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町山智浩『イット・カムズ・アット・ナイト』『ヘレディタリー/継承』を語る

町山智浩『イット・カムズ・アット・ナイト』『ヘレディタリー/継承』を語る たまむすび
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(町山智浩)キツいんですよ。で、もう1本の方なんでうけど、これは『ヘレディタリー/継承』っていう映画で「ヘレディタリー」っていうのは「遺伝・家族の文化的な遺伝で引き継がれていくもの」っていうことを言うんですね。だから『ヘレディタリー/継承』とはルビみたいなものなんですが。これはですね、まずひとつの家族が……こっちも家族の話なんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)お父さんがいて、お母さんがいて。お父さんは勤め人らしいんですけど、お母さんはドールハウス。人形のお家を作っているアーティストなんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、そこに高校生の長男と中学生の娘がいて。で、この娘がちょっと見るからにすごく不思議な娘さんで。ある種の超能力を持っているみたいなんですよ。最初。

(赤江珠緒)ふーん。うんうん。

(町山智浩)で、映画の始まりは昔、『オーメン』っていう映画がありまして。ダミアンっていう……大魔王サタンの息子かもしれないっていう話でしたね。それとか『エクソシスト』ってありましたね。少女が悪魔に取り憑かれて怪物になっていく話。

(山里亮太)ブリッジして階段をドタドタドタッ!って(笑)。

(町山智浩)そうそう。ああいう映画なのかな?って最初は思うんですよ。ところが、映画が始まって30分で大変な事態が起こりまして。予測もしなかった方向に映画が展開していくんですよ。

(赤江珠緒)えっ、そうなの?

(町山智浩)そこからは、まあ地獄のような家族同士の戦いになっていくんですけど。で、この監督がアリ・アスターっていう監督なんですけど、参考にした映画はなにかというと『普通の人々』っていう映画なんですよ。ロバート・レッドフォードが撮った映画なんですけど、家族がいるんですが。長男がボートで事故死をしてしまって、お母さんがそれでずっと生き残った次男を責め続けるという映画なんですね。

(赤江珠緒)うーん、それもキツい話ですね。

(町山智浩)キツい話なんですよ。それで、そういう展開にこの映画も途中でなっていくんですけども。監督のアリ・アスターさん本人に僕、直接話したんですけども。「みんなが絶対に見たくないもの、聞きたくないものを見せようと思った」って言っているんですよ。

(赤江珠緒)え、ええーっ?(笑)。

いちばん人間が嫌なものはなにか?

(町山智浩)で、いちばん人間が嫌なものっていうのは一体なにか?っていうと、自分の親から拒絶されること、愛されないことなんですよ。で、「どんな映画でも大抵の映画では母親の愛、父親の愛というものはいろいろとひねくれたりした形でも、やっぱりそれは絶対に信じられるものなんだ。それは否定されない聖域なんだ」っていう風に監督は言っているんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)それ自体をぶっ潰していくっていう映画なんですよ(笑)。

(赤江珠緒)ええーっ? 見終わった後、どんな感じの気持ちになります?

(町山智浩)キッツイっすよー! キツーッ!っていう感じですよ、もうこれ。だから本当に嫌なんですよ。『ススムちゃん大ショック』っていう永井豪先生の漫画があるんですけど。それは人間が子供を愛するっていうことは絶対的な当たり前のことだとみんなは思っているだろうけども、それは本能として生物的に仕組まれているだけであって、機械的なものになっているから壊れたらいきなり子供たちを親は殺しに来るよ」っていう話なんですよ。

(赤江珠緒)うわーっ! そこが揺らいだら本当に怖いな。

(町山智浩)そう。だからそういうすごい恐怖の話で。はっきり言うといわゆる毒親の話なんですね。で、この『ヘレディタリー』で男の子がいるんですけど。長男役の。その子の顔の写真がそこにあると思うんですよ。これね、アレックス・ウルフくんっていう子で。『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』という映画でオタクの高校生を演じていた子なんですね。この子が徹底的にひどい目にあうんですけども。いろいろと。ムロツヨシさんにそっくりなんですよ!

(赤江珠緒)フハハハハハハッ! 日本で言うとそういう、ムロツヨシさん的な顔ですよね(笑)。

(山里亮太)アハハハハハハッ! 似てる!

(赤江珠緒)目の表情とかまでちょっと似てるな―。

(町山智浩)ホクロの位置も同じなんですよ。だから、もうムロツヨシさんの高校生時代にしか見えないんですよ。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。

(町山智浩)ムロツヨシさんもいろいろといじられているじゃないですか。ドラマとかじゃなくて、お笑い番組とかでも。もう本当に、高校生ムロツヨシをいじめまくる世界ですよ。この映画は。

(山里亮太)救われない……。

(町山智浩)救われないですよ。ねえ。

(赤江珠緒)そのちょっと能力を持っている娘さんの写真みたいなのが載っていますけど。なんかちょっと怖いですもんね。表情だけでも。

(町山智浩)そう。彼女がまた素晴らしいんですよ。すごいことになっていますけども。存在感がね。で、この映画は最初、だからオカルト映画かと思ったら、途中から家族同士の地獄物語になっていくんですね。

(山里亮太)嫌なジャンル(笑)。

(町山智浩)でね、嫌なジャンルなんですけど、最近すごい多いんですよ。この間、公開された映画でヨルゴス・ランティモス監督の『聖なる鹿殺し』っていう映画があったんですよ。で、これが嫌な話でね、やっぱりオカルト的な呪いの話なんですけども。まあ、親がいて、子供がいるんですけど。ある病気に取り憑かれていくんですね。で、その呪いを解くためには……子供が2人いるんですよ。女の子と男の子が。それでお母さんとお父さんがいて。「この呪いを解くためには家族の1人をお父さんが殺さなければならない」っていう風に言われるんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ!

