高橋芳朗 Lil Nas X『Old Town Road』ビルボード最長1位記録更新を語る

高橋芳朗 Lil Nas X『Old Town Road』ビルボード最長1位記録更新を語る アフター6ジャンクション

高橋芳朗さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でリル・ナズ・Xの『Old Town Road』がビルボードチャートの最長1位記録を更新したというニュースについて紹介。その要因を解説していました。

(宇多丸)ということでさっそく今月のチャートの動きの分析というあたりからお願いします。

(高橋芳朗)今週、ビルボード全米シングルチャートの最長1位記録が更新されました。

(宇多丸)最長1位記録!

(高橋芳朗)新記録を叩き出したのはアメリカ南部ジョージア州出身の20歳の黒人ラッパー、リル・ナズ・X(Lil Nas X)くん。

(宇多丸)なんかいろんな名前が混ざっている……。

(高橋芳朗)アハハハハハハッ! たしかにね(笑)。で、彼がベテランカントリー歌手のビリー・レイ・サイラス。マイリー・サイラスのお父さんですね。を、フィーチャーしてリリースした『Old Town Road』。これが17週連続1位。

(宇多丸)ええっ? これさ、破られる前は誰が1位だったの?

(高橋芳朗)16週連続1位だったのがマライア・キャリー&ボーイズIIメンの『One Sweet Day』。これが1995年。あともう1曲、これは2年前の曲ですね。ルイス・フォンシ&ダディ・ヤンキー feat. ジャスティン・ビーバーの『Despacito』。レゲトンの曲ですね。

(宇多丸)でもじゃあ、割と近年になっても更新はされてたものではあるんだ。このリル・ナズ・Xさん、なんでこんなにウケたの?

(高橋芳朗)今日はそこをじっくり解き明かしていきたいなと。

(宇多丸)まさか名前がいろいろと混ざっているから、そこで?

(高橋芳朗)フフフ、でもやっぱりね、「Nas」っていう名前を使っていることには相当気にしているみたいで。Twitterで「もし本人が気を悪くしていたら、変えようかな?」ってつぶやいていたぐらいで(笑)。

(宇多丸)あのね、ナズっていうのはヒップホップ史上トップクラスのラッパーでいまだに活躍もしていますし……という人なんですよ。

(日比麻音子)現役ラッパーですか?

(宇多丸)現役。かつ、伝説的なラッパーがいて。なるほどね。

(高橋芳朗)で、これはオリジナル・バージョンはリル・ナズ・X単体の曲だったんですけど、ヒットするのに合わせてこのビリー・レイ・サイラスが加わったバージョンが作られて。結果的に現在ではこっちの方がメイン扱いになっている感じですね。

(宇多丸)ラッパーとカントリー歌手のあれで広い層にアピールをしたという?

(高橋芳朗)そうですね。まさにこのリル・ナズ・X、いま写真があるんですけども。黒人ラッパーで、カウボーイの格好をしているんですよ。

(宇多丸)ああ、本当だ。珍しい。

(日比麻音子)上裸でジャケットだけ。

(宇多丸)まあ、シュッとしたきれいなかわいい顔をしている。

(高橋芳朗)カウボーイハットをかぶってウエスタンシャツを着てね。

(宇多丸)でも、昔のラッパーの美意識からすると、ここまでの格好をするのはメリー・メルとかそういうのならわかるんだけど、なかなかラッパーの美意識にはない感じかもしれないね。

(高橋芳朗)で、実際にカントリー・ラップというジャンルを本人も提唱していて。まあ厳密にはカントリー・トラップですね。カントリーといまのラップの最新の流行のスタイルを混ぜているという。

(宇多丸)じゃあ、歌っている内容も?

(高橋芳朗)それが、でもこれは割とカントリー寄りで。歌詞をざっくりと紹介しますと、「馬にまたがって古びた道を突き進む 行けるところまで行くんだ 誰も俺には何も言えない(I’m gonna take my horse to the old town road I’m gonna ride ‘til I can’t no more)」「お前は俺に何も言うことができない(Can’t nobody tell me nothin’
You can’t tell me nothin’)」っていう。なんか自分の信念を貫くぞみたいな、そういうニュアンスの歌詞なんですよね。ちょっとじゃあ、さっそく聞いてみましょうか。リル・ナズ・Xで『Old Town Road feat. Billy Ray Cyrus』です。

Lil Nas X『Old Town Road feat. Billy Ray Cyrus』

(高橋芳朗)はい。リル・ナズ・Xで『Old Town Road feat. Billy Ray Cyrus』をお聞きいただきました。これが17週連続で1位。

(宇多丸)日比さん、いかがでしたか?

