町山智浩さんが2021年12月21日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で韓国映画『ただ悪より救いたまえ』を紹介していました。
(町山智浩)それでもう1本、これ香港映画は最近、こういうアクション映画が少なかったんですよ。韓国バイオレンスに押されちゃってたんで、久々の香港バイオレンスなんですけども。それに対して、やっぱり韓国バイオレンスが「今は俺たちだぜ!」って感じでガンとぶつけてくるのは24日、クリスマス公開の『ただ悪より救いたまえ』っていう映画なんですよ。これはすごくて。出演はファン・ジョンミンという人で。この人は『阿修羅』というノワール物ものすごい凶悪な市長を演じてた人なんですけど。
この人が昔、『新しき世界』っていう映画で友情を結んだ潜入刑事を演じた俳優さんがいて。この人はイ・ジョンジェという俳優さんなんですが、その人とまたコンビを結成するんですね。これ、すごいのはイ・ジョンジェって人は『イカゲーム』の人ですよ。
(赤江珠緒)今、大ヒットの。
(町山智浩)『イカゲーム』、見ました?
(山里亮太)見ました。
(町山智浩)あの情けないお父さん。
(山里亮太)年取った母親からお金をくすねてギャンブルに行くような・
(町山智浩)そうそう。それで娘に会いたいんだけども、金がなくて会えなくて。それで殺人ゲームのイカゲームに参加しちゃうかわいそうな、なんていうかリリー・フランキーを若くしたみたいな感じの人。
(山里亮太)ああ、たしかに(笑)。
(町山智浩)あの情けない人がイ・ジョンジェっていう人なんですけど。あの人、実は他の映画ではめちゃくちゃイケメンなんですよ。で、実は筋肉がブリブリなんですよ。体は。
(赤江珠緒)ブリブリって……なるほど(笑)。
ファン・ジョンミン VS イ・ジョンジェ
【上映決定!6/6】殺し合う理由。そんなものは忘れたー。韓国ノワールの新たな傑作の誕生!!『ただ悪より救いたまえ』を1月21日より上映決定!日本人ヤクザを殺した暗殺者が、その報復を誓うヤクザの義兄弟と激しい攻防を繰り広げる。暴走する暗殺者VS凶暴な殺し屋、二つの狂気が激突する! pic.twitter.com/HTN9JAQU9C
— 塚口サンサン劇場 (@sunsuntheater) December 17, 2021
(町山智浩)すごいんです。で、これはまず、ファン・ジョンミンさんはいろんな映画に出ているんで、みんなわかると思うんですけども。『哭声/コクソン』にも出ていますね。この人がね、韓国の政府の下で暗殺とか拷問をやっていたプロなんですね。ところが、もう韓国側がやっぱりそういうのを国としてやってるのはちょっとマズいっていうことで、どこかへ飛べってなって、日本に逃されるんですよ。
その時、奥さんとかになる人もいたんですけど、それを捨てて日本に潜伏しているんですが、日本でもやっぱりその腕を生かして殺し屋をやっていて。で、豊原功補さんが演じるヤクザを暗殺したりしてるんですけれども。その殺し方もすごくて。日本語でね、「静かにしてね、静かにしてね」って言いながら殺していくんですよ。1人、1人。
(赤江珠緒)やめてー!
(町山智浩)怖いんです。このファン・ジョンミンがね。で、そうやっていると韓国から連絡が入ってくるんですよ。で、「どうした?」って言うと、「君の婚約者が実はタイのバンコクにいたんだけど、殺されちゃったんだ。で、実は君の子供を向こうで産んでいて、君の娘は9歳になるんだけど、行方不明になっている。その娘は誘拐されて、どうもタイの子供売買組織にさらわれているらしい。警察と結託したものすごく巨大な子供売買組織がある。そこに君の娘がさらわれている」ってなって。だから、もうこのファン・ジョンミンが暗殺と拷問のプロなんで、娘を探す探すためにタイに入って、片っ端から娘をの手掛かりを追って殺しまくって、壊しまくるんですよ。
(赤江珠緒)わーっ!
(町山智浩)クリスマスでしょう?
(赤江珠緒)いやいやいや(笑)。
(町山智浩)「メリークリスマス!」っていう感じ、しません?
(山里亮太)バイオレンスなんだよな。町山さんのクリスマス。
(町山智浩)ところが、最初にそのファン・ジョンミンが殺したヤクザには、弟がいたんですね。ものすごいその弟が、なんとイ・ジョンジェなんですね。実はそのイ・ジョンジェは完全な殺人マシーンなんですよ。で、「俺の兄貴を殺したのは誰だ!」って片っ端から殺していって拷問をしていくんですね。で、とうとうそのファン・ジョンミンが自分の兄を殺した敵だっていうことに気が付いて。
「彼はバンコクにいるんだ!」ということで、バンコクに彼を追っていくんですよ。で、やはりそのファン・ジョンミンのいる先々で人を殺していくというですね、まあこれはすごいことになっていて。『レイジング・ファイア』もそうですけども、どっちも……その『キングコング対ゴジラ』みたいな話なんですよ。で、他の人たちはみんなキングコングとゴジラの足元で踏み潰される人たちですね。
(山里亮太)ああ、そういうことか……。
(町山智浩)たくさんの人が踏みつぶされてるんですけど。
(赤江珠緒)巻き添えみたいな人がいっぱいいるんだ。
(町山智浩)いっぱいいて。それをキングコングとゴジラは全然気にしていないんですね。で、まあ延々と戦いが続くという、とんでもない映画がこの『ただ悪より救いたまえ』という映画なんですけれども。
(赤江珠緒)これも12月24日から公開。
(町山智浩)12月24日。クリスマス・ダブルバイオレンスですよ!
(山里亮太)フハハハハハハハハッ!
(町山智浩)これね、すごいなと思ったのはさらわれた娘の名前がユミンっていうんですね。だからちゃんとユーミンも入ってるんですよ。
(赤江珠緒)いや、ユーミンを急に入れないで!
(町山智浩)『恋人がサンタクロース』なんですよ、これ。ねえ。サンタが殺しにやってくるっていう感じなんですけども。まあ、すごい。これ、2本続けて見るといいと思いますよ。『レイジング・ファイア』と『ただ悪より救いたまえ』を。でね、数えると……ほら、よく道端で通行人を数えている人がいますけども。あれを持っていって何人死ぬか、数えるといいと思いますよ。すっごい死ぬから。で、この『ただ悪より救いたまえ』の方も手榴弾をやたらと使うんですよ。手榴弾をバンバン投げるんですよね。これを見ながら、「韓国映画と香港映画、すごいわ!」って。日本映画に何が足りないのか、よくわかりましたね。日本映画に足りないものは、手榴弾です!
(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ!
(山里亮太)ああ、シンプルにね!
日本映画に足りないものは、手榴弾
(町山智浩)手榴弾が足りないんだってことが本当によくわかった!
(赤江珠緒)手榴弾、たしかに最近、あんまり見ないな。
(山里亮太)出しどころ、難しくない?
(町山智浩)この1年ぐらい、いろんあ映画があったじゃないですか。で、思い出してみると日本映画で手榴弾がどれだけ爆発したか?
(山里亮太)日本映画でヒットしたもので。
(町山智浩)ほとんど思い出せないですよ。手榴弾。こういうことで日本映画はいいんだろうか? 手榴弾なしに日本映画、これからやっていくんだろうか……俺、今日ちょっと酒が入ってますね。すいませんね(笑)。
(赤江珠緒)不思議なところにたどり着いた結論ですよ、町山さん(笑)。
(町山智浩)いや、本当にこれは勝てないわと思いましたよ。
(赤江珠緒)まあ、それぐらいもうすごいアクション映画になっちゃってるんだ。
(町山智浩)これでね、デートで『レイジング・ファイア』と『ただ悪より救いたまえ』を見てね、「ああ、もう私、メロメロ! どこか行きましょう!」ってなりますよ、これ。
(赤江珠緒)なるかな?(笑)。
(山里亮太)でもそうなったら、結構長く付き合えると思うよ? 趣味ドンピシャだから。
(町山智浩)で、ボコボコにされたりするんですよね(笑)。彼女が「やる?」とか言ってボコボコにされて(笑)。というね、まあすっごい映画2本ですね。
(赤江珠緒)そうですね。今、聞いただけですごいなっていうことがわかりましたね。
『ただ悪より救いたまえ』予告
<書き起こしおわり>