渡辺志保とDJ YANATAKEが選ぶ2019年ヒップホップ年間ベスト大賞

渡辺志保とDJ YANATAKEが選ぶ2019年ヒップホップ年間ベスト大賞 INSIDE OUT

(中略)

(DJ YANATAKE)じゃあ、残り、後半戦に行ってみましょうか。

(渡辺志保)残すところ3部門になりました。まずはMVP・オブ・ジ・イヤー。これは今年最も活躍したんじゃないかと……我々が勝手に世界規模で活躍したんじゃないかと思っているアーティストを選出しました。まずUS部門は、リル・ナズ・X! いや、リル・ナズちゃんをどこに入れるのか問題っていうのがね。

(DJ YANATAKE)そうなんですよね。

Lil Nas X『Old Town Road ft. Billy Ray Cyrus』

(渡辺志保)どうしよう?って思ったんだけども。ここにミーガン・ジー・スターリオンとかリゾとかもね、今年はやっぱり彼女のね……。

(DJ YANATAKE)そうだね。リゾってヒップホップ扱いなのかR&Bなのかポップスなのか、難しいところありますよね。

(渡辺志保)まあ、それを全部またいだ形で、かつ楽曲のみならず彼女の発言とか、彼女の服装とか彼女のアティテュードそのものが取り沙汰されたという意味でもリゾとかね、MVPだったなって思うんだけど……やっぱりちょっとヒップホップ的に、そして『INSIDE OUT』的にはこのリル・ナズ・Xの遂げた偉業っていうのを。やっぱりどの角度から見ても彼は頭ひとつ抜き出たことをしていたなと思いますし。で、何と言ってもそのアメリカのビルボードの歴史を塗り替えて、19週連続シングル1位という、そういう人間離れした記録を成し遂げた。そしてカントリーミュージックとの融合であるとか。『Old Town Road』のそのミームとしての完成度の高さもで証明したと思いますし。あとは『Old Town Road』一発で終わるかと思いきや……。

(DJ YANATAKE)そこなんだよ!

(渡辺志保)なんかすごい規模のデカい一発屋と思いきや、その後に出したEP『7』がヒットして、その中からも『Panini』というシングルがスマッシュヒットという感じで。やっぱり彼の動きも2019年の今ならではだなっていう風に思ったんですね。

(DJ YANATAKE)いや、本当にそうですね。まあ志保さんなんかもこの1年間、この人の話をして仕事がいっぱいできたんじゃないですか?(笑)。

(渡辺志保)いや、ありがたいことですよ、本当に(笑)。

(DJ YANATAKE)で、さっきね、「一発屋じゃなかった」っていうところもそこに隠された彼の頭の良さみたいなストーリーが志保さんにいろいろ教えてもらって面白かったっていうのもあるし。なんかこれ、いろんなところで話していてあれですけど。この曲が売れる前は5ドルしかなかったっていう。500円しか持ってなかった人が半年ぐらいたった今、14億稼いだっていうね。

(渡辺志保)素晴らしいですね。夢がある!

(DJ YANATAKE)ヒップホップドリームですよ。500円から半年で14億。

(渡辺志保)そういそう。だからそれぐらいのね、もう超飛び級のヒットを生み出したリル・ナズ・Xということで今年のMVP・オブ・ジ・イヤーに選出したいと思います。

(DJ YANATAKE)もう贅沢しないで一生遊んで暮らしていただきたいですね、はい(笑)。

(渡辺志保)そして同じくMVP・オブ・ジ・イヤー、日本を代表するのはTohji!

(DJ YANATAKE)これももうさ……。

(渡辺志保)文句なしじゃないですかね。彼の名前も至るところで聞いたし。で、舐達麻に関してもそうなんですけど、私も何か他のジャンルの方とね、現場とかお仕事の場でお会いすることもあって。やっぱりそういうところからすごい名前を聞いたのがTohjiくんだったなっていう。

Tohji『HI-CHEW』

(DJ YANATAKE)そのヒップホップ界でめちゃくちゃ勝ち上がるのも難しいし。そこにみんなチャレンジしてるわけだけど、なんかちょっとそれを超えたところにすごい短い時間でリーチしたなっていうね。

(渡辺志保)やっぱり彼のやることなすことが全て、エポックメイキングな感じもしますし。あと、今年は本当にBAD HOPもすごい立派なEPを作ったっていうこともありますけども。その海外への接点の作り方っていうのが。ゆるふわギャングもライアン・ヘムズワースとアルバムを作ったりもしていて。で、Tohjiくんもついこの間ですよね。最新のミュージックビデオ『Rodeo』がなんとNo Jumperから配信されたっていう。

(DJ YANATAKE)そうなんだよね。びっくりした!

