プチ鹿島『水曜日のダウンタウン』おぼん・こぼん解散ドッキリを語る

プチ鹿島 水曜日のダウンタウン おぼん・こぼん解散ドッキリを語る YBSキックス

プチ鹿島さんがYBS『キックス』の中で『水曜日のダウンタウン』で放送されたベテラン芸人おぼん・こぼん師匠解散ドッキリについて話していました。

(プチ鹿島)さあ、最近いろんなものが点と点がつながって線になる面白さっていうのを感じていまして。今日はそんなお話をさせていただこうかと思うんですが。先ほどもちょっとお話したように、有楽町のよみうりホールというところで『東京ポッド許可局』のライブをやらせていただいたんですね。で、その中でいつものラジオと同じように、3人で論を語るコーナーがあったんですよ。それにひとつの売りなんですけども。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)で、それって本当にその日の気分っていうか、舞台袖で直前まで「今日、何を話す?」みたいなことを決めて舞台に出るわけですね。

(塩澤未佳子)すごいですね。直前ぐらいで。

(プチ鹿島)本当にそのリアルな気持ちを3人、大切にしたいんでね。で、マキタさんが舞台に出て、なにを言うのかな?って思っていたら、楽屋でもチラッと話していたんですけど。「ああ、やっぱりこれ来たか」っていうのもあって。それは悪意について。つまり、人間ってみんな悪意を持っているじゃないですか。ただ、それがエンターテイメントに関してはその悪意が意地悪とか過剰さとか、ちょっとかなり偏ったものであったとすればするほど面白かったものってあったりするじゃないですか。

(塩澤未佳子)ああー。

(プチ鹿島)あと、人間って喜怒哀楽がありますけども。たとえば喜怒哀楽の「怒」っていう感情の動きの方がなにかを表現しやすかったりもするじゃないですか。そういうものがいま、逆にテレビでどんどんどんどんできなくなってきて。こういうのってどうすればいいんだろうね?っていう、マキタさんの問題提起であり、疑問であり。それをちょっと話さないか?って、そういう形になったんですよ。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)で、来た人は僕らがああだこうだと話していたっていうのがあると思うんですけども。それが終わって、じゃあ今度、週が明けて月曜日。つまり昨日、また許可局の収録の予定があったんですよ。これ、隔週でやっていますので。で、その時に「あの番組について話さない?」っていうのもチラッと、イベントが終わって楽屋で出ていたのが……ご覧になった方もいらっしゃいますかね? 『水曜日のダウンタウン』という番組。そこでナイツさんがプレゼンをした「芸人解散ドッキリ 師匠クラスの方が切ない説」っていうのを2月27日に放送したんですよ。それがまあ面白くて、話題を呼んで。その話をしようよっていうので昨日、急遽録って。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)それで東京では昨日の夜に流したんですよね。当日に録って当日の夜に流すってよっぽどのことで。基本はしないんですけど、やっぱり熱いうちに流した方がいいだろうって。イベントに来てくれた方もよろこぶからって。で、それを流したわけです。これ、どういうことか?っていうと、芸人の解散ってしょっちゅうあるじゃないですか。特に多いのが若いコンビとか。あとは売れないコンビとかね。で、方向性を変えるため、もしくはお笑い感が合わないために解散をする。僕もしたことがありますよ。

(塩澤未佳子)ええ、ええ。

(プチ鹿島)その解散っていろんなパターンがあるんですよね。本当に仲違いのパターン、もしくは僕の場合だったらもう相方が夢を持っちゃって。突然「パイロットになりたい」とか言い出して。バカキャラだったから止められなかったりする。じゃあ、もう快く送り出すしかないっていうパターンとか、いろいろ解散はあるんですよ。だけどこれ、若いからできるんであって、大御所の40年、50年のキャリアの名前の知れた師匠が「もうそろそろ辛いから解散しようや」ってどっちから切り出したら、それは切ないんじゃないか?っていう、まあドッキリなんですよね。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)コンビ同士で解散ドッキリを仕掛けてもらうっていう、そういう説だったんです。そしたらやっぱり二組目に出てきたのがおぼん・こぼん師匠。僕も小学生時代からテレビで見ていた、面白くて大好きなコンビなんですけども。ナイツさんによるとそのおぼん・こぼんさん、舞台では息がぴったりなんですけど、8年間、私生活。楽屋では話していないんですって。

(塩澤未佳子)ああー。

(プチ鹿島)それぐらい仲が悪いんですって。でも舞台では息がぴったりなんですよ。だからそこはプロ、すげえなっていうところなんですけど。それで、そのおぼん師匠。体の大きい方ですね。その方からこぼん師匠に解散を打ち明けてもらう。偽の企画ですよ。というバラエティーなんです。そしたら、解散の話は全然出ずに、相手への批判……「ちょっと、あれについて謝ってくれる?」とか、そういう話しか出てこないんですよ(笑)。そりゃそうですよね。8年ぶりに話すわけですから。

(塩澤未佳子)うわーっ!

