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荻上チキ 東京医科大学・女子受験者一律減点疑惑の擁護論へ反論する

荻上チキ 東京医科大学・女子受験者一律減点疑惑の擁護論へ反論する 荻上チキSession22
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荻上チキさんがTBSラジオ『Session-22』の中で東京医科大学が入試で女子受験者の得点を一律減点し、不利な採点をしていた疑惑についてトーク。疑惑発覚後にあちこちで見られる東京医科大学への擁護論について反論していました。

(荻上チキ)先週はですね、もう1日1日ごとにいろんなニュースが飛び込んできまして。そういう時は多いんですけれども。

(南部広美)そうですね。『Session』は常に(笑)。

(荻上チキ)でも、いろいろな問題発言とか問題事例っていうのが明らかになったりしたじゃないですか。差別的なやつ。

(南部広美)そうでしたね。そう言われてみるとたしかにその傾向が大きかった。

(荻上チキ)で、それに加えて僕、結構その社会のリアクションがよりぬるいというか、緩やかであるというか、穏やかであるということに更なる課題を感じたりするわけですね。

(南部広美)うんうん。反応してないというか、反応が薄いというか。

(荻上チキ)そうですね。たとえば「LGBT支援の度が過ぎる」っていう寄稿をした自民党・杉田水脈議員への自民党の処分のなさということや、その議員を評価するネットの声っていうのも一部、あるわけですよ。もちろん世論調査をしたりすると「杉田議員の発言はおかしい」っていう人が9割ぐらいを占めるということなので一般的な意見ということで言ったら「あの発言は変だよね」っていうのが圧倒的な多数なんですけれども、でもTwitterなどでは杉田議員への応援リプライみたいなのがあって。「おかしなことは言ってないです!」みたいなね。

そうした一部の声を聞くと、「より極端な方に行っちゃうから止めて差し上げなさい」っていう風に思うんですけども。でも、おそらくそういったものに学習して気持ちよくなってしまうタイプの議員でしたから。これまで。そうしたことから学習する機会を奪ってしまうのであれば、それは人が学習する機会を奪ってしまうということになるので、「なんて残酷なことをする住人たちなんだ」ってTwitterの書き込みを見て思っているんですけども。

でも、その書き込みの中で、たとえば「人が子供を産めないとか、子供を産まないとか、そうしたことで税金を投じる対象にするかしないかということは、それはひとつの大事な判断なんだ」みたいなことで杉田議員を擁護する人もいたりするわけですね。そういう風に擁護してる人たちが本当にあの『新潮45』の記事を読んでるかというと、そうではないと思う。あの『新潮45』、今月売れるのかな?って思っていても、そんなに売れてないっていう風に今日、新潮の人に聞きましたけど……。

(南部広美)ああ、そうでしたか。

(荻上チキ)「燃えたけど、売れてない」っていうね。まあ、それはさておき、そういうような発言以外にも様々なセクシャル・マイノリティーに対する無理解があの本の中にはあったわけですね。あるいは、社会全体に対する無理解がある。「自分自身は差別しないから、みんなもそうに違いない」という書き込みがあって、「そんなわけないからこの世は大変なんじゃないか。それでも国会議員か?」っていう風に思ったわけですけども。まあ、そういった認識もさることながら、それをエクストリームに擁護するっていう動きみたいなものに「すごいな」って絶望感を抱いたりもするわけですね。

で、それは東京医科大学の女性の受験者たちが不利な採点をされていたっていうようなね、そうしたような報道に対するリアクションでも感じるところがあって。医療関係者の反応とかコメントの中には、「こういったことはひとつ、当たり前に行うてきたんだ」っていうことも、しばしば書き込まれたりとか。あるいはテレビで「自分は女性医師です」っていう形でタレントしてる人とか「こういったことは当たり前なんだ」っていう風に発言をしたりしているわけですよ。で、その「当たり前なんだ」っていうのは、「どこでもあることだから、これに怒っていこう」ではなくて、「どこでもあることです。これは必要なことなんだ」っていう風に主張している人が少なからずいるということなんですね。

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さまざまな擁護論

それはなぜかというと、いろんな理由が挙げられているんです。たとえば、「いまから主治医に診てもらいますという風になった時に、(担当する医師が)それが男の人じゃなくて女の人だったらあなたは納得できますか?」っていうような書き込みとか……。

(南部広美)んん?

(荻上チキ)「んん?」っていう顔をしているよね。まあ、僕も「んん?」なんだけど。

(南部広美)うーん……いま、チキさんの言っている意味がよくわからない。

(荻上チキ)ええと、「男性の医師に診てもらうことが当たり前なのであって、女性の医師に診てもらうとあなただって戸惑うでしょう?」みたいな書き込みをしている人もいるんですね。

(南部広美)戸惑わないですけど。

(荻上チキ)僕も戸惑わないよ。でも、こういう論法はあるんですよ。「私はいいんだけれども、中にはそういう人がいるんじゃないですか?」っていう形で差別を温存するっていう話法。

(南部広美)「代わりに代弁しているんです」っていうスタンス?

