松尾潔 クインシー・ジョーンズ85歳バースデーコンサートを語る

松尾潔 クインシー・ジョーンズ85歳バースデーコンサートを語る 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でロンドンO2アリーナで開催されたクインシー・ジョーンズ85歳のバースデー記念コンサートを見に行った話をしていました。

まあ、そんな状態が20年以上前から続いてるクインシー・ジョーンズが2018年の6月27日、先月の終わりにロンドンのO2アリーナ。そこで85歳のバースデー・パーティーを催しました。これ、いろんなツッコミどころがあると思います。まずクインシーについてお詳しい方は、「あれ? クインシーって誕生日、いまだっけ?」って。そうなんです。3月なんですよ(笑)。85歳と3ヶ月ですね。で、もっと言いますと、6月27日のO2アリーナといえば、2006年6月25日にこの世を去ったマイケル・ジャクソン。そのマイケル・ジャクソンがまあ起死回生を狙ってね『THIS IS IT』っていうライブシリーズをやろうとした会場がまさにそのO2アリーナでした。

ですから、もうそこでライブやるってこと自体がね、クインシーがロンドンまでやってきて、そういうコンサートやるってこと自体が自分のバースデーというよりもMJへのトリビュートライブという色合いもあるわけです。で、もうひとつ言うならば、これはちゃんとその公演でも銘打ってましたけれども、まあクインシー・ジョーンズにとってベスト・ブラザーと呼べた名ソングライター、ロッド・テンパートンが亡くなって2年経ちますが、ロッド・テンパートンはイギリス人ですからね。ですからまあクインシーはロンドンでの開催に大変こだわりを見せていたという風に聞いております。

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この番組を長年聞いてくださってる方々は、僕が10年前にパリ在住の鷺巣詩郎さんにお声かけいただいて一緒にスイスのモントルーにクインシーの75歳のバースデーパーティーを見に行ったという話もご存知かもしれません。何度かこの番組でも話してますが。

それから10年経ちまして僕はすっかりクインシーのそのバースデーコンサートに行くって発想がもうなかったんですね。なかったんですが、鷺巣さんもご本人「不覚でした」っていう風におっしゃってましたけど、ライブの1週間ほど前に「松尾さん、やりますよ! 10年後のコンサートが」っていうのコンサートの1週間前にベルリンにいらっしゃる鷺巣さんから連絡がありまして(笑)。「遅すぎるかもしれませんけど、どうですか?」って言われて。僕はね、実はその鷺巣さんからご連絡頂いた時に、久保田利伸さんとの打ち合わせを予定しておりまして。ちょうど久保田さんに「ごめんなさい。ちょっと打ち合わせのタイミングでね、こういう話があるんですよね」なんてことを言ってましてね。

で、「打ち合わせ、西麻布じゃなくてロンドンでやります?」みたいな軽口叩いてたんですよ。「俺が飲んでる時にそういうこと言うのやめてくれ」って言われて、「ああ、すいませんでした」って言って。翌朝になって久保田さんから「キヨシちゃん、ロンドン行った方がいいよ。そして俺も行く」って言って。びっくりしまして(笑)。それから数日間でコンサートのチケットですとか、あともっと言うと飛行機の並びのチケットなんかも全部手配しました。ホテルとかもね。まあ、ホテルの手配は鷺巣さんにお願いしたんですけど。鷺巣さんから「ええと、念のため聞きますけど……二部屋でいいんですか?」って聞かれましたけどね(笑)。まあ二部屋取ってもらいましたけども(笑)。

行きも帰りも大人の修学旅行みたいな感じでね、本当に仕事の打ち合わせがそもそもあったんで、その話もずっと機内で行き帰りやりながら、まあクイーンシーのコンサートを見て、いいヒントを得られるんじゃないかなって思って。で、実際それはね、もう本当に夢のような3時間でございました。現地で鷺巣詩郎さんと奥様と合流して4人で見たんですが。「クインシー・ジョーンズ meets UK R&B」とは言えばいいのかな? とにかくね、アーティストがほとんどイギリス人なんですよ。具体的に言うと、UKソウルの文脈で分かりやすいとこで言うと、コリーヌ・ベイリー・レイが『Rock With You』を歌うとか。あとはビヴァリー・ナイトが『Baby Be Mine』を歌うとかね。あとはあのシンプリー・レッドのミック・ハックネルですとか。

そうですね。シンガーじゃないですけど、マーク・ロンソンが出てきて。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますけども。マーク・ロンソンはかつて、クインシーの娘のボーイフレンドでしたからね。そういう関係もあったり。あとはなんといっても驚きましたのは、ポール・ウェラーですね。元ジャムと言うべきか、スタイル・カウンシルと言うべきか。まあある種、クインシー・ジョーンズなんかからいちばん遠いところにいたような印象さえありましたけれども。そのポール・ウェラーがね、クインシー・ジョーンズのライブでクインシーの前でね。要は御前会議ならぬ御前コンサートっていう感じなんですが。まさかそういう日が来ると思わなかったんですが。

その時にポール・ウェラーが歌ったクインシー・ジョーンズナンバーのオリジナルナンバーを今日はご紹介したいと思います。これはね、アメリカよりもイギリスで大変人気があると言うか神格化されているクインシーの仕事です。『The Italian Job』という映画がございました1960年代の終わりの話でございます。元のタイトルを言っても分かりづらいかもしれません。邦題『ミニミニ大作戦』という映画ですよ。これ、マイケル・ケインが出ていて。映画自体はB級映画だったかもしれないけれども、のちにマイケル・ケインが名優と呼ばれる存在になったっていうのと、あとはやっぱり映画が面白かった。あとサントラが素晴らしかったということ、まあイギリス人にとってはお宝のような映画になっててます。

で、サントラも彼らはこよなく愛してますし。マット・モンローと言ってね、当時UKのフランク・シナトラみたいな扱いを受けた人がいますけど。マット・モンローの名称で知られる、こちら聞いてください。クインシー・ジョーンズで『On Days Like These』。

Quincy Jones『On Days Like These』

お届けしたのはクインシー・ジョーンズ feat. マット・モンローで『On Days Like These』。サウンド・トラック『The Italian Job』。またの名を『ミニミニ大作戦』。もちろんオリジナルの方ですけども、そちらからの1曲でございました。ちなみにこのたくさんのボーカリストが入れ替わり立ち替わり歌っていくタイプのコンサート、最後にみんなで大合唱した曲はマイケル・ジャクソンの『Man In The Mirror』だったということをお伝えしておきます。

さて、楽しい時間ほど早く過ぎてしまうもの。今週もそろそろお別れの時が迫ってきました。ということで、今週のザ・ナイトキャップ(寝酒ソング)。今夜はクインシーのロンドン巡礼といえばいいんでしょう? に、同行していただきました久保田利伸さん、Toshi Kubotaさんの『Gently』を聞きながらのお別れです。『Gently』という曲は彼がアメリカで出した2枚目のアルバム、2000年の『NOTHING BUT YOUR LOVE』というアルバムに収められてるんですけれども。当時ね、僕はロンドンでよく仕事をしていて。行くたびにラジオを聞いてましたけども。もうあちらのね、ジャズFM、スムーズ FM、そしてBBCでよく流れてたんですよね。

ダイアン・ウォーレンのメロディーが優しいっていうのもあるんですけどね。久保田さんのボーカルは当時、ロンドンの街に溶け込んでましたね。これからお休みになるあなた、どうかメロウな夢を見てくださいね。まだまだお仕事が続くという方、この番組が応援しているのはあなたです。次回、来週7月23日(月)夜11時にお会いしましょう。お相手は僕、松尾潔でした。それではおやすみなさい。

Toshi Kubota『Gently』

<書き起こしおわり>

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