PUNPEEさんがJ-WAVE『SOFA KING FRIDAY』の中でDJプレミアについて特集。プレミアのビートの特徴やおすすめの楽曲について話していました。
(PUNPEE)お送りしたのはナズで『Nas Is Like』、プロデュースはDJプレミアでした。もう何回かけているのかわからない感じのこの曲ですけども、かけさせていただきました。
メッセージです。今年の5月に来たメッセージなんですけども、学生の方。「Pさん、こんばんは。僕はいまレコード屋でバイトをしているんですが、素人なのでレコードの知識が一切ありません。ヒップホップのおすすめレコードなどありましたら教えてください。PS. Pさんの普段かけてるメガネのブランドも教えていただけると嬉しいよ」。フフフ、「嬉しいよ」っていきなりのタメ語っていう(笑)。ありがとうございます。なんすかね? たぶん普通にいろんなところにあるALOOKっていうメガネ屋さんで似たようなやつを買ってます。
で、今週は特に話すこともなく……話したいけど話せないこともあったりするんで。今週は「ヒップホップのレコードの知識」っていうことをこの方も言ってくれているので、自分とかほぼ同世代のヒップホップを始めた人だったり、聞き始めた人だったらだいたい影響を受けているDJプレミアについて話そうと思います。最初にかけたナズの曲もプロデュースしていて。言ったら後ろのトラックですね。ヒップホップの場合、だいたい後ろのトラックを作っていると「Beats By」とか。主には「Produced By」ってクレジットに書いてあったりするんですけども、そのビートを作っている人でDJプレミアっていう人です。
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自分が結構いわゆる「ドープ」っていう風に言われているものにいちばん最初にやられたのってこの『Nas Is Like』っていうナズの曲で。1998年か99年ぐらいに出たやつだと思うんですけども。その前にもビースティ・ボーイズとかサイプレス・ヒル……サイプレス・ヒルもドープなんですけども。ちょっとオルタナティブな流れから来たヒップホップを聞いていたんですけども。そのどす黒い、本当にザ・ストリートっていう感じのヒップホップでいちばん最初にハマったのってこれだったような気がしていて。
といっても、その時もパフ・ダディとやっていたりして、さらに固い人からはいろいろと言われていたりもしたんですけども。DJプレミアは別名が「プリモ」だったりとか。たまに日本では「ポメー」って言われていたりとかして。「プレミア」って言っているサンプルをボタンを連打していると「ポポポポ……ポメー」みたいな感じになって。たまに本人がサウンドエフェクトをサンプラーで押していたりもした気がするんですけども。
もともとグールーっていうラッパーとギャングスターっていうグループで後ろのDJをやっていて。グールーは最初は違う人とグループ組んでいたんですけども。そのテープを聞いて、その2人でグループをやるようになったという。「DJ」っていうけど、その後ろのバックDJもやってますが……もちろんDJもやるんですよ。自分のプロデュースした曲で。ターンテーブルを2台置いて。普通はターンテーブルを2台並べたその間にミキサーを置くのが主流なんですけども。プレミアは右にターンテーブル2台を置いていちばん左にミキサーだった気がする。しかも縦置きじゃなくて横置き。
そういう人なんですけど。でも、自分の世代の人たちからすると「またプレミアの話?」みたいな感じがすると思うんですけど、いま自分のラジオにメッセージくれている人ってたとえばいままではあんまりヒップホップを聞いたことがない人だったり。あとはハタチとか、これからビートを作り始めますみたいな人が1周か何周かして増えてきていて。たとえばいま、ハタチとか22歳ぐらいの人って生まれたのが1997年とかだから。リアルタイムでプレミアとかDJプレミアがプロデュースしたグループホームとかギャングスターとか通っているはずがなくて。
