渡辺志保とDJ YANATAKE Drake『For All the Dogs』を語る

渡辺志保 Drake『Slime You Out ft. SZA』の人種差別的リリック問題を語る INSIDE OUT

渡辺志保さんとDJ YANATAKEさんが2023年10月9日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中でドレイクの最新アルバム『For All the Dogs』について話していました。

(DJ YANATAKE)とりあえず秋の新譜とそれにまつわるニュースなんかをダラダラしゃべっていければという感じですけども。なにはともあれ、やっぱりドレイクさんですか。

(渡辺志保)いやー、それでさあ、新譜が出るのはもうわかってるし。だいたい世界全体的にそうだけど、最近ってもう金曜日になったらみんな、新譜配信開始じゃないですか。

(DJ YANATAKE)日本時間だとお昼の1時ぐらいだよね。

(渡辺志保)そうそう。で、どんなにずれ込んでも夕方の4時ぐらいには聞けるんですよね。だから私の金曜日のルーティンとしては、保育園のお迎えが5時とか5時半だから、それまでにめっちゃガーッて急いで集中して新譜をチェックするっていうのが金曜日の午後の過ごし方なんですね。で、、そのドレイクの新しい『For All the Dogs』っていうアルバムも出ないかな、出ないかなって。もう本当に毎時間ごとにApple MusicとかSpotifyとかでリードしまくって。「ああ、まだ出てないんだ」みたいなことを繰り返してたら、なんとドレイク自身が「10月6日のニューヨーク時間(EST)で朝6時に出します」みたいに言っていて。「えっ、朝6時? お迎え、行っちゃってるじゃん! 間に合わない!」みたいな感じでちょっと持ち越して土、日、月と通して聞いていたわけなんですけど。

(DJ YANATAKE)俺もラジオで生放送をやっていて。「出たらかけます!」って言っていたんだけど。で、曲をかけるごとにチェックしてたら、まさにその朝6時っていうのが出てきて。全然ダメで。最初にちらっとビデオだけ出てた、『8AM In Charlotte』だけが……でもあの時、ビデオも公開中止したりとか、いろいろ変な動きしてましたけども。

(渡辺志保)ああ、そうなんだね。最初、アドニスくんが……なんかこれはどこまで? あれはこのアドニスくんのビデオ、どこまでドレイクが手を引っ張ってというか、どこまでセリフで言わせて、どこまで純粋な彼の言葉なのかわかんねえなって思っていたんだけどもね。ヤギの絵を書いてって、そんな……。

(DJ YANATAKE)ああ、そうね。「GOAT(Greatest Of All Time)」って言わせたいっていうことだよね。

(渡辺志保)そうそう。

(DJ YANATAKE)でも、なんていうの? もうドレイククラスじゃなきゃできないけど。今回だいぶ……「明日、出るよ」とか「今週、出るよ」っていうのがだいぶずれて。「俺でもわかんねえ」ってツアーで言って。「とりあえず、でも2週間後にちゃんと出ますよ」っていうのは文面で出したけど。その日も、いわゆるみんなと同じ時間に出ないで。気持たせ作戦が……結構みんな、そうやって話すじゃん? 調べたり、SNSとかやったり。

(渡辺志保)そうなんだよね。で、「6」にこだわるのは当然というか。彼はカナダのトロント出身で、トロントを表す数字って「6」なんですよね。市外局番だったか、郵便局番号だったかで。だから自分のことも「6 God」って言っていて。6っていう数字は彼のリリックの中にもたくさん出てくるから。「ああ、10月6日のリリースで……6時か! まあ、わからなくもないけど、はあ……」っていう感じでしたよね。

(DJ YANATAKE)普通の人がリリースする時って、時間指定ってできるのかな?

(渡辺志保)いや、わからない。

(DJ YANATAKE)ドレイクさんクラスだから?

(渡辺志保)ドレイクさんクラスだからじゃない? ちょっと今度、TuneCoreの方とかに聞いてみようかな?

(DJ YANATAKE)バナーが同時に出なきゃいけないとかあるじゃん。プレイリストが◯時に出なきゃいけないとか。でも、なんならそこまでも動かしちゃうわけじゃん?

