その被災者を匿った人たちを裏切り者として処刑していくという……。

(石山蓮華)ええっ?

(町山智浩)これ、すごい怖い話で。震災そのものより怖いことが起こっていくんですね。で、これはパク・ソジュンさんというね、『梨泰院クラス』で人気のイケメンさんが出てるんですけれども。彼は最初は非常に真面目で、人に同情して優しくしてるんですけども。だんだん、その自警団に巻き込まれていくんですよ。彼にはすごいかわいい奥さんがいるんで。「奥さんのために」と思って、だんだん恐ろしい自警団に入り込んでいくという。最初は「これは間違ってる!」と思ってるんだけども。そのへんの怖さを描いていて。非常に心理的に怖いホラー映画みたいなとこあるんですけども。

SNSで拡散する大量のデマ問題

(町山智浩)やっぱりこれ、映画の公開と震災が今、ぶつかっちゃっていて。映画会社の人も困ってると思うんですが。やっぱり今回の震災でもですね、すごい数のデマが出回ったんですよ。SNSでね。で、一番怖かったのは、一番ひどかったのは、「火事場泥棒は殺してもいい」っていうツイートが出回ったんですよ。それは結構、名のあるラッパーの人が書いていて。これはものすごい怖いことですよね。で、実際に関東大震災の時に朝鮮人虐殺もあったし。最近の震災でも、いっぱいそういうデマで自警団が結成されて、暴力行為を行ったりしてるんですよ。

それでなんでそんなツイートをするんだ?っていうね。これね、一種のSF映画なんですけど。この『コンクリート・ユートピア』っていう作品は。でも、本当にリアルタイムで起こっていることなんで。そういう自警団行為みたいなことを掲げる人たちがいて。本当に危険なんで。これをぜひ見ていただいて。「本当に怖いのは人間です」っていうね。

(石山蓮華)危険だし、悪意がないからな……。

(町山智浩)そうなんですよ。自分は正義をやっていると思ってるんですよ。その自警団の人っていうのはね。それもまた怖いというね。

(石山蓮華)ちょっとこれ、注意点としてなんですが。『コンクリート・ユートピア』は架空の物語ではあるんですが。災害により地盤隆起や建物倒壊の描写があるので、あらかじめご覧の際はご了承いただきますようお願いします。

(町山智浩)はい。地震の描写があるので、お気をつけください。

『コンクリート・ユートピア』予告

<書き起こしおわり>

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