PUNPEE ディグと知識の蓄積を語る

PUNPEE ディグと知識の蓄積を語る SOFA KING FRIDAY

PUNPEEさんがJ-WAVE『SOFA KING FRIDAY』の中でリスナーからの質問に回答。音楽や映画などのディグと知識の蓄積について話していました。

For Diggers Only レコード・コレクティングの深層

(PUNPEE)お送りしたのはtofubeatsの『水星』とダフト・パンク『Something About Us』をブレンドした自分がDJなどでたまにかけるバージョンでした。

メッセージです。北海道の女性の方。「PUNPEEさん、こんばんは。3月14日のアトロクでtofubeatsさんが『水星』のMIXを流していて、もちろん『Roller Skate Disco』をかけていたのですが、曲の前にPUNPEEさんとtofubeatsさんの会話が入っていました。これはPUNPEEさんがニセtofubeatsとしてtofubeatsさんのライブに参加した時の会話なのかな? と思いながら聞きました。昨年、tofubeatsさんが劇伴を担当した『寝ても覚めても』は1本の映画として見た時にとても完成度の高いものだったのと思っております。また見たいと思うし、原作を読んだり特集を読んだりして様々なことを考えさせてくれる映画だったなと思っております」。はい。

ラジオでそのやり取りをかけたってのは聞いてないんですけど。自分のなのかな? わかんないですけども。ちょっと今度、本人に聞いてみようかと思います。違う人のだったらトーフ氏、すいませんっていう感じなんですけど。なのでその『水星』特集をその日、やられていたということだったので、自分が勝手にブレンドした版を最初にかけさせていただきました。

今日はどうしようかな? 今週はずっと家で作業だったので、なんかメッセージを中心に読んでいこうと思っております。はい。2月21日のメール。東京都北区の女性の方。近いですね。板橋なんで。「Pさん、こんにちは。いつも仕事の息抜きに聞いております。私はPさんのこのラジオを最近聞き始めたんですが、番組内で名前が挙がるラッパーの方や曲をいつも調べるようにしていて、とても勉強になっています。

Pさんはかなり幅広い音楽を聞かれて博識な方だと思ってるんですが、ラッパーになる前は音楽をどのようにディグっていましたか? 実は私、最近音楽系の仕事し始めたんですが、自分の知識の乏しさや聞く量の少なさに『こんな人間が音楽の仕事をしていいのか?』と罪悪感のようなものを感じています。なのでどんな風に音楽を身につけていったのか、ぜひエピソードなど聞かせていただきたいです」。はい。

って言っても、そんなに自分、詳しくないこととか結構全然あるし。この前亡くなっちゃったキース・フリントさんのプリディジーとかもあまり聞いたことなかったし。結構浅く広い部分が全然あるっすけどね。でも最初、自分がヒップホップを聞き始めた時……ナズの『I Am…』とかビースティ・ボーイズの『Ill Communication』とかっていうアルバムを1996、7、8年ぐらいに。その時、タワーレコードの『Bounce』っていう毎月出てる雑誌の新譜欄を見ても全然わかんないんですよ。「この人の新譜が出るって言われても、その前を知らないし……」みたいな。

それが全然わかんなくて。「でも、いいや。とりあえずこれ、聞いてみよう」っつってレコメンドされているものを聞いていって1、2年経ったら、その人の次のアルバムが出るじゃないですか。その知らなかった人の。そのぐらいからどんどんサイクルしていって、そのうちにレーベルっていうのを知っていって。その会社とか。で、その会社がいいのを出しているっていうことを調べていったら、「ああ、すごいいいのを出している!」ってなった時に、中に入っていた客演の人を調べたら、その客演の人もアルバムを出してて、それもかっこよくて……って。

で、「俺、この人のこのアルバムの曲が好きだな」ってプロデューサーを調べたら、そのプロデューサーが一緒だったりとかして。そしたら次はプロデューサーがいい、みたいな。プロデューサーを中心に掘っていったりとかして。で、映像・ビデオを見た時に「ああ、なんかこのビデオ、かっこいいな!」って映像がかっこいいと思ったら、その人が映画を撮ったりとか、スケボーのビデオ撮ったりしてる人で。そこからスケボーだったりとか映画のところに行ったり。

だからずっと時間で蓄積させていったというか。そういう感じで聞いていった感じですね。点と点だったのが線になっていってやっと楽しくなってくるっていうか。うん。でもなんか自分のことばっかり考えてるのかわからないですけど(笑)。自分を楽しくするためにそうやっていっぱい聞いていった気がしますね。「今日はなんかつまんねーな」って思ったら、「この人の曲を聞いてみようかな」みたいな感じでタワレコ行ったりとかして。

まあ、いまはでもそれがね、ストリーミングでできてしまうわけだから、すごい便利な時代だと思うっすね。ただ、そんだけいろいろと聞いても、ずっと聞くアルバムってやっぱり何枚かなんですよね。その時に聞いて、シングルとしてはすごい印象に残った曲とかあるっすけど。シングルももちろん残るっすけど、そのアルバムとして聞く曲はやっぱり限られるという感じはちょっとあるかもしれないっすね。

なのでいま、自分もコミックスとかアメコミの方は全然そんなまだまだなんで。いま、やっと邦訳されてないやつをここ3年ぐらいで読み始めていったら、それも点と点がやっといま、線になり始めたぐらいの感じだったりするから。そういう感じで、ゆったり聞いていく感じがいいんじゃないですかね。でもやっぱり「自分を楽しくするため」っていうか。自分が楽しいと全然苦じゃなく、気づいたらそれをやってるっていうのがいちばん近道というか、自然な気がします。はい。

