安住紳一郎『音楽の日2019』の舞台裏を語る

安住紳一郎『音楽の日2019』の舞台裏を語る 安住紳一郎の日曜天国

安住紳一郎さんがTBSラジオ『日曜天国』の中でTBSテレビの音楽特番、『音楽の日2019』の舞台裏について話していました。

(安住紳一郎)さて、昨日TBSテレビの方で私、仕事をしていたんですけども『音楽の日』という13時間に渡る長時間音楽番組の第一部を担当しまして。私は8時間分だったんですけども。

(中澤有美子)お疲れ様でした。充実した番組でしたね。

(安住紳一郎)いえいえ。ねえ。かなり力を入れて演出陣は取り組んでいたみたいですけども。翻ってみますと私、あれだけ働いても特にね、なにか出るわけではなくて。亀十っていうどら焼きを3個、経営陣……取締役。あの人は常務なのかな? わからないけども。亀十のどら焼き3個であれ、やるんですよ。

(中澤有美子)ええっ?

(安住紳一郎)フフフ、いや、まあまあ、月給はもらっていますよ。別にお給料はもらっていますけども。「あ、がんばってねー」なんて言って。「ふーん」って思って。まあ、別にそれは普通のことなんですけどもね。まあ、冗談でね。「ああ、どら焼き3個だね。やりまーす」なんてね。でもやっぱり、最近少なくなりましたけども、ああいう生放送らしいテレビは私は個人的には好きなので。いつも楽しく参加をさせていただいたりしています。

いろいろと最近はね、決まりごとなどがたくさん増えまして。テレビ、ご覧になってらっしゃる方も見方が厳しくなったし。あるいは参加するアーティストのみなさん方の制約も厳しくなったりとかして。ずいぶんとね。あとはテレビの悪い歴史の反省からもね、いろんなことをやっちゃいけない。「これはダメ」とか「こういう風な映り方はうちの歌手はしたくない」とか。そういう制約なんかがいっぱいある中でどんどんどんどんと、限界がある中なんですけども。

ああいう長時間の生放送になりますとやっぱりちょっとずつね、そういう普段は締め付けられているタガが少しずつゆるみ始めるんで。私みたいな生放送トラブル大好きみたいな、そういう人間なんかは生き生きしちゃう感じですよね。

(中澤有美子)フフフ、ああ、そうですかー(笑)。

生放送トラブル大好き・安住紳一郎

(安住紳一郎)そもそも105組のアーティストのみなさん方に来てもらって、189曲を放送するっていうんですから並大抵ではありませんよね。むしろ、昨日1日でしばらく音楽を聞かなくてもいいという、そういう感覚になりますよね(笑)。それをぶっつけでやるんじゃなくて、練習するわけですから。リハーサルは5日間かな? ずーっと毎日やって、「今日はこの20曲」「今日は20曲……」っていう風にやって当日の本番を迎えるんですけども。さらに昨日の段階に来て、189曲が最初は「187に減ります」みたいな。それで本番の直前に「188になります」みたいな。「なんで自然に増えているんですか?」みたいな。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)リハーサルが別の場所でうまくいかなかったりして減ったり、あるいはうまくいって増えたりとか。そういう減ったり増えたりするっていう。最近、なかなかないですよね。で、豪華なことに最近は音楽番組などで生演奏が少なくなりましたからね。紅白歌合戦も3年くらい前ですかね? 生演奏ではなくなって。なので、いわゆる楽器のスペシャリストたちが後ろで演奏をして歌手の人が歌うっていうスタイルの音楽番組はほとんどいま、ないんですが。『音楽の日』はそのスタイルを踏襲して。服部克久さんが指揮をしていたりするんですが。

(中澤有美子)そうでしたね。

(安住紳一郎)全部ではないんですけどもね。あの後ろにいる40人編成ぐらいなんですけども。あの人たちの腕前っていうのも見る人が見るとびっくりしちゃう。日本を代表するスタジオミュージシャンですね。そんなみなさん方で編成をされていまして。なかなかテレビには映らないんですけども。私、横でずっと見聞きしていますんで。普通にトラブルがあったりして。なにか、セットの入れ替えみたいなのがあって、指揮棒が完全に見えない状態でみんながほぼ下を向きながら勘でスタートみたいな(笑)。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)「見えない、見えない、見えない!」なんて言って。で、こっち側のヴァイオリン隊とかピアノの人たちが急に横を見ていて。「指揮、見えるんですか?」「ああ、なんとなくドラムのスティックが角度で見えますから、それでやってみます」みたいな。「すごいな!」って思ったりしてね。あとはたくさんバタバタバタバタと出入りするからスタンドマイクが将棋倒しみたいな。バタバタバタッみたいな。それを普段はマイクの位置を直しそうにない大御所たちが総出で直すみたいな(笑)。「私しかいないんで、私たちが直します!」みたいな。「すいません!」みたいな。

(中澤有美子)ほえー!

