みうらじゅんさんが2023年4月23日放送のTBSラジオ『日曜天国』に出演。死ぬ間際に見るという走馬灯の映像を生前から編集しておくことの必要性を語っていました。
(安住紳一郎)さて、みうらさんにお話を聞いてますけども。「オリジナル走馬灯」っていうのは、これはあれですよね? 人がちょっと命の……。
(みうらじゅん)そうですね。走馬灯ってほら、一応、死ぬ寸前に見る画像みたいなことを言うけれども。死ぬ寸前だから、たぶん編集が弱いと思ったんですよ。俺。慌てて、にわかに作るわけじゃないですか。
(安住紳一郎)そうですね。もうね、急遽ですもんね。
(みうらじゅん)だって、膨大な人生という資料があるわけじゃないですか。その中から、走馬灯も限りがあると思うんですよね。入れられる写真が。寸前ですから、そんな長くないじゃないですか。
(安住紳一郎)自分の頭の中の映写機みたいなものにですね。
(みうらじゅん)僕、昔ずっとスライドショーっていうのをやっていたんで。あの時ってまだ、スライド機を使っていたんですよ。当時は。で、そのエルモのスライド機がね、あれ80枚しか入らないんですよ。スライドのフィルムが。ということは、たぶん大概ね、走馬灯は80枚で構成されてると僕はと踏んでるんですよ。
(安住紳一郎)フハハハハハハハハッ!
おそらく走馬灯は80枚
(みうらじゅん)だからそこに「これ、不本意だな」とかいうやつを1枚挟んでいたら、むかつくじゃないですか。「ああっ、しまった!」と思ったら、もう終わりですからね。それを今から、自分で構成しておく。「これは絶対出てくれよ!」っていうのを前に出しておくっていう運動ですよね。
(安住紳一郎)生前葬的なことですか?
(みうらじゅん)生前葬よりももっと、生前編集ですよね。編集作業です。これ、一番重要だと思うんですよ。その、物を捨てたりする前に。これをやっておかないと。
(安住紳一郎)で、みうらさんは自分の死ぬ寸前に見る走馬灯をもう編集しちゃったんですか?
(みうらじゅん)編集をするために、絵も書いてるし。その絵に出てくるコロナ画は僕の走馬灯だろうっていうやつを書いてるから。
(安住紳一郎)へー!
「コロナ画」とは、みうらじゅんがコロナ終息を締め切りにして描いているF10号のキャンバス75枚(現在の枚数)の連作巨大絵画のことです。東京初公開。写真は「マイ遺品展」で撮影した55枚。このときより増えてます! pic.twitter.com/DghHuI5oYq
— みうらじゅん公式サイト (@miurajun_net) April 15, 2022
(みうらじゅん)あと、いるのはスタッフロールだけなんですよ。で、やっぱりたくさんの人に支えられた人生だっていう。『スター・ウォーズ』の特撮スタッフがブワーッとエンディングで出てくるぐらいな。何百人もほしいじゃないですか。あそこを今、ちょっとやってるんですけどね。
(安住紳一郎)なるほど。じゃあもうコロナ画はみうらさんがこれまでの人生のハイライトで見てきた様々なシーンを書いてるし。それが走馬灯のスライドになっていると。
(みうらじゅん)だから今まで、その崖の絵ももちろん書きましたし。それも入ってますし。今、まだどんどん続いて書いてるんすけど。だから今度からはやっぱり、脇のところに……まあ、嘘も盛り込んでいかなきゃならないじゃないですか。やっぱり。いや、「俺の人生ってこんなに素晴らしかったんだ!」って。ほら、一瞬ですから。
(安住紳一郎)嘘は必要なくないですか?
自分しか見ないから、嘘を入れてもいい
(みうらじゅん)いや、「これ、嘘じゃね?」っていうやつは見ないわけですから。俺しか見ないわけですから。「そうだった。そうだった」っていうようなね。僕が大学の時にラグビー部に入っていたとか。
(安住紳一郎)入ってないですよね?
(みうらじゅん)入ってないです。全然、体育はダメだったんですけど。そこでタッチダウンを決めた時とか。その後、なんかすごい彼女にモテたとか。そういう絵もね、入れといたら入ってくると思うんですよね。走馬灯に。
(安住紳一郎)ここにきて、願望みたいなの入れなくてもいいんじゃないですか?
(みうらじゅん)そうですか? でも一瞬じゃないですか。フワーッとして、終わりたいじゃないですか。
(安住紳一郎)ああ、「いい人生だった」みたいな?
(みうらじゅん)そうですよね。なんか、外国の卒業式でポーン!って空に投げるやつ、あるじゃないですか。
(安住紳一郎)大学の卒業式みたいな。
(みうらじゅん)あれも、ちょっといいシーンではあるじゃないですか。あれもほしいんですよね。だから。1回もないですけど。そんな思い出、ないですけども。あと、スポーツカーに乗ってるところ。免許もないけど。彼女となんかフロリダかなんか走ってるのも、いいじゃないですか。ほしいじゃないですか。俺の人生、ほしかったから。
(安住紳一郎)ええ(笑)。
(みうらじゅん)足しておけると思うんですよね。そうやって。
(中澤有美子)そうか! 自由自在ですね!
(みうらじゅん)自由自在ですよ。それで「そんなもん、嘘じゃないか!」って言う人もいないわけですから。自分しか見ない映像ですからね。いけると思うんですよね。
(安住紳一郎)みうらさん、ちょっと失礼な言い方ですけども。この件に関して、ちょっとなんか……ちょっと、あれですか? 思いつきで少し、しゃべってるところ、ありますよね?
(みうらじゅん)いや、その言い方は失礼ですね。それは前から考えています。大丈夫です。
(安住紳一郎)ああ、そうですか(笑)。
(みうらじゅん)前から考えていることですから。
(安住紳一郎)なんかちょっと軸がぶれているなっていう……。
(みうらじゅん)まあ、こういうところで揉んでいくっていうのも大切なんで。編集のためには。今、揉んでいるところです。
(安住紳一郎)失礼しました(笑)。
<書き起こしおわり>