(渡辺志保)そうですよ。ねじ伏せるというか、ねじ曲げるというか。

(DJ YANATAKE)すごいですよ。6 Godですね。

(渡辺志保)ならではの感じですよね。で、出てみんながワーッと行くじゃないですか。で、実際今回もすごい初週というか、初日のストリーミング回数も非常に好成績を残していて。Apple Musicでもなんかその最高記録を抜いたっていうのと……。

(DJ YANATAKE)チャート、ほぼ全曲独占してましたよ。

(渡辺志保)やはりね。で、今年出たアルバムのセールスのランキングでも第4位とか……まあ「4位」とかは絶対に悔しいと思うんだけど。第4位という風に、まあ滑り出しは好調なんだけど……でも、それに反して結構各メディアのレビューであるとか、リスナーからの反応はちょっと冷たいというか。あんまりなんかみんな「うわっ、傑作だ!」っていうようなテンションではないかなって風に感じていて。で、やっぱりそのさっきの朝6時……彼のアルバムだけが朝6時に出るっていう、その飛び道具感もすごいんですけど。で、リリースされて今、わずか3日ぐらいだけど。やっぱりそのアルバムが出た後に付随するゴシップみたいなのも本当にすごいなって思っていて。

(DJ YANATAKE)仕掛けているような感じもするよね。

(渡辺志保)そうなんですよね。いろいろと炎上を焚き付けているのかな?っていう感じがするんですけども。まず、私が一番「へー」と思ったのは今や人気ポッドキャスターになっているジョー・バドゥン。彼が自分のポッドキャスト番組だったかな? そこでドレイクのアルバムを結構けちょんけちょんに評したんですね。「いつまでたってもガキを相手にしているラップしかできねえ」みたいなことを言ったの。それでジョー・バドゥンが「ドレイクの年齢、ググッたら36で。もうすぐ誕生日が来て37になるんだってな」って言っていて。

それで、リリックの中にもカイ・セネットっていう、ちょっと前にも日本に遊びに来てましたけど。めちゃくちゃ有名なTwitch配信者で、今やもう超デカいインフルエンサーになっている黒人の男の子がいるんだけど。そのリリックの中にカイ・セネットの名前が入っていて。カイ・セネット、年齢を調べたら21歳なんですよね。で、日本でもだいたいYouTubeとかゲーム配信者ってそうかもしれないけど。結構、若いファンが多い。若年層に向けたコンテンツを作ってるっていうところもあると思うんですけど。

なので「36とか37にもなって、こんなガキを相手にラップするなんてな」みたいなことをジョー・バドゥンがしゃべったんですよね。そしたら、そのクリップスをたしかDJアカデミックスだかが自分のインスタグラムにポストして。そしたらドレイクがめちゃくちゃ長文でそれに反論したんですよ。なんか「ほっとけよ」とも思うんだけど。そんなの、いちいち……でもち本人が反応して、めちゃめちゃ長いポストをしてですね。

「まず、みんなに聞いてほしい。ジョー・バドゥンは失敗したラッパーだ」っていう風にコメントでそこに残していて。「特にラッパーのみんなには伝えたいんだけど、こんな失敗したやつの戯言なんて聞くな」みたいなことをつらつらと……それで「自分はラップで稼げないから、こういうポッドキャスト配信者に転身したんだろう? そっちの方が金が稼げるから、そうしたんだろう?」みたいなことをバーッと反論して。さらにそれにジョー・バドゥンがコメント欄で反論するっていう。で、曲も出したのかな? ディス曲みたいなのを。

でもたぶんだけど、私も個人的に思うけど、純粋なラップのスキル……なんか本当にガチガチにライミングするとか、そういうラップのスキルってたぶんドレイクよりジョー・バドゥンの方が私は上なんじゃないかと思うんですよね。だから「ああ、なるほど。こういうことになっちゃってるのか」みたいな感じでちょっと今、ぬるっとした感じで見てるんですよね。