(渡辺志保)で、No Jumperってチェックしている人はあんまりいないかもしれないけど、本当にね、XXXテンタシオンとかスモーク・パープとかそういうサウンドクラウドラップ世代をみんないちいち有名にしてきた有名ポッドキャストであり、YouTubeでのチャンネルがあるんですけど有名インタビュー番組っていう。ヒップホップ、ラップのアーティストをメインに呼んでインタビューを行うんですけど、YouTubeで全部その様子も見れて。

で、マーダービーツもそこに出てBAD HOPの話をしたりもしていたという。で、それを主催しているAdam22さんという人が結構有名な方なんですけども。なんと、そこからリリースされたミュージックビデオということで。本当にだからそういう意味でもまた、この日本のヒップホップシーンっていうのがですね、本当に一段、二段、十段ぐらい世界との距離を縮めていってるような感じが非常にしましたね。

(DJ YANATAKE)ねえ。本当にBAD HOPもそうだし、Tohjiもそうですけども。KOHHくんとかがね、切り開いてきた道なのかもしれないですけど。やっぱり「これでヒップホップが盛り上がってないって嘘でしょう?」っていうね。本当に今年のこの日本語ラップの皆さんの大活躍はもうワクワクすることが本当に多かったね。で、ここに来てこのTohjiがどういう一手を打ってるくのかなって思ったら、No Jumperは本当にびっくりしました。

(渡辺志保)ねえ。びっくりしたし、あとやっぱり彼のライブに行くと「いいな!」って思うのが若いお客さんがとにかく多いことにやっぱりグッと来ますよね。だからやっぱりTohjiくんたちがちゃんとシーンを牽引して、若いジェネレーションの層を作っているというかね。また新しいコミュニティーをそこで作ってるんだなっていう感じがめっちゃしましたね。

(DJ YANATAKE)まあ、ヒップホップとかっていうあれなのかもしれないけど、やっぱりその誰よりもロックスター感もあるし。なんか、まあ¥ellow Bucksとかとはちょっと違うスタイルなのかもしれないけど。でも若くしてね、こんなにいろんな種類のカリスマが出てくるのはいいですね。

(渡辺志保)はい。いいことです。というわけでMVP・オブ・ジ・イヤー、US版はリル・ナズ・X。日本版はTohjiさんを選出させていただきました。

(DJ YANATAKE)Tohjiも1年中、みんなTohjiの話題をしていたよね。

(渡辺志保)というわけで次。残すところはあと2部門となってきました。

(DJ YANATAKE)これ、次はだいぶ重要ですよ。

(渡辺志保)ベストソング・オブ・ジ・イヤー!

(DJ YANATAKE)これ、みんな何だと思っているんだろう?

(渡辺志保)今年『INSIDE OUT』的に最も優れた楽曲だなと思ったもの。まずUS部門はJ・コールの『MIDDLE CHILD』!

(DJ YANATAKE)やったー!

J.Cole『MIDDLE CHILD』

(渡辺志保)これもね、よく聞いた! なぜ選んだかというと、よく聞いたっていうのも理由のひとつなんだけども。まあやっぱりね、若者がどんどん台頭してきて新しいルールを作ったり、新しくルールを改変したりっていうのがヒップホップの醍醐味ですけども。そんな中、そのミドルチャイルド、中間管理職世代は一体どうすればいいんだ?っていう、たぶん誰もが世界共通に思ってることだと思うんですけど。

それをすごくスマートな形で提示してみせたJ・コールっていうところに私は非常に彼のラッパーとしての力量を感じたところでもありますし。それが全然ダサくもないし、あと説経がましくもないなって思ったのね。で、冒頭のベスト・コラボレーションの時にも話しましたけど、今年のJ・コールの動きっていうのはソロラッパーとしても非常に素晴らしかったし、後は自分のレーベルを率いる立場の人間としても非常に素晴らしかったですし。そういったところにもね、ひとつひとつ感銘を受けたし。

来年の1月末に行われるグラミー賞もJ・コール1人だけで何部門にノミネートされてるのかしら?っていう。それぐらい複数ノミネートされておりますので、なんか彼がよりデカいスポットライトを浴びる時が来てるのかなって思いますね。

(DJ YANATAKE)本当ですね。でもJ・コールとこのドリームヴィルのこの今年の評価っていうか。なんか日本でもっとバーンとならないのかな、みたいなのをずっと思いながら今年過ごしてきたところもあったけど。まあなかなかね、クラブとかでも地味に聞こえちゃう曲ばかりだからっていう感じもするんだろうけど。実際、アメリカもこの曲もすごかったもんね。ずっとずっとチャートの上にいたし。

