宇多丸『2001年宇宙の旅』IMAX上映の感想を語る

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宇多丸さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で『2001年宇宙の旅』のIMAX上映を見た感想を話していました。

(宇多丸)そうなんです。こんなね、ハロウィンのこと気づかないぐらい僕、ちょっとこれはこれで一種の僕的には仮装ではないんですけど、モードなんですけども。この番組でも何度も話題にしています『2001年宇宙の旅』のIMAX上映っていうのがやっていて。明日(11月1日)までやっているのかな? で、『2001年宇宙の旅』を改めてザーッと説明しておくと、1968年の映画。スタンリー・キューブリックのSF映画。「不朽の名作」なんていう言い方をされていますけども。公開当時……いまでもかな? まあ割と「難解」なんていう風にも言われていて。

(日比麻音子)うんうん。

(宇多丸)実際に熊崎風斗アナが見に行ってくれたんですよ。そしたら、熊崎くん普段からそんなにいろんな種類の映画を見るタイプでもないでしょうから、非常に戸惑っていて。「どうだった?」って聞いたら「な、長かったです……」って。そして、よくわかんなかったみたいなことを言っていて。それもまあ、無理からぬことで。月曜日にも言いますけど、そもそも『2001年宇宙の旅』、キューブリックが直前についていた説明ナレーションを取っちゃったっていうのがあって、わかりづらいと感じる人がいてもおかしくはないっていうのがあって。でも、いまは「これはこういう意味ですよ」っていうのがいろいろと、アーサー・C・クラークの同時進行で作られた小説とか、いろいろで。解説もあったりとか。で、いちばんわかりやすくまとまっているのはもちろん町山智浩さんとかの解説があったりもするんですけども。

(日比麻音子)ええ。

(宇多丸)まあ、そんなこんなでいまの観客が見て、わかって見ればとはいえそんなに、映画の中そのものは難しいことを言っている作品ではないはずなんですよ。で、見てきたんですね。僕、映画館で見るのはそれこそ……小学校4年生以来かも。そんぐらいの勢いかもしれないです。

(日比麻音子)それがIMAXで?

(宇多丸)IMAXで見てきたんですよ。だから僕、いま49ですけども、本当に40年ぶりぐらいに。

(日比麻音子)なんかタイムマシンみたいですね。

(宇多丸)しかも映画館でオープニング、映像が付く前に最初に音楽が流れ出して。あとはインターミッション、休憩がついたり。そういう形式で久しぶりに見てきたわけですね。その間のリバイバルとか、たぶん行ってないと思うから。で、そんぐらいやっぱり僕にとって最初に、10歳の時に見た『2001年』体験が強烈で。僕にとっていわゆるその、月曜日にもちょろっと言いましたけど「ストーリーが面白い」とか「娯楽映画の面白い映画」っていうところでもちろん映画の魅力にハマっていったんだけど、なんかちょっとそういうことではないというか。「お話上悲しいとか、お話上〇〇っていうわけじゃなくても泣くってことがあるんだな」っていう。

(日比麻音子)はー。

(宇多丸)「映像と映画の見事な語り口みたいなところだけで涙って出るんだ」みたいな。

(日比麻音子)映画力で涙が自然と出てきた?

(宇多丸)っていう風になったっていう経験でもあって。「ああ、映画ってすごいんだ」って知った経験でもあって。で、見てきたわけですよ。それで49歳宇多丸が久々に見た感想は……これ、僕がいま見たら2時間41分あるんですけど、長くないっていうか。結構『2001年宇宙の旅』はテンポ、全然ゆっくりした映画じゃないぞ、これ!って思いましたね。

(日比麻音子)へー!

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2時間41分は全然長くない

(宇多丸)まあ、IMAXでたぶん映像全体の情報量っていうか、受け取る情報量が多いのもあるんですけど。とにかく一件静的な、なにも起こっていない長めのショットに見えるところでも、やっぱりいろんなこと……いろんな情報が入っているし、いろんなことを伝えかけてきているし。いろんなことを語っているということがいまとなってはわかる部分がいっぱいあったりして。だし、普通に展開としてもね、結構次から次へといろんなことが起こる映画でもあって。全然長くねえよ!っていう感じでした。あと、なんならたとえばオープニングの人類の夜明けっていう、猿人。類人猿が進化するっていうくだりがあるんですけど。あのくだりとか、普通にエンターテイメントですよ。すっごいコメディー的に笑えるところもあるし。で、追いやられたダメダメ集団がいろいろあって帰ってきて勝つっていう話でもあるから、普通にエンターテイメント的構造もあるし。

(日比麻音子)うんうん。

(宇多丸)その猿軍団が、最初は普通にその他の動物と同じようにいろんなものを拾って食ったりしているわけですよ。で、強い集団に水場を追い出されてしょんぼりとかして。で、あまつさえヒョウに襲われたりして。で、途中で岩場にその猿の集団が隠れているところがあるのね。で、こっち側にはヒョウがいて、睨みをきかせていて怖くて出れないし。水場は取られちゃって行けないっていうので、岩場に隠れているしかない夜を過ごすシーンがあって。5匹ぐらい、岩陰にかくれているところで手前のやつがちょっと負け惜しみ的に「ウゥーッ!」って。「バカヤロー、コノヤロー!」みたいなことを一瞬言って、手元にいる虫かなんかを食べていると横のやつが虫を横取りしようとして。「ウガウガッ!」ってなりかけたら、他のやつが「おい、静かにしろ!」みたいに。そういうくだりとか全然わかりやすいチーム感っていうかさ。コメディー的なところも笑っちゃう。