で、プラス、そのやり取りを受けて私が非常に前からフォローしてるアメリカの女性の音楽ジャーナリストの方がいるんですけども。彼女もこの一連の動きを非常に興味深く見てるみたいで。「年相応のラップをしろみたいなこととか、年相応の格好をしろみたいなことって今まで、女の人がめちゃめちゃ言われてきたことだけど、ドレイクもそういう風に言われたのであれば、そこに対する居心地の悪さみたいなことを味わうがいいわ」みたいなことをポストしていて。「なるほどな」みたいな感じで見ていました。

「年相応のラップをしろ」という声

(渡辺志保)他にもアメリカの女性のリスナーが、やっぱり最初の『So Far Gone』とか『Take Care』の時とか、そうした初期のアルバムのドレイクはすごいリアルに自分の感情を……「もっと成功したい」とか「もっとこういう車がほしい」とか。あとは自分のお母さんのこととか、お父さんのことっていうのをすごいリアルにアップしてたけど。それが30半ばを過ぎた今、まだ同じことをラップしてるから。それって、どうなんだろう?って。「もっとケンドリック・ラマーとかJ・コールみたいな自分の人生のリアルさっていうところを彼にはラップしてほしい」みたいにポストしている方もいて。

それもまた「なるほどな」と思いながら見ていて。私も1曲1曲、リリックを1行1行見つつ、より理解を深めたいなという風に思っているんですけども。でも、たしかにその「俺はAntiだ」って……リアーナに向けたディスなのかな、みたいなラインがあったり。その曲の中でも「君とのセックスは別に目新しくも何もなかった。退屈だった」みたいなことをラップしていて。なんか、そういうちょっと別れた彼女に未練があるみたいなのは元々、ドレイクの得意なネタだけども。でも、それをこの8枚目のアルバムでも、ずっとそういうトーンだとたしかに聞いてるリスナーの中には「しんどいな」って思う人もいるよね、という風に感じながら聞いていて。

(渡辺志保)あとはちょっとね、サンプリング問題なんかでもなかなか……ペットショップボーイズから「おい、聞いてないぞ」って突っ込まれていたりとか。ボルチモア出身の女性ラッパーのライライから……彼女は前にも、無断でドレイクの曲に自分の声が使われてたんですけど。今回もまた使われたということで、本当にもう怒り心頭みたいなことを彼女のSNSでバーッと言ってまして。なかなかポジティブな話題じゃないにしろ、ここまでいろいろとネタのが尽きないっていうのは、なんかそういう作戦なのかもしんないけど、それにしてもすげえなと感じてしまいましたね。

(DJ YANATAKE)なるほど。

(渡辺志保)あと私的には、ここに来て初めてDJスクリューが……まあDJスクリュー、彼はもうこの世にはいないですけれども。スクリューのビートがこのアルバムにインタールードという形でフィーチャーされていて。そのインタールードだけめちゃめちゃ繰り返して聞いてしまいましたというのと……あと、そこで冒頭で話したスリム・サグの話が戻って、すごい綺麗なフルサークルを描いているわけなんですけど。

そしてプラス、ドレイクがNFLのポッドキャストかなんかで「今回のアルバムは会う人、会う人に『I miss old Drake(昔のドレイクの方がよかったのに)』っていうのをすごい言われるから、だからこういうアルバムを作ってやったんだよ」っていう風にも言っていて。だから、さっき言ったみたいに「昔はリアルな感じを歌っていて、車がほしいとか歌ってたのに……」っていう。なんか、逆にそれはそれで彼の思い通りなのかなっていう風にも思いましたし。私も今回のアルバムはちょっと『So Far Gone』みたいなバイブスをを感じたし。冒頭にちょっと名前も出ましたけど、『8AM In Charlotte』っていう曲も、こういう地名プラス時間の曲って彼、すごい初期にたくさんシリーズもので出してたから、その名残なのかなという風にも思いましたし。あとはゲスト陣……私はパーティ・ネクストドアとの『Members Only』とかがやっぱり、いろんな意味でしっくりきてるなという風に思いましたけど。やっぱりすごい豪華よね。なんか、こんだけ集めたなっていう。

(DJ YANATAKE)なんかニッキーが参加するっていうので。「一緒にレコーディングした」みたいに言っていたのに入ってないっていうのがちょっと話題になってましたね。逆にニッキーの方に入るのかな?