(安住紳一郎)あと、控室を間違っちゃうみたいな感じで。

(中澤有美子)あるでしょうね!

(安住紳一郎)あります。びっくりです。「はっ!」みたいな。私、比較的スタジオ横の小部屋みたいなのをいただいていて。そこでちょっと早くできるようにっていただいているんですけども。昨日もそこに入ったら「はっ! DA PUMPのISSAさん! 私の控室で着替えているっ!」みたいな(笑)。「はーっ! なにしてるんですか?」「あ、ちょっと借りました」「はあ……裸、見た!」って思って。そういうことがありましたね。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)意外だね。面白いなって思って。これは昨日じゃないんですけども。私も驚いたんですけども。ドラムを叩く人ってお尻にドラムのスティックを差していますよね。『ポニーテールはふり向かない』的な感じで。

(中澤有美子)そうなんですね。

(安住紳一郎)『ポニーテールはふり向かない』自体も……(笑)。

(中澤有美子)とても懐かしい(笑)。

(安住紳一郎)あれ、おしゃれで入れているんだとずっと思っていて。よくね、ジーパンの後ろポケットにドラムのスティックを差している、そんな印象があるんですけども。私はあれ、ファッションだろうなって思っていたんですけども、実はドラムをやってらっしゃる方はおわかりだと思うんですが。ドラムをこう、叩いていますよね。

「ズッチャッダッダッ、ズッチャッダッダッ……」って。そしたらやっぱり汗をかいてきて、手が滑った時にスティックがポーンとどこかに行っちゃいますでしょう? でもドラムの人たちって休むわけにはいかないですからね。そうすると、その後ろに入れていた控えのスティックを持って叩き直すんですよね。そういうのも間近で見ていたりして。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)で、当然スティック、ものすごくパワフルにプレイしていてピョーン!って飛んじゃいますもんね。そうすると困っちゃいますでしょう? で、左手で1本持っていて、右手が空になっちゃったりして。そうすると、左手を倍速にして叩いて、右手の代わりの分もしばらく、2秒ぐらいガガガガガーッて片手でカバーをして、その間に右手でスティックを持ち直して元に戻すっていう。ねえ。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)そういうのを間近で見ていると「プロの人たちってすごいな!」っていう感じがいたしますね。

(中澤有美子)そうなっているんだー!

裏方さんたちの職人芸

(安住紳一郎)あとは美術さんっていう美術セットを組む人たちと、それからカメラマンたちの技術。音声さん、照明さんですね。ぜひ私も一度……私も放送局に就職をしてなにに驚いたか?っていうと、その人たちの動きがすごくて。滝沢歌舞伎の演目の演出で桜吹雪、500キロの紙吹雪が上からドスーン! ブシューッ!ってなって。それはそれは素晴らしい演出だったんですけども。私はそれよりもそのダーン、ドスーン!ってステージ上にブワーッと広がった桜吹雪。その500キロ落ちてきてその中でダンスをし続けるジャニーズJr.のみなさんもすごいなと思いましたけども、それを今度、6分半で片付ける美術スタッフもすごいな!って思いますよね。

(中澤有美子)ああーっ! へー!

(安住紳一郎)桜エビ漁みたいになっていましたよ。下に敷いたシートを端から外して、端からブワーッて持ち上げて。それで逆からにブワーッ持ち上げて。みんなでグーン!ってやって。それで上から出てきたクレーンでグーッ!って吊って。本当、うん。焼津の桜エビ漁みたいにグイーッて上がっていって。

(中澤有美子)桜エビ漁! わあ! 本当だ、そうやったんだ!

