安住紳一郎と大山顕 2019年最新マンションポエム事情を語る

安住紳一郎と大山顕 2019年最新マンションポエム事情を語る 安住紳一郎の日曜天国

(大山顕)まあ長らく江東区って下町的なイメージ。水路があって……っていう感じなんですけど、いま湾岸エリアにガンガン、タワーマンションが建っているので。特に有明のあたりが熱くて。ここに来て、さらに。なぜか?っていうと、これポエムを見るとなんとなくわかるんですよ。「世界はここで日常を超える時空間と出会う」っていう。もうひとつ。「世界の眺望を集める新たな中心を日本に」。

(安住紳一郎)これは……?

(大山顕)これね、有明が世界に羽ばたいたような威勢のいいポエムがいま、散見されておりまして。

(安住紳一郎)勢いを感じますね。

(大山顕)これ、なぜかというと、わかりますか?

(安住紳一郎)これは豊洲。東京オリンピック2020が。

(大山顕)そうなんです! で、おそらく先ほどのコンプライアンス。「オリンピック」って言いたいと思うんですよ。詩人の方々は。でも、あれはルール的に言っちゃいけないんですよね。広告で安易に。

(安住紳一郎)そうなんですよ。公式スポンサーじゃないとね、うたっちゃいけないみたいなところ、ありますからね。

(大山顕)なので、「日常を超える時空間と出会う」みたいな言い方がありますけど。他にもオリンピックという名称が使えないので「2020年に向けて」とかね「国際的イベントが」とかってね、言うんですよ。

(安住紳一郎)いいですね。「4年に一度の」とかね(笑)。

(大山顕)そうなんですよ(笑)。それでビジュアルにはなぜかアスリートの写真が散りばめられていたりして。

(安住紳一郎)ただし、オリンピックではない。

(大山顕)オリンピックとは一言も言っていない。

(安住紳一郎)ただの陸上競技(笑)。

(大山顕)ジョギングの方々かな?って思いきや、もう本気の100メートル走の方々の写真がマンションとともに写っているという。

(安住紳一郎)湾岸エリア、たしかにマンション建っていますね。

(大山顕)いまだにその熱気が冷めやらぬという感じで。

(安住紳一郎)あとは江東区では注目、ありますか?

(大山顕)はい。これね、びっくりしました。今後のマンションポエムというか、マンションに対する我々の感受性の方向性を表しているんじゃないか?っていうのが1個、ありまして。これをぜひ読みたいのですが、いきますよ。「今日は大切な記念日。この家の誕生日。おめでとうだね」っていうポエム。これ、マンションの広告です。

(安住紳一郎)ええ。

(大山顕)「この家の誕生日」。これね、マンションができた日と入居した記念日を祝おうではないかっていうのを提案しているマンションポエム。入居記念日って……僕としてはサラダ記念日以来の衝撃があったんですけども。

(安住紳一郎)入居記念日。

(中澤有美子)あまり意識しないですよね。

(大山顕)これ、ちょっとびっくりして。でも考えてみたらやっぱりね、ああいう都心のタワーマンション。高額のやつを買うっていうのは本当に冒険なので。「はじめてサラダを作ってくれたから……」どころではない一生の記念に残るものなので。もしかしたら世の中にはね、結構引っ越した記念日を祝っているご夫婦とかファミリーがあるんじゃないかって。

(安住紳一郎)あるのかもしれないですね。「パパがローンを組めたから……」みたいなね。

(大山顕)ああ、いいですね。一句詠みたい。

(安住紳一郎)「パパがローンを組めたから、今日はマンション記念日」みたいな。「今日はローンを完済した日です」とかね。たしかに一家のいちばんのビッグイベントっちゃあビッグイベントですからね。

(大山顕)で、よく「今日はなんの日だか、わかる?」って彼女に言われてわからなかったら、「今日ははじめてデートした日だよ」って言われて機嫌が悪くなるみたいな。本当にあるのかわからないそういう話ってあるじゃないですか。で、記念日が増えていく中で、たとえばそのマンションの入居記念日以外で言うと似ているのが結婚記念日。で、あれも最近っていうか、当然のことながら江戸時代にはないわけで。結婚記念日みたいだなって思ったら、やっぱりマンションポエム……マンション記念日と結婚記念日が似ていることから、結婚をやる場所。要するに披露宴のサイトが結構最近いっぱいあるので、見てみたら結婚披露宴の式場にもポエムがあるんですよ!