だから要所要所でキューブリックならではのちょっと渇いたユーモアみたいなのがしっかり効いているし。あと、やっぱり大人になって諸々の意味とかがわかってみると、あれだけ退屈に見えた宇宙ステーション内の会話の場面とかが「ああ、なるほどね」って。要は冷戦が続いているっていう設定ですし。猿人が投げた骨が変身するのはただの人工衛星じゃなくて、核ミサイルを地上に打ち込むための装置だっていう。というようなことで、結局ソフィスティケートされているけど、進化した猿がお互いに争いあっているっていうか。ソフィスティケートされているけど、本質としては全然進化していないっていうのがなんとなくわかりながら見ているとこれはこれでスリリングだし、ユーモラスでもあり、皮肉でもあり。やっぱりキューブリックの意地悪な人類観みたいなのがあったり。

あと、最後にボーマン船長っていうのが宇宙人の用意したスターゲイトを超えて、不思議な西洋風の部屋に行くわけですね。まああれは宇宙人のおもてなしの部屋っていうね。で、あそこでボーマン船長は最後、老衰まで……だからたぶん彼は生きられる限界まで、宇宙人に生かしてもらって。しかも人類の文明のいちばんソフィスティケートされていると宇宙人が分析の結果考える……その中で生かせてもらう。つまり人類が、猿から進化させてもらって。その状態の上限でいくらよく生きても、まあ美味しいものを食べて安穏と寿命まで生きて、優雅に暮らしてもでもこれが上限っていうところまでのものを終えてから、さあ次の段階に行きましたっていう時に最後、スターチャイルドが地球に近づいてきて。

で、この映画のいちばん深みがあるとしたら、そこで。さあ、この先に人類がこの状態で……猿とそんなに変わんない状態から次に行くとしたら、どういうことなのか? じゃあ、さらに強い人類になって旧人類を滅ぼすような存在になるのか。それとも、単にメシを食うとか長生きをするとか、そういうのを超えた価値観っていうのを身につけたスーパー人類になっているのか、どっちなのか、なんなのかわからない。だからIMAXで見ると、スターチャイルドが最後にこっちをグーッと見るところがすげー怖い。要するに「客席のみなさん。さあ、旧人類のみなさん。あなた方、進化とはどういうものだと思いますか?」ってグーッと来る感じっていうか。

(日比麻音子)急にステージから照明を当てられるみたいな。

(宇多丸)だからすごく「あっ、怖い怖い怖い……こっち見るな!」って感じになった。IMAXで改めて。で、最後に『美しき青きドナウ』がもう1回流れ出すんだけど。そうするとやっぱり、キューブリック。『時計じかけのオレンジ』の終わりじゃないけど、それがちょっと皮肉に響くっていうか。「旧人類のみなさんの文明の名残り」みたいに響くっていうか。「こうやってみると、『美しき青きドナウ』はちょっと怖く響くな」とかね。もちろんこれは僕の……特に終わり方に関しては解釈ですけども。いろいろと思ったりして。だから全然長くないし、全然面白い……改めて言うとすごいバカみたいですけど。『2001年宇宙の旅』はすごい映画でした(笑)。

(日比麻音子)おおーっ!(笑)。

(宇多丸)明日までだから。ぜひ。間に合う方は絶対に行った方がいいよ。

(日比麻音子)IMAXで。

(宇多丸)やっぱりこの状態じゃないと、あんまり意味ないと思うからね。

(中略)

柳下毅一郎さんとの『2001年』トーク

この日の放送のゲスト、柳下毅一郎さんを交えて、本題に入る前に『2001年宇宙の旅』リバイバル上映の感想を語り合っていました。

(宇多丸)といったあたりで、まず本題に行く前に。柳下さん、『2001年』の一連のリバイバルってご覧になりました?

(柳下毅一郎)はいはい。僕は70ミリの上映を国立映画アーカイブで。あそこで行きました。

(宇多丸)いかがでした? 僕、70ミリはチケットが取れず、見れなかったんですけども。

(柳下毅一郎)いやー、すごくよかったですね。やっぱり。スクリーンはもちろんIMAXの方が大きいんで。それはいいと思うんですけど、映像がなんともいえない色気があって、素晴らしかったですね。

(宇多丸)フィルムならではの。そして、やはり2時間41分は全然長くない?

(柳下毅一郎)もう超短くて。本当に見ていて「ノーラン、お前テンポ悪いよ!」とか思いながら見ていたんですけども(笑)。

(宇多丸)フフフ、逆説教が(笑)。

(柳下毅一郎)最近の映画がいかにテンポが悪くなっているのかっていうのを本当に思い知りましたね。

(宇多丸)本当にね、意外とポンポンいろんなことが起こりますよね。

(柳下毅一郎)そうなんですよ。全然退屈しないし。すごいエンターテイメントだなと思って。

(宇多丸)改めてそのあたりを発見したという。

<書き起こしおわり>

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