(渡辺志保)そうなのかな?っていう風にも思いましたし。Yeatとか、あとはティーゾ・タッチダウンとか、あとはなんといってもセクシーレッドとか。なんかここ数年というか、ここ数ヶ月、ドレイクのSNSにも登場してきたような若手がガッツリ参加してますよっていうところと。あと私はちょっとチーフ・キーフとか、すげえびっくりしたんですけどね。あとはバッドバニーがいたりとか。

(DJ YANATAKE)まあ、バッドバニーは前からね、よくコラボしてるもんね。しかしでも、やっぱりここに食い込んでくるセクシーレッドの勢いよ……という感じもしますけどね。

(渡辺志保)いや、本当ね。しかもフックをね、彼女がラップしていて。「強いな」と思いましたね。やっぱりそれだけリマーカブルな……。

(DJ YANATAKE)でも、やっぱりどうしても大物アーティストアルバムに期待しちゃうのは、DJ的には「どの曲がかけれるかな?」っていう。最初から、そういう聞き方をしちゃうんですけど。やっぱりこのセクシーレッドとあとはSZAのやつなんかは結構みんな、かけやすいのかなっていう感じが今のところ、していますけどね。

(渡辺志保)そうですよね。なんか私も週末クラブでそれがかかっているのを早速聞いて。「おお、やっぱりセクシーレッドの声、映えるな」っていう感じだし。ビートもね、ちょっと流行りのジャージーっぽい感じがあって。

Drake『Rich Baby Daddy ft. Sexyy Red, SZA』

(DJ YANATAKE)でも、なんか今のところ、まだこのアルバムから……さっき志保が全体評みたいな話もしてましたけど。なんかいまいちまだ、どれが飛び抜けて出てくるのかな、みたいなのがちょっとあんまり見えなくて。『8AM In Charlotte』はなんかビデオも出て。今また見れるようになったけど。なんかリリースの瞬間とかって、あの日はなんか見れなくなっていて。しかもあれ、なんか続き物のイントロみたいな感じでいつも出すじゃない? だから……「ビデオはあったけど、これじゃないな」と思って。そしたら『Another Late Night』っていうリル・ヨッティとやっているやつがあるでしょう? リリカル・レモネードからビデオ出たけど、なんか48時間で撮ったとかっていう割とあっさり目のやつで。ドレイクのオフィシャルじゃなくて、リリカル・レモネードからビデオが上がってるし。なんか、チャートとかを見ててもこの曲、ビデオを切ってる感じしないぐらい、あんまり上がっていなくて。

(渡辺志保)本当だね。

(DJ YANATAKE)で、一番ダントツ人気がね、J・コールとやってる『First Person Shooter』っていう曲だけど。でも、これはなんかJ・コール人気がだいぶここに入ってるんじゃないかなっていう気もするんで。

(渡辺志保)そういうことじゃないかなって思いますね。

(DJ YANATAKE)だから実際、どの曲が本当にクラブを含めてですけど、盛り上がっていくのか、まだみんなちょっと、探り探りな感じがするな。

(渡辺志保)あと、ちょっとドレイク自身も「何年間か、お休みするかも」みたいなことを示唆していて。でも、「休んでもらう方がいいんじゃないですか」っていう気もしますね。

(DJ YANATAKE)まあ今、ツアーをガッツリ回って、アルバムを出して……そこだよね。

(渡辺志保)だから、英気を養ってまたカムバックしてくださるのがいいんじゃないですかというような気持ちです。じゃあ、ここで彼のツアーで……昨日かな? トロントのツアーでJ・コールが実際に出てきて。初めて一緒にパフォーマンスしたということも話題になっております『First Person Shooter ft. J. Cole』をお届けしたいと思います。

Drake『First Person Shooter ft. J. Cole』

<書き起こしおわり>

タイトルとURLをコピーしました