(安住紳一郎)すごいんですよね。それを反対側のステージで誰かが歌っている時にやっているっていうことですね。面白いですよねー。技術さんたちも『8時だョ!全員集合』から鍛えられてますからね。上手にやりますよ。

(中澤有美子)そうですか! 連綿と受け継がれた……。

(安住紳一郎)昨日の番組ではないんですけども昔ね、宝くじ音楽特番かなにかがあったんですけども。その時に斉藤和義さんかなにかが歌っていたんですが、ちょっとした都合でセットチェンジが完全にタイミングを間違っちゃったんですよね。それで「どうするんだろうな?」って思っていたら斉藤和義さんが1曲、歌っている途中でセットチェンジが始まっちゃったんですよ。でもスタッフたちは「セットチェンジ、いまじゃない!」って言っているんだけども、でも「いましかない!」って言っているから、斉藤和義さんが歌っている中で後ろのセットをチェンジし始めたの。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)で、かけてあるものとかボードとかを取り始めたんだけども。で、「これは相当な不体裁だから止めるのかな?」って思ったんだけども、「もう歌っちゃっているから止められない!」ってなっちゃって。で、結局なんだろう? 前衛的な……斉藤和義さんの曲に乗せながら、労働讃歌みたいな感じでそのセットチェンジをする人たちを見せるっていう感じにしたのね。で、最初はみんなポカンとしていたんだけど、そのうちに「これはこれでアリだな!」っていうことになって。で、きちんとその斉藤和義さんの歌終わりに次のセットができあがるっていう演出に急遽見えたみたいでね。なんか、そういうのもあったり。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)あと、本当に信じられないんですけど、慌ただしくて番組がいつ始まっていつ終わったのかみたいな、そういうのもごっちゃごちゃになる時があるんですよ。信じられないでしょう? みんな、準備に余念がなくて番組が始まったということをお知らせするフロアの子の声が通らなくて、みんなが気づいていないみたいな。でも「もう始まってまーす!」みたいな。

(中澤有美子)ええっ?

(安住紳一郎)信じられないですよね? で、そのオンエアーも見たんだけども、その時もなんかオーケストラたちのチューニングしている音。「ボボボー♪ ブブブー♪ バババー♪」っていうのをわざと長めに聞かせているんだなっていう(笑)。そういう演出、ありますでしょう?

(中澤有美子)はい。コンサート会場に来た感覚の。へー!

(安住紳一郎)そうですよね。そういうのが長めになっているみたいな(笑)。

(中澤有美子)ああ、でも結果、悪くない感じになって?

(安住紳一郎)そうですね。いろんなことがありました。あとは、お話できないもっと楽しい話がいろいろと。フフフ(笑)。また、折を見てみなさんにもお話ができたらなと考えております。

(中略)

ヴァイオリンの弦が切れた際の対処方法

(安住紳一郎)冒頭で話した音楽番組の話ですね。女性の方からのメッセージです。「私の演奏中のアクシデントを目撃したことがあります。東京フィルハーモニー交響楽団の上野文化会館での定期演奏会での出来事でした。なんと、コンサートマスター。第一ヴァイオリン奏者のヴァイオリンの弦が途中でブチッと切れたことがありました」。あのいちばんえらい、指揮者の横に座っているオーケストラの演奏を取りまとめる、リードする演奏者代表。コンサートマスター。

「……コンサートマスターの弦がブチッと切れたことがありました。『あらららら?』とみんながびっくりしていたらどうなったと思いますか? 間髪入れず、後ろの席のヴァイオリンの人が楽器を差し出し、またまた間髪入れず三番目の人の楽器が二番目の人に渡され、いちばん後ろにいた人はそそくさと袖に退散。あっという間の仕業でした。

もちろん、次の楽章が始まる時には引っ込んだ人も別物を抱えて登場。その曲が終わるまでコンマス以下、並びの人はみんな他人の楽器で演奏。『なるほど、そういう取り決めがあるんだ!』と感心をした出来事でした」。へー!

(中澤有美子)ほー! そういうことなんだ!

(安住紳一郎)すごいですね。バケツリレーみたいに。「ああ、私のを!」「あなたの、ください!」みたいな。それぞれがね。順列がついているから。ですよね。「ああ、演奏の上手な人にすぐに渡して!」「わかりました!」「わかりました!」みたいな。すごいね!

(中澤有美子)フフフ、それは一度、ちょっと見てみたいですね。

(安住紳一郎)見てみたいですね。「見てみたい」って言ったら怒られるのかな? すごいね。いや、プロは違うんんですよね。こういうところがね。

<書き起こしおわり>

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