(DJ YANATAKE)でもこれ、あれですよ。最初に僕、呼び出されて。「こういう企画があるからやろうよ」っていう。で、「ぜひやらせてください」っていうことになったんですけど。すぐに「いや、うちにはもう1人、ちょっといいのがいるんです」っていうことで志保に声をかけさせてもらって。でも、本当によかったなと思って。で、最初にさっき宇多丸さんも言っていましたけど、じゃあスラングの部分を渡辺さんにお願いして、収録方式でね。
(渡辺志保)そう。年末に1人でNHKに行ってね、「SWAG」とかね。
(DJ YANATAKE)しかも2回ぐらい行っていたよね?
(渡辺志保)そう。2回ぐらいうかがいまして。「SKRRT」とかね。よくわからないことを収録させていただいて。
(DJ YANATAKE)で、みんなNHKの収録の時に「SKRRT」とかさ、「えっ、なんですか?」みたいな(笑)。「えっ?」とかってやっていたんだよね。
(渡辺志保)で、当日、ヤナタケさんに「もしあれだったら見に来ていいよ」みたいなことで軽くお誘いいただいて。で、それをね、私が本当にブラッディ・シューズを履いてズカズカと生放送現場に乗り込んでいって。私は本当にそもそもさ、出るなんて思っていないまま当日はうかがったわけよ。
(DJ YANATAKE)でも僕はひそかにチャンス狙ってましたよ。
(渡辺志保)ああ、本当に? ワンチャンあるみたいな。で、普通に渋谷のデパートとか営業してますから、デパ地下で差し入れ用のお稲荷さんと天のやの玉子サンドを買って。
(DJ YANATAKE)ああ、あったね! はいはい。
(渡辺志保)で、スタジオにうかがったんですよね。で、その間もずっとリアルタイムでRadikoさんで生放送を聞きながら現場まで向かっていたんですよ。
(渡辺志保)ああ、そうか。最初からはいなかったのか。
(渡辺志保)そう。それで、「あっ、すごい! 本当にここNHKで未曾有の生放送が行われている!」っていうのを拝見したりとか。「あっ、いとうせいこうさんが来てしゃべってらっしゃる! お、おおっ! 目の前で『噂だけの世紀末』! うおーっ!」みたいな。っていうシーンを目撃して。そしたら宇多丸さんを始め裏方の方も「ちょっとしゃべるか?」という風に。「あ、ワンチャン来た!」みたいな。
(DJ YANATAKE)みんなもですね……2000年代から入ったんだっけ? 本当にヒップホップの誕生から、80年代とずーっと追っていっていたんで、もう2000年ぐらいになるとおじさんたちの息が切れてるだろうというところも予想しながらですね。でも、やっぱり入ってもらったら、そっから志保さん、NHKテイクオーバー!
(渡辺志保)テイクオーバーなんて、とんでもない。だから私としては、しかもヤナタケさんと高橋芳朗さん……特に高橋芳朗さん、すごい綿密な準備をされてたじゃないですか。もう完璧な台本が。何十ページにも渡る完璧な台本があって。ヤナタケさんも前日、なんなのもう朝4時ぐらいまで……。
(DJ YANATAKE)あのね、正直ディレクターのババさんっていう方と高橋芳朗さんと俺は朝6時過ぎてもまだバンバンメールが回っていたの。だから、10時間生放送をやるというよりは、それのための準備の方がはるかに大変だよ。ほぼ寝ないままスタジオ入りして、「こっから10時間か……」みたいな感じはあったの。
(渡辺志保)しかも、言うなら宇多丸さんも島根かどこか、地方にライブに行かれてて。羽田に着いてそのままNHK直行みたいなスケジュールでいらしたかと思うんですよね。だから、先輩たち。OGのみなさまはみんな「寝てない、寝てない、寝てない」っていう状況でみなさま、ずーっと綿密な準備をした上で、「はい、じゃあ10時間始めましょう」って。で、私が本当にブラッディ・シューズを履いた状態でズカズカと畑に乗り込んで。ああだこうだと……。
(DJ YANATAKE)いやいや、でも大正解でしたよ。
(渡辺志保)そうですか。ちょっとそう言っていただけるのであれば……。
(DJ YANATAKE)リリーフエース登場っていう感じでしたよ。
(渡辺志保)いやいやいや(笑)。
(DJ YANATAKE)「キターッ!」っていうね。でも本当、志保のパートよかったし。ちょっと、これは延々と話せちゃうので、まず曲を。みんなにこの本とかのイメージしたいただきたいなと思って。そもそも志保さんにお願いしたのは、スラング講座。で、最初はどういうのを紹介してたんだっけ?