(日比麻音子)なんか変わっているなっていう印象がありますね。不思議?

(高橋芳朗)ちょっと変な曲ですね。

(宇多丸)すごいわかりやすいドキャッチーさとかがあるわけではない。でも、みんなで歌っている感じかな? 全編みんな歌えるっていう感じ。

(高橋芳朗)たしかにシング・アロングはしやすい。

(宇多丸)一聴してシング・アロングできるっていう部分はあるのかな?

(高橋芳朗)歌詞も同じようなフレーズのリピートだったりするんで。

(日比麻音子)ポンポンポン……っていう音、弦楽器なんですかね?

(高橋芳朗)バンジョーが入っていたり。

(日比麻音子)不思議な感じですね。

(宇多丸)でもなんか、耳に残る。中毒性がある。

(高橋芳朗)で、この曲が結構いまのアメリカ社会とかポップミュージックの現状を強く反映していて非常に面白い背景を持った曲で。まず、この曲はどういうところから出てきたのか?っていうと、去年から「Yee Haw Agenda」っていうカウボーイの格好をするムーブメントがSNSで流行したんですよ。

(宇多丸)「Yee Haw Agenda」?

(高橋芳朗)「Yee Haw 計画」みたいな感じですかね?

(宇多丸)イーハーッ!

(高橋芳朗)その通り。カウボーイの「ヒーハーッ!」みたいな。その掛け声から持ってきたっていうネーミングで「Yee Haw Agenda」。で、これはこのコーナーでも紹介したことがありますけども。カントリー歌手で割と革新派のケイシー・マスグレイヴスが先鞭をつけて、それから黒人コミュニティーで広がっていったという背景があるんですけども。

(宇多丸)ああ、要するにいままでは中西部の白人のものっていう感じがあったけど、そういうことではなく広げていこうっていう?

(高橋芳朗)そうですね。だから女性ラッパーのカーディ・Bとかがテンガロンハットみたいなのをかぶって写真を撮ったりとか。そういうムーブメントが広がったという。

(宇多丸)それはでも、あくまでもファッション上のムーブメントっていうことですか?

(高橋芳朗)そうですね。で、そのムーブメントからヒントを得て作られたのがこの曲っていうことになるんですけども。でも、それと並行してたとえばビヨンセが女性カントリーバンドのディクシー・チックスと2016年にコラボをしていたり。

(宇多丸)はい。

(高橋芳朗)あとは人気ラッパーのヤング・サグっていう人がトラップっていうヒップホップのスタイルとカントリーを融合させた作品を作ったりもしていて。ブラックミュージックとカントリーが接近しつつあったっていうような状況はあったんですよね。その流れで動画共有アプリのTikTokってありますよね? あれでカウボーイの格好をして踊る「#YeeHawChallenge」っていうのが流行したんですよ。

(日比麻音子)ああ、大谷翔平選手もたしかやっていました。

(高橋芳朗)ああ、やっぱりアメリカでやるんすね。その「#YeeHawChallenge」はカウボーイの格好をしてひたすら踊るっていうやつなんですけど、そこで使われていた曲がこの『Old Town Road』だったんですよ。

(宇多丸)ああ、なるほど! だからTikTokブレイクというか。

(日比麻音子)SNSだ!

(高橋芳朗)それで爆発的に広がったっていう。

(宇多丸)バイラルヒットなんですね。

TikTokのチャレンジ動画で火がつく

(日比麻音子)だからあのちょっと独特なリズムも使いやすいっていうかバズりやすいんですかね。

(高橋芳朗)この曲、オリジナルバージョンは1分半とか1分40秒ぐらい。すごい短い曲なんですよね。

(日比麻音子)TikTokってアメリカでも流行っているんですか? アジアのイメージですけども。

(高橋芳朗)めっちゃ流行ってます。で、面白いのがこのリル・ナズ・Xってこの曲がヒットする前からTwitterでインフルエンサーとしてSNSで何十万人ものフォロワーを抱えていたんですよ。

(宇多丸)あ、そもそもSNSインフルエンサーなんだ。

(日比麻音子)何のインフルエンサーなんですか?

(高橋芳朗)ニッキー・ミナージュっていう女性ラッパーのファンアカウントを運営していたんですよ。

(宇多丸)ああ、そっち!? ニッキー・ミナージュのファンアカウントを運営?