でも「なんかいろいろ知ってますよね」って言われますけど、別に知らないのとかいっぱいあるし。全然浅く広くみたいなところも自分、あるんで。なんか意外と何でも知ってる、何でもできるとか思われてるかもしんないすけど、あんまり……できないこと、知らないことの方が多いっすね。そんなのもちろんみんな、誰でもそうだと思うんですけど。好きなことだけ好きっていう感じで。それでいいんじゃないかと個人的には思います。

なんか年下の人に「どうやったらそういうトラブルなしでそういう風にポンポンといろんな仕事ができるんですか?」みたいなこととか言われるんすけど、全然トラブルとかいっぱいあったし。怒られたこととか。なんかそれをたまたま最近聞かれる時もあったんですけど、ちょっとそれで思い出したのがUMB(Ultimate MC BATTLE)の2006年、自分が東京予選の一応優勝……チャンプというか。全国大会は1回戦で負けちゃったんですけど、チャンプになっていて。

その時に、いまでこそ特にそんなに叩かれたりとか、たまにはしますけど、そんなにしなくなる前。その時にメガネかけて髪型も普通の人で出てっいって優勝した時にネットで広がるのが今より遅かったんすよ。言ったら「優勝者は!」っていうのがいまはもうそのタイミングで見れると思うんですけど、その当時はたぶん次の日の朝とか。早くてその日の夜とかにそのサイトにバーッて上がると思うんですけど。自分まだ、いまでこそあんまり見なくなったっすけど、2ちゃんねるのあれがすげえ気になっていて(笑)。評価みたいなのが。MCバトルスレッドみたいなのがあって。

そこを優勝した後に見ちゃったんですよね。そしたら、その勝った時の瞬間をもう2ちゃんに書いてるやつがいるわけですよ。2006年はまだ、Twitterはあったっすけど、あんまりそんなに普及もしてなかったので。結構なんだろうな。ネットに書き込まれるっていうのは掲示板か、そういう2ちゃんねるだった、あとはブログだったりするんですよ。でも、ブログを書くのも結構時間もかかるし。そんなにみんながポンポンとその時のものを発信してる時代ではまだなかったから。2chにまず、その日の終わった何分後かに書かれていて。

「東京の優勝者が決まった。まだ全然知らないやつだけど、いまの東京っぽいって言えばぽいんだと思う」とか書いてあったりとか。あとは「なんか変なやつ、メガネのオタクみたいなやつが優勝した」って。なんで優勝ができたかっていうと多分、いまは絶対優勝できないと思うんですけど。この風貌の面白さもあったと思うんですよね。まだそこまでこういう普通の人がラップしてるっていうのが日本にはなくて。結構やっぱりそういうBボーイっていう感じの格好の人……もちろんそれがいまもかっこいいスタイルなんですけど。それが多かった時にきっとこういうやつが行って。で、ちゃんと出てるMCの人もみんなリサーチしたりとか自分はしていて。そこでパンチラインがちゃんとしっかり出せたということが優勝につながってたと思うんですけど。

なんかそれで結構、そこに見に来た人はちゃんとその会場を沸かせたっていうことはわかってくれていたっぽいんですけど、外に広がった時に、東京の外の人だったりとかは、「こんなメガネのやつが何で優勝できるんだ?」みたいな。「MCバトルも終わったな!」みたいなのとか、いろいろと書かれたりとかして。で、次の年の2007年でもうプレッシャーに負けまくっちゃって。ちょっと人気だけで少し勝っちゃったみたいな。で、BESくんに決勝で負けちゃったんですけども。その時も「ざまあみやがれ!」とかめちゃくちゃに書かれていて。「ハハハ、去年こいつが勝ったのはまぐれだ」みたいなのを書かれたりとかして。

結構、出始めの時に叩かれた記憶を思い出したっすね。「ああ、そういえばそんなに叩かれていたな。結構へこんでたな」みたいな。なんかその時は結構クラブに行くのもちょっと怖くなった時期っていうか。「もう行きたくねえ」みたいになっていた時期があったっすけど。PSGを2009年に出すまでは。まあ、そんな時もあったし。いまももちろん全然言われたりするっすけど。出始めってやっぱりね、やり始め、出始めはいろいろ……だってみんな知らないし、言われるのはしょうがないっていうか。それの次に行って、またひとつ積み重ねていくっていうのはしょうがないことだから、徐々にゆったりやっていけばいいのではと思いました。なのでこの方には慰めの気持ちでステッカーとCD-Rをお送りしておくので。よければ聞いてみてください。

当時、いまは何してるかわかんないですけど、そのMCバトルスレッドに「イタケン」っていう人がよく書き込んでいて。「イタリア研究会」みたいな? わかんないですけど。自分は自分がどう言われてるんだろうな?って思って、その当時よく見てたんですけど。いまはなんか崩壊してるみたいで、そういう2ちゃん的なやつが。もうあんまり見てないですけど。イタケンっていう2ちゃん出身の人が「俺もMCバトルに出るぞ!」みたいなのを書いていたような気がしてて。そこで「ああだこうだ言うならお前も出ろよ!」みたいなことを他の書き込みで結構言われていて。

なんかそのイタケンっていう人がいた気がするけど、いま何してるんですかね? なんかそんな記憶をふと、いま思い出したんですけど。懐かしいな。でも13年前ぐらいの記憶でした。では根拠があるようでないようであるような応援ソングとして、たまに凹んだ時に聞くのですが。在日ファンクの『才能あるよ』という曲で元気出してくれたらうれしいです。その曲行ったらコマーシャル行こうと思います。

在日ファンク『才能あるよ』

<書き起こしおわり>

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