(渡辺志保)最初はですね、やっぱりいきなり「Molly(MDMA)」とか言ってもあれだし。「Lean(コデイン)」とか言ってもあれなんで。いますぐ使えるヒップホップスラングみたいな感じで「Dis」とかね、「Beef」とかね、あとは「レペゼン」ってよく言いますけど、じゃあ「レペゼン」ってなんなのか? みたいな。そういったところに触れました。で、それはちゃんとその構成作家さんのアドバイスもあって、こういったものにしたんですけれども。で、ちょっと難しかったのはどの曲と絡めてそのスラングを紹介するのか?っていうことで。
(DJ YANATAKE)たしかに。
(渡辺志保)だからどうしましょう?って。で、それを年代順に追って行かねばならないので。やっぱりその時代のスラングを紹介する。私もリアルタイムで使ってたわけではないから、どれだけあれなのか?っていうのはあるんですけれども。で、時代別にネタを用意せねばならないということで。でもまずいちばん最初はその「Dis」とか「Beef」とかっていうことにしまして。で、「Beef」といえばヒップホップ史上初の、曲を使ってラップバトル。曲を使ってお互いを攻撃し合うっていうのがやっぱり……いまはね、「あ、ドレイクがディストラックを出した!」とか「またカニエが……」みたいなことがあるけど。
(DJ YANATAKE)っていうか、YouTubeで出したりとかね、そういうのが手軽にできる時代だけど、そういうのがない頃はレコードとかで出したり。なんとかラジオでそれをかけてもらうしか、広める方法がないからね。
(渡辺志保)だからそのヒップホップ史上におけるはじめてのディストラックと言われているですね、MC SHANの『The Bridge』という曲に合わせて、このディスとかビーフとかっていう言葉を紹介したんですね。
(DJ YANATAKE)なるほど。じゃあちょっと雰囲気でも……まあ本当に入門編っていうことなんですけどね。まあ、これは知っておいて損がない曲なので行ってみましょうかね。
(渡辺志保)お願いします。じゃあ、聞いてください。MC SHANで『The Bridge』。
MC SHAN『The Bridge』
(渡辺志保)はい。いまお聞きいただいておりますので、ちょっと『INSIDE OUT』でなかなかかからないようなビートだから、ちょっとドキッとしちゃった。1987年のレコード、>MC SHAN『The Bridge』をお届けしました。
(DJ YANATAKE)生まれてました?
(渡辺志保)3歳だった。
(DJ YANATAKE)ああ、3歳だったんだね(笑)。まあ、リアルタイムで知っていたら嫌だけどね(笑)。
(渡辺志保)いやいや、まあリアルタイムを知っている方、たくさんいらっしゃいますからね。そんな感じでお届けしていますけれども。
(DJ YANATAKE)で、僕のターンというか。本当にがんばって準備して、僕の役目はですね、もちろんあの一緒に会話にも参加することもしたんですけども、主に曲を出すっていうね。しゃべりながら曲を出すという役もやったんですけど。なので、一応座りながらさ、その会話に合わせてBGMを急いで出したりとか、そういうのもずーっとやっていたわけですよ。だからいちばん本にはなりにくい部分(笑)。でも、まあいいんですよ。で、その当日は当時の話も聞こうっていうことで、すごいいろんな方がゲストにいらっしゃいまして。特に日本語のパートのところですけども、いとうせいこうさんがいらっしゃって。あとは収録でしたけど、スチャダラパーのBOSEくんとか、ZEEBRAくん。あとは漢 a.k.a GAMIとかね、生で来てくれたりしたんですよ。あとはBAD HOPか。
(渡辺志保)あとはDJ IZOHくんとかね。ライムスターの宇多丸さん以外のお二人も。ライブをやっていただいて。
(DJ YANATAKE)そんな、10時間の中には豪華なこともあったんですけど。僕、常々言っているんですけど、ヒップホップを聞き始めたのはいとうせいこうさんの曲を聞いたからなんですよ。中学2年生の時に『東京ブロンクス』という曲を聞いて、ヒップホップに出会ってしまっていま、ここにいるわけですよ。
(渡辺志保)いやー、素晴らしい話ですね。
(DJ YANATAKE)で、せいこうさんが1曲だけライブをすることになったの。どの曲をライブしようか? 『噂だけの世紀末』っていう名曲があるんですけど、ちょうどその曲をライムスターがいとうせいこうさんの30周年記念の時にカバーして出していたんですよね。なるほど、じゃあ『噂だけの世紀末』をやろうと。で、「宇多丸も一緒にやろうよ!」って。
(渡辺志保)すごい瞬間よ!