(日比麻音子)ファン代表?

(高橋芳朗)運営していたんですよ。だからね、インターネットでバズを産むセンスにめちゃくちゃ長けていたんですよ。だから彼のそういうマーケティングセンスが生かされたっていうところもあるという。

(宇多丸)ああ、そういうことなんだ! ちょっと新時代のショーン・パフィ・コムズっていう風なのを感じるな。

(日比麻音子)でもそれで記録を更新するぐらいって。怖いぐらいですね。その威力がね。

(高橋芳朗)そうやって『Old Town Road』が全米で知れ渡っていくんですけども。で、ここから17週1位の新記録にたどり着くまでにも本当にいろんなトピックスとか騒動があって。やっぱり黒人がカウボーイの格好をしている。ただそれだけで意味が出てくるというか、政治性を帯びてくるようなところもあるじゃないですか。それでね、いろいろな議論や物議を醸し出したりもしているんですよ。

いくつか大きなものを紹介しますと、まず『Old Town Road』が本格的にヒットをし始めた3月ごろ。当初はさっきも言いましたビリー・レイ・サイラスが入っていないリル・ナズ・X単独のオリジナル・バージョンが売れ始めたんですけども。これがビルボードの総合チャートとヒップホップ・R&Bチャート、カントリーチャートの3つのチャートにランクインするっていう快挙を達成したんですよ。

(宇多丸)そんな曲、ないもんね。

(高橋芳朗)で、快挙を達成したんですけど、ちょっとしてカントリーチャートからは削除をされたんですよ。

(宇多丸)削除? なぜ?

カントリーチャートから削除される

(高橋芳朗)理由は「カントリーの要素を十分に満たしていない」というビルボード側の判断です。

(宇多丸)「カントリーの要素とは?」っていうことだよね。

(高橋芳朗)そうなんですよ。で、これがジャンルを巡る論争から、一部では人種差別的なそういう議論にまで発展していったんですね。

(日比麻音子)いま、このタイミングでっていうのもありますよね。

(高橋芳朗)そういうことですね。で、リル・ナズ・Xも猛抗議をするんですよ。「これは両方のチャートに入って然るべき曲なんだ」って。そういう風に意図して本人も作っているわけですから。で、この状況を受けてリル・ナズ・Xが作ったのがカントリー歌手のビリー・レイ・サイラスをフィーチャーしたニューバージョンなんですよ。

(宇多丸)ああーっ! つまり、「もうビリー・レイ・サイラスが入っていれば文句ないだろ?」っていう。

(高橋芳朗)「カントリーの要素を十分に満たしてないんであれば、本物のカントリーシンガーを連れてきてやるよ!」っていうことで作ったのがさっき聞いていただいたバージョンですね。

(宇多丸)当然、ビリー・レイ・サイラスさんもこの状況に対して「じゃあ、俺が人肌脱いでやるよ」っていう?

(高橋芳朗)そう。それでめっちゃ話題になって全米1位を取って。またカントリーチャートにも返り咲いたんですよ。

(宇多丸)なるほどね。うわっ、ストーリーがもう! はー!

(高橋芳朗)面白いでしょう?

(宇多丸)面白い、面白い!

(高橋芳朗)で、これがだいたい3月から4月ぐらいに起きたことなんですけども。それで6月。これはプライドマンスじゃないですか。LGBTプライド月間。このプライドマンスの最終日の6月30日にリル・ナズ・Xはゲイであることをカミングアウトしたんですよ。これ、いままさに全米チャートの首位に立っている黒人ラッパーがゲイであることをカミングアウトするっていう、まあ前代未聞の事態ですよね。

(宇多丸)いやー、時代はもう進んだな! 本当に。

ゲイであることをカミングアウト

(高橋芳朗)で、これによってリル・ナズ・Xがヒップホップ・R&Bチャートだけじゃなくてカントリーチャートでも扱われることにこだわった理由というものがちょっと見えてくるんですよ。

(宇多丸)なるほど! つまり、そうか。そこまで歩を進めておいてからの? まあ、いちばん保守的な……。

(高橋芳朗)そう。ヒップホップとカントリーはいろんな音楽コミュニティーの中でもいちばんホモフォビアっていうか、同性愛嫌悪の傾向が強い音楽コミュニティーですよね。

(宇多丸)まあ、近年ではだいぶマシになってきたとはいえ。やっぱりマチズモというか、マッチョな文化だから、強がりの反面としてのホモフォビアっていうのは強くて。で、それは我々は日本で聞いていて非常に苦々しく思っていたところだったし。そういうので僕もすごく日本のいろんなラッパーとかと論争をしていたんだけども。変わった……。まさにしかも意図的に革命を仕掛ける気で?

