(吉田豪)で、いろんな人を育てた人なんですよ。これまでに育てた人たちの名前がズラーッとこの最新刊に載っていたんですけど。僕、デビュー作からずーっと本は買っていまして。
(宇多丸)ああ、すごい。さすがタレント本の鬼。
(吉田豪)で、最新刊で新ネタが入っていたわけですよ。要は「俺が育てた人間たち。ジョー山中、小山ルミ、吉沢京子、カルメン・マキ、ゴールデン・ハーフ、西城秀樹……」って並んでいる中で、「トーキョータナカ(MAN WITH A MISSION・ボーカル)」って書いてあって(笑)。
(宇多丸)ええっ! いきなりなんか名前が急に最近に……(笑)。現行、現行(笑)。
(吉田豪)芹沢直美の2つ後がそれですからね(笑)。
(宇多丸)なんでそこだけ時代が急に飛んで、いまに?
(吉田豪)これの謎が知りたくて、今回のインタビューで聞いたんですよ。そしたら、MAN WITH A MISSIONっていうのはここだけの話、名前は伏せたんですけどもとあるバンドだった。
(宇多丸)いまは狼のかぶりものをしているけども。
(吉田豪)してますけど、違うバンド名で。
(熊崎風斗)あ、ああーっ!
(宇多丸)熊崎さん、ようやくピンと来た。MAN WITH A MISSION、めちゃめちゃ売れてますよ。
(吉田豪)あれが実は10年ぐらいずっと下積みやっていて売れなくて。で、妻子もいるとかで。そんな中で「ボス、もう1回俺にボイストレーニングやってくれませんか?」ってたのんできたから、「いい根性してる」って思って週1回、丸々2時間レッスンをやって。「その時に俺が『お前たち、これだけ歌が上手かったらお祭りのひょっとこのお面でもかぶってやったら受けるんじゃないか?』って言った」っていう。
(宇多丸)ほうほう。それが、ヒント?
(吉田豪)じゃないか?っていう(笑)。衝撃事実かどうかもわからないですけど(笑)。
(宇多丸)まあまあ、上條さんの談話としては……っていう。でも、一応そういうなんでそういう名前が出るのか?っていうのの文脈はあったということか。
(吉田豪)クールスのスカウトのあたりの話も大好きなんですけど。クールス、基本は暴走族グループだったじゃないですか。最初、「じゃあ根性を試す! 俺らのバイクの後ろに乗って大丈夫だったらお前を認めてやる」っていう。
(宇多丸)さっきから音楽バンドの話とは思えない……。オーディションがケンカとか、『マッドマックス』のような(笑)。でも、クールスはもちろん舘ひろしさんとか、後にクレイジー・ケン・バンドの横山剣さんは最後のクールスのボーカルですから。そういうグループですから。
(吉田豪)もちろん岩城滉一さんとか。岩城滉一さんがいた時代にまず声をかけて。で、「メンバー全員があんたを認めたら考えなおしてもいい」っていうことで時速160キロ近い猛スピードでバイクの後ろに乗せられて。足はフラフラになったけど、大丈夫だったっていうことで「あんたのことをボスと呼ぼう」ってことになったらしいんですけど。
(宇多丸)フフフ(笑)。
(吉田豪)まあ、その後も大変だったらしいんですよ。クールスを売り出す企画で関東全域の暴走族のリーダーを原宿の喫茶店に集めて。で、ミーティングを行うっていう。
(宇多丸)音楽グループの話ですよね?(笑)。さっきから、何度も聞きますけども。
(吉田豪)フフフ、まあクールス、暴走族のグループを売り出すということで。
(宇多丸)ああ、やっぱりちゃんとそこで筋を通しておかないと。
(吉田豪)で、それによって芸能界に足がかりを作ったり、改心をさせてその情熱を別の方向に向けさせて更生させるみたいな企画を立てたのに、警察のストップがかかってNGになっちゃった。そしたら、それを暴走族に逆恨みされて、30台ぐらいのバイクに囲まれて引きずられて。「僕の体はズタズタにされて、8ヶ月入院」みたいな。
(宇多丸)いやー……。
(吉田豪)昔の芸能界って、怖かったんですねー。
(宇多丸)いや、「昔の芸能界」って一般化していい話かどうかわかりませんけども(笑)。へー! すごいなー。
(吉田豪)で、この次の号、この前に取材してきて、さっき原稿があがったんですけども。敏いとうとハッピー&ブルーの敏いとうさんのインタビューをしてきて。
(宇多丸)またディープなところに行きますね。
(吉田豪)敏いとうさんはヒット曲がいっぱいありますけど、僕の中でいちばん気になっていたのが「フランク・シナトラのボディガードをやっていた」っていう話なんですよ。
フランク・シナトラのボディガード
(宇多丸)まあね。フランク・シナトラといえばアメリカのそういう芸能界でも歴史に残るギャンギーな人っていうか(笑)。
(吉田豪)フハハハハハハッ! そうです。
(宇多丸)もう、トップクラスの。
(熊崎風斗)その、ボディガード?