(安住紳一郎)ああ、たしかにありますね。

(大山顕)それがびっくりしたことにマンションポエムと見分けがつかないんです!

(安住紳一郎)フフフ(笑)。

(中澤有美子)式場ポエム(笑)。

結婚披露宴式場ポエム

(大山顕)今日ね、2つほど持ってきたんですけども。「銀座駅徒歩1分、特別な上質空間」。

(安住紳一郎)これはほぼマンションポエムですね。

(大山顕)これね、式場のポエムです。それとか「誰もがうらやむ銀座という特別な街の中で語り継がれるいくつもの歴史」。

(安住紳一郎)これもほぼマンションポエムですね。

(大山顕)だからどちらも「一生に1回」のものを祝っていくと、やっぱり自ずとポエムになっていくんだなっていう。

(安住紳一郎)はー! 式場ポエム。

(大山顕)式場ポエム。マンションポエムに似ているっていう。

(安住紳一郎)そうですね。これ、もう冠婚葬祭全部がポエム調になっていく可能性ありますね。

(大山顕)ありますね。

(安住紳一郎)お葬式の広告もね。

(大山顕)お葬式の広告も「お葬式」って言わないじゃないですか。

(安住紳一郎)そうですね。「お世話になったみなさま方へ感謝を伝えたい1日です」みたいな。

(大山顕)そうなんです。「亡くなる」っていう言い方も絶対にしない。なんかいろいろ言い方があるんですよね。うる覚えで申し訳ないんですけど……「離陸」とか。

(安住紳一郎)「離陸」。

(大山顕)天に召されることを「離陸」っていう表現をされるっていうことを聞いたことがあって。

(安住紳一郎)フハハハハハハッ! 笑っちゃいけない(笑)。

(中澤有美子)新しい!

(大山顕)そう。だからだんだんと婉曲に、でも下品になってはいけないということだと、結果として我々が紡ぎ出す言葉っていうのはポエムになっていくってことなんでしょうね。

(安住紳一郎)なるほどね。はー! 人生のイベント的なものをサポートしてくれる企業はだいたいポエム調になっていくという。ただ、大事なものがどんどん抜け落ちているような、そんな寂しい気持ちもありますけども。

(大山顕)いや、そこは我々受け手の問題だと僕は思っておりまして。こちらが積極的に読み取っていこうっていう。コンプライアンスの問題もあって詩人たちも苦労しているんだという。

(安住紳一郎)もうちょっとなんか逆の方に振れていくポエムっていうのはないんですかね?

(大山顕)具体的に、具体的にって。

(安住紳一郎)「2割、3割、値引きします!」みたいな。

(大山顕)フハハハハハハッ! あのね、高級物件じゃない郊外のマンションのポエムじゃない広告ってね、結構そうなんですよ。「スーパーが近い!」とかね。

(安住紳一郎)ああ、いいですね(笑)。

(大山顕)っていうのがありまして。前回に呼んでいただいたのが1年前で、この1年間の僕の大きな変化というと実は僕、この1年で子供が生まれまして。

(安住紳一郎)おめでとうございます。

(大山顕)ありがとうございます。子供が生まれてからマンションポエムを見るとね、郊外のその「子育てに優しい」とか「公園が近い」とか「スーパーがすぐ近く」みたいなのがものすごく「いいじゃないか!」って。ポエムがないのはちょっと……って思っていたけど、子供が生まれちゃうとね、こういう実直なのがいいなって思っちゃうのがこの1年の僕の変化でした。

(安住紳一郎)そうですか(笑)。

<書き起こしおわり>

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