(渡辺志保)そうそう。で、これこそミュージックビデオもね、すごい謎解きしたくなるぐらいのいろんなギミックみたいなものが差し込まれてて話題になってましたので。そういった意味でも私はベストソングはこれかなっていう感じもしました。

(DJ YANATAKE)あと、やっぱりアメリカでも……J・コールが「ミドルチャイルド」って言っちゃうぐらいだからここの世代の葛藤みたいなのはなかなか和訳を見てみても面白いなと思ったし。それって恐らく世界中の今のヒップホップシーンでみんなが思ってることなのかもしれないし。もちろんね、ミドル世代で頑張っている日本のラッパーとかすごくたくさんいるけど、なんかそういう人たちもすごく勇気をもらった曲なんじゃないかなと。あとこのJ・コールの活躍にね、世界中のこの世代は絶対に……。

(渡辺志保)勇気づけられていると思いますよ。

(DJ YANATAKE)もちろん若い子たちがフレッシュに見えて面白いのは当たり前なんだけど、やっぱりここにこの世代の意地を見たっていうかね、それが良かったよね。そこがグッと来ましたよね。

(渡辺志保)というわけでベストソングのUS部門はJ・コールの『MIDDLE CHILD』でした。そして日本部門、ベストソング・オブ・ジ・イヤー。今年、今年最も優れた楽曲だと思ったのは、Mall Boyz『Higher』!

Mall Boyz『Higher』

(DJ YANATAKE)これはもう、異論はないんじゃないですか?

(渡辺志保)これは……ヤナタケさん、今年これを何百回かけたかわからないみたいな。

(DJ YANATAKE)この曲に本当にクラブでどんだけ助けられたか……WREP BARみたいなところでDJをするみたいなことも多いんでお客さんと近いっていうのもあるんですけども。ええと、リクエストされた率はこれがダントツで1位!

(渡辺志保)ああ、本当? すごい!

(DJ YANATAKE)もうダントツです。

(渡辺志保)みんな、これを歌いたくなるのかな?

(DJ YANATAKE)そうだね。で、じゃあもちろんね、そういうところでもそうだし。大きいヒップホップのクラブでも受けたし。いわゆるオールミックスみたいなところでもかけれたし。MCバトルのもうZeppが満パンみたいなところでも受けるし。もう本当に……「ああ、こんなに流行ってるんだ?」っていうぐらい。だし、みんな歌いますね。

(渡辺志保)うんうん、なるほど。

(DJ YANATAKE)まあまあでもリリース自体はね、去年の12月だけど、ビデオ出たのが3月っていうことで。今年の年間を通して一番クラブとかでも聞いた日本語ラップってこれなんじゃないかな?

(渡辺志保)私もだからチャリくんのイベントとかでもさ、結構今年はO-EastとかWOMBとかデカいところでやるイベントなんかも遊びに行って。で、本人たちは出てこないけど、その曲がかかるとお客さんがもう曲がかかっているだけで、もう本人たちは出てこなくてもめっちゃモッシュして合唱して……っていうのが。もうヤナタケさんもいまおっしゃっていた通りだけども。そのね、ある「現象」と呼びたくなるような……。

(DJ YANATAKE)これ、本当に結構チャリがね、現場で流行らせたみたいなのもあるかな。なんかDJがかけて、ちゃんと現場で盛り上がって。それでちょうどいいタイミングでビデオが出て……みたいなところだったと思うし。で、チャリはそこからね、『aero』っていう自分の曲も作って。その2曲、ちゃんとヒットをクラブで作るっていうのもDJとして素晴らしかったですし。これも異論はないでしょう。特にクラブにいる人は異論はないでしょう、これは。

(渡辺志保)(ツイートを読む)「ヒップホップIQピヨピヨの私でも知ってる曲です」「Tohjiがいなくても大盛り上がりで楽しかったです」っていう。やっぱりそういうなんか接着剤になる1曲なんでしょうね。圧倒的にね。そんな感じでベストソング・オブ・ジ・イヤー、US部門はJ・コールの『MIDDLE CHILD』、日本部門はMall Boyz『Higher』でした。

(DJ YANATAKE)今年もあっという間に残すところあと10分ですよ。

(渡辺志保)皆さん、今年もご愛聴いただきまして本当にありがとうございました。2020年もね、変わらぬご愛顧よろしくお願いします。

(DJ YANATAKE)じゃあ、ラスト!

(渡辺志保)最後に残した部門はベストアルバム・オブ・ジ・イヤー!

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