(プチ鹿島)だからやっぱりそこはベテランで息がぴったりだから、口論も息がぴったりでテンポよく進んでいくわけですよね。で、最終的に仕掛けられた側のこぼん師匠の方が「もういいよ、解散で」みたいな感じになって。「ちょっとちょっと、待ってください!」っていう感じでナイツさんが入ってきて、そのまま企画が終わるんですよ(笑)。

(塩澤未佳子)うわーっ!(笑)。

(プチ鹿島)それがたまらなくてね。なんかサンキュータツオによると、タツオはいま、浅草の寄席にもコンビで出ていますから。師匠方は「あんな番組であんな企画をやっちゃダメだろう!」ってすごく激怒している師匠もいらっしゃるんですって(笑)。

(塩澤未佳子)アハハハハハッ! 大変(笑)。

(プチ鹿島)で、それについてどう思った?っていう、そういうお話なんですけどね。で、僕はその『水曜日のダウンタウン』を見る前に、マツコ・デラックスさんのコラムを読んだんですよ。自分が連載している雑誌があって、そこにマツコさんの連載もあるんで読んでいたんですよ。そしたらいまの時代についてマツコさんが語っているのがあって。「なるほどな」って思った一節があって。やっぱりほら、「いまはシャレがわかっていない、シャレにならないっていう。そういう人が大きな声を持つ時代だ」って言うんですよ。

(塩澤未佳子)うんうん。

(プチ鹿島)で、「『そんなまた……シャレがわかってねえな。息苦しくてつまらない世の中になったな』ってついつい、表現者側は愚痴を言いがちなんだけども、それはもうナンセンスだ。シャレがわからない人がいるという前提で、その縛られたルールの中で面白いものをやっていかなくちゃいけないんだ」っていう風にマツコさんは言っているわけ。これ、すごくないですか? 「なんだよ、本当にシャレがわかってねえな」とかついつい言いたくなるじゃないですか。

(塩澤未佳子)そうですね。

(プチ鹿島)実際にマツコさんも具体例を言っていて。たとえば、女子アナをいじる。ネタにする。そうすると、その女子アナが反撃してきて。それを何回か、時間をかけて行うことによってその2人は抗争をしているように見えて。で、その抗争自体が実は面白く番組を盛り上げていくっていう、そういうような形ってあるじゃないですか。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)だけど、その途中でネットニュースが「マツコ、あの女子アナを批判」みたいなことを、結構シリアスに行間のないまま書いてしまうと、それを番組を見ていない人がそのまま読んで、真面目な人が「ああ、マツコはあの女子アナを嫌いなんだ」って。そこでもう話が終わってしまうから、いわゆるそういう抗争というか、プロレスで言うところの「アングル」というのができないんだって。マツコさんが「プロレスで言うアングルがいまの時代はできないのよね」って言っているわけ。

(塩澤未佳子)ええ、ええ。

(プチ鹿島)でも、「そういう風に行間の読めない、シャレのわからないお客さんがいるんだ。それはもうしょうがない」っていう風に割り切っているんですよ。「だからそういう方法は捨てて、違う方法で面白くしていなかくてはいけない」っていう。そういう意味で「アングル」っていう言葉を使っているんです。で、マツコさんもプロレスが好きでしょうけど、僕もプロレスが好きなんで。アングルってあんまり実は人前で簡単には使いたくない言葉なんですよ。

(塩澤未佳子)ふーん。

シャレがわからない人がいることを前提にする

(プチ鹿島)っていうのは、アングルっていま言ったようにレスラー同士……たとえば猪木さんとタイガー・ジェット・シンの抗争とかね。じゃあ、次は猪木さんにこの外国人を当てようとか、そういう抗争の図をアングルって言うんですよ。で、2人がどんどんどんどん相手をぶちのめす。それにやり返す。やり返される。それでお客さんがヒートアップする。じゃあ、東京でやったら次は大阪で。その次は九州で……って。それで全国を回れるわけですよ。で、「これはいいアングルだ」とか「悪いアングルだ」とか。そういう風な業界言葉なんですよ。

(塩澤未佳子)へー。

(プチ鹿島)だけどこれ、間違って使うと「ああ、プロレスってただのそういう、最初から構図ができているショーなんだ」とか「八百長なんだ」みたいな感じで。それこそさっきのネットニュースを解釈する人みたいに簡単にとらえられてしまう場合があるので、あんまりアングルっていう言葉は使わないようにしているんですけど。ただマツコさんがこの雑誌で「女子アナとのアングルは成り立たない世の中だ」って言っている意味のアングルは正しい使い方なんですよ。要は相手を腐しているように見えて、お互いに上がっていく。認知度が上がっていく。で、その番組が盛り上がれば、お互いにいいわけじゃないですか。そういう意味でアングルって使っていたので、マツコさんの使い方は正しいんですよ。ただ、それができない時代だと。

