高橋芳朗さんがTOKYO FM『高橋みなみの「これから、何する?」』大晦日の放送に出演。クイーン縛りで10曲選曲し、楽曲解説をしていました。
(高橋みなみ)2018年ラスト、一緒に楽しんで行きましょう。今日は音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんがクイーンの楽曲を選曲してくれています。みんな、見たかな? 私ももちろん映画を見ました。『ボヘミアン・ラプソディ』! いいよね、あれね! 詳しい解説はこの後! 1曲目はもちろんこれです。クイーン『Bohemian Rhapsody』。
Queen『Bohemian Rhapsody』
(高橋みなみ)お送りしたのはクイーン『Bohemian Rhapsody』でした。いやー、でも2018年後半、この映画一色と言ってもいいぐらいの盛り上がりでしたよね。私ももちろん見ましたけども。会う人、会う人、「見たの? あ、まだ見てないの?」なんていう話をみんなでしていたわけなんですが。さあ、今日は2人の先生がすでにスタジオに来てくださっています。まずは映画先生、映画評論家の松崎健夫さん、そしてクイーン先生・音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんです。よろしくお願いします。
(松崎健夫)よろしくお願いします。
(高橋芳朗)よろしくお願いします。
(高橋みなみ)すいません、大晦日に。
(高橋芳朗)いえいえ、光栄です。
(高橋みなみ)お二人の先生に囲まれてお送りできるということで。ありがとうございます。さあ、まずヨシアキ先生、今日のこの1曲目ですけども……。
(高橋芳朗)いや、びっくりしました。まさに『ボヘミアン・ラプソディ』の映画の中でクイーンのメンバーが「こんな長い曲、ラジオでかけてもらえるわけないだろ! こんな曲、リリースできるわけないだろ!」って怒られていたのに、いきなり冒頭でフルコーラスで『Bohemian Rhapsody』をかけるっていうのが、素晴らしいなと思いました。挑戦的だなと思いました。
(高橋みなみ)アハハハハハハハッ! うれしい。ありがとうございます(笑)。そうなんですよね。まさに映画『ボヘミアン・ラプソディ』の中でモメるというか。「流せないよ!」みたいなシーンも有りましたけど。でも、あの映画自体も本当に素晴らしいものだったなっていう風に思うんですが。ヨシアキ先生ももちろん見られた?
(高橋芳朗)はい。見ています。
(高橋みなみ)いかがでしたか?
(高橋芳朗)号泣です(笑)。もうほぼ全編号泣でした、はい。
(高橋みなみ)ねえ。なんなんですかね。あの心を揺さぶられる感じね。
(高橋芳朗)ねえ。クイーンの曲の聞き方も変わってきちゃいますよね。
(高橋みなみ)私、いま27ですけど、世代的にはクイーンさんのことをいっぱい知っているわけじゃなかったんですが、この映画をきっかけに「めちゃくちゃ素敵な方々だ」っていう。またクイーンさんの音楽に目を向ける方々が一気に増えたんじゃないかな? なんていう風に思うんですが。松崎先生的にはこの映画、どうでしたか?
(松崎健夫)まあ、クイーンが好きな人だとたとえば「時系列がおかしい」とか、いろんなことをおっしゃる人はいるんですけども。僕はこの映画の中にブライアン・メイとかロジャー・テイラー、クイーンのメンバー本人がプロデューサーとして入っているっていうことが僕、重要だと思っていて。つまり、自分たちにとってのクイーンっていうのはこういうものだっていうことを提示したい映画なんだと思うんです。その宣言だと思うんですね。で、かつて『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』というアカデミー賞を取った映画があったんですけど。それはジョン・カーターとジョニー・キャッシュという2人の歌手の夫婦の話だったんですが。
(高橋みなみ)へー!
(松崎健夫)ラストシーンはなぜか夫婦の話なのに、ジョニー・キャッシュがお父さんに会いに行くっていうところで終わる映画なんですよ。それはなにか?っていうと、お父さんと和解をするっていうところで終わるんですが、実は実生活ではお父さんと和解しないまま死別をしちゃったらしいんですよ。ところがジョニー・キャッシュは「映画の中だけでもそのお父さんと仲直りしたい」って言ってそういうラストにしたらしいんですね。映画ってそういうものがあって。リアルに全て真実を描くだけじゃなくて、フィクションであるからこそ描けることってあると思うんで。『ボヘミアン・ラプソディ』もそうやって見てほしいなって僕は思います。
(高橋みなみ)いまももちろん大ヒット公開中ですけども。制作期間がなんと8年ぐらいかかったっていう。これ、かなりですよね?
(松崎健夫)まあ監督がいろいろ交代したり、主役が交代したりっていろいろあったり。まあ、フレディの死後を描くのか描かないのかっていうことですごくモメたりしたんですよね。
(高橋みなみ)難しいな―。それだけクイーンというこのグループをどういう風に描くべきなのか?っていうのは本当に難しい題材だったのかなって思いますけども。でもすごく私は見れてよかったななんて思いました。さあ、今日はこんな感じでヨシアキ先生に曲の解説をしてもらいながらの2時間生放送になっております。ヨシアキ先生、よろしくお願いします。
(高橋芳朗)よろしくお願いします!
(中略)
(高橋みなみ)さあ、時刻は1時21分です。お送りしているのはクイーン『Don’t Stop Me Now』です。
(高橋みなみ)さあ、生放送でお届けしております。TOKYO FM『高橋みなみの これから、何する?』。今日は音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんがクイーンの楽曲をセレクトしてくださっています。クイーン先生です。今日はどんな風にこだわって選曲してくださっているんでしょうか?