自分はだいたい99年、2000年ぐらいに知ってそこから掘り始めた、ディグし始めた感じなんですけども。なんかたまーにそういうのに詳しい人を呼んだり、OMSBとかもすごいプレミア詳しいし。いろんなプロデューサーの人について、影響を受けた人についてたまに1回分の枠を使って。ファレルやバックワイルド、ピート・ロックとか、サラーム・レミとか。いろんな、プロデューサーっていうヒップホップで後ろのバックトラックを作る人って大事だったりもするので。そういうのも今後、たまに話せたらなとか思って。今日はプレミアっていう感じで話していこうかなっていうか。後世に……そんなに詳しくはないですけども、概要とか、こんなところにやられましたっていう個人的な思いだったりを話していこうかな、みたいな感じで思っております。
で、そのDJプレミアって自分が思うに何個かにスタイルが分かれているような感じがして。いちばん最初は割とサンプル、サンプリングのネタ。昔のジャズとかソウル、ファンクのネタをループさせてトラックを作るっていう手法もあるんですけども。サンプリングのネタを結構そのまま使う感じの手法。それでグールーの男の一本の、まったく重ねないラップがかっこいいギャングスター(Gang Starr)。そういうグループがあったんですけども。
自分はその頃のプレミアで好きなのは『Just To Get A Rep』っていう曲で。昔、なんかスケボーのプレステのゲームで使われていたりした気がする。ファットボーイ・スリムとかも同じネタを使ったりしているっすね。これです。
Gang Starr『Just To Get A Rep』
この頃は割と結構そのサンプリングソースをまんま使ってドラムを乗せて……っていう感じだったと思うんですけども。その後、1994年に出たジェルー・ザ・ダマジャっていう。この人もDJプレミアの周りのギャングスターファンデーションっていうクルーに所属をしていたラッパー。日本の漫画、アニメ好きのおっちゃんなんですけども。いま考えたら、いまのUSのラッパーの人とかってみんな日本のアニメとか漫画が好きって言っているっすけど、その元祖かもしれないっすね(笑)。当時は「えっ、ジェルーはそんなの好きなの?」なんて。ボトムズが好きだったりとか、結構言っていましたけども。いま考えたらそのパイオニアなのかもしれない。うん。
その人に提供した『Come Clean』ていう曲、当時の人は「何だ、これ!?」ってなったらしいんですよね。言ったら「水滴の音をサンプリングしているんじゃないか?」って。「ポーン、ポーン、ポロン……♪」みたいな。
後々、これはたしか木琴かなんかだったんじゃないかな?っていう話になったんですけども。いま思うと、そんな気もしたんですが。「なんだ、これ?」っていう衝撃がそこで……それが次の転換期というか、そういう感じのような気もしていて。で、だいたいいままでに続くその後の伝統的なもう1個の形を作るんですけど。それは、厳密に言うとこの時点でその前からやっていた人もいるかもしれないですけど。「チョップ」と「フリップ」っていう方法をそのヒップホップの中にブワーッと広げた人がプレミアなんですよね。
言ったら、最初はたぶん昔の曲のネタをサンプリングをする時って著作権料を払わずにやっていたり。それで訴えられたりっていうようなことが90年代によく発生していて。もともとアンダーグラウンドのカルチャーだったからみんな無断でやっていたと思うんですよね。いちばん最初の方って。レコード屋もそのレコード、お客さんが尋ねないと店頭に出さない、みたいなことをやってた時期もあったらしいし。なんかそういうブート盤とか、結構グレーなところでやっていて。
でも、そのネタを超細かく刻んで分かんないようにフリップ……順番を変えたりしたら大丈夫なんじゃないか?っていうところから、たぶん生まれたんじゃないかっていうのが一説で。なんかすごい黒人の方っぽい発想っていうか。「楽器がないからレコードプレイヤーを楽器にしてDJが始まった」なんていうのに近いのかな? なんて気もするんですが。それで、そのチョップっていうのは本当に元のネタが持っている良さとは全く違うかっこよさ……無機質な感じのものに変えたというか、そういうような手法を割と大きく広くひろめたのがプレミアっていう認識で。
