プチ鹿島 大坂なおみ全米オープン優勝・新聞社説読み比べ

プチ鹿島 大坂なおみ全米オープン優勝・新聞社説読み比べ YBSキックス

プチ鹿島さんがYBS『キックス』の中で全米オープン決勝っでセレーナ・ウィリアムスを破り優勝した大坂なおみさんについてトーク。新聞各紙の社説などを読み比べしていました。

女子テニス新時代 大坂なおみSpecial (TJMOOK)

(プチ鹿島)大坂なおみさんといえば、今日の新聞各紙、結構社説で来ているんですよね。たとえば毎日新聞ですと「大坂なおみ選手の快挙 さらなる成長が楽しみだ」って書いてあって。読売も「日本テニス界の悲願達成だ」っていうのがあって。「劇的な快挙に喝采を送る」。これは産経新聞ですね。やっぱり各紙揃って書いているのが「異様なあの雰囲気にも自身を見失わず、集中力を切らさなかったのは立派だ」。これ、毎日新聞です。まあ、完全アウェーなんて言われてね。読売新聞は「特筆すべきは冷静さを失わない精神力だ」って書いてあるんです。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)産経新聞もそうですね。「女王を相手に堂々と打ち勝ったパワー、精神的成長」っていうのを書いていますね。で、僕が「ああ、なるほどな」って思ったのは東京新聞も「揺るがない心を作る」って。それで勝ったという。それでコーチについて触れている新聞も多いんですね。昨年12月からコーチに付いたドイツ人のサーシャ・バイン氏は選手の視線に下りて寄り添い、逆境に立った時こそ自分を信じて我慢することの大切さを粘り強く教えたという。これ、サンケイスポーツの9月10日。「躍進の裏に敏腕コーチ」ということで。どのへんが敏腕かというと、できるだけ楽しくポジティブな雰囲気を作ろうと思っているということで。それまでは比較的練習嫌いで引っ込み思案の正確だった大坂選手、ネガティブにとらえてしまうところをポジティブにやっていこうよっていう風に、メンタルのところから変えたというんですね。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)だから、そのコーチについて触れている社説が多かったんです。で、それを受けてもう1回、さっきの東京新聞の社説に戻ります。コーチのことを書いて次。「日本は暴力やパワハラを伴う指導が次々と表面化し、スポーツが人としての尊厳を傷つけるという誤った認識さえ抱きかねない状況だ。今回の快挙はコーチの本来あるべき姿を示したことでも意義あるものとなった」という。たしかにそうですね。

(塩澤未佳子)ああーっ!

(プチ鹿島)いま、たしかにスポーツのコーチって言ったらそれこそネガティブな話題しかないですもんね。暴力とかさ。まるっきり逆じゃん。このサーシャ・バインコーチがやっていることと。だからやっぱりもうスポーツとは……みたいな。そういうものを考えるきっかけになってきているのかなって。もうスパルタとかさ、精神論とかじゃなくて、もっと楽しんでいこうよっていう。

(塩澤未佳子)その選手を伸ばすような。

(プチ鹿島)で、「じゃあ実際にそれで結果が残せるのか?」みたいなことを思う人もいると思うけど、大坂さんは結果を残しましたからね。だからそういう意味で、いまのパワハラ、暴力というコーチ問題と一緒に書いてきた東京新聞、なるほどなと思いました。あともうひとつ、僕が気になったのは産経新聞の「劇的な快挙に喝采を送る」っていう。まあ、いいじゃないですか。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)ただここなんですよね。大坂なおみさんについて、こう書いているんです。「日本語は少し怪しいが、大会後に今最も食べたいものを聞かれると、トンカツ、カツ丼、カツカレー、デザートに抹茶アイスと答えた。素顔は日本の少女である」っていう。「日本語は少し怪しいが」っていう……で、「素顔は日本の少女である」って。なんかちょっと僕、大きなお世話じゃない?って思うんですけどね。

「日本語は少し怪しいが」「素顔は日本の少女である」(産経新聞)

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)「日本語は少し怪しい」ってそれはあなたからの見方で。たとえば毎日新聞はこう書いているんです。「大会中も海外メディアからアイデンティティーについて問われると……」。まあ、二重国籍についてですね。3歳でアメリカに移り、日本とアメリカ双方の国籍を持っているわけですから。「……アイデンティティーについて問われると、『私は日本の文化の中で育った』と愛着を口にした」という。で、毎日新聞はこう書いているんです。「人種や言葉の共通性だけではくくれない新しい日本人像を大坂選手は示している」という。まあ、そうですよね。別に「普通に日本語をしゃべれる。だから日本人だ」っていうことじゃなくていいじゃない? 言葉が別にカタコトでも。それで「私は日本の文化の中で育った」って大坂選手が言っているんだったら、それはもうめちゃくちゃ日本人じゃないですか。