(荻上チキ)そうそう。だから「現実のニーズの中では、男性のお医者さんにこだわる人がいるんだから。だから女性の医者が少なくてもしょうがない」っていうようなことを言う人がいて。「それは単に差別に適応してるだけです」っていうことで済むんだけども、そういうこと言う人もいるわけね。あとは「男性でしかできない仕事がある。たとえば力仕事。女性が(体重が)重い男性とかの手術をする時は力仕事があるから大変だ」っていうようなことを言ったりするわけですよ。

いやいや、外科医も含めて女性の医師の割合って国際比較で見たら日本より(女性の割合が)多い国ってたくさんあるわけで。そうした中で、受験の段階で一律、女性であるというだけで不利な採点をされるっていう、その合理性はないですよね。採用の段階で……とかだったらまだわかるっていう話でもないですよ。受験の段階でなぜ、そんな抑制することの合理性がそこで発揮されるのか?っていうことが問われるんですよ。

あるいは、「いろんな患者さんがいて、中には襲ってくる人もいるんです」っていう。いやいや、それは男性医師なら対応できると思ってるのか? 警備員や警察を呼びましょうよ。「緊急時の……」って言った時に、それは全ての働く女性がそうでしょう? なんで医師だけ「そうした危険に自分で向き合えないなら雇えない」ということになるんだ? みたいなことを思ったりするわけ。で、こういった発言の様々なものが、総じておよそ真っ当に考えたわけではないだろうなっていうリアクションなんですね。

真っ当に考えて「医師は女性の方が良くない」っていう結論に達したからそうしてるんだっていうようなものではなく、いま漠然と行われている差別に対して後付けで「まあ、こんなもんだよ」という風に肯定するために、無理矢理なロジックを組み立てているとしか考えられないわけですね。

(南部広美)間違った学習をしちゃってるっていうことですか?

(荻上チキ)間違った学習もしてるし、自分たちが慣れたその体制を一気に否定するわけにいかないから。ということでじゃあ、「力仕事はできないから」とか「襲われたら大変だから」とか「診てほしくない人もいるでしょう」とか。

(南部広美)「いままで肯定してきた自分を否定する」っていうことになるわけだ。

(荻上チキ)そうですね。で、どれそれもその論理があまりにも筋が通っていないんですけど、でも要所要所でその場でなんとか反論をしたいということで作り上げられたロジックなんだということは理解できるわけです。なんなら、そうしたロジックで言うなら、なぜ医師だけそうした待遇の差を講じられなくてはいけないのか?っていう論理で、「他の女性が就く仕事についても職が奪われても仕方がない」ということになってしまうわけですよね。いまの論理を肯定してしまうならば。「そんな社会はごめんだ!」って多くの人が思ったから、男女雇用機会均等法であるとか、男女共同参画基本法とか、いろんな法律でハラスメントを防止しましょう。雇う際の差別をなくしましょうとか、いろんな議論がされてきたわけですね。

でも、医療関係の声でこうしたような声が出てくるというのは、それ自体は驚きはないんです。その業界にどっぷり浸かっているが故に、まあ「医者になるからには頭がいいんだろう」って思うかもしれませんが、それは人それぞれで。「その分野について得意だ」ということと「差別とかそうした社会的分野について様々に語れるかどうか」というのまた別問題なんですよね。なおかつ、「現場を知ってるからより現場に適切な答えを出せるのか」って言うと、そうではない。たとえば相撲協会が男女平等についてフラットに語れるか?って言うと、そんなことは誰も期待していないですよね。

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業界内の独自のロジック

それはもうその世界にどっぷり浸かってるから、あそこはそういったロジックでしか肯定しないだろうということは見えている。でも、社会の側の問題として果たしてそれはいいことなのか、よくないことなのか?っていうことは、より業界の論理とはまた別の世界にいる人の方がフラットに語れるっていうことはあるわけですね。だからその現場主義っていうのは重要なんだけど、でも現場だからこそ特定のロジックが歪んだ場合にそれを是正できない場合もある。

注釈をつけておくと、医療関係者のすべてがこんな意見ではない。これは、おかしいから目立っているんですね。「マジか!?」っていう風に反応してることになるわけですよ。でも、もしそれが決して少なくないのであれば、多数派でないにしてもそれ相応にいるのであれば、これは根深い問題です。なおかつ、やっぱり多くの人がその環境に適応してしまってると、そのことを疑えないという状況になるので自浄作用が働きにくいということになるわけですね。だから社会問題になった時は他の様々なチェックを経て、ちょっと市民社会の風を入れましょうよ。その不合理さ、おかしいですよというようなことを導入していくことが重要だったりするわけですよね。

だから「うちの業界ではこうなんです」という風に居直るっていうことは果たして是なのか非なのか。僕は非だと思う。それは問題だと思う。そういうような状況っていうのもを変えていくためにどうすればいいのか? ひとつ問題としては、医者の数が足りない。人手が足りない。そうした中でたとえば、より離職してしまう可能性が高い女性を雇いたくないということあれば、これは社会構造として男性だろうが女性だろうが育児というものにより適切に関わりやすいような状況を作るというのが第一ですよね。

また、いまの男性の働き方がとても酷使されているということになるのであれば、その働き方も含めて見直していくというトータルのものが必要ですね。トータルのものができないからといって、短期間差別待遇を是とするということはこれはゴールではないんですよ。これは、問題をより悪化させる一方です。もしこれを「悪化させない手段だ」という風に言うのであれば、あるいはそういう風に「悪化させる一方ではない」という風に言うんだったら「こうした問題がある業界だから、改善されるまではこの状況で行きます」と同時に訴えなくてはいけなかったわけですね。そういうことをオープンにしないと、それは「解決の問題意識なし」っていうことになっちゃうじゃないですか。

まあそんなこんなで、この問題については土日もいろんな情報が飛び交っておりましたけども。なんか、基本的に「こういった考え方をしていきましょう」みたいなロジックな面でのパズルみたいなところはいろんなところで要所要所、整理していかなくてはいけないかなという風には思ったりした次第ですね。

<書き起こしおわり>

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