(高橋芳朗)どうかな。そういうところもあったんじゃないかなって思うんですけども。

(日比麻音子)我々が思っているよりもよっぽど先を行こう、牽引しようとしていたということなんですかね?

(高橋芳朗)そこまで視野に入れていたんじゃないかな?っていう気もするんですよ。

(宇多丸)すげえ! このストーリー、どんどんすげえ!

(高橋芳朗)フフフ(笑)。だからゲイである自分がその両ジャンルを股にかけて成功をすることに彼は意味を見出していたんじゃないかなと。で、実際にインタビューでこんなコメントをしています。「ヒップホップとカントリーのコミュニティーはどちらもゲイに寛容とは言い難い。でも僕の曲はその両方を融合させたものだ。そんな音楽をやっている自分がカミングアウトをすれば、多くの人たちに勇気や希望を与えることにつながると考えたんだ」と言っているわけですよ。

(宇多丸)うんうんうん。

(高橋芳朗)で、こういう言動を踏まえるとですね、さっきちょっと軽く紹介した『Old Town Road』の歌詞がまた新しい意味を帯びてくるわけですよ。

(宇多丸)ああ、そうか! ただの「俺は俺の道を行くぜ」っていうだけじゃなくて。

(日比麻音子)ただのふるさとソングではないというか。

(高橋芳朗)もう1回言うと、「馬にまたがって古びた道を突き進む。行けるところまで行くんだ」「誰も俺には何も言えない。お前は俺に何も言うことはできない」という。だから旧来的な価値観をひっくり返してやるっていうような、そういう……。

(宇多丸)しかも、オールドな道を進みながらね。

(高橋芳朗)そうそう。そういう風にも受け取れる。でも、本人は「お金がなくて居候をしていたお姉ちゃんの家を追い出されて、トボトボと道を歩いているところが孤独なカウボーイみたいだなと思ってこの歌詞をひらめいた」って言っているんですけども。まあ、本当かどうかね。

(宇多丸)まあでも、それはどうとでも取れるレベルの普遍性に高めるっていうのはもちろん作詞業の作業のひとつだから。うん。

(高橋芳朗)で、さらに『Old Town Road』、何種類か別バージョンが作られているんですけども。先週、ちょうど新記録を狙うぞっていうタイミングでK-POPのBTSのラッパーのRMをフィーチャーしたニューバージョンが発表になって。いま、後ろでかけてもらっていますけども。これ、タイトルが『Old Town Road』改め『Seoul Town Road』。韓国のソウルへの道を突き進めみたいな意味になるんですけども。だから、もうこの『Old Town Road』の最長1位記録への道っていうのは国とか人種とかセクシャリティとか音楽ジャンルとか、もう多様性の大切さを説いていくような旅というか行程になっていたんだなっていう。

(宇多丸)うんうん。なるほどね。

(高橋芳朗)そういうことなんですよね。で、いまはトランプ政権でさ、「嫌なら出ていけ!」みたいなことを言っているわけじゃないですか。多様性が脅かされている中でこういう曲が17週連続で1位。ロングランのヒットになったのはまあ、非常に大きな意味があるんじゃないかなっていうね。

Lil Nas X『Old Town Road (Seoul Town Road Remix) feat. RM of BTS』

(宇多丸)こういう曲をだからある意味、求める土壌というか必要とするような人たちが本当はいて。この状況をね。そことフィットしたというか……だってほら、曲だけ取り出したらさ、そんな曲かどうかは全くわかんないんだけど。そのフラットさというのがそういうムーブメントになった時にすごい強みになるというか。

(日比麻音子)たしかに。でも周りの引力がよりギュッと求心力があるというか。

(高橋芳朗)だからどこまでね、本人が視野に入れていたのか。

(宇多丸)だから解釈の余地があったというか。そこもあったとは思うんだけども。ただ少なくともカミングアウトのところまでは完全に……。

(高橋芳朗)そういうね、青写真があったんですかね。

(宇多丸)青写真かどうかはわからないけど、カミングアウトの時点で覚悟を決めたというか。「ここだ!」っていう。

(高橋芳朗)これはね、そのバズのセンスにも長けていますから。そのへんも生かされているとは思うんですけどね。

(宇多丸)まさにここ、いま2019年だからこそできた。これが2016でも2017でもない、2019っていうかね。

(日比麻音子)しかもハタチっていうね。これからを担う。

(高橋芳朗)タイミング的にはアメリカのサッカー女子チームがワールドカップで活躍したタイミングでね。あのミーガン・ラピノー選手のいろいろな発言とかも話題になりましたし。