(高橋芳朗)クイーンの音楽的な強みというか魅力としては、メンバー4人が全員曲を作れるんですよ。
(高橋みなみ)すごいですよね!
(高橋芳朗)しかもただ曲を作れるだけじゃなくて、全員がちゃんと大きなヒット曲を生み出している。
(高橋みなみ)そんなこと、ありますか?
(高橋芳朗)結構それは稀有なバンドだと思います。だから非常にメンバー全員が優れた作曲能力を持っていて、さらに4人それぞれが違った個性を持っているという。
(高橋みなみ)面白いなー!
(高橋芳朗)それがだからクイーンの音楽に多様性をもたらしているということですね。
(高橋みなみ)お互いに新しい刺激を持ってくるみたいなことですね。
(高橋芳朗)だから言ってみればメンバー全員がネタを作れるコントグループみたいな。お笑い集団のイメージですね。
(高橋みなみ)最強じゃないですか! 一生ネタが切れること、ないですもんね。
(高橋芳朗)そう。しかも全員が作るネタがめちゃくちゃ面白い。なおかつ、各自全く違うお笑いの方向性を持っているみたいな。そういう感じです。
(高橋みなみ)アハハハハハハハッ! 面白いなー!
(高橋芳朗)だから全員が強いっていう意味ではノースリーブスに通じるところもあると思います。
(高橋みなみ)やめてください、やめてください! それはマズいわ、もう! ざわつくやつですよ!
(高橋芳朗)アハハハハハハハッ! そんなわけで本日はメンバー4人が作った曲を2曲ずつ、トータルで8曲選曲したっていう感じですね。
(高橋みなみ)楽しみ。で、いまお送りした『Don’t Stop Me Now』ですけども。
(高橋芳朗)これはフレディ・マーキュリーが書いた曲にあります。なんかここ数年でグッと人気が高くなってきた曲っていう印象があって。まあフレディ・マーキュリーのセクシャリティーだったり、あとは「誰も俺を止めることができない」っていうこの勢いのある無敵モードな曲調や歌詞から、結構LGBTQ。性的マイノリティーの人々を勇気づける、鼓舞する曲として人気が出てきているという背景がありますね。
(高橋みなみ)でもね、4人それぞれにいろんな刺激を持ってくるということでしたけども。フレディ・マーキュリー自身もオペラを取り入れたいっておっしゃっていたり。どうですかね? 他のメンバーからしたらフレディってどういう感じだったんですかね?
(高橋芳朗)やっぱりもう本当に、まあフレディ自身がクラシックミュージックだったりハードロックだったり、もういろんな音楽に影響を受けている人なんで。かつ、すごい緻密な曲作りをする人。さっき最初に聞いていただいた『Bohemian Rhapsody』なんて180回のオーバーダビング。多重録音をして作られているんですよ。
(高橋みなみ)いや、あの映画の中でもいろいろと描かれてましたけども。「もう1回!」みたいな(笑)。「もっと高く!」とか。
(高橋芳朗)そうですね(笑)。で、「まだやるの?」みたいな感じだったじゃないですか。徹底的に作り込むような。
(高橋みなみ)でもみんな妥協をしないんですね。
(高橋芳朗)そうですね。『Bohemian Rhapsody』の曲を作るのに3週間かけているって言ってますからね。
(高橋みなみ)いやー。声が擦り切れるわ! テープも擦り切れちゃうし。
(高橋芳朗)フフフ(笑)。
(高橋みなみ)じゃあ、ここでフレディの曲をもう1曲。
(高橋芳朗)いまね、フレディはすごい緻密な曲作りをするっていう話をしていましたけども、これからかける曲は『Crazy Little Thing Called Love』っていう1979年のヒット曲なんですけども。これはですね、フレディがお風呂の中で曲の構想を思い浮かんで約30分で書き上げたらしいです。
(高橋みなみ)早い!
(高橋芳朗)はい。実際2分42秒ぐらいの長さで本当にサラッと作ったんだなってわかる曲ですね。聞いて。
(高橋みなみ)ちょっと聞きたいです。
(高橋芳朗)でも、そんな曲なのに当時、ビートルズのジョン・レノンって子供が生まれて育児に専念していたんですね。でもこの『Crazy Little Thing Called Love』がラジオから流れてくるのを聞いて「ヤバい! 俺、やっぱりまた音楽を作りたい!」って言って、音楽活動を再開したっていうそういうエピソードがあります。
(高橋みなみ)そんなすごい方に刺激を与えたという。じゃあ、ちょっと曲紹介をお願いします。
(高橋芳朗)はい。クイーンで『Crazy Little Thing Called Love』です。
Queen『Crazy Little Thing Called Love』
(高橋みなみ)この楽曲を30分でっていうことですよね?(笑)。お送りしたのはクイーン『Crazy Little Thing Called Love』でした。いやー、すごい才能だな、本当に。こんなメッセージが来ております。「クイーンの曲で僕の度肝を抜いたのがあのデヴィッド・ボウイと共演した『Under Pressure』でした。フレディとボウイが肩を並べて歌うなんて信じられない奇跡でした」と。『Under Pressure』。どんな楽曲なんですか?
(高橋芳朗)まあ80年代のクイーンの始まりを華々しく告げた曲って言っていいと思うんですけども。さっき、クイーンのメンバーは全員曲作りができて、それぞれ違う個性を持っているという話をしましたけども。『Under Pressure』は全員のメンバーの名前がクレジットされているんですよ。プラス、デヴィッド・ボウイ。だから本当にクイーンの総力をあげて作ったヒット曲って言っていいと思いますね。
(高橋みなみ)すごーいな! いやー、なんだろう。この4人だったからこそのクイーンっていうのを改めて感じますよね。
(高橋芳朗)そうですね。