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町山智浩 NHK大河ドラマ『いだてん』を語る

町山智浩 NHK大河ドラマ『いだてん』を語る たまむすび
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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でNHK大河ドラマ『いだてん』についてトーク。そのすごさについて赤江珠緒さんと語り合っていました。

(町山智浩)で、もうひとつはね、僕がドラマだったらやっぱりベスト級だったと思うのはね、NHKの大河ドラマの『いだてん』なんですよ。で、これはすごかったんですよ。

(赤江珠緒)私も見てました。

(町山智浩)ああ、ご覧になってましたか。前半、辛くなかった?

(赤江珠緒)正直、いままでずっと見てきた大河と全く違ったから。「どうやって見たらいいんだろう?」って最初は思いました。

(町山智浩)前半、辛くて。僕、脱落しました(笑)。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。やっぱり時代があっち行ったりこっち行ったりとか。そういうのが入ってくるし。

(町山智浩)そう。だから三つぐらいの時間軸が同時進行して、しかも同じ人物を違う俳優が演じていたりするから、ものすごく頭の切り替えが大変で。それでついていくのに疲れてくるから脱落したんですけども。

(赤江珠緒)そういう方が多かったかもしれないですね。いままでの武将物とか、「だいたいこんな人だな」って思って見てるけど、近現代の方って「ええと、この方はどういう方?」とかっていうのはいちいち知らないっていう人がいっぱい出てきて。

(町山智浩)そう。今までの大河の戦国物っていうのは初めからみんな知ってる話をどういう風にアレンジするかっていうので見てたんで、話は知ってたんだけども。でも今回知らない話を出してくるから。それもついていくのが大変だったりして、すごく不利な戦いを挑んだんですよね。宮藤官九郎さんは。

ただ、やっぱりこれがすごいと思ったのは、NHKは大河でその東京オリンピックの直前にオリンピックの話をするという時に、「政府のプロパガンダに近いものじゃないか?」という風に噂をされていたんですよね。この放送が始まる前には。特にNHKは政権からすごく圧力を受けていて、「NHKは政権批判をしない」という風に批判されている時だったので、今オリンピックの話をやるんだったら完全にこれは政府のプロパガンダなんじゃないかと言われてたんですけど、もうとんでもない内容でしたね。『いだてん』は。

(山里亮太)へー!

「政府のプロパガンダ」とは全く違う

(赤江珠緒)そう。最後まで見ると「逆じゃん!」っていうところがありましたね。『いだてん』の最後の方を見てると「今、東京オリンピックを招致してやってる組織委員会と政府とかの中にあの阿部サダヲさんみたいな人がいれば、話が違ったんじゃないかな?」みたいな見え方がしましたね。

(町山智浩)阿部サダヲさんが演じてるのは、その東京オリンピックの前から……最初の東京オリンピックの頃からずっと日本にオリンピックを誘致しようとしてきた水泳が大好きな、何者かよくわかんない新聞記者なんですけども。

(赤江珠緒)まーちゃん。

(町山智浩)「まーちゃん」と言われてる人なんですね。田畑政治さんという実在の人物で。で、その人がオリンピックを何とかに日本でやるために駆けずり回るんですけど、それに対して足を引っ張って邪魔してくるのは政府なんですよね。常に。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、最初のオリンピックはその戦前、1940年にやろうとしたんですけど、日本政府はその頃、中国と戦争し始めちゃうんですよ。中国を侵略しちゃうんですよ。で、国際世論が「侵略をするような国家にオリンピックをやらせるか!」みたいな話になってくるので、せっかくオリンピックをやろうとしてたのに……で、その田畑さんの中のオリンピックっていうのは「国が戦う」ということじゃなくて、「国を超えてみんなが仲良くする」ということがオリンピックだと思ってるんですよ。

(赤江珠緒)「みんなで集うお祭りだ!」みたいな。

(町山智浩)そう。お祭り野郎なんですよ。とにかく、お祭りがしたくてしょうがないんですよ。彼は。ところが政府はその足を引っ張って、国と国とを分裂させる戦争に持っていくわけじゃないですか。で、戦争その1940年の東京オリンピックをどうするか?っていう話の時に彼はこう言うんですよ。「オリンピックをやめましょう!」って言うんですよ。役所広司さん演じる嘉納治五郎っていう柔道界の重鎮で日本のオリンピックを引っ張ってきた人に対して、阿部サダヲさんが「オリンピックをやめましょう!」って言うんですよね。あれがすごいんですよ。

(赤江珠緒)うん!