(吉田豪)で、その謎が解きたくて取材に行ったんですよ。で、何度も大病をされて、杖をついて結構なおじいちゃんなんですよ。昔は110キロぐらいあったのが激ヤセして。で、奥さんがサポートで来ていたんですけど、奥さんも杖をついているぐらいの状態だったんですけど……杖をついて、会話もかなりおぼつかなくなっているのに、会話の内容が本当に物騒で。すごかったですよ。まあ、着ているジャンパーがまず極真会で(笑)。
(宇多丸)おおう。もう全然武闘派だぞっていう。
(吉田豪)フランク・シナトラとの出会いを聞いても、全然話してくれないんですよ。ハッピー&ブルー以前に出会っているんですよ。アメリカで。
(宇多丸)ええーっ?
(吉田豪)で、「ギャンブルきっかけという説もありますけど?」って聞いても、「そうじゃない」って言いながらも……。
(宇多丸)あんまり詳しくは言わない?
(吉田豪)詳しくは言わないんですけど、ただハッピー&ブルーがヒットした後、70年代とかにも来日した際にはハッピー&ブルーでボディガードをやっているんですよね?
(宇多丸)ハッピー&ブルーでボディガード?
(吉田豪)敏いとうとハッピー&ブルーの全員がボディガードをやっていたんですよ。
(宇多丸)っていうことは、全員なかなか腕は立ったっていう?
(吉田豪)その可能性もあります。
(宇多丸)敏いとうとハッピー&ブルーもそういう入団テストみたいなのがあったんですかね?
(吉田豪)入団テストっていうか、ここが特殊なのがまず売れたじゃないですか。売れて、なにをやるのか?っていうと、稼いだお金で歌舞伎町にホストクラブを作るんですよ。で、そのホストクラブで実は大物が育っていって。
(宇多丸)はいはい。
(吉田豪)それが、カールスモーキー石井だったっていう。
(宇多丸)ええーっ?
(吉田豪)元ホストだとは聞いていたけど……。
(宇多丸)それって、知られている話なんですか?
(吉田豪)一部では。で、もともと歌手志望だって言ってたから「お前、ベガス行かなきゃダメだ!」とかそういうアドバイスをずっとしていて。「本物のショーを見なきゃダメだぞ!」っていう。そしたら、知らないうちにやめて大ヒットを飛ばして。そこで敏いとうさんが言ったのが、「挨拶がねえぞ。連れてこい!」だったっていう(笑)。
(宇多丸)それは、どうなったんですかね、その後ね。
(吉田豪)会わなかったらしいですけどね。
(宇多丸)ああ、そう。でも、そういう人材発掘のあれとしても、そしてもちろんお金儲けの場としても、ホストクラブをやるっていう。
(吉田豪)で、実はそれで衝撃だったのが、その当時のホストの記事を持っていったんですよ。
(宇多丸)当時のホストの記事?
(吉田豪)当時、そのホストクラブをオープンした時の週刊誌の記事があったんですよ。4ページぐらいで本当に大ヒットしていたらしくて。
(宇多丸)よくまあ、掘り起こしますね。
(吉田豪)そしたら「懐かしいわー!」って言って。そこのナンバーワンホストの顔写真も載っていて。「懐かしい。森下! こいつがね、いま大成功してるんだよ!」って言っていて。「なんですか、それ?」って言ったら、「いま、ほらほら、あれ! ロボットレストランやってるじゃん」っていう。歌舞伎町の森下グループのボスだったんですよ。
(宇多丸)はー! じゃあ、めちゃめちゃ才能を輩出しているじゃないですか。
(吉田豪)そうなんですよ。で、森下グループのボスって実は顔をほぼ出していなくて。「ここにあった!」っていう(笑)。
(宇多丸)吉田さんが図らずも(笑)。墓掘り人が(笑)。フハハハハハハッ! へー! そうやって思わぬところで点と点が線につながるところって、吉田さんもたぶん取材されていて「おおっ!」ってなりますよね。
(吉田豪)こっちも何も知らないで話していますからね。でもそんな中で、奥さんがまた無邪気にいろいろと話すんですよ。結構記憶が曖昧なんで「あの話、してあげなさいよ」みたいに話す話が本当に物騒で。サラッと言いますけどね……「ほら、あの話、あったじゃない? ほら、挨拶しないとかでさ。あの演歌歌手(実名)が……ほら、さらったじゃない?」とか普通に言っていて(笑)。
(宇多丸)フハハハハハハッ!
(吉田豪)「昔の芸能界って怖いなー」っていう話でした(笑)。
(宇多丸)いやー……(笑)。
(吉田豪)これがナンバーワンホストの森下さん。
(宇多丸)へー! あ、写真をちゃんと。なかなか甘いフェイスのいい男。なんか、それ自体で映画になりそうな話ですね。これね。
(吉田豪)そうなんですよ。
(宇多丸)この『実話BUNKA超タブー』の吉田さんの連載はだからいちばんのデンジャーゾーンを進む。いまの吉田さんの仕事の中でも。
(吉田豪)そうですね。物騒な人生を送ってきたおじいちゃんたちに会いに行くのがいま、テーマになっていて。
(宇多丸)たしかにこれ、ちょっと言い方はあれですけども。いまお話が聞けるうちにね。
(吉田豪)そうなんですよ。歴史的な証言はちゃんと残しておかないといけないっていう。そういう作業をやっておりますという、デリケートすぎる話でしたね(笑)。
(宇多丸)フフフ(笑)。
<書き起こしおわり>
タイトルも小見出しもラジオでは朗読不可能だったっぽい『実話BUNKA超タブー』の「吉田豪 人間コク宝インタビュー」。 pic.twitter.com/j12fEDX6YX
— 吉田光雄 (@WORLDJAPAN) 2018年11月19日