岡村靖幸とライムスター『マクガフィン』の制作過程を語る

岡村靖幸とライムスター『マクガフィン』の制作過程を語る アフター6ジャンクション

(岡村靖幸)だからたぶん、なんか明確なビジョンがあるんだろうなと思って。「じゃあ入りますか」って言ったら、もうなんか見えてるからっていうことで。「こことこことここの構成を変えさせてください」って言ってましたよ。

(宇多丸)いや、そんな……D?

(Mummy-D)いや、違うよ。ウタさんだよ。ウタさんが「順番を変えよう」っつって。もともとはその平歌の後にすぐにラップのサビが「ジジジ……」って来ていたんだけど。

(岡村靖幸)ずっと思っていたんじゃないですか。だって「スタジオに入ろう」って言ってましたよ?

(宇多丸)ああ、そうですか。

(Mummy-D)で、そこをその後に岡村さんが入る予定だったのを、それをひっくり返そうっていうことで。それでスタジオでひっくり返してみたんだよね。

(宇多丸)これね、俺あるあるで。たぶんそこまでは「ああ、そうした方がいいのにな。そうした方がいいのにな」ってずっと思って。それでやるじゃないですか。で、まあいまの状態になったじゃないですか。そうするとさ、やっぱりたぶんまあこっちが正解だったんですよ。そうなると、忘れちゃうんですよね。その、正解を見ちゃうと。

(Mummy-D)自然なだけにね。

(宇多丸)そう。「なんでそこに行かなかったのかっていう方が不思議」みたいな感じになっちゃうから、たぶん忘れちゃって。

(岡村靖幸)僕はわからなかったんですよ。「もうこの元の形でいいじゃん」と思ってたから、「スタジオに入ろう、スタジオに入ろう」って言うから。「まあ、何かを変えたいんだろうな」とは思いつつ、「じゃあそれはどういう風に変わるのか、逆に聞いてみたい」と思って聞いたら「構成を変えたい」ということだったと。我々的に「行けた!」っていう。ほぼいまの状態に近い状態で。で、ここにJINのスクラッチを入れて……みたいな。じゃあ、ちょっとそのJINのスクラッチパートを聞いてみましょう。どうぞ。

DJ JINスクラッチパート

(宇多丸)はい。というね。

(Mummy-D)激しいですね。

(宇多丸)これはJIN的にはどういうビジョンで?

(DJ JIN)これはですね、岡村さんと作業しまして。「こんなの初めて!」っていう(笑)。そういうプロセスでした。で、このパートができたんですけども。岡村さんと直接いろいろやり取りをして。何小節ぐらいスクラッチを入れるとかやり取りして。その、やり取りをしていく中で岡村さんがしきりに、まだ出来上がっていないだけど、「とりあえずスクラッチのいろいろと重ねているソロのトラックを送ってください」みたいなことを言っていて。で、「えっ? まだできてないんだけどな……」みたいな。それである程度、もう尺とか決まって。まあほぼほぼこういうことかなっていう感じで。

「じゃあ、そのソロのデータができたで送ります」っていう風になって。で、自分が作ったやつがそのままポコンと乗って、そのまま行くのかと思ったらそこから岡村さんの鬼エディットがブワッと入って。それでアウトロとか本来スクラッチが乗る予定じゃないところにまで、いろいろと移植されて。それで「ああ、なるほど!」っていう。「結果的になんかすごいことになってるぞ、これは!」っていう。普通にちょっとスクラッチしただけでは出せないような、そういう音のサウンドスケープっていうか。

(岡村靖幸)お二人の「マクガフィン」っていう声を録って、それをオーディオとして送って。「その『マクガフィン』って言ってる声をスクラッチしてほしい」って言って、そうやってもらって返してもらって。それをまたエディットし直すっていうことをやっていました。だからよく聞くと「マクガフィン」って言っていると思うんですけど。

(日比麻音子)何層にもなっているということなんですね。

(宇多丸)あと、5月28日に一応録ったガヤみたいなのの断片もあちこちに入ってましたね。とか、だからたぶんその5月28日に「やったー!」っつって。まあ曲の全体像が見えたんで。「やったー!」っつって俺ら、いい気持ちになって。「飲みに行きましょう!」なんて飲み上げたじゃないですか。

(岡村靖幸)行きましたね。あれは楽しかった。

(宇多丸)駒沢の後にあれは……。

(DJ JIN)美味しい、なんかスペイン……。

(宇多丸)スペインバルみたいなところにね。

(岡村靖幸)白ワインを飲まれていましたね。

(Mummy-D)ああ、あの時か。三茶でね。

(宇多丸)だいたい白ワインを飲んでいますけども。だからそのぐらい、俺の記憶の中ではあの時のみんなの「ああ、これは行けた!」っていう達成感がすごいあって。

(日比麻音子)バチッと合ったんですね。

(Mummy-D)ピューマの話をいっぱいしていたよね?