「こんな国でオリンピックしちゃダメだ!」

(町山智浩)「こんな国でオリンピックしちゃダメだ!」って言うんですよ。「よその国に攻め込んだりしてるような国でオリンピックをしちゃダメでしょう? それはオリンピックの精神に反するでしょう? そんなことをしたらオリンピックに失礼ですよ!」っていう。すごいよな!っていう。

(赤江珠緒)たしかにね!

(町山智浩)で、結局オリンピックをやめて戦争になっちゃうんですよ。それで日本がアジアの国を侵略していくわけですけど。その後、またこの田畑さんがそれとも戦っていくんですよ。で、どうするかっていうと、東京オリンピックを彼がやろうとする時に、まずやろうとしたことがアジアの自分たちが侵略した国に聖火リレーを回すっていうことですね。アジアを侵略したことに対するお詫びとして。で、沖縄にも回すっていう。でも沖縄はその頃、アメリカなんですよね。で、アメリカとかも横槍を入れてくるし、日本政府も「それはアメリカとの関係でマズいから」って言うんですけど、「それをやらなきゃダメなんだ! アジアや沖縄にさんざん迷惑をかけているわけだから」って。

で、彼が言うのは、「日本はいろんな国に迷惑をかけた。だから面白いことをやってお詫びするんだ」っていう。エンターテイメントの精神なんですよ。で、そのへんはたぶんね、宮藤さん自身がエンターテイナーだから、面白いことをやるっていうところでそのオリンピックに彼は感情的に……感情を込めているんですよ。だから彼にとってはスポーツっていうのはそんなに好きじゃないと思うけども(笑)。宮藤さん、そんなに興味がないと思うけど、エンターテイメント。面白いことをするっていうことなんだと思うんですよね。

(赤江珠緒)そこが、その根の部分がね。

(町山智浩)で、何度もね、「面白いか、面白くないか」っていう言葉が出てくるの。

(赤江珠緒)「面白いことをするんだ!」っていうのが本当にキーワードとして出てきますもんね。

(町山智浩)「それは面白いのか? 面白くないのか?」っていうのはね、たぶん宮藤さんのもうあれは思想なんだと思うんですよ。すごく。だからそのへんでまたすごかったのは浅野忠信なんだ!

(赤江珠緒)いや、そうなんですよ!

(町山智浩)あれがね、嫌なやつで。政治家なんですよ。自民党の幹事長なんだ! で、1964年に東京オリンピックをやろうとする時に、何かそれで利権がありそうだっていうことで入り込んでくるんですよ。

(赤江珠緒)「これは利権になるな」と思ってから乗りかかってくるっていう。

(町山智浩)セリフの中ではっきり出てくるんですよ。「政治家だの企業だのがオリンピック、今まで邪魔をしてたようなやつが実際にオリンピックやるとなると急に一枚噛もうとして入り込んでくる」っていう。で、その浅野忠信がはっきりとこう言うんですよ。「東京オリンピックは政府の国家事業にする!」って。どっかで聞いた話ですよ(笑)。

(赤江珠緒)そうなんですよ!

(山里亮太)本当だ!

どこかで聞いたことのある話

(町山智浩)それで田畑さんが一生懸命、スポーツマンたちだけで何とか面白くオリンピックをやろうとしてきたものを横から乗っ取っていくんですよ。

(山里亮太)うわあ! 全然昔の話じゃないじゃない?

(町山智浩)今の話にしか聞こえないんですよ!

(赤江珠緒)そうなんですよ!

(町山智浩)で、オリンピックの役員とかは大企業のOBと政治家のOBばっかりじゃないですか。そのことを言ってるんじゃねえの?っていう(笑)。

(山里亮太)かなり攻撃的なことを言っていたんだ!