そこからはいまに至るまでバンドをやったりとか、いろんなやり方も変わっていってると思うんですけども。そういう人です。で、自分がビートを組みはじめた時に結構衝撃を受けたのが、ギャングスターの『Moment of Truth』っていう5枚目のアルバムがあって。そのアルバムが割とチョップ&フリップの初期の到達地点みたいな感じで自分は思っていて。そこに入っている『You Know My Steez』っていう曲があるんですけども。それの元ネタってこんな感じなんですよね。
チョップ&フリップの手法を広める
これをこの部分だけ使って組み替えるとこんな感じになるっていう。
もともとはメロディーがあったり、メロウなものなんですけども。それを無機質なかっこいい、なんか怪しいものに変えてしまうっていうのが結構衝撃的だった気がする。で、これ、「何回も聞いたよ、この曲!」って。自分たち世代からすると耳タコぐらいの感じだと思うんですけども。その後にギャングスターの出したベストに入っている『Full Clip』っていう曲も割ともともとメロディーのあるこういうサンプリングネタを……。
それを切り刻んでこんな感じにしているんです。
で、もともとこの前にもグループホームの『Supa Star』っていう曲だったり、もっとチョップしている曲もあるんですけども。
音質とかスクラッチの感じ、ミックスの感じとかも自分はここで1個、到達しているんじゃないかな?っていうアルバムが『Moment of Truth』です。で、『Moment of Truth』を経て、自分の好きな曲。Royce Da 5’9”っていう人……エミネムともともと同じ出身のラッパーの人がいるんですけども。その人、『Hip Hop』っていう曲があって。その曲ももちろん好きなんですけども。やっぱりいちばんヒットした『Boom』っていう曲があるんですよね。これもチョップを使っていて。元ネタはこんな感じ。
それを「ああ、ここを切る?」みたいなところをループさせてかっこいいビートにしているっていうのがこの『Boom』という2000年ぐらいに出た曲です。というわけで、聞いていただきましょう。Royce Da 5’9”、プロデュースはDJプレミアです。『Boom』。
Royce Da 5’9”『Boom』
(中略)
(PUNPEE)お送りしたのはギャングスターで『Ex Girl to Next Girl』でした。たぶんそのアナログバージョンになります。
今回はDJプレミアのことを話していて。特にいま、プレミアになにかがあったとか、そういうことではないんですけども。たまーに自分の好きなプロデューサーの人とかを1回まるごと話したり、それに詳しい人を呼んで話たりするのも面白いかなと思って、プレミアを選んでみたりしました。
なんでいまの曲をかけたか?っていうと、これは割とチョップとかの前の時代のプリモだと思うんですけども。スクラッチですね。プレミアのひとつのシグニチャーとしてスクラッチ……ハメる系の、決して「チャカチャカチャカチャカ……」みたいな速いとかテクニック系のスクラッチじゃないんですけども。なんかハメていくんですよね。で、それが毎回センスっていう感じを感じていて。
プレミアのハメる系スクラッチ
Dilated Peoplesっていう西海岸のすごいかっこいいグループがいるんですけども。もちろんプレミアよりも後輩の世代で一緒に曲を作るってなった時にそこのDJに人が「プレミアはスクラッチ部分で何をハメるのかを決めるのに1日かかった」っていう風に言っていて。
結構、そのプレミアがプロデュースした曲のサビって、もちろん盛り上がる感じで歌っていくフック、サビもあるんですけども。スクラッチがフックの曲っていうのも結構あって。スクラッチがサビっていうか。バースが終わってラップをし終わったら、サビがスクラッチ。いまはあんまりないかもしれないですけど、この時代というか昔はよくそういうのがあって。そこでどんだけかっこいいスクラッチを昔のネタから持ってこれるのか?っていうのは結構あった気がするので、かけさせていただきました。
この曲、『Ex Girl to Next Girl』のスクラッチはRIPSLYMEのDJ FUMIYAさんがFRONTかBLASTという雑誌で「このスクラッチ、俺は全部コピーしてこすれる」みたいに言っていたのが結構印象的で。「おお、ヤベえ!」みたいな感じで自分も真似をした記憶がありました。