(塩澤未佳子)うんうん。

(プチ鹿島)さて、それを読んでいたのでもう一度、話を戻しますと……おぼん・こぼん師匠の解散ドッキリですね。これ、僕はしびれたんですよ。だっていまドッキリってどの番組でもよくやっているじゃないですか。というのは、たぶん安心・安全の企画だからです。予定調和で最後に「テッテレーッ!」って看板を持って出ていけば、なんかそれだけで1本できるじゃないですか。

(塩澤未佳子)そうですね。「なーんだ」って。

(プチ鹿島)だけど今回、『水曜日のダウンタウン』がやったこの大御所の師匠の解散ドッキリっていうのは、ちょっと様子が違ってくるわけですよね。だっておぼん・こぼん師匠はこのドッキリに乗ってきたわけですよ。なぜか。で、解散は最初から切り出さなかった。相手の批判しか言わない。だって8年ぶりに口を聞くわけですから。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)でも、その構図を用意してもらったから逆に話せたわけじゃないですか。

(塩澤未佳子)きっかけになって。

(プチ鹿島)そうそう。そう思うと、アングルっていうものを簡単に構図とかお約束とか予定調和って言っちゃいけないんだなって僕は思ったんですよね。それをむしろ提供して、じゃあリアルな感情をぶつけてくださいと。ドッキリっていうのはあくまでもあなたたちが久しぶりに話し合うきっかけですよって。もしかしたら番組側はそれを見越して与えたのかもしれない。そう考えると、やっぱり最初の話に戻ると、悪意っていうかその人の意地悪な気持ちっていうか、ドス黒いものを見たいという気持ちがドッキリという安心・安全な構図を与えることによってこれだけ面白くなってしまうという。番組側にすごい優秀な仕掛け人がいればですよ。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)ということをまざまざと見せられたんですよね。だからやっぱりこの構図ですよね。で、マツコさんが言ったように、シャレがわからない人がいるから、もういまは決められた新しいルールの中で、新しい面白いことを作っていかなくちゃいけない。むしろこれつながっていたんですよね。やっぱりこれ、簡単なドッキリだと思ったら全然違う、リアルな感情のぶつけ合いを見て。すごく不穏な試合を見てしまって、僕なんかはワクワクドキドキしちゃったんですけど。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)それで人の心をすごくザワザワさせるっていう。新しい形のテレビを見ちゃった気がして。で、これは許可局でも話したことなんですが。今日、日刊スポーツを見たら電波少年のプロデューサーだった土屋敏男さんっていらっしゃるじゃないですか。あの方がインタビューに答えていて。こんなことを言っている。「昔はよかったというのはナンセンスだ。いまはいまの時代で新しいゾーンが絶対にある」ということを今日のインタビューでしゃべっているんですよ。

(塩澤未佳子)うわっ!

土屋敏男さんもマツコさんと同じことを言っている

(プチ鹿島)だからこれ、マツコさんが言っていることと同じじゃない? だからやっぱり最先端をテレビで走っている……まあ、ラジオでもいいですけど。そういう人って「昔はよかった。いまは息苦しくなっちゃって。あれができない、これができない……」っていう、もうその上を行っているんですよね。

(塩澤未佳子)そうね、もうそこじゃないんですね。

(プチ鹿島)規制があるなら、じゃあその中で伸びしろの部分を探すみたいな。それをこの2週間、3週間、いろんなテレビにしろ、今日の日刊スポーツの土屋さんのインタビューにしろ、マツコ・デラックスさんのコラムにしろ、それが全部渾然一体となって。おぼん・こぼん師匠のドッキリにしろ。「ああ、なんか面白い。新しい表現方法っていろいろとあるんだな」って思いましたね。

(塩澤未佳子)そうかー。止まっている場合じゃないですね。

(プチ鹿島)だからおぼん・こぼん師匠はあれにあえて乗っかってきたわけですよね。乗っかって、想像以上の結果を出してくれた。僕はそう解釈しているんですよ。だから当然、いまも普通に舞台に出てらっしゃるということなんです。面白いですね。どこまでが……まあ、あえて言うとアングルで、どこまでが決まっているのかわからない。わからないから面白いんですよね。

(塩澤未佳子)別にはっきりさせなくていいっていう。

(プチ鹿島)どうしてもいま、そうなると「えっ、そうなるとヤラセでしょ? 台本があるんでしょ?」とか、なんでも言いたがる人、いるじゃないですか。

(塩澤未佳子)「どっち?」みたいな(笑)。

(プチ鹿島)どっちかどうかなんて、知らねえよ。その目の前で見たものがドキドキワクワクするんだったら、それでいいじゃねえかって僕は改めて思いましたね。

<書き起こしおわり>

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