丸屋九兵衛 タトゥー文化の広がりとサモア・ポリネシア文化を語る

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丸屋九兵衛さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。いまや全世界的にファッションとして定着したタトゥー文化の広がりについて、サモア・ポリネシア・太平洋諸島文化の影響を絡めて話していました。

(宇多丸)要はタトゥー……いま、ファッションとして世界的にある時期から急速にワーッと定着していったじゃないですか。それもやっぱりサモアルーツなんですか?

(丸屋九兵衛)そうなんですよ。これはね、まさに90年前後の時期。ブーヤー・トライブがかなり人気になっていた時期で。ブーヤー・トライブとデジタル・アンダーグラウンドとクイーン・ラティファが一緒にツアーをしていたんですって。

(宇多丸)ああー。デジタルとクイーン・ラティファ、その2組は日本に来てましたよね。

(丸屋九兵衛)で、その時にクイーン・ラティファのカバン持ちだったのがノーティ・バイ・ネイチャーで。デジタル・アンダーグラウンドの弟子だったのが2パックで。

(宇多丸)弟子っていうか、まもなく『Same Song』でデビューする2パックが。後のスーパースターですけども。

(丸屋九兵衛)で、その頃はまだまだ、丁稚どんみたいな扱いだったんで。だからその2人がすごく親しくなって。だからノーティ・バイ・ネイチャーのトレッチと2パックが親しくなり、1本のマリファナを2人で分け合った思い出とかがあるんですって。

(宇多丸)ああー、なるほどね。

(丸屋九兵衛)だから後に、その2パックが亡くなった後、トレッチが2パックのタトゥーを入れたりするわけなんですが。

(宇多丸)へー! そして僕が日本に来たデジタル・アンダーグラウンドをインタビューした時、いちばんやさしくちゃんと接してくれたのが2パックだったっていう、そういう話がありますけども。

(丸屋九兵衛)いい話だなー。で、その時にね、彼ら黒人はそれほどタトゥーという文化に馴染みがなかったんですよ。

(宇垣美里)そうなんですか?

(丸屋九兵衛)そうなの。

(宇多丸)たしかに昔、そんなに……。

(丸屋九兵衛)タトゥー入れているやつとか、いなかったじゃない? だからアレン・アイバーソンぐらいからNBA選手も入れるようになり、いまはNBA見てタトゥーを入れてないやつの方が珍しいぐらいになっちゃいましたけども。昔、90年代前半ぐらいは……。

(宇多丸)本当だな。結構悪ノリなやつで脱ぐのが売りのやつでも別に入ってなかった。たしかに。

(宇垣美里)そうなんですね。そこからのルーツなんですね。

(丸屋九兵衛)そこで彼ら黒人はタトゥーっていうのもに慣れていなかったから、ブーヤー・トライブを見て「なんだ、こりゃ?」って思ったという。それでつい、タトゥーというものを入れてしまったのが2パックという青年で。

(宇多丸)たしかに! その2パックはすごく入れ墨が印象的で。お腹に「THUG LIFE」ってドーンとね。

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2パックの「THUG LIFE」

(丸屋九兵衛)しかも上半身裸になるし。

(宇多丸)2パック以前はたしかにそこまで入れ墨押しの人、いなかったかもしれない。

(丸屋九兵衛)で、2パックでなんだかタトゥーが入っているのがかっこいいかも……っていう風になり。で、96年に2パックが亡くなって伝説化してからはこれが憧れのモード、標準になっていった。

(宇多丸)だからサグっていうかちょっとギャングっぽいというか、不良っぽいことやるならタトゥーも入れるっしょって……。

(丸屋九兵衛)いまや25歳未満のラッパーで顔にタトゥーが入ってないやつはいないぐらいですよね。

(宇垣美里)顔!?

(宇多丸)いや、もうすごいですよ。いまみんなデフォルトでいますよ。

(丸屋九兵衛)リル・ウェインが「俺はカーターだから」って眉間に「C」って入れた時に我々はびっくりしましたけども。あれ、普通になっちゃいましたよ。本当に。

(宇多丸)フフフ、うんうん。そうですね。

(宇垣美里)その文化も全てサモア・ポリネシアから来ている?

(宇多丸)ルーツから言えば。つまり、ブーヤー・トライブに影響を受けた2パック経由で広まったものだっていう。えっ、これっていいんですか? 正史として語っていいラインですか?

(丸屋九兵衛)はい。ブーヤー・トライブが言っていました。

(宇多丸)ああ、そうですか。へー!

(宇垣美里)入れ墨とかってそれこそ、アクアマンみたいなこうウワーッて入っているのとかですよね。ああいうイメージで。

(丸屋九兵衛)そう。あれはもともとはポリネシアとか太平洋諸島系の文化なんですよね。

(宇多丸)たしかにでも、本当にいまそういう風に言われるまで、ある時期まではそんな別にタトゥーってヒップホップの中には全然なかったのに。あるところから急に来たなって思ったんだけど。

(丸屋九兵衛)だからラップ界でもあれよりも年上の人たちがやたらエグいタトゥーを入れているのを見ると……たとえばドクター・ドレーが手の甲に蜘蛛だか蜘蛛の巣だかが入っているのを見ると「おじさん、そんなところで無理しなくても……」っていう(笑)。

(宇多丸)トレンドを(笑)。

(宇垣美里)トレンドを取り入れちゃった(笑)。

(丸屋九兵衛)「2パックよりもだいぶ年上じゃないか」って。

(宇多丸)RHYMESTERがものすごく入れてくるみたいなね。「FG4LIFE」みたいなことを入れて。

(丸屋九兵衛)そういうこと(笑)。あとMCエイトに会った時、ほっぺたに祈る手みたいなのが入っていて。「お兄さんも2パックよりも年上じゃなかったかしら?」とか思ったりもするわけですね。

(宇多丸)でもそんぐらい……さっきの編み込みの髪もそうですけど、もういまとなってはサモアン文化だということを意識しない級にまで浸透しているということですよね。

(丸屋九兵衛)そうですね。で、そもそもその「タトゥー」という言葉自体が英語らしくない響きを帯びているじゃないですか。

(宇多丸)たしかに。

(丸屋九兵衛)これは本来はサモア語で「タタウ(Tatau)」っていう。ああいった彫り物のことをタタウって言ったんです。なぜなら、機械彫りじゃなくてタンタンタン……って叩いて彫る方式のあれ。あれが彼らのオノマトペで「タタ、タタッ、タタウ……」って。

(宇垣美里)音として。「タタウ」って。

(宇多丸)えっ、マジで?

(丸屋九兵衛)そう。それが英語でタトゥーになったっていう。

(宇多丸)へー! タトゥーの語源、そうなんだ!

(宇垣美里)へー! タタウ!

「タトゥー」の語源はサモア語の「タタウ」

(宇多丸)じゃあそもそも、日本だとネガティブなイメージがあるのは罪人に入れていたからとかっていうのはあるけど、ちゃんとサモア文化だったら由緒正しいものだから。

(宇垣美里)まあ成人の印とかそういうものですよね。

(宇多丸)「タトゥー」って言った時にはネガティブなニュアンスがないっていうのは全く間違っていないっていうことなんですね。

(丸屋九兵衛)そうなんです。で、ロック様に至っては、ロック様の左胸から肩にかけて入っているあれは見る人が見ればその家の歴史がわかるぐらいのものらしいですね。

(宇多丸)ああーっ! そのファミリールーツが入っているといえば、ごめんなさいね。ロシアンマフィアなんかもさ、『イースタン・プロミス』なんて映画を見ると、それ自体に全部意味があって……みたいに言うけど。あれはあれでまた別ルート?

(丸屋九兵衛)別ルートなんだと思います。

(宇垣美里)でも体に歴史を刻むみたいな、そういう意味があるんですかね。

(丸屋九兵衛)太平洋諸島の文化には往々にしてそれがあるっていう。

(宇多丸)まあ『イースタン・プロミス』はロシアンマフィアだから、こっちは割とダーティーな方だけど、タタウに関してはもう完全に……。

(丸屋九兵衛)まあ太平洋諸島文化の王道にあると言ってもいいんじゃないですかね。

(宇垣美里)だから本当に文化なんですよね。入れるっていうのは。

(宇多丸)なるほどね。でもタタウっていう語源を聞くと「ああっ!」ってなりますね。

(宇垣美里)ねえ。たしかに考えてみると英語っぽくないってなりますね。

(丸屋九兵衛)さっきの「マナ」だって英語っぽくないでしょう?

(宇多丸)そうですね。

(宇垣美里)でもマナって聞いたことある。そう言われると「ああ、なるほど!」ってなりますね。

(宇多丸)目からウロコでございます。

<書き起こしおわり>

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