で、もちろんプレミア氏はヒップホップ中心でBumpy Knucklesっていうのでフレディ・フォックスと一緒に作ったり。もちろんグールーともギャングスターで作ったり。……もうグールーさんは亡くなってしまったんですけども、ギャングスターファンデーション、自分の周りのクルーと作る時が多いんですけども。やっぱりいろんな……もう職人技だから。いろんな界隈の人からすごいリスペクトされていて。
クリスティーナ・アギレラのアルバムで割と4、5曲ぐらいやっていたんですよね。2003年ぐらいかな? それは結構衝撃的で。「えっ、クリスティーナ・アギレラのアルバムでDJプレミアがやるの? うおお、聞いてみてえ!」って。どうなるかすごい楽しみで聞いたら、めちゃめちゃかっこよくて。自分もよく、シングルで切られた曲を『SOFA KING』のBGM、インストで使ったりもしているんですけども。その切られた方じゃない、『Thank You』っていう曲があって。それが個人的にすごい好きで。
言ったら、それまでのヒップホップのプレミアの手法みたいにクリスティーナ・アギレラの昔の曲のアカペラをイントロでこすっているんですよね。『Genie In A Bottle』のフレーズとかでこすっていて。「うおお、かっけー!」って。なんかこう、歌が上手い人とちゃんとヒップホップの伝統的なのをやっている人が合わさってもちゃんとかっこよくなるんだなっていう衝撃をこの曲を聞いて受けた気がする。なので、クリスティーナ・アギレラの『Thank You』。これもDJプレミアプロデュースです。聞いてください、どうぞ。
Christina Aguilera『Thank You』
はい。聞いていただいたのはクリスティーナ・アギレラで『Thank You』でした。結構1回の30分で全部を話すのは不可能なぐらいの感じだと思うんですけども。やっぱりこの太いドラムの感じと、低音だけじゃなくて実はスネアだったり、ネタの高いところの部分がすごい気持ちよく出ているんですよね。で、他の人に提供したプレミアの作品を聞くとだいたいかっこいいんですけど、たまに全然音質というか、全盛期のプレミアっぽくないとかがあって。それはそれですごいかっこいいんですけども。やっぱりエンジニアをやっていた人の力も結構でかかったのかな?って思って。エディ・サンチョっていう人がやったりしているんですけど。
その人のミキシングの技術もすごいでかかったのかな?って思ったりしました。そんな感じのプレミアをひたすら話す回だったんですけども。たぶん自分なんて全然ペーペーで。もっとフリークの人が日本中にいっぱいいると思うので。なんか「お前、これを忘れているよ!」みたいなのがあったら全然言ってください。教えてもらえたらと思います。
いろんな自分のプリモの好きな曲って、もちろんさっきかけた『Moment Of Truth』とかいっぱいあるんですけども。たとえば、ZEEBRA氏とかとも一緒にやったりしていて。『THE UNTOUCHABLE』っていう曲……弟5lackがラジオに来てくれた時にかけたりしているんですけども。世界中のいろんな人とやったりしているし。
でも1個に絞れって言われたら確実に無理だと思うんですけども……なんだろう? レディ・オブ・レイジの『Unfuckwitable』っていうやつで。スヌープ・ドッグのコンピレーションに入っているやつで。これ、あんまりそんなの「好き」っていう人を聞いたことないですけども。このビートが結構好きで。それを最後にかけて終わろうと思います。他にもビギーの、結構前にかけた『Unbelievable』とか『Kick in The Door』とか。あとはAZの『The Format』とかも好きなんですけども。
あと、ナズの『N.Y. State of Mind』とかもすごい好きなんですけども。謎にこれをかけて終わろうと思います。というわけであなたの親愛なる隣人の凡人、板橋区のダメ兄貴ことPUNPEEがお送りした『SOFA KING FRIDAY』、今回もこんな感じ。では次回。さよなら、さよなら、さよなら……。
Lady Of Rage『Unfucwitable』
<書き起こしおわり>