町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で行方不明になった16歳の娘を探す父親を描いた映画『search/サーチ』を紹介していました。
?イントロダクション(1)
これまでも多くのスタイルを追求してきた「映画」に、またもや革新的な一本が誕生!なんと100% #全編PC画面 だけで展開される作品が出現。
新人監督の初長編作ながら、2018年のサンダンス映画で上映されるや、たちまち大評判を呼び、観客賞を受賞。#サーチ pic.twitter.com/v8dr1ZxEdF
— 映画『search/サーチ』公式 (@SearchMovieJP) 2018年9月7日
(町山智浩)で、時間がないけど本題に入ります(笑)。『search/サーチ』っていう映画。「検索」っていう意味のタイトルの映画なんですが、これは16歳、女子高校生の娘が突然行方不明になってしまったシングルファーザーがその娘を探す物語なんですけども。映画がですね、そのお父さんが持っているパソコンから一歩も出ないんですよ。パソコンの画面だけをずーっと撮り続けているというすごい不思議な映画なんですね。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、最初はその娘が生まれた頃のビデオをパソコンで編集しているところから始まって、その後に娘のお母さん……だから自分の奥さんが亡くなる前後の話とかをチャットとか、そういうメールとかが次々と画面に出て、それを追っていくんですけども。途中から娘が行方不明になってしまって、そこからがその娘、16歳の娘がいったい何をやっていたのか?っていうのを父親は全然知らないんですよ。
(赤江珠緒)まあ、そうですね。大半の部分がわからなかったりしますね。
(町山智浩)わからないんですけど。で、その娘がパソコンを置いたまま行方不明になってしまったので、パソコンの中で娘が何をやっているのか?っていうことで。本当に運良くパスワードがわかってパソコンの中に入ることができまして。そして、彼女がSNSでやっていることをずっとお父さんが見ていくんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)そうするとね、思っていたのと全然違うんですよ。このお父さんも娘もお母さんも韓国系なんですね。韓国系アメリカ人でサンノゼでIT関係に勤めているらしくて。非常にそこそこリッチで、娘はバイオリンを習っていて優等生だという風にお父さんは思っていたんですね。そしたら、まずバイオリン学校に電話をしてみたら、「いや、もう1年ぐらい来ていません」「それはおかしいよ。毎月何万円かの月謝を娘に渡していたのに」って言うと、「いや、うちは受け取っていません」って言うんですね。その月謝、かなりの額になっているはずなのに、それがどこに行っちゃったのか?
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、娘は学校で友達がいると普通に思っていたら、探っていくと学校には友達がいなかったことがわかってくるんですよ。で、どうも自分が思っていた優秀で真面目な娘というのは虚像で、本当はそのネット世界の中では全然別の人格だったんじゃないか?っていうことがだんだんと見えてくるっていう話なんですよ。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)これはね、娘を持つ人にとっては最悪の悪夢なんですよ。
(赤江珠緒)そうですね。でもなんかリアルな感じもすごくして。
(町山智浩)非常にリアルな映画ですよ。
(赤江珠緒)ねえ。親には追いきれない部分ってありますもんね。
(町山智浩)だってわからないでしょう? Instagramで何をやっているかなんて、全然。Facebookとかいろんなので。そういう怖さを描いているんですけど、この映画がもうひとつ面白いのは、主人公たちが韓国系なんですね。で、監督はインド系なんですよ。だからこれって前も言ったんですけど、いままではありえなかった組み合わせなんですよ。ハリウッドでは。
(赤江珠緒)ああ、そうかそうか。
いままでのハリウッドではありえないキャスティング
(町山智浩)そういう映画は全然客が来ないんだって言われて、キャストは全部白人にさせられていたんですけども、全然そういうこともなくて。普通にちゃんとビジネスにしていますからね。だからいままでみたいに白人の美人女優にしなきゃとかハンサムな俳優にしなきゃみたいなことは全然ないんだということが、非常にいまのアメリカ映画の現状としてわかるんですね。
(赤江珠緒)町山さん、最初パソコンだけの映像がずーっと映画で流れるっていうとね、なんか遠近感がないというか、目が疲れるというか。それで映画として成立するのか?って思ってしまったんですけども、大丈夫なんですか?
(町山智浩)僕もそう思ったんですよ。退屈しちゃうんじゃないか?って思って。でも、そうならないんですよ。これ、上手くてね。たとえばパソコンのスクリーンセーバーとかあるじゃないですか。ああいったものまで演出に使われていくんですよ。あと、マックを立ち上げた時に「ブーン!」っていう音があるじゃないですか。ああいうのまで、エフェクトとして使われていて。もちろん、いまはグーグルマップとかあるじゃないですか。グーグルマップで上から見た風景とかを追いかけることができるわけですよね。そういったものまで全部駆使して、本当に立体的な映画になっているんですよ。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)特に後半はアクションが展開していくんですよ。そういうところすごい、これは全然パソコンというものに縛られるということを利用しながら、逆にそれを面白く使っていて。で、もうひとつね、「最悪の悪夢の映画」って言ったんですけど、最悪の悪夢の映画でもあるんですけども、なんとこの映画は家族全員で揃ってみることができるんですよ。この『search/サーチ』っていう映画は。
(赤江珠緒)ああ、そうですか。ファミリーで見ても大丈夫?
(町山智浩)全然大丈夫です。『search/サーチ』っていう映画は家族全員で見ても大丈夫で、家族全員で見て怖くて。これ、ちょっと映画会社が隠しているから言いたくはないんですけど、言っちゃいますと……恐ろしいけどもこれ、感動するんですよ。この映画は。
(赤江・山里)へー!
(町山智浩)最後、なんと感動が待っていますね。お父さんが子供を連れて行って全然OKですよ、これ。
(赤江珠緒)ああ、そうですか。
(町山智浩)でも、ちゃんと怖いんですよ。で、どうしてそういう映画にしたのか?って聞いたら、「スピルバーグとシャマラン監督を尊敬しているからだ。シャマラン監督の『シックス・センス』とかスピルバーグとかは死ぬほど怖いけど、家族で見れて感動もあるだろう? 全部が両立することは可能なんだということをスピルバーグとシャマランが教えてくれた」って言っていました。M・ナイト・シャマランと同じインド系ですけどね。
(赤江珠緒)ああ、そういう映画なんですね。
(町山智浩)ということでもうすぐ公開かな? 日本では。10月公開ですね。
(赤江珠緒)こちら、10月26日に日本で公開です。
<書き起こしおわり>