(塩澤未佳子)それでいいじゃないですか。

(プチ鹿島)だけど一方で「日本語は少し怪しいが」みたいなことを社説で書いている新聞もあるんですよ。まあ、もちろんこれは「「日本語は少し怪しいが」って言葉の使い方かもしれないけど、社説で「日本語は少し怪しい」っていうことを書く? 「だけどトンカツとかカツカレーとかを食べて素顔は日本の少女である」ってきれいに落としたつもりなんでしょうけど。「素顔は」っていうことは、じゃあ見えているものは違うの?っていう風に、どうしても僕はそこに引っかかるんですよね。で、最後はこう書いてあるんです。「スポーツの世界だけではない。来日外国人を含め、さまざまな国籍、人種の人々が国内に暮らす。それが健全なものである限り、あらゆる差別、偏見から解き放たれる。そんな社会でありたい」って。

だから毎日新聞と同じようなことを書いているように見えるんですけども、「それが健全なものである限り」っていうその「健全さ」っていうフィルターはじゃあ、技能実習生とかで日本に来て、いま在留期間は最長で5年じゃないですか。で、来年さらに5年で最長10年いられることになるんですよ。それで日本に家族とかも連れてきてはいけないし、日本語をちゃんとマスターしていなくても、「いや、しゃべれなくてもいいんだよ」みたいな、そういうシステムが進んでいるんですよ。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)これ、どういうことか?っていうと、日本の一緒の社会で暮らそうっていう意識がないんですよね。「労働力だけ置いていって」っていう。それで5年、10年たったら「うん、まあ日本語も学べていないし、家族もいないよね? じゃあ、お帰りください」みたいな、そういうシステムなんですよね。実際にもう5年住んでいるんですよ。で、いま動いているのは来年からはさらに5年。計10年日本にいることになるのに、家族も来ない。日本語も別にカタコトでいいみたいな、そういうのなんですよ。だから労働力しかほしくないっていうんですよ。それで「移民は入れません」って言っているんですよ。でも技能実習生という名目で、そういう形で労働力だけ使っちゃっているんですよ。むしろこれっていびつじゃないですか?

(塩澤未佳子)すごい勝手ですね。

(プチ鹿島)でも、「それが健全なものである限り」って……だからそういうちゃんとしたルートで来た人はいろいろと国内で暮らしているわけだから「それが健全なものである限り、あらゆる差別、偏見から解き放たれる。そんな社会でありたい」って言っているんですけども。でも、そのフィルターを通って住んでいるっていう風に見ちゃうと、そもそもそれはどうなの?っていう風に僕は思っちゃうんですけども。

(塩澤未佳子)はー!

(プチ鹿島)だからこれ、ずっと取材している記者の方にも僕、聞いたことだから。だって人間ですよ。5年、10年暮らしているのに……ということは、働いている以外のプライベートな時間ってあるわけじゃないですか。街にお買い物に行ったりとか。

(塩澤未佳子)少しは休みもほしいし。

(プチ鹿島)そういう時に一緒に受け入れる文化、システムっていうのはまだないっていうんですよ。だけど、日本語もそんなできなくていいです。家族も連れてこないでください。じゃあ、5年、10年働いて……っていう。それ、労働力だけじゃん。それが健全なものか?っていうのは僕はすごく疑問に、特に最近は思いますよ。

(塩澤未佳子)ねえ。健全なとは言えない感じがする。

(プチ鹿島)だからちょっと社説を読むと、細かい表現なんですけどちょっとザワッとするところもあったなって。「日本語は少し怪しいが」っていうのは大きなお世話だと思いますよ。それが社説読み比べの面白いところで、さっきと対になっているわけですよ。だって「人種や言葉の共通性だけではくくれない新しい日本人像を大坂選手は示している」って毎日新聞は書いていて。まあ、そうだろうなって思うんですよ。だから日本語がしゃべれるからとか……だからそこだけじゃないと思うんですよね。

だってそう言っている割には「大坂なおみ、快挙だ!」って言っているわけじゃないですか。なんか都合のいいところだけ利用して……これも技能実習生システムのいいとこ取りみたいな感じがして僕はザワッとしたんですけどね。というところです。

<書き起こしおわり>

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