(赤江珠緒)で、肝心なところでその「代々木に選手村を作りたい」っていう思いとかも、そこはアメリカの軍の基地になっていたから土地を返還をしてもらわなくちゃいけないってなって。そこも政治家に自分がかけあって動かすっていうね。その駆け引きの上手さとかもね。

(町山智浩)「代々木」っていうのはすごく重要で。代々木の国立競技場っていうのはものすごく重要で。元々、そこで1940年に東京オリンピックをやろうとしたんだけども、戦争を起こしてしまったんで中止になったんですね。それでその代々木で何をやったかっていうと、学生たちを兵隊に徴収して戦地に送る壮行会をやってるんですよ。本当はそこでみんなで、国も関係なく楽しくお祭りをするはずだった場所で、外国に攻め込んで行って殺し殺される学生たちをそこで送り込んでいくんですよ。

(赤江珠緒)土砂降りの中、兵士として若い人たちがその競技場を通っていくんですよ。

(町山智浩)だから田畑さんたちにとってはそこでオリンピックをすることで、その人たち……死んでいった人たちとか殺されていった人たちに対する癒しの儀式、鎮魂の儀式でもあるんですよ。だから、やらなきゃならなかったですよ。

(山里亮太)はー!

(赤江珠緒)そう。開会式で晴れた時に「あの時は雨だったのに……」っていう。

(町山智浩)そう。で、そこで戦争に送られていく兵隊たち。人を殺しに行く兵隊たち、殺されに行く兵隊たちを人々は「万歳!」と送り出したんですよ。そんなの、万歳でもなんでもないんだ。で、東京オリンピックで本当にそれが成功して、世界中の国の人が集まった時にみんなで本当の万歳をするんですよ。

(山里亮太)はー! ええっ、見たくなってきた!

(町山智浩)それが本当の万歳。昨日、総集編やっていたんだけどね(笑)。でもBSでまた総集編をやるから。

(山里亮太)ああ、追いかけます!

(町山智浩)でね、最後。「オリンピックは国と国との戦いだ!」とか言ってる人たちがいるんだけども、最後に東京オリンピックは全部終わった時にその国旗とかをそれまで掲げていたんだけど。国別で行進して、軍隊みたいに行進をしていたのが、最後はもうめちゃくちゃで。国も民族も人種も関係なく、みんなお祭り騒ぎをするところで『いだてん』の閉会式は終わるんですよ。それが、実はその田畑さんとオリンピック全体の本当の目的だったんですよ。国も人種も関係ない!っていう。

(赤江珠緒)だから国も人種も国籍も何も関係なく、みんなで競ったり楽しんだりして国境を越えていく。それがオリンピックの元々の精神だっていうね。

(山里亮太)えっ、めちゃくちゃ面白い……。

オリンピックの本当の目的

(町山智浩)だから、オリンピック自体がその「国の威信をかけて」とかナショナリズムのように見えるんだけども、実はオリンピックってすごい矛盾をはらんでいて。実は本当は国が無くなることが目的なんですよ。で、その時にその嘉納治五郎さんの声が聞こえるんですよ。

(赤江珠緒)もうその時には亡くなっているんだけども。

(町山智浩)で、前にオリンピックをやろうとしてやめさせた時には「この今の日本は世界に見せられる日本じゃない!」って言ってやめたんですよ。でも、「今度はどうだ? 世界に見せられる日本か?」って。その問いかけが何度も続くんですよ。「オリンピックは日本を世界に見せるものだから、日本が世界に見せられる国になっていなきゃダメなんだ」っていうんですよ。すごいドラマなんですよ!

(赤江珠緒)ゆらぎない信念がありましたね。

(町山智浩)そう。宮藤さん、命をかけている感じ、しましたね。

(山里亮太)このタイミングで……。

(町山智浩)そう。このタイミングでやるっていうのはものすごい勇気だったんで。まあ、脱落した人もいっぱいいたとは思いましたが。

(赤江珠緒)もうすでに放送は終了していますが、NHKオンデマンドなどでは見られるということです。

(山里亮太)見ます!

<書き起こしおわり>

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