(宇多丸)ピューマ、そうですね。この東京にはピューマ会というのがあるという。雄ピューマと雌ピューマが飛び交っているという、こういう話をいろいろと伺いました(笑)。で、そのJINとのやり取りがその後もあって完成して……という感じですかね。で、その後の日程を言いますと、5月28日にそれで掴んだ後に、7月22日にほぼ曲完成のラフミックスが上がる。それまでずっと鬼エディットされていたわけですね。

(日比麻音子)2ヶ月ぐらい。

(宇多丸)で、いろんなあれがありまして、ミックス作業完了が8月21日で。それで諸々があってからの10月15日にその岡村さんのところに近藤さんから「岡村靖幸さらにライムスター」という名義の提案なんかもありまして。「超いい!」ってなって。10月16日マスタリング作業終了。キムケンさん。そしてライブが……いつだっけ? 10月19日か。だからマスタリング終わった直後にあったということですけど。で、じゃあそれに関して1個だけメッセージを。

ライブで初お披露目

「Zepp DiverCityの例の現場におりました。ベースの横倉さんの一言紹介からいきなりライムスター登場。頭の中でバーンという音が。(番組での)宇多丸先生指導の岡村さんラップの初披露だけでも嬉しかったのに、ライムスターそろい踏みでしかも新曲披露なんて……あの日にアー写撮影、ぶっつけ&サプライズミュージックビデオ収録はどのような経緯で実現されたのでしょうか?

また私たちベイベちゃんにとってはいつも通り素敵なDATEの流れでしたが、ライムスターのみなさまがスタンバイ中、ステージに出た時、『うわっ、これはまさしくDATEだわ!』と実感されたことはありましたか? キングオブステージの感想をぜひ伺いたいです」という。まずその、なんで……アー写はその当日には全部やって。全部、ミュージックビデオもあそこで撮って。

(岡村靖幸)僕はね、いろんなことを思ってたんですけど。やっぱりスパイ映画っぽい……4人がいかにもスパイ映画っぽいこんな感じのやつを美女を1人置いて、みたいなことも含めて。なんかスタジオで撮ろうみたいなことを思ってたんです。で、映画のワンシーンみたいな。そう思っていたんです。で、それらしいその参考のイラストもスタッフに送ったり。スタッフからそっちに行ってるかどうかはわからないですけども、僕は作っていたんです。でも何がしかの理由で、粗く4人をダンディーに撮ろうみたいな企画に。どういう経緯だかわからないけど、でもそういうことになって。で、どういう経緯だか知らないけど、あの日に撮ることになったんですよね。

(Mummy-D)フフフ(笑)。

(宇多丸)でも、あの倉庫のところで写真を撮って……みたいな。なんかでもあの日に起こった、そこでライブをやって「ワーッ!」ってなってという。あの時はDもバースを、いきなり出ていって、ライブでやったこともないバース。しかもすげえ難しいやつを、しかもバンド演奏もくっついての非常にイレギュラーなバージョンで。まあアウェイっていうかさ、僕らのお客じゃないところで……っていうので、泣きが入るぐらい。我々的には事前にはやっぱりね、「キツい!」っていう。

(Mummy-D)いや、マジであれはキツかった。しかも周りにカメラマンがいっぱいいてさ。「気が散るからあっち行けよ!」みたいな(笑)。しょうがないんだけどね。

(宇多丸)まあでも、見事にやりきったし。なんかいまにして思えば、そのアー写も含めて全部あの1日のあの場の数時間に集約してなってる感じがなんか、なんかよくわかんない圧として表現されていて。なんかすごくいいかなって思いますね。

(岡村靖幸)そうですね。かっこよかったですしね。プロモーションビデオも。

(宇多丸)壇上で僕がその岡村靖幸さんに抱きかかえられるという。あのくだりは非常にベイベのみなさんが……。

(岡村靖幸)あれ、いいシーンでしたね。

(宇多丸)「スキンヘッドになってこういうことをされるのであれば、私もスキンヘッドにする!」っていう風におっしゃっているという。

(一同)フフフ(笑)。

(岡村靖幸)あれはいいシーンでしたね(笑)。

(宇多丸)まあ要は僕らは急に出てきて、初めてやるラップでね、余裕がないから一生懸命ラップしてるんですよ。岡村さんはもう2時間以上ステージに立ってるんで、余裕が違うんですね。自分のライブですし(笑)。

(岡村靖幸)いや、でも素敵でした。本当にライムスター好きだなと思いました。

(宇多丸)僕ら的にはでもあと、お客さんがすごい、もう出てくるなり喜んでくれたんで。そこですごい気が楽になったというのはありましたよね。

(Mummy-D)そうね。それはもちろんあるけど。でもあれだね。スパイのミッションはやっぱり一発勝負なんだな。ねえ。

(宇多丸)そういうことだね。

(岡村靖幸)なるほど。

(Mummy-D)だからよかった。

(宇多丸)といったプロセスで作られてきた岡村靖幸さらにライムスター『マクガフィン』。それではフルでお聞きください。どうぞ!

岡村靖幸さらにライムスター『マクガフィン』

(宇多丸)はい。岡村靖幸さらにライムスターで『マクガフィン』。できたー!

(DJ JIN)よいしょー!

Mummy-(Mummy-D)アウトロがすごい!

(宇多丸)アウトロもすごいし。でも本当にたぶんね、放送では言えない仕掛けも含めて、実はいっぱいいろんな仕掛けが入ってるので。繰り返し繰り返し聞くのに耐えるというか。

(岡村靖幸)何回聞いたっていいですね。

(宇多丸)中毒性が高いようにもう全体が作られていますので。ぜひ何度も味わっていただければと思います。はい。ということでね、日比さん。すいませんね。おじさんたちがキャッキャキャッキャ言っていて。

(日比麻音子)いや、耳福でした。あっという間。時間足りないです。はい。ありがとうございます。勉強になりました。

(宇多丸)そんな感じでですね、我々も会心の出来でございます。現在配信中。岡村靖幸さらにライムスター『マクガフィン』、ぜひダウンロードして聞いてみてください。お知らせ事としては岡村さん、来年ツアー。またやられますよね。

(岡村靖幸)ですね。

(宇多丸)4月から6月にかけて、いっぱいいろんなところでやりますので。岡村靖幸さんのホームページで。特にでも、岡村さんはライブがすごいですから。

(岡村靖幸)はい、がんばります。

(宇多丸)今日はいっぱいしゃべっていただきましたけど、ライブではしゃべらずに。ベースの横倉さんが主にしゃべるという。

(岡村靖幸)がんばります。

(宇多丸)フフフ、がんばってください(笑)。そして我々がライムスターも47都道府県ツアー、残りわずかとなってまいりましたが。駆け抜けていこうじゃないかと。

(岡村靖幸)すごいですね。達成感はどうですか?

(宇多丸)達成感は……いま、ちょっと寂しいですよ。残りわずかになりまして。

(岡村靖幸)すごい! 偉業!

(宇多丸)いや、別にちょいちょいやっていますからね。47ぐらいね。まあでも、すごく良かったですよ。各地を回って。楽しかったです。

(Mummy-D)楽しいよね。

(宇多丸)岡村さんともまた、どこかで『マクガフィン』をやる機会があるのか? ないのか? というあたりは、うーん。何となく俺らの日程を見てればわかるだろう!

(一同)フハハハハハハハハッ!

(Mummy-D)察しろよ、お前!(笑)。

(宇多丸)ということで、ホームページを見ておいてください。でもみなさん、いろいろとお話も……こういう話を改めてすることもないから面白かったです。またぜひよろしくお願いしますということです。

(岡村靖幸)よろしくお願いします。

(宇多丸)ライムスターからMummy-Dさん、DJ JINさん、そして岡村靖幸さん。ありがとうございました。

(一同)ありがとうございました!

<書き起こしおわり>

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