(DJ YANATAKE)しかもですよ、音を出すのは俺しかいないわけです。だから、いとうせいこうと宇多丸の世紀の瞬間を俺がバックDJするって……中学生の俺に聞かせたい!っていうやつですよね。
(渡辺志保)そうね。そういう瞬間がでもね、いくつもあってっていう感じでしたけど。しかも……あのDJブースというか放送ブースの中っていうのがまた、凄い環境じゃないですか。広いスタジオで(笑)。
(DJ YANATAKE)だだっ広いスタジオでね。BAD HOPが全員来ても持て余しているぐらいのね、スタジオだったから。いやー、でも本当にあれはしびれたね。もうちょっと、本当にもういいかなと。俺、ヒップホップでやりたいところまで来たな、ぐらいに思えた瞬間でもあってですね、すごく自分的にはもう本当に一生忘れられない出来事でございました。
(渡辺志保)いやー、本当そう。
(DJ YANATAKE)で、なんだっけ? なんか「スクラッチしろ!」みたいに言われるんだよ。だからちょっとこすったりとかもしたりして。
(渡辺志保)フフフ、貴重!(笑)。
(DJ YANATAKE)そうなんですよね。恐ろしいんですけど。でも、まあそんな「チャッチャカ♪」ぐらいなんですけど。
(渡辺志保)でもいまの時代にさ、ヤナタケさんにいきなり無茶ぶりで「スクラッチしろ!」なんて誰も言えないじゃないですか(笑)。
(DJ YANATAKE)いやいや、そんなことないですけども。まあでもね、言うてもそういうことなんで。本当に貴重な瞬間でした。ありがとうございました。というわけで、どういう曲をやったのかっていうのを、本当はいとうせいこうさんの曲をかければいいんですが、ライムスターバージョンっていう方が、意外とみんなこれを聞いたことがない可能性もあったんで。宇多丸さんも歌ってたんで、こっちのライムスターバージョンをかけたいんですけども。インストがなかったのよ、いとうせいこうさんのオリジナルが。だから当時はさ、インストとかも作れなかったのかな? だから、ありもののレコードとか、そういうのでライブしていたっぽくて。「ああ、そうなんですね」っていう話になって。でも、ライムスターは最近録ったから、ライムスターバージョンのインストの上でやったんですよ。当日、実は。
(渡辺志保)ああ、そうなんですね。じゃあ、慣れないというか?
(DJ YANATAKE)どうなんでしょうね。でも、さすがせいこうさん、ばっちりぶっかましてましたけっども。っていうのもあったんで、今日はこっちのバージョンを聞いていただきたいと思います。いとうせいこうさんのカバーでライムスター『噂だけの世紀末』。
ライムスター『噂だけの世紀末』
(DJ YANATAKE)はい。いま聞いていただいておりますのはいとうせいこうさんのカバー、ライムスター『噂だけの世紀末』でした。こちら、せいこうさんの30周年記念のアルバムとかに収録してますので、是非みなさんチェックしてください。というわけでね、なかなか当日が思い出される! ちょっと勝手にエモくなってきた(笑)。
(渡辺志保)エモくなってきた(笑)。本当、しかもさっきもちょっと申し上げましたけれど、先輩方が作ってくれた本当に分厚い台本がありまして。本当にさ、リアルタイムで「じゃあ、ここは削ろう」とか「じゃあ次はこの曲にしましょう」とか、そういうのがもう本当、あの狭い……スタジオは広いけど、我々が実際にマイクを置いている机の上でどんどんどんどん、超リアルタイムにいろんなことが変わっていって。
(DJ YANATAKE)そうそう。あと、リクエストも受け付けてたから。それが突然入ってきて、俺はその準備をしながらしゃべったりなんだりっていうのをやっていたわけだよね。
(渡辺志保)だから本当に、「ここにも触れたかった、ここも触れたかった」みたいなポイントが……。
(DJ YANATAKE)そうそう。だからみんな、10時間もありゃあ結構しゃべれる。余ってもう大変なんじゃないの? みたいに思っていたけど、「全然足りなかった」っていうのが正直なところだよね。
(渡辺志保)それが本当にびっくりでした。これだけしゃべっても足りないんだ……っていう感じね。