(町山智浩)とんでもない話ですよ、もう。

(赤江珠緒)そうですよ!

(山里亮太)それがいま、流行っているんだ。その感じが……。

(町山智浩)すごく多いんですよ。

(赤江珠緒)なんなんでしょうね? しかも、大ヒットしているんですもんね。なんなんでしょう?

(町山智浩)大ヒットです。そう。これがヒットしているんですよ。「そんなもん、見たくない」っていう人もいるかもしれないですけど、ヒットしているんですよ。そこがまた面白いところで。で、これはお母さんがね、ドールハウスっていう人形のお家を作っているということが非常にポイントなんですね。彼女の家はめちゃくちゃだったんですよ。お父さんは自殺して、お兄さんも自殺して、お兄さんも宗教にハマっちゃって……っていう。で、その自分の家族が崩壊したから、その治療として箱庭療法をやっているんですね。

(赤江珠緒)はー! ええ、ええ。

(町山智浩)それでドールハウスが仕事になっていったんですけど、基本的には自分の完全に崩壊した仮定を引き継がない、継承しないようにするための治療としてそのドールハウスを作っているっていう話になっているんですよ。

(赤江珠緒)そういうところにも意味があったんだ。なるほど。

(町山智浩)意味があるんですよ。で、僕はこのアリ・アスターっていう監督に会って聞いて、「あまりにも強烈すぎる。これはどういうことなんですか?」って聞いたら、「これは自分にとってのセラピーだ」って。

(赤江珠緒)ああ、この監督も?

(町山智浩)はい。「2つ要素があって、ひとつは自分の家族に”継承”ということがあった。あるものを継承するということで、大変なことになったんだ。ものすごく家族が苦しむことになった。それについては言いたくない」と。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)「そういう悲劇というか苦しみみたいなものと向き合う中でこの話を作ったんだ」という風に言っていました。

(赤江珠緒)じゃあ、どっちの監督もご自身の家族によって受けたトラウマみたいなものをベースに作ったんだ?

(町山智浩)そうなんですよ。だからね、もう強烈なんですけど。ただ、やっぱり彼らはそれを語らざるを得なかったんですね。だって、それを……自分の中にあるその傷を完全にフタをして、全然関係のないお話を作るっていうのはやっぱりできないわけですよ。で、作ったとしてもそれは嘘にしかならない。だから、彼らはそこから自分の想像っていうのもを膨らませていって、治療と同時にひとつの物語を作ることになったんですけども。それはなんというか、毒をもって毒を制すみたいなことですよね。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)だからそういうことっていうのは、映画の中では絶対に「家族というものは素晴らしい!」「母親は自分の子を命をかけても愛しているんだ」っていうようなものしか、ほとんど描かれていないんですけども、そうじゃないものが出てきているっていうことは、現実にそうじゃないことがあるんだからなんですよね。それを救うには、やっぱりこういったものしかないんじゃないかっていう、一種の箱庭療法みたいなものなのかなとも思いますけどね。

(赤江珠緒)ふーん! 本当にそうですね。うんうん。

(町山智浩)まあでも、すっげー嫌な映画ですよ、どっちも(笑)。「ちょっと、待てよ!」みたいな(笑)。見終わった後、ガーッと焼酎かなんか飲みたくなりますよ(笑)。

(山里亮太)忘れてしまいたくなるぐらいの(笑)。

(赤江珠緒)そうか。だって極限状態でどっちも。

(町山智浩)河島英五のような気持ちになりますけども。

(山里亮太)『酒と泪と男と女』だ(笑)。

(町山智浩)そう(笑)。でも、そういうのも必要なんだっていうことですよね。甘い砂糖菓子ばっかりだと癒やされない傷っていうのはあるんだっていう。

(赤江珠緒)そうですね。だってそれが現実でもあり、人間の本質の一面でもあるわけですもんね。

(町山智浩)実際にこれがヒットしているわけですからね。やっぱり求められていたということだと思いますけども。で、この『ヘレディタリー』は公開が11月30日なんですけども。僕、トークショーを上映後にやります。

(赤江珠緒)じゃあ上映後、ダーッ!って思った時に町山さんとかと語り合うっていいですね。

(町山智浩)語り合うのかな?(笑)。

(赤江珠緒)語り合うというか、町山さんの解説を聞きたいでしょう(笑)。

(町山智浩)11月30日、TOHOシネマズ新宿で……フフフ、赤江さん、面白いですね(笑)。18時の回の上映後にお話をします。それでチケット発売は11月23日。これ、僕は監督に会って細かく全部わからないところを聞いてきましたんで。全部それをお話します。詳しくはTOHOシネマズ新宿のホームページをご覧ください。

(赤江珠緒)『ヘレディタリー』公開日の11月30日、TOHOシネマズ新宿、6時の回の上映終了後に町山さんトークということで。TOHOシネマズ新宿のホームページをご覧ください。『イット・カムズ・アット・ナイト』は11月23日公開となっております。どちらも間もなく公開ですね。

(町山智浩)もう本当にムロツヨシさんファンは必見です!

(赤江珠緒)フフフ(笑)。

(山里亮太)いじめられるムロツヨシさん(笑)。

(赤江珠緒)その観点で見に行けるかな?(笑)。今日は2本のホラー映画『イット・カムズ・アット・ナイト』『ヘレディタリー/継承』を紹介していただきました。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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