吉田豪と伊藤麻希 アイドルと鬱を語る

吉田豪『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督インタビューを語る SHOWROOM

(吉田豪)覚悟があったのと、うん。(コメントを読む)「ブリッジとか大変」。いや、大変に決まっていますよね。

(伊藤麻希)ブリッジ? ああ、首を鍛えるやつだ。ああーっ! うちね、それしないんですよ。

(吉田豪)そうなの?

(伊藤麻希)そう。なんか首の腹筋みたいなのはするけど、ブリッジでは鍛えない。

(吉田豪)へー! それはそういうスープレックス系の技とか使わない限りはそんなに必要ないっていう?

(伊藤麻希)うんうん。そうなんだよ。つかわないからさ。ある程度っていう感じ。

(吉田豪)基礎的な技中心でやってる人だから、そこは別にいらないっていう? ふーん。勉強になるな。

(伊藤麻希)そうそう。人によって違う。

(吉田豪)当然、投げ技やる人はかなり?

(伊藤麻希)いっぱい力を使うから、そこを重点的に……みたいな。

(吉田豪)でも本当、さっきのサイン会の話とか。本当にこの仕事でよかったと思うのはそういうところで。僕らが本を出しても、それこそたとえば20人ぐらい同じ物書きが並んで個人握手みたいにはならないじゃない? 個人サイン会。

(伊藤麻希)そっかー!

(吉田豪)列の違いではっきりするみたいな残酷なやつ。そんなもの食らわないし。僕ら、アイドルとかで「ある程度完成した人よりは、してない人の方が面白い」とかしょっちゅう言うけど、物書きをそのジャンルで見られたら地獄じゃないか?っていう(笑)。「もう吉田豪は完成しちゃったから、デビューしたてのあっちの方がいいよ」とか。そう思うと、いい仕事を選んだなと思って。

(伊藤麻希)たしかに。へー!

(吉田豪)そして、アイドルとかは大変な職業だなと本当に思うんですよ。

(伊藤麻希)ああ、それは初めて聞いた。そうだね。たしかに。

(吉田豪)何をどう頑張ればいいのか、わからないっていう。歌とかダンスを頑張ったら「つまんなくなった」とか言われたりするんですよ。どうすりゃいいんだ?っていう。

(伊藤麻希)たしかにね。いや、かわいそうよね。そうやって言われるアイドル。かわいそう。

(吉田豪)かわいそうですよ。まあ、それを言っている側でもありますからね。「下手な方がよかったのにな」って。これ、アイドルは何をしていいのか分からなくなりますよ。僕、『ラストアイドル』っていう番組の審査員をやっているじゃないですか。で、僕はやっぱり完成度よりは未完成な子の伸びしろみたいなので評価しがちで。だからこそ炎上しやすいんですけど。それによって、受けている子とかが「何が正解かわかんなくなった」って悩んでいるらしくて。わかるんですよ。たしかに。

(伊藤麻希)ああーっ、そうか! まあ、そうよね。

(吉田豪)「えっ、頑張ってレベルを上げることが正解じゃなかったんですか?」っていう。

(伊藤麻希)まあ、たしかに。たしかに。

(吉田豪)まあ、頑張ってレベルを上げていこうとすることは美しいし、それはいいんだけど、上がりきっちゃたものと、これからどれくらい上がるかわかんないものを比べたら、やっぱりそっちの方が……ってなっちゃうんですよ。

(伊藤麻希)そうだよね。楽しみよね。たしかになー。あとさ、伊藤は個人的にね、なんかその歌とダンスでごまかしやつがめっちゃ嫌いなんだよ。

(吉田豪)「ごまかすやつ」というと? ライブとかなんとなく?

(伊藤麻希)なんだろう。自分というものを歌とダンスで終わらせるやつが嫌いなの。なんか、その他にも私は見たいの。あなたという人格を。人間性を見たいの。だから歌とダンスができたところで「はい、おわり」っていうのはやめていただきたいの。

(吉田豪)もっと何かをライブでも出せっていうこと?

(伊藤麻希)ああ、そうです。もっと思っていることとか、ちゃんと言葉に出してほしいの。みんな、歌とダンスで完成ってなるから、MCとか全く面白くなくて、全然惹かれない。

(吉田豪)ああー。あの、なんとなくもうパターン化したMCっていうのがすごいつまらないじゃないですか。

歌とダンス以外も磨くべき

(伊藤麻希)そうそうそう! だって本当にさ、売れたいならさ、やっぱりMCとかも絶対、「今日来ているアイドルの中でいちばん面白いこと、熱いことを言ってやろう!」みたいなモチベーションになるじゃん。なんか、そういうのをほしいんだよね。

(伊藤麻希)わかる。すごいわかる。そう。特に僕、アイドルイベントとかの司会で出ることが多くて。「えっ、なにを振ってもそのぐらいの返しなの?」みたいなことがたまにあるわけですよ。あの、怒られないようなトークだけをする感じとか。