(宇多丸)ニッキー・ミナージュのファンアカウント運営もそう考えると「ああ、なるほど!」っていう感じが。

(高橋芳朗)フフフ。で、いま17週1位を達成していますけど、現状まだめぼしいライバルがいないんですよ。ずっと2位にはビリー・アイリッシュの『bad guy』がつけているんですけども。でも、これで17週1位を取ってまたバンと話題になったから、たぶん記録はまだ伸びるんじゃないかな?って。

(日比麻音子)「ビリー・アイリッシュこそ最も勢いがある」って言っていたばかりなのに。

(高橋芳朗)ビリー・アイリッシュもずっと抑え込んでますからね。

(宇多丸)いやー、面白いんだよね。いま、チャート。

(高橋芳朗)で、この曲のヒットの余波としていま、アメリカでカントリーラップがにわかに盛り上がりつつあって。

(日比麻音子)ジャンルすらも盛り上げている。

(高橋芳朗)そうなんですよ。『Old Town Road』に続く曲として現在チャートを急上昇中なのがこれはアトランタのプロデューサーの人なんですけども。ブランコ・ブラウンの『The Git Up』という曲が今週の全米チャートで14位。カントリーチャートではすでに1位に輝いています。黒人ラッパーの曲がカントリーチャートで1位という。

(宇多丸)へー! 完全に構造から変えちゃったよ!

(高橋芳朗)じゃあ、その曲を聞いてみましょうかね。ブランコ・ブラウンで『The Git Up』です。

Blanco Brown『The Git Up』

(宇多丸)はい。ブランコ・ブラウンで『The Git Up』。これはカントリーチャートで1位。だから、そのリル・ナズ・Xの『Old Town Road』の一連のあれで土壌が耕された後に登場をしてきたという。

(高橋芳朗)そうですね。ヒットしやすい状況にあったと言えると思いますね。

(宇多丸)これもやっぱり歌っている内容なそういうカントリーチックな?

(高橋芳朗)これは完全にパーティーソングですね。

(宇多丸)すごく素朴な疑問として、ヒップホップは別にサンプリングソースなんでも取れるんだから。そんなこと言ったらどんなジャンルだってインベージョンできちゃうっちゃできちゃうんだけどもっていう感じもありますけど。でも、さっきのあの話、面白かったわ!

(高橋芳朗)ねえ。天才ですよね。

(宇多丸)だし、この短期間でまさにこの時代ならではっていうのもあるし。まあ、非常にクレバーなんでしょうね。

(高橋芳朗)そう。これだけクレバーな男だから、たぶん一発屋で終わることはないんじゃないかなって気がしますね。

(日比麻音子)この次がなおさら注目ですよね。どう攻めてくるのかって。

(高橋芳朗)もうすでにまとまった形で『7』というEPを出していて。これもまたすごい……。

(宇多丸)『Rodeo』っていう曲とか。

(高橋芳朗)『Rodeo』っていう曲があったりとか、あとはニルヴァーナの曲をサンプリングした曲(『Panini』)があったり、非常にいい内容になっているんで。たぶんまだまだ行けると思います。

(宇多丸)マーケティングセンスもあるし。

(日比麻音子)アーティストでもあり、インフルエンサーでもありっていうね。

(高橋芳朗)そう。だから裏方としても活躍できると思います。

(宇多丸)だから最新版パフィっていうかさ。彼もマーケターで、売る側から始まってパフォーマーにっていう。

(高橋芳朗)表にも出てきてね。

(宇多丸)だからプロデュースとかやっても上手いでしょうしっていうね。

(高橋芳朗)まだハタチですよ!

(宇多丸)ハタチ! いやー、面白い。ありがとうございます。これはでも聞かなきゃわからなかった。

(日比麻音子)勉強になった!

(宇多丸)超おもろ! といったあたりで、今日はチャートが面白すぎるということで、前半のチャート分析をいっぱいうかがいました。

<書き起こしおわり>

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