吉田豪『イアンのナードコア大百科』を語る

吉田豪『イアンのナードコア大百科』を語る アフター6ジャンクション

吉田豪さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。2019年秋の推薦図書として『イアンのナードコア大百科』を紹介していました。

(吉田豪)それとか、いろいろとあるんですけども。これ、知っています? 『イアンのナードコア大百科』っていう。

(宇多丸)い……『イアンのナードコア大百科』? いや、わかんないです。知るわけない系じゃないですか? 例によってそれ。

(吉田豪)日本在住だったこのイアンさんっていう人がナードコアのマニアで。ナードコアっていうのはRAM RIDERさんからなにから……。

(宇多丸)高野政所くんとか。

(吉田豪)政所さんとか。いろんな人たちを輩出したシーンなんですけども。

(宇多丸)一言で言うとなんですか? サンプリングを駆使して……?

(吉田豪)まあ、ネットカルチャーとかと結びついた面白アングラテクノというか。

(宇多丸)面白アングラテクノかつ、もう著作権とかは無視したっていうか。

(吉田豪)みたいな音源の完全コンプリートガイドなんですよ。

(日比麻音子)ええっ、よく作りましたね!

(吉田豪)とんでもない情報なんですよ。当時のフライヤーだのなんだの。

ナードコア音源の完全コンプリートガイド

(宇多丸)ねえ。日比さん、そもそも追えないじゃないですか、そんなの。

(日比麻音子)そんなのだってワーッて……。

(吉田豪)メジャーリリースもなにもしていない、本当にアングラな音源のジャケをひたすら載せ続けたという。

(日比麻音子)ヤバいやつじゃないですか! すごい!

(吉田豪)すさまじい本で。

(宇多丸)これ、だって俺がさ、「持っているわけない。知ってるわけないじゃないですか!」って……要は、これって一般には流通してないんじゃないですか?

(吉田豪)そうなんですよ。これ、電子書籍としてはあるんですけども。これが紙になったものっていうのは海外通販のみですね(笑)。

(宇多丸)フフフ、日本のナードコアを扱っているんだけども。めんどくせーな(笑)。

(日比麻音子)すごいなー。コミケで売っていたんですか?

(宇多丸)この番組で「イアン」っていうとイアン・コンドリーかと思っちゃうけども。日本に住まわれていた?

(吉田豪)一時期住んでいて、いまはアメリカに戻ったみたいですね。

(日比麻音子)うわっ、すごい。しかもこの分厚さもとんでもない厚さですね。

(吉田豪)だから大百科本……昔の小さな豆本がありましたけども。それを模している以上はやっぱり紙でほしいと思って紙で買いましたね。僕の知らないような事件とかが死ぬほど載っていて面白いですよ。ロフトプラスワンでナードコアの人同士のバトルが行われ、結構なヤバい乱闘になったという……。

(宇多丸)へー。まあそれはいくらでもあるでしょうけどね(笑)。

(吉田豪)そういうの、ナードなシーンでもあるんだ!っていうね(笑)。

(宇多丸)ああ、たしかにね(笑)。いちばんそういうね、D.Oじゃないのにおかしいなって(笑)。

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(吉田豪)ケンカから遠いシーンで。ヤバい。凶器を片手に大暴れみたいな。出禁になったみたいな。「そんな事件があったんだ!」みたいなことが載っていて。

(宇多丸)へー。ちょっといいですか? 僕も拝読して。へー。

(日比麻音子)6年間に渡る日本での活動を集大成としてまとめたっていう。

(宇多丸)でもこれ、ナードコアに限らずですけども。こういうネット中心に盛り上がったカルチャーみたいなのって、たとえばこの番組で特集した中で言うとLo-Fiヒップホップとかもそうですけども。全体像がつかみづらいみたいな。

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(吉田豪)つかみづらいし、これぐらいちょっと昔のものって本当にネット上に情報がないんですよ。

(宇多丸)いよいよそうかもしれない。リアルタイムならまだしも。

(吉田豪)恐ろしいことに、たぶん10年ぐらい前のネット情報って本当にないんで。そのロフトプラスワンの乱闘の話を聞いて衝撃を受けてすぐに検索をかけたら、情報はゼロでした。

(日比麻音子)すごい! 歴史書だ。

ちょっと前のネット情報は消失しがち

(宇多丸)2000年代初頭ぐらいのヒップホップシーンとかで、俺らがどこのクラブでやったっけ? みたいなの、調べるけども出てないみたいなね。ありますよね。

(吉田豪)最近、いま僕が自分の書評まとめた本を編集中で。

(宇多丸)書評……ちょっととてつもない量になりそうですけども。

(吉田豪)まあ、プロレスとか格闘技の本に絞っていたんで。それの流れで僕が昔、紙のプロレスっていう雑誌にいて。それを辞める顛末のこととかもちょっと書かなきゃいけなくなって。その時期のこととか調べるとネット上、何もないですからね。やっぱりね。僕が何年に辞めたのかとか、わかんないんですよ。

(宇多丸)ああー、自分で調べようとしても。うんうん。

(吉田豪)恐ろしいですよ。

(宇多丸)だからね、これは随分前にコンバットRECも言っていましたけども。そういうネット上の細かいバナーとかああいうものも……。

(吉田豪)ちゃんと保管すべきっていうね。

(宇多丸)本当はやらなきゃいけないんだけども、誰も現状はその価値を……だいぶいまはあれかもしれないですけども。誰も価値を認めてないから、誰かがアーカイブした方が……っていうのはありますけどね。

(吉田豪)という恐ろしさはすごい感じますね。

(日比麻音子)用語集とかもついているんですね。すごい。

(吉田豪)最近、こういうだから同人本みたいなものもちゃんと買うようになったりとか。読書の幅、どんどんと広がっていますよ。

(宇多丸)いや、読書の幅が広がっているのはいいですけど、この『イアンのナードコア大百科』は基本、手に入らないという?

(吉田豪)海外でオンデマンドで買えるし、海外でダウンロードはできるという。

(宇多丸)紙版は2018年のコミケのみ……ちなみに吉田さん、コミケで買ったわけじゃないでしょう?

(吉田豪)僕は海外通販です。

海外通販でのみ購入可能

(宇多丸)すごいな(笑)。

(日比麻音子)そこまで追いかけないと……。

(吉田豪)僕、いま完全に海外通販マニアになっていますからね。こういう無許可な海外通販のTシャツとかも……(笑)。

(宇多丸)ああ、僕もそのTシャツね、非常にゆかりの深い……吉田さんと言えばのビートたけし(笑)。

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(吉田豪)こういうものばっかり買っているんで。そういう同人本的なもので言うとちょっとあったのが『小さなバイキングビッケ』の海外のグッズとかの写真集。日本のとかも含めて。これもめちゃくちゃいいですよ。

(宇多丸)これ、もう完全にZINEじゃないですか(笑)。

(吉田豪)ZINEですね。超かわいい。レコードのジャケとか。

(宇多丸)へー。『小さなバイキングビッケ』。元は絵本とかですか? それがアニメになって……みたいな。そのグッズだけ集めている。

(日比麻音子)すごい。ガムまで載っていますよ。ガムの……ああ、転写シール。ありましたね。こういうのも載っているんですね。

(吉田豪)日本のグッズはわかるんですけど、海外のグッズは本当に謎だらけだったんで。めちゃくちゃ便利ですね。すごいほしくなった。

(宇多丸)革製品シリーズとか、きっちりとアーカイブ化されているのがすごいですね。そしてさ、ビッケだけで何冊出しているんだ?っていうね。問題はそこなんですよ。ビッケだけで何冊も出せるの?っていう。

(吉田豪)3冊出してもまだ足りないぐらいの。

(宇多丸)まあ、そういうのたしかにかわいいはかわいいですけども。吉田豪さん、でもZINEまで紹介しだしたら、これは沼じゃないですか? はっきり言って。ヤバいところに手を出しているんじゃないですか? ひょっとして。

<書き起こしおわり>

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