(伊藤麻希)そうそうそう! 「えっ、本当に面白くないから、そういうのはやめな!」って思うの。

(よし」)そう。怒られても何か結果出した方が絶対得だからっていう。

(伊藤麻希)そうそう。怒られても、そこから軌道修正していけばいいんだから。

(吉田豪)笑いを取れば怒られなかったりもするし。

(伊藤麻希)そうそうそう! だから本当にね、置きにいくアイドル、大嫌いなのよ! そうなんだよねー。

(吉田豪)フハハハハハッ! わかるわかる(笑)。すごいわかる。

(伊藤麻希)やっぱりそういうところだよね。

(吉田豪)だからそれで「ああ、この子おもしろいな」ってなったらこっちもさらに仕事を振ったりとかあるし。結果を出せばいくらでもなんとかなるのに、なんで無難に終わらせようとするんだろう?っていう。

(伊藤麻希)そうなんだよ。そうそう。だって歌とダンスだけじゃあ物足りないよね。みんなできるんだから。

(吉田豪)それでよっぽど才能があるんだったらわかりますよ。ものすごい上手いとかものすごいダンスにキレがあるとかならまだそれでいいものを、あなたは武器を持っていないのになんで他の武器を磨こうとしないの?っていう。

(伊藤麻希)そうなんだよ。そのね、貪欲さがほしいんだよ。ねえ。だって若いからなんでもできるのにさ、そうなんだよね。みんな頭が固いよね。うん。だからもっとね、 柔軟性のあるアイドルを私は見たいな。

(吉田豪)伊藤ちゃんは当然、その武器が自分は足りないと思っていたから、トークなり何なりで結果を出さなきゃって思ったわけですよね?

(伊藤麻希)そうそう。どっちかと言うと、そう。だからと言って歌とダンスを放棄したわけでなかった。そっちも一応がんばるみたいな。でも、それで戦おうとは思っていなかった。うん。

(吉田豪)これでトップとかに立てるほどのものでもないし、実際に人気もないし。じゃあ、どうしよう?っていう。

(伊藤麻希)うん、そう。だからそこらへんも捨てて。私はじゃあ、しゃべりが得意だから、しゃべりとかを磨いていこうってなったね。。

(吉田豪)(コメントを読む)「伊藤ちゃんはトーク受けなくてへこむんでしょう?」。はい、僕の大好きなエピソードですね。もともとT-Palette Recordsっていうタワーレコードのレーベルで絡んだりもしていたんですけど、そのT-Palette関係のグループが3組出た光が丘でのイベントがありまして、僕が司会をしていて。ちょうど伊藤ちゃんが鬱になったぐらいの頃ですかね? 病んでた時期だったんですよね。

(伊藤麻希)そうなんだよ。

(吉田豪)病んでた時期で、面白かった印象だけがあるから、いつものように伊藤ちゃんをいじりに行ったら、なんかいまいちな滑り方をしたんですよね。そしたらステージ上でもう表情がなくなっていく感じで(笑)。

(伊藤麻希)いやー、アマチュアだなー!

(吉田豪)ステージ上で。で、他のメンバーがフォローに入る感じで(笑)。「あれっ、どうした?」って思って。でも別にそんなに大事故でもなかったんですよ。全然そんなひどい滑り方でもなくて、それでよかったんだけど休憩中になぜか僕の控室に泣きながら現れて。「あのっ、さ、さっきはすびまぜんでしだ……(泣)。さっきはすべっちゃって、すみまぜんでしだ……(泣)」って。なにそれ?っていう。もう爆笑して(笑)。

(伊藤麻希)本当だよね(笑)。

(吉田豪)はじめて見ましたよ。アイドルがMCですべって謝罪に来るっていうのは。これまで相当なアイドルと絡んできたけど、そんなのはじめて見たから面白くて。「あの、写真撮っていいっすか?」って言って泣いているのをバンバン写真に撮って(笑)。「上げていいっすか?」って、泣きながら「いいです、上げてください(泣)」って言っていて(笑)。

(伊藤麻希)そうなんだよね。そこはいいよって思ったんだよね(笑)。

(吉田豪)面白い、面白い(笑)。ガッツある!っていう。

(伊藤麻希)ああー、懐かしい。本当に嫌だ。マジで黒歴史だわ(笑)。

(吉田豪)でも、今回の告知であの画像を貼ったけど、まだアイドルっぽいですよね。細いし、若いし。かなりかわいい。ちゃんと。

伊藤麻希 泣いて謝罪中

(伊藤麻希)そうそうそう! そうなんだよ!

(吉田豪)けなげな感じが見える。すべってへこんでいる背中の小さい感じ(笑)。

(伊藤麻希)そうなんだよね! あん時はまだやっぱりかわいかったんだよ。

(吉田豪)僕が4枚写真を貼っているうちの1枚がその時の泣いている伊藤麻希ですよ(笑)。泣いて謝罪中っていう(笑)。

(伊藤麻希)そうそうそう。強くなったわ、本当